豊永によって語られる全貌とは…そして清麿達はどう動くのか!?
話してくれたことを全て会見で説明した。そしてそればかりではない。宮本さんの口から衝撃の事実が明らかになった。
「オーナーのところへクビを承知で参加したメンバー数人と真相をお話、ならびに謝罪に伺いましたが我々とオーナー、そして秘書さんの4人だけがその場に残されました。そして開口一番にこうおっしゃったんです」
『念のために聞くが、この会話録音してないよな?』
その言葉は当事者のお二人はもちろん、聴いていた僕たちも耳を疑う話だった。
『芸能界という職業に泥塗ることしやがって!ファンやスポンサーの皆さんにどのツラ下げるつもりやねん!?』
とほおを殴られ、踏みつけられたが、ただ土下座をしながら謝罪するしかなかったそうだ。さらに
『うちの事務所にも提携してくださっとるとこやさかいに、会見で余計なこと話したらお前らこの業界から追い出してもかまへん』
とまで脅されたらしい。そして恵ちゃんを含めたオファーがあった不参加のメンバーは一切関わっていないこと。
弁護士の同席を却下し自分の言葉で伝えたい旨を申し出たら断られたこと、当面の自粛、レギュラーの降板を発表して会見は幕を閉じた。
なっつみーと会見を見終わった僕は、その内容にあぜんとするしかなかった。
「やばいじゃん、それじゃひょっとして…」
「うん。推測が正しければ、あの社長もしくは大物のフィクサーはその犯罪組織と グルと見て間違いないね。多分スポンサーになってもらってる代わりに存在を公にしない…。そういうことだと思う」
「じゃあ、メグ先輩をハメたのも…」
彼らへの怒りと恵ちゃんを思うが故の悲しみにかられるなっつみー。横でその様子を見ていた時に、今日は清とエータが来ていないことに気がついた。
エータはまあなきにしもあらずだが、成績優秀で先生からの信用が厚い清がなんの連絡もなく来ないのは確かに心配だ。確かに2人とも体調が良さそうだったしそうそう体調を崩すとも思えない。
(あの2人、まさか!?)
僕の中である疑念が頭をよぎる。
ひょっとして、事務所に話をつけに行ったのではないかとにらんだ。恵ちゃんの性格上、清を巻き込んではいけないと考えて別れを切り出したくらいだ。きっと真相を突き止めるために動いたのだろう。
「なっつみー、僕らも行くぞ!出来ることで2人に加勢するんだ!!」
「あんた、喧嘩でもする気?‘’試合と練習以外で手を出したら暴力だ‘’つってたっしょ!?」
「バカも休み休みにしてくれ。証拠を突き止めるんだ。あいつクールでインテリだけど好きな女の子のためなら全部賭けるやつなんだよ!」
驚くなっつみーを無理に引っ張って、彼らを追いかけた。
東京都内を走り、銀座の小さな廃ビルが見える。そのあたりに数人の人影が見えた。僕たちと同じくらいの若い集団。それにしては妙に見覚えがあった。
目をこらしてみると、そこにいたのは清とエータ。そしてあとは退部届けを出したサッカーやボクシング部の元メンバーに学校の番長もいる。
気を引くためにトランプのジョーカーを投げつけた。
「篠塚、豊永!」
どうやら僕らがつけていたことはバレていたらしい。途端になっつみーが僕を押しのけて、清の胸ぐらを掴む。
「高嶺…窪塚、あんたら自分のやろうとしてることわかってんの!?今までの不良や助っ人の運動部じゃなくて相手は ヤクザや政治家にも影響があるのよ!下手したら殺されるかもしれないし、メグ先輩だってそんなこと望んでないよ!?」
必死の叫びに、全員黙ることしかできなかった。確かに表沙汰になれば退学だけでなく今後の求職活動にも影響が出かねない。そればかりか最悪全員おだぶつの可能性は高いので、諌めるのも当然の話だった。いくら清達が強者だったとしてもである。
しかし2人のいいや、僕も協力した他の部活のメンバーも揺らぐことはなかった。
「悪いな、お前らに心配かけて。俺だってわかってはいるんだ。だけど、恵さんには心からの笑顔で歌って欲しい。毎日を頑張るみんなの希望に!今の不安と悲しみに押しつぶされる彼女や罪がない他の人たちまで悲しませて、そのままにしてはおけないんだ」
「番長としては学校のOGをほっとけんしな!ファンでもあるし」
「俺はもともと先公の評判悪いしな。退学覚悟でやるだけだぜ。 ダチだしよ」
満場一致で乗り込むことになり、大勢の輩どもがいるところへ潜り込んだ。
乗り込んだ先はやはり詐欺グループのアジトであり、ガラの悪い100人近くのチンピラが構えていた。リーダーにはいかにもヤクザの親分としか言いようのないロングヘアのおっさんがいる。今まで何人も 殺ってそうな悪そうな面構えだった。
そいつは清を見るなり、なぜか妙なことを言っていた。
「テメェには数年前、遺跡で世話になった借りを返さにゃなんねえからな。まさかあの女が芸能人だったのとは初耳だが、こんなもんじゃすまねえぜ」
ニタニタと薄ら笑いを浮かべ、瞬く間に清にダメージを与えていく。チンピラを休みなく蹴散らしたが疲労が大きく、避けるだけで手一杯だったのか深手を負ってしまった。
