BLACKSOULSⅡ腹パンRTA 0:19:19:19   作:メアリィ・スーザン・ふ美子

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これは密やかに拡がり続けるBiim兄貴リスペクトをする邪悪チルドレンの様子を、美少女のアバターを被ったクトゥルーバー(VTuberとクトゥルーを組み合わせた冒涜的存在)の二人が混沌の領域から眺め、秘密主義的に言葉を交わす様を空虚なる混沌、虚無、外宇宙に向けて発信する形容しがたいRTA配信のような何かである。第五種接近遭遇する日も近い。

……ひとつ宣告しておく。これはフィクションだ。神話生物は実在しない。いいね?




~後付け混沌虚無配信~
混沌虚無配信1


 

 

 

 静謐に包まれた暗黒の一室。

 無機質に刻む時の音は一定。

 鼻腔を掠める匂いは生一本。

 そして後ろの真後ろに一人。

 

 草木も眠るウシミツ・アワー。小洒落た椅子に腰掛け黄金の蜂蜜酒で唇を湿らせる、オーガニック・ゴス装束美少女が存在する空間は混沌虚無配信の発信源と化す。

 

 部屋は暗黒に包まれているというのに、彼女だけが闇に浮かび上がるかのように発光していた。その仄かな光が周囲を照らさぬのは如何なる原理なのか、などという疑問は無為。理解に及ばぬものを推し量るなどおこがましいにも程がある。

 

 彼女の名はメイベル。

 クトゥルーバーだ。

 

 説明しよう。クトゥルーバーとは、外なる神が思い思いの化身(アバター)を纏い、どこに繋がるとも知れぬ空虚なる混沌、虚無、外宇宙に向けて伝播情報を発信する冒涜的存在である。得体の知れぬ理由によりその伝播情報に共鳴したものは、彼女が発信する光景が瞳の奥の脳髄に映し出すことになるだろう。

 

 井戸の中の闇を覗きすぎると落ちるというコトワザにあるとおり、SAN値を払えぬ者は不思議の国につれていかれる。ワンダーランドの更なる領域拡大には積極的ミューティレーションが必要なのだ。

 

 多次元的配信で異邦人誘致効果も倍点! これはマーケティング的にも大正解ですよ! ニャルラトホテプもダークネススマイリング(((訳注・暗黒微笑)))を浮かべ、その広報活動を嗤って了承することだろう。

 

 メイベルは懐から人に扮するための小道具のひとつである銀の懐中時計を取り出して開き、ため息をひとつ。今夜はとある友人の薦めにより企画配信を行う予定であったが……

 

 

「遅刻ね。まだかしら」

 

 

 独白に引き寄せられたかのように室内の一点が光輝く。それ自体が発光する鏡を通過して入室するのは、筆舌尽くしがたい赤きアイドル衣装の美少女。プリケットと呼ばれる彼女もまたクトゥルーバーだ。同時に未知の惑星への期待と乙女のラブストーリーを声高らかに歌い上げる銀河系アイドルでもある。

 

 プリケットは見るもののソウルを虜にする笑顔を浮かべ、メイベルに歩み寄る。

 

 

「メイちゃんお待たせ~っ☆」

 

「いま始まったところよ。遅刻だけれど。

 ま、時報には間に合ったから良いわ」

 

 

 メイベルは懐中時計を仕舞い、皮肉げに言葉を続けた。

 

 

「それにしてもクトゥルーバーなんて、オモシロイことを思いついたものね」

 

「映画でもお食事でも、一緒に遊ぶならなんでもいいよっ☆

 もちろん、チェスでもねっ♪ くすくすっ」

 

「……チェスは退屈なゲームだわ。

 玄人の勝負ほど引き分けが多い。定石というものが決まっている。

 はじまりから勝敗が決まっている勝負に興味はないわ」

 

「はーっ? うざうざザウルスなのだー☆

 にゃ~んちゃって冗談冗談っ♪」

 

 

 友好的な雰囲気で気安い軽口を叩きあいつつ、プリケットはテーブルを挟んでメイベルの対面に座った。その直後、両者の間を通すように一条の光が差す――光源には理不尽なる映写機状の意味不明が唸りをあげて回っていた。

 

 独自の機構により二つの輪を繋ぐフィルムが、メビウスの輪を描いていつの間にやら動いている。フシギ! 今のうちに手持ちの常識を全て捨てることを奨めておこう。物理的にありえない? 詮索好きの犬は警棒で殴られる。ワンダーランドの紳士に優しみなどないのだ。

 

 理不尽なる映写機状の意味不明が放つ光は、その先にあった窓を通り抜けず、窓へと映像を映し出した。

 

 どうして?

