【劇場版FREEDOM】の今作版2話目です。
状況が大きく変わってますので、世界観説明回から入らざるを得ないのはお許しください。
――尚、同じような理由でボツにした本編の『原作準拠版の27話からの展開』も一応執筆再開してみた次第。考えすぎる時になる昨今です。
C.E.74。
機動要塞《メサイア》の崩壊と、指導者ギルバート・デュランダルの死によって、プラント評議国はついに地球連合軍に降伏した。
二度にわたって行われた地球プラント間の大戦は、地球軍の勝利という形で決着したのである。
これにより悲願であった、『滅びるべき邪悪な種族』の根絶やしが実現されることを確信した地球軍の将校達は歓喜して勝利の美酒を交わし合う。
激戦の中で指導者ロード・ジブリールを、敵の卑劣な暗殺によって斃される悲運に見舞われたが、その遺言によって後を継いだセレニアによって彼の無念は果たされたことになる。
ならば自分たちも、栄光の分け前ぐらいには与っても良いはずだった。
それら彼らの願望は、新指導者セレニアによって『聖戦』に参加した連合軍の兵たちを、将校・兵士問わず全員に一階級昇格を与えられたことで喜びと共に報われることになる。
また大佐クラス以上の将校たちには『勝利における最大の貢献』を称えられながら、近日中の勲章授与と更なる一階級昇格とを約束されたことから、喜びは頂点に達する。
彼らは次の時代の覇者が、自分たちであることを疑わなかった。
亡き盟主には気の毒だったが、自分の後継者や側近たちが化け物共を討ち果たし、過った歴史は正されることができたのだ。
これから始まる正しい世界の新たな指導者層として後継者を支えていく自分たちを見下ろしながら、天の御国で喜んでくれているに違いない――。
そう都合良く信じて、気分良く勝利と栄光の美酒に酔いしれる彼らの夢のような時間は、勲章授与式の式典会場に“非武装で”参列し、勲章と共に新たな階級章を司令官自らの手で渡される瞬間まで続いており―――そこで永遠に時の流れが止まることになる。
階級章と勲章の山を手渡されて、会場から退出しようとした彼らは憲兵隊によって拘束された後、即日の内に全員が公開処刑されて、階級の別なく晒し首として並べられることになる。
『民間人虐殺の罪』などの罪状が、処刑の理由だった。
軍紀違反など容疑で逮捕されたわけではなかったため、一般刑法により処刑された彼らは単なる犯罪者としての身分と不名誉を死後に与えられることになる。
その中にはプラント市民たちを恐怖の底に突き落とした、《軌道間全方位戦略砲レクイエム》の使用に貢献した月面基地ダイダロスの基地司令なども含まれていたという。
当然のこととして、この暴挙に連合軍内部のブルーコスモス派幹部達は怒り狂った。
思い上がってトチ狂った銀髪の小娘に天誅を与えてやるため軍を率いて彼女のこもっている司令部を制圧しようと―――いや、核攻撃で完全破壊してしまおうと艦隊までもを発進させようとした。・・・・・・そのほぼ全ての者が決起寸前にアジトを治安部隊に襲撃され、問答無用で容疑者たち全員が射殺される事態が続発する結果に終わる。
なんとか出航と出撃が可能だった僅かな者達が、せめてもの特攻によって道連れを謀ったものの、彼らが把握していた目標の所在は相手自身が流させていたガセ情報で、もぬけの殻となっていた仮初めの拠点を吹き飛ばすため無駄死にする者が出ただけで終わっていく結果となった。
ジブリールから後を引き継いでプラントに勝利するまでの間に、セレニアは組織の中枢メンバーを完全に自分の手駒だけに入れ替えていたことに彼らは気付いていなかったのだ。
狂信的なシンパや、過激すぎる主戦論者などの幹部たちは戦いが続いていく中で『戦死』や『暗殺』あるいは『戦闘中の行方不明』などで他の者達が気づかぬ内に意図的な調整で減らされていた。