「清麿!」
エータも相打ちに持ち込んだと思われたが、ダメだったのか一撃で土下座のように這わされる。
「清、エータ!?」
隙を見て2人を救出するも、ミドルキックを食らわされる。あばらが折れるように痛かった。
「部外者が俺の復讐を邪魔すんな!」
清にやられる時のように打ちどころを外すのを忘れていた。急所こそ外したが歩くので手一杯になる。清を下がらせようとした時、手を解かれた。
「邪魔すんな、豊永。あの男には中学の時に因縁がある。俺が絶対カタをつけるから泳太たちを連れて証拠になるものを探してくれ。カウントはまだ8まで残ってる、そうだろ?」
息も絶え絶えではあったが確かに自信が感じられた。いつもなら信じたいところだが見捨てては行けない。
「だけど」
「俺を信じろ!絶対帰って…来る」
震える足で立ち上がる清を見て、僕は彼の意思を尊重することにした。
数十分が経ち、新宿にまで戻った時のこと。タクシーに乗った1人の女性に出くわした。
「豊永君、窪塚君、しのっち!?」
声をかけたのは恵ちゃんの同級生にしてマネージャーでもある学校の先輩である冴木の姐さん。傷だらけの僕らを見るなり事情を聴いてくれた。当然怒られると覚悟を決めていたが、以外にも優しかった。しかもありがたいことに缶コーヒーと湿布までおごってもらった。
「あのオーナーの講習会行ったことあるけど、結構やばかったわ。悪い意味で。多分会見やるだろうけど、炎上は間違いないでしょうね」
そしてぷりぷり怒り出した。中学から恵ちゃんと付き合いがある姐さんにとっては耐えきれなかったんだろう。
「全く恵のやつなんでも1人で背負おうとしちゃって…。高嶺君がそれくらいで嫌いになんかなるわけないのに」
その時、僕の携帯に着信がかかった。宛先は清からだった。どうやらかろうじて勝ったらしい。姐さんの乗ったタクシーに相乗りさせてもらい、先ほどの廃ビルまで迎えに行った。
見ると清が出入り口で力を使い果たしたように倒れている。僕らはすぐにモチノキ町内の病院に連れて行ったが、結果1週間の入院ということになった。別れる際、番長は丸い何かを冴木の姐さんに渡し、社長に見せて欲しいと頼んでいた。
それがのちに決定的な証拠となる。
日後
==マリンスターズプロ==
恵ちゃんが所属する芸能プロダクション・マリンスターズプロでは、突撃隊が所属する事務所のオーナーとマリンスターズの社長が会談をしていた。
「ほやから彼氏がおるっちゅう女優はんならうちのスポンサーをしておる番組コメンテーターとしてきていただくことはできまへんやろか?」
しかし社長はこれを断った。やはり事務所というより経営陣が信用できないことが理由のようだ。
「恋愛禁止のアイドルが恋人おるっちゅうだけでもご法度やのに使わせていただきたいと言うとるんですよ?」
怒りを抑えながらも低姿勢を保つオーナー。しかし社長は全てを見抜いたように言った。
「確かに御社の規模は弊社と比較にならないほど大きくお世話になったご恩はあります。ですが、これをお聴きになってもまだご自分が無実と言い切れるでしょうか?」
取り出したのは番長が姐さんに手渡した丸い小物。ボタンを押すと、オーナーの声が聞こえた。
『ローベルトはんのお力がいただければ100人力ですわ。お世話になっておりますさかいに今回の収益は6:4で6をお渡しいたします』
『断った奴がいたら例のリストに書き込んどけ。結婚できねえくらいに制裁してやっからよ』
『さすが世界屈指の悪党ですがな』
再生が終わるとオーナーの表情が曇った。実はこの小物は録音機であり、番長が裏の情報通からこっそり仕入れたものだったのである。
「これを聴いてもまだしらばっくれますか?」
「あれは、公式イベントのスポンサーになっていただいておりましたよってに、打ち合わせをの配分を…」
「ではなぜ今までメディアに掲示されなかったんです?反社会組織と知れたらまずいからですよね?」
「誰もそんなことは」
なおも弁明しようとするオーナーを無視して僕ら番長は応接間に通された。ローベルトというおっさんもいる。
「ちくしょう、こんなクソガキどもに」
「社長さん、もう一個ありますぜ」
番長が紙を手渡したそこにはなんと
『対象者リスト』
と銘打った名簿が書かれていた。よく見るといずれもイベントの出演を断った女性陣である。しかも全員が第一線で活躍する売り出し中の若手だった。グループの構成員相手に売春もさせる気だったのだろう。
そこには恵ちゃんの名前もあった。
途端、清の顔色がみるみるうちに変わり、かつてないほど赤黒いオーラに包まれた。まさに鬼のような形相とはこのことだろう。
「すみません、失礼します」
社長に深々と頭を下げ、ローベルトをオーナーの隣に突き出した。誰も近づけない威圧感に包まれる。
「テメェらみてな野郎どもがいる限り、でっち上げも嘘の記事も無くならねえんだよ!会社のトップどころか、人間ですらねぇ!!!!」
かつてないほどの清の怒号と形相に僕らは一つのことは理解できていた。
(完全にキレてる。やばい!)