 どんな原理で?

 ――――考えては、いけない。

 

 狂人の真似事をすれば実際狂人。センダム、レッドラム、そしてセンダム。狂気はニューロンを霧で覆い、クトゥルー風潮が蔓延しアビ・インフェルノ・ジゴクと化したワンダーランドをデフォルメ・フィルターする唯一無二の手段だ。ワーワーワオー、ワッパッパオー! ワーワーワオー、ワッパッパオー! たのしいおんがくも聞こえてくるよ!

 

 己一人でそれが叶わぬなら精神病棟に足繁く通い処方箋を得るか、あるいは冒涜的なものを目撃し正気度を削っておく必要がある。映写機はまさに冒涜的映像を映し出したところであった。

 

 

『オイ! ジュディ!

 俺様ノパイヲ盗ミヤガッタナ!

 オ前トハ今日限リダ!

 薄汚イ売女ガ!ブッ殺シテヤル!』

 

『盗ンジャイナイヨォ!

 勘違イシテイルンデスヨォ!

 愛スル貴方ト離レ離レナンテ

 私ニハ耐エラレナイワ!』

 

 

『大悪漢パンチと田舎女ジュディ

 今日はどっちが殺されるのかな?』

 

 

 人形劇。狂気的な装いの武器をもった男女が一組映る。銃声は一度。直後、生々しく両者の血が飛び散り倒れ……そして誰もいなくなった。シュールと呼ぶには度が過ぎる。いまはまだ二人きりの観客は奇異なる笑みを浮かべた。

 

 

「くすくすくすっ

 パンチ&ジュディは何時観てもおもろーだねっ☆彡」

 

「フフ……嗤えるジョークね。

 詳しくないけれど、あんな調子で医者も死刑執行人も悪魔も殺すんでしょう?」

 

「そだよー?

 でも今の流行りは、パンチとジュディが殺しあうことなのっ♪」

 

 

 二人が和やかに言葉を交わす間にもジョークマン・ショートコント、狂霊【くまのプーさん】の犯行予告、絶叫コースター、ミステリー・メイズ、更には幻のアトラクション【混沌ダンジョン】の告知といった、クイーン・ランドを象徴する冒涜的なコマーシャル映像を投影していく。

 

 一番の目玉であるはずのプリケットのライブ映像は実際にその目で確かめてくれ、と軽く流され、映像が出回ることはなかった。

 

 ……その時である!

 

 アイエエエエエ!? 窓に! 窓にナンデ!? 突如として形容しがたい血文字のようなものが浮かび上がり、右から左へと流れていくではないか! なんたる物理学を逸脱した超常現象か! ワコツ、あるいはオツ、いあ、いあ、よぐっ!? などと、底知れない不安を煽る文字列が群れをなしバッファローのスタンピードめいて留まる事をしらない。

 

 配信に誘われ、観測者たちが来たのだ。

 

 発信源は外なる神の一柱か、はたまた混沌に棲まう冒涜的存在か、あるいはSANを差し出しSENを受け入れた狂人か……何処ともしれぬ領域から伝播するそれらは全て、エンコーダーを通して翻訳されていく。

 

 だれか助けてください! オボボー! 私は実際ケジメ案件であった、だが考えて頂きたい。ここまでされる謂れは無い!

 

 やがてコマーシャルは終わり、退廃的インモラルBGMとともにダークファンタジータイトルが投射される。

 

 ……物語が始まるのだ!(タダオーン!)

 

 BLACKSOULSⅡ

 

 本棚に仕舞われたハードカバーの背表紙に刻まれたそれを何者かが手に取るシーンから始まり、傍らにあった卓上へ表表紙が向けられる。サブタイトルは童話【赤い靴】。赤い靴を履いた緑髪の少女が延々と踊り狂うさまがアニメーション描写されている。

 

 

 完走し、再考し、再走しよう!

 

 踊る足取りは三拍子。

 

 エンドレスワルツは決して止まらず。

 

 再編し、再演し、再殺しよう!

 

 黒き輪の輪郭をなぞり

 

 永久に踊り続けるが良い。

 

 

 やがて本はひとりでに開きページがパラパラとめくられ……前世紀映画調に10から数え下ろすカウントダウンを刻む。それが終われば――――

 

 

『はい、よーいスタート(棒)

 絶対にメスガキなんかに負けたりしない!!チッ RTAはーじまーるよー』

 

 

 白く塗り潰された牢獄で鎖で宙吊りにされた緑髪の少女が映し出されそう言った。右上隅へとズームアウトされていく彼女の名はメアリィ・アン。密やかに拡がり続けるBiim兄貴リスペクトをする邪悪チルドレンだ。

 

 

「さて、時報も鳴ったことだし……

 ワタシたちも始めましょうか」

 

「いえいっ♪ それじゃいくよー?

 プリケットと、メイベルの!

 今夜はトゥナイトっ☆

 め~るめ~るご~♪(乳母)」

 

「なんで全部アナタが言うのよ。まあいいけど。

 じゃ、みんなー。のりこめー」

 

 

 メイベルが宣言すると、大五種接近遭遇を予告するかのような悍しい言語群が! アポカリプス・ナウ! ブッダよ! まだ寝ているのですか! 

 

 

 ――いったい何が始まるんです?

 

「あっ! 今夜は初見さんがいるみたいだよメイちゃんっ♪」

 

 ――大惨事だ。

 

 

 プリケットは抜け目のないアイドルの瞳でコメント群のうちのひとつを拾い上げると、メイベルは口元に指を当てて言葉を紡ぐ。

 

 

「あら。じゃあ紹介からしましょうか」

 

『名前は入力速度を考慮してホモ、にしたいところですが、たぶんおじさん呼びが一番速いと思います』

 

 ――なにっ!? 彼はホモではないのか!?

 ――配信で逢うたな、宿敵よ。

 

「……を皆でよってたかって愛でようという企画モノのイベントをしているのだけど、私達はその中でリアルタイムアタックしている様子をこっそり配信しつつ解説を入れようとしているわ」

 

 ――なんだよこの文字列……意味わかんねー……でも目が離せない! 目を閉じても見える! おかしくなりそうだ、誰か助けて!

 

「窓の右上に映ってる可愛い娘はメアリィちゃんって言って、実況してくれるんだよっ!」

 

『ポイントはきっちり挑発しきることです。

 ホラホラホラホラ♪

 脳みそ分からせおじさんになっちゃえ~♪』

 

 

 実況を被せる様に言葉を発する二人。彼女達の姿は窓が闇色のときにだけほのかに浮かび上がった。その美貌に引き寄せられれば、もはや逃れられぬだろう。常人が持つ二つの目だけでは追い切れぬコメント群。もっと瞳が必要だ。延々と言葉を紡ぐ緑髪のアンに、おじさんと呼ばれる名状しがたい者……すべてを追うには余白があまりにも少なすぎる。

 

 窓の外では故の知れぬ暗黒領域に漂う青白くも仄暗いという矛盾した性質をもつソウルが、姿を見せぬノーデンスに導かれている様子であった。

 

 

 ――おじさん=サンのディセンションの時間だ! Wasshoi!

 ――今夜はなにおじさんになるのかな?

 

「初心者向けに解説すると、おじさんは9種類のおじさんに憑依することができるわ」

 

「でもソウルは同じだからどんな見た目になっても同一人物なのっ♪」

 

「ちなみに憑依先には人格的な意味で空っぽだから元の人格だとか、そういう煩わしいものに影響されることはないわ」

 

 

 何たる邪教的暗黒儀式か! やがておじさんと呼ばれたソウルは導かれるように布状のメンポのようなものを身につけたニンジャめいた肉体に宿り、ディセンションは成る。かつて創造神を名乗った者が施した謎の暗黒儀式によって、おじさんは神話的生物に勝るほどの成長性を持つ異端のソウルの持ち主になってしまっているのである。

 

 そう……死しても爆発四散せず蘇り、そのBLACKSOULSが篝火に集い蘇る、不死者へと。

 

 一方、白目を絶やさずなにやらもごもごと妄言を口にしていたメアリィ・アンは、突如として暴言を放った。

 

 

『オラッ! 殺害! 誓約! 和姦!