2人の顔面、腹部に何発もパンチが打ち込まれていく。しかも力任せでなく完全に急所を撃ち抜いていた。
‘’ドスン‘’、‘’ゴシュ‘’ 、‘‘ベキ’‘と鈍く重い殴打の音が響き渡る。5分もたたないうちにもう20発は打たれただろう。
「この…ガキ…」
「自分の彼女はんも…」
なんとか負け惜しみを言おうとする2人の言葉を見逃す清ではなかった。
「喋んじゃねぇ、このクズ共が!!」
さすがにやばいと判断し、僕らも止めに入る。
「よせ清麿、十分だ!」
「殴るだけ無駄だ。同じ穴のむじなになりたいのか!?」
なんとか2人を清から遠ざける。言葉も途切れ途切れで力も抜け、どれほどの威力だったかを物語っていた。
「離せ、豊永、泳太!」
ダメ…!!」
小さく悲しげな声が聞こえ、清の背を抑えつける。怒りに満ちていた表情がだんだんと落ち着きを取り戻していくように感じた。
「カッとなっちゃ…ダメ…。私なんかのために…そこまで…しないで…?自分を…傷つけないで…。いつもの清麿君は…どこへ行ったの?」
「「!?」」
清に語りかけていたのは恵ちゃんだった。冴木の姐さんも一緒にいる。おそらく話を聞いて駆けつけてきたのだろう。
恵ちゃんに目には大粒の涙が溢れ、表情も非常に不安げである。しかしその泣き顔は清の怒りを鎮めるのに十分な効果があった。恐れ、不安、恋人への思い。全てがその涙に込められていた。
「どうして?…」
「ごめんなさい。私のせいで辛い目に合わせたくなかったの。だって…、だって…。大好きな 男性ひとだから、余計に…」
いつもなら気丈でしっかりした恵ちゃんもこの時は人目もはばからず泣きじゃくっていた。なんとも言えない雰囲気が漂う中、僕らもいつもの調子に戻る。
「あ〜あ、泣〜かした」
「女の子泣かすなんて猿以下だぞ?口説き方でも教えてやろうか?」
「テメェ、みんなのメグちゃんを射止めといてよくも…」
「マジでないわ、高嶺」
「彼氏失格」
集中砲火をあびまくり、清の顔が硬直する。いつもなら
『あのなぁ、お前ら!」
などと腹を立てるところだが、恵ちゃんに抑えられたせいか拍子抜けしたらしい。
「す…すまん」
そして恵ちゃんに向き合い、さりげなくハンカチを差し出した。
「ありがとう。俺はもう大丈夫だ。だからもう泣かなくていい…大丈夫だ」
恵ちゃんが泣き止んだのを見届けて黙っていた社長が笑い出した。
「あなたが恵ちゃんのボーイフレンドさんね。恋人がいることは聞いてたけど賢そうでさっぱりしてて、惚れてもいいはずだわ。恵ちゃん、あなたは彼の優しさが本当に大好きなのね?」
「勝手なことをして、申し訳ありません。私のことでみんなまで巻き込んで…」
必死に頭をさげる恵ちゃんをじっと見つめる社長。
「何を言ってるの?あなたは正しいことをしたのよ。悪いことは何もしてないんだから、自信を持ちなさい!」
そして清にも目をやる。
「高嶺君、うちの次期エースをよろしくね。あなたの存在が恵ちゃんをより輝かせるのよ?」
「はい!」
社長の穏やかな表情に清も力強い返事をした。恵ちゃんは何度も頭を下げてお礼を述べている。
その後ローベルトとオーナーを含めた詐欺グループの関係者は逮捕され、突撃隊を含めた闇営業のメンバーも謹慎や自粛を乗り越えて新しいスタートを切りはじめた。
恵ちゃんと清の仲も表沙汰になり一部のアンチもいたが、大多数のファンからは祝福のコメントでいっぱいだった。仲間としては嬉しい限りである。
僕らを含めた参加メンバーはというと、ことがことなので数日間の出席停止を食らい周りから怒られもしたが、モヤモヤしたクラスの雰囲気も良い意味で変わった。協力した他の部員たちも試合の出場停止を条件に退部を取り消しになったそうだ。
そしてそれから3年経った現在に至り、2人は一緒に暮らしている。清は相変わらず頭が良くて、恵ちゃんはマリンスターのエースと言わしめる歌手になった。
もう20歳になってお酒も飲めるようになったし、相変わらず2人の仲は良い。この調子だと結婚はもうすぐだろう。
いい夫婦って、お互いに愛情や信頼があれば細かいことはいらないんじゃないだろうか?
なんてことを思いつつ、僕は今日も2人のご飯をご馳走になろうと思った。
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