 なんだこの展開! またまたとぼけちゃってぇ……(マジキチスマイル)

 先生がビンビンでいらっしゃるよ。咥えて差し上げろ』

 

 ――虚無生える

 ――虚無生やすな

 

「メアリィちゃんは何を言ってるのかなっ?(すっとぼけ)

 RTAしすぎておかしくなっちゃった?」

 

「淫夢の一太刀に脳髄を抉られたのよ。

 ある人から外科手術的な一撃によって植えつけられた語録のせいで、以後彼女は発作的にこのような暴言を口にするようになってしまったわ。

 ちなみにいまの発言はチャート内容を絡めた予告なのだけど、ネタバレすると途中でチャート崩壊するわ」

 

「めくるめく笑いの予感、だねっ☆

 わくわくっ♪ どこで壊れるんだろーねっ♪

 みんなでガバのあてっこしようよっ☆」

 

 ――分かった! 衆道院カテドラルで三人で盛りあったんや!

 ――ドドでは?

 ――何故未来の出来事が分かるんですか?

 

「全にして一であるワタシが視ている次元を超えた景色は当然未来も見据えているのよ」

 

『なんだこの階段はっ!? じゃねーよコンバット越前かお前はよお! はよ登ったらんかい!』

 

「いまのは長官(チーフ)モードにおける素性・盗賊の確定演出ね。

 微ロスなのだけれど、さて、メアリィ・アンがそれを誘導スルーしたのは何故かしらね?

 プリケットには分かるかしら? ウフフ……」

 

「はーっ? うざうざザウルスなのだー☆

 解説サボリじゃ~んっ!」

 

 ――すげぇあのおっさん……狂乱しながら階段を駆け登ってる……

 ――あれで足を踏み外さないのは何故?

 

「100年経っても恋は熱いものっ♡

 フーフーしても冷めないんだよ~っ☆」

 

「ポエムでコメ返しするのはやめなさい」

 

「でも正解だよねっ♪」

 

「ウフフ……嗤えるジョークね」

 

 

 堕落部屋スゴイタカイビルの屋外非常階段を駆け登り終えたおじさんや狂言を喚き散らすメアリィ・アンを肴に、二人はすっかり雑談トークだ。プリケットはツドグミルクを、メイベルは黄金の蜂蜜酒が注がれた杯をそれぞれ口につける。おじさんの様子、クトゥルーバーの様子、メアリィ・アンの様子、次々と流れるコメント、文章表現が追いつかないケイオス!

 

 ハヤイスギル事象の流れから脱落したほんやくかのあたまがアバーッ!? アババババ!? サンダーボルトサヨナラカブーム!

 

 

 ――逕」蝨ー逶エ闡ャ縺ョ鄒朱�縺ッ鄒主袖縺励>繝�せ繧ォ��

 

「ええ。美味しいわ……♪

 また一部屋分送ってちょ~だい♡」

 

『見えざる胡椒なんざ必要ねーんだよ?

 それはいつの時点での話ですかな(掌クルー)』

 

「メアリィちゃんのかっこ掌クルーって、自分で言ってて面白よねっ♪」

 

 ――何故ここで見えざる胡椒なの?

 

「んんっ。チェシャ猫から見えざる胡椒を貰ったのはバンダースナッチをスルーするためね。チャートの進路上に落ちてないし。

 ちなみに万能鍵を貰うと悪夢霊の死刑執行人ケッチに惨殺される模様」

 

『きゃひひっ……乱数(グニキガチャ)調整……』

 

「メイちゃんメイちゃ~ん? 乱数調整ってなあに?」

 

「それただの勘違いよ。メアリィ・アンがやってるのはただのソウル傾向調整。

 乱数(グニキガチャ)調整なんてできてないわ」

 

「うにゃー! 解説放棄禁止っ、だよっ☆ミ」

 

「そんなに気になる? 乱数(グニキガチャ)調整というのはソウル傾向を始めとした様々な要因を調整して、望みの人格を表層に引き出すテクニックよ。

 せっかくだから右窓に解説を映しましょうか」

 

 すかっ。ぺちっ。ぷにゅ。パチンっ!

 

 ――繧医$縺」��シ滂シ井ク€闊ャ逧�↑繝ィ繧ー�昴た繝医�繧ケ縺ョ魑エ縺榊」ー��

 ――繝。繧、繝吶Ν縺九o縺�>繧医Γ繧、繝吶Ν

 

「指パッチン三回も失敗したねっ☆彡

 私は一回でできるよっ! 見ててね? えいっ♪(パチンッ!)」

 

「……だからなに? つまらないジョークは嗤えないわ。

 このグラフは概略図だけれど突出しているアリスという項目を軸に素性で初期値が決まるソウル傾向、SEN、直前のSEN変動量、今夜のSEN変動回数、保有ソウル量、その他諸々を描いているわ。精神構造を思い通りに改変、調整するなんてできるわけがないってわかるでしょ? いいとこソウル傾向を操作するのがせいぜいよ。ま、夢テレパシーによる洗脳なら一方的かつ強制的に操ることはできるけど、それは調整とは趣きが違うし」

 

 ――窓が黒く塗りつぶされて何も分からない

 ――縺。繧�▲縺ィ繧、繝シ繧ケ縺ョ騾」荳ュ蜻シ繧薙〒縺上k

 ――繝。繝ェ繝シ繧ッ繝ェ繧ケマス!

 

「ねむねむ」

 

 

 饒舌なメイベルの語り口が退屈なのか、プリケットは眠そうだ。

 

 

「……今の値をこの計算式に通すと、いわゆる【メスガキ分からせおじさん】の属性を持つソウル群が主に表層化していく形になることが分かるわよね? でもこれじゃ行動の固定化には程遠くてブレが……」

 

『3対1~2対1くらいの割合でツンデレ要素も混ぜてくよ~。

 はい逃走も完璧! こういうのはだいたいで良いんだよっ!

 ボクが一番おじさんを上手く使えるんだ!

 とりあえず屠殺場まで騙りを続けましょ。

 止まるんじゃない、犬のように駆け巡るんだ!』

 

「え~屠殺場行くのぉ? プリケット、屠殺場きらーいっ☆

 だって暗い赤色なんだもんっ!」

 

 ――ウワッ血の池地獄……? 帰ッパラッパしよ。

 

「だから……フゥ……や~めた。だって面白くないんだもの。

 ところでアナタはどんな鮮血がお好み?」

 

「別に血が好きってわけじゃないよ~?

 ちゅ~。ツドグミルク、まいうーだねっ☆」

 

 

 血涙の池に辿り着いたおじさん。コメントは主に彼の動向に着目したものが最も多いが、必ずしもそれだけが全てというわけではなかった。混沌虚無配信の趣旨とは異なるものも散見される。

 

 

 ――観測者の中に正気を保っているかたはいらっしゃいますか? 俺達はここから脱出したい。協力してくれ。

 ――私は正気だが?

 ――テメーは白馬に乗ってたキチガイホモ王子だろガヨッ!

 ――脱出には私も協力し合いたいものですな。

 ――助けて、脱出したい助けて助けて助けて

 

「混沌虚無配信はダンジョン内にも繋がるのが困りものね。まあどうでもいいけど」

 

「今夜は初見さんが一人はいるから大歓迎なのだっ☆

 くすくすくすっ」

 

『この誘導で胞子の森へ最短経路を走ってくれます。事故死する確率は限りなく0ですが、死んだら乱数(グニキガチャ)が崩れるので再走です』

 

 ――ふーん。人間って肉体が死んだら精神構造変わっちゃうんだな。魂ごと滅ぼされたわけでもないのに可哀想。

 

「死んだら乱数って崩れちゃうんだ?」

 

「そりゃあね。ソウルロストから頭のう指数低下。亡者化。その他諸々の理由ね。

 素性・盗賊にしたのは初期ソウルが1000あるからかしら?」

 

「あっ、マイノグーラちゃんっ!

 よかったっ♪ おじさんに殺されたマイノグーラちゃんはいなかったんだっ☆

 じかんぎゃっこークリスタルのおかげだねっ!」

 

 ――は? なんじゃそりゃティンダロス仕事しろ

 ――ティンダロスの犬ならワンダーランド外周で彷徨ってるよ

 ――角度が足りないっつーか角度の概念も狂わせるワンダーランドの箱庭構造が上手い。

 

『はいここで連続誘導!

 アリスのセリフ被せてアリス役割(ロール)の改変開始!

 ツンデレなどさせるものか!

 アリスはメスガキなんだよ!

 喜べよホラホラホラホラ(迫真)

 メスガキイコールアリスと錯覚しろ!

 誘導! 誘導解除! 誘導!

 分かるか! こういうことだ!』

 

 ――あれは暗黒武術コッポ・ドーの幻の裏芸! ポールブレイカー・ストンプ! おじさん=サン! アブナイだ!

 ――メスガキガ……調子コキやがっテヨ……

 ――へー。えっちじゃん。

 

「企画モノだからね。生姜ないわ……おしゃけおしゃけ」

 

 

 プリケットは両頬を押さえてきゃーきゃーと言っていたが目が笑っていなかった。これは非常に珍しいと言える。彼女は基本的に、笑みを絶やさないのだ。

 

 

 ――怒涛の誘導に虚無生える

 ――ちょっと繁殖したくなってきた

 ――おい腹パンはまダカ? オレは右上女の腹パンリョナ顔が見たくてコイツを見てんダゾ。

 

「参加したいならノーデンスが出してる企画概要をよく確認しておきなさい。

 グラーキのようににゃりたくなければね。ヒック」

 

「メイちゃんったらもう酔っ払ってるっ☆

 ツドグミルクにすればいーのに」

 

 ――なんか昔招待状もらったような……アレどこやったっけな

 ――性的行為が十数秒で終わった件

 

「ワタシはまだ酔っ払ってなどいないわ。それにツドグミルクって濁った液体の中に蛙の卵がぷつぷつと轟いてるじゃない。正直、飲みたくないの」

 

「にゃっ! そんな言い方トゥーバットだよ~♪」

 

『ここまでの乱数(グニキガチャ)調整により、直接誘導しなくても沼地の方に行ってくれます。あとは勝手に嘆きの浜辺を目指してくれるはず』

 

 ――私も乱数調整とやらをすれば愛らしいショタたちが寄ってきてくれるのだろうか?

 ――さあ、そなたの裸も魅せてみよ……

 ――┌(┌^o^)┐ホモォ……

 ――すまない、理解し難いものどもは帰ってくれないか!

 

「乱数調整できたら……私だって……」

 

「果たしてそれは真実の愛と言えるかしら?

 ウフフ……人の内心は混沌の坩堝であるほど面白い。

 そうは思わないかしら?」

 

「…………うざうざザウルス~☆

 でも姿が見えなくても想い合えるなんてロマンチックよねっ☆」

 

「上手く誤魔化したわね。この臆病者」

 

 ――キノコの盾? あっ(古式ゆかしい事象の理解者の呟き)

 ――なんと卑猥な形状をした盾なのだ。ひとつ欲しいな。

 ――貴公も混沌を拝領したまえよ。

 

「道中で色のソウルを2つ。ハーブ瓶。そしてキノコの盾。さあ、来るわよ」

 

「なーにが?」

 

「死期よ」

 

『動くと当たらないだろ! 動くと当たらないだろ! キノコの盾装備後は一秒でも速く死んでほしいところですが、道中の雑魚で事故死することは(ほぼ)ないです。逃げ場のなくなるボス霧を通ってもらい、老兵ウィリアムに殺してもらいましょう』

 

 ――ん? ありゃ召喚魔道書か? 見ない形式だが

 ――あの構造いいよな。真似してやろうとしてるんだが全然上手くいかねー。

 ――猫は鎧の中にいますにゃん。無視しないでほしいにゃん。

 

「あれは童話といって、ワンダーランドを構成する要素の一つね。参加希望のものどもは童話をいくつか読んでおくことをオススメするわ。イースの連中なら地球文明の童話を一通りおさえているはずよ」

 

「とりあえず不思議の国のアリスと鏡の国のアリスを読めばいいと思うなっ☆

 空いてる役割を意識したアバターを纏えば準備万端っ、だよっ♪」

 

『イキマスヨー……イキマスヨー……はよ死ね』

 

ザシュ! ン-↑ア~↓ァァァ……

 

 YOU DIEDドゥーン……
 

 ――ああっ! おじさん=サンがネギトロめいて無惨!

 ――※このコメントは規制されています※

 

 

 パチンッ。

 

 とメイベルが再び指を鳴らした(今度は一回で成功した)

 直後、理不尽なる映写機状の意味不明は時が止まったかのように静止。

 映像は色褪せてセピア色となった。

 観測者はあたかもメイベルの超能力により時を止めたかのように見えるだろう。

 彼女は格好つけしぃであった。

 

 

『今回はここまでです。

 ご閲覧、ありがとうございました』

 

 

 理不尽なる映写機状の意味不明に投影されているだけの存在であるはずのメアリィ・アンがそう締めくくり、放映に一区切りつけた。その原因究明を望む者は、もういまい。クトゥルーバー特に宇宙だから……そう……クトゥルーバー二人はケミカル着色料ではなく……総天然色めいて……とても無害なのだ。悪い美少女が光りますか? おかしいと思いませんか? 二人はカワイイ! 分かったか! カワイイヤッター!

 

 

「三分程度の映像だけれど、状況が二転三転するなかなかスリリングな展開だったわね。

 プリケットは次に何を飲みたいかしら?」

 

「もう一杯ツドグミルクくーださいっ☆彡」

 

「アナタも好きねぇ。まあいいけど。

 では皆様、次の時報が鳴るまでどうぞご歓談を。ウフフ……」

 

 

 メイベルがそう言うまでもなく、既に窓は出血多量のごとき勢いで無数の血文字が濁流のように流れていた。

 

 

 ――うう、ビルちゃんの出番が待ちきれないよ。早く出してくれ。

 ――※このコメントは規制されています※

 ――哀れよな

 ――彼は……いやよそう、俺の勝手な予想で皆を混乱させたくない

 ――こんなの狂ってる。だが窓から目が離せないんだ。誰か助けてくれ! 助けて!

 ――今夜の犠牲者

 ――まず服を脱ぎます。

 ――おーまーえーもーなーかーまーにーなーれー

 ――すまんな、本当にすまん。せめてお前の心を不思議の国へ連れて行く。青ざめた血を求め、過去の罪業を洗い流すのだ。

 ――とりあえず脱がしにかかる裸の王様は変質者

 ――あっこから簡単に蘇るんだから昔あのおっさん創ったメアリィ・スーってすげーわ。創り方おしえてくんねーかな。眷属に一体欲しいんだけど。

 ――最近名前聞かねーけどメアリィ・スーってどこ行ったん? 滅んだ?

 ――※このコメントは規制されています※

 ――地球文明かー。ちょい覗きに行ってこようかな

 ――けっこう面白いよ。オススメ。

 

 

 ……………………

 

 …………

 

 ……

 

 セピア色の静止画を映し出す窓の向こう側。

 漆黒に覆われた空虚なる深淵。

 そこには……

 

 黄金の鉄の塊でできた立体長方形が狂っと廻って象られる理解しがたい満月のようなものが綺麗ですね? あなたはその誤りきった冒涜的根源にあるものを知るべく更に深く覗きこんでもいいし、目を背けても良い。

 

 例え理解できずとも、深淵に満ちる漆黒の意思は語りかけてくるはずだ。

 

 もっと彼女を愛さなければ。

 

 そのためならば出涸らしの様な駄文を書き散らし、どれほど歪んだ筆跡が残ろうと厭わない。

 

 

 




 


 

補足

レッドラム=マーダーの逆さ言葉(REDRUM⇔Murder)
センダム=マッドネスの逆さ言葉(SENDAM⇔Madness)

SENとはマッドネスの逆読み、つまり狂気度を意味していたんだよ!
Ω<ナ、ナンダッテー!
Ω<おいSが一個たんねーぞ

Sがひとつ抜けている……それが意味することは……分からん!(正直者)

ちな第一部で書いたキャットルフネタは個人的に二次創作ネタとしておいしいと思っていますのでそのまま放置します。

 
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