残った者達にも、部下たちの何人が司令官の意を受けて送り込まれてきたものなのか、本人たち自身にすら教えられていない情報を彼らが分かるはずもない。
母艦や部隊と共に戦場へ出ることができた者は、生きたまま乗艦や愛機ごと焼き殺させ、未然に防がれて生き残って捕まった者たちは公開処刑で殺された。
「残酷で前時代的な、時代遅れの見せしめ。権力者の傲慢】
と揶揄する者は当然いたが、密かに執行すれば「エコヒイキして逃がした」と揶揄する表現が変わっただけだっただろう。
結局は得られる評価が同じなら、実質利益があった方が少しはマシ。
そう考える指導者という存在は、今まで以上に味方から嫌う者と恐れる者、畏怖する者を多く生み出し続けていく。
このような連合軍内部の混乱と内輪もめを目の当たりにして、『祖国再興の好機』と見てとったザフト残党軍は当然ながら多く存在する。
総力を結集しての一大決戦に敗れ、議長自身が要塞と共に運命を共にしたメサイアでの戦いの後、生き残っていたザフト兵達の多くは各地へと落ち延び、勝利したブルーコスモスによって行われるであろう虐殺から同胞たちを救うための戦力を温存しようと試みていたからだ。
彼らにとって勝者たる連合の権力争いは、介入して乗じる絶好の機会だった。
追撃の目を避けるため、《デブリベルト》などに潜伏していた彼らの部隊は一斉に決起してプラント本国を奪還するため地球軍駐留部隊へと襲いかかった。
それらザフト残党による総反攻に対して、占領地プラントの確保を任されていた駐留軍は、占領していた旧敵国首都を反乱軍に奪還されまいと決死の防衛を―――することは全くなかった。
降伏時に接収していた旧ザフト防衛拠点だった《ヤキン・ドゥーエ》だけに戦力を集中させて立てこもり、後はひたすら援軍が来るまで籠城するという戦法に徹したのだ。
防衛設備が乏しく、民間人から占領軍への反感は非常に強い、旧敵国の政治エリア・コロニーを守ることは現実的ではないと、予め最高司令官から作戦案を教示されていたからだ。
ろくな抵抗もなく、戦力のほぼ全てを健在なまま首都への帰還を果たしたザフト残党軍の兵士たちは歓呼の嵐で迎えられ、『プラント評議国の再興』を宣言。すぐさま現地に残った地球軍の掃討に従事し始める。
だが、ここまでは上手くいった彼らの『祖国奪還の戦い』は、ここに来て上手く進まなくなってくる。
まずプラントは敗戦後に、勝利国から物資徴発をされたわけではなかったものの、賠償金支払いは払える額だったことから既に支払いを済ませてしまった後の状態になっていた。
二度に渡った大戦と、2度共に評議会議長によって極秘裏に進められていた『超兵器の開発』のため多額の軍事費が投じられ、機動要塞級の拠点まで新たに建造されてしまっていたことからプラントの経済は開戦前ほどには健全な状態ではなくなりつつあったのだ。
だが、祖国を取り戻すことに成功したからには、再度の征服からの国防体制構築を急がなければならない。
市民たちから半ば強制的に『国防費』としての戦費調達がおこなわれ、付近に連合軍がこもる《ヤキン・ドゥーエ》があることから、軍事施設ではなかった政治コロニー・アプリリウスを要塞化するための人手と物資負担がプラント住民たちに重くのしかかる。
こうなってくると、最初はザフト残党軍を『解放軍』として歓迎していたプラント市民たちの中にも、彼らに対して反感が芽生えてこざるを得ない。
少しずつ少しずつ、民間からの支持を失っていくザフト残党軍。
それら市民たちの悪感情は、純粋な祖国愛と救国の志をもって大戦に敗れた後も抵抗運動に身を投じていた彼らに、不快な感情を植え付けずにはいられない。彼らの中でも市民たちに対して横暴に振る舞うものたちが出始めていく。
小さな対立が小さな衝突を生み、それが鎮圧された後もなにかの拍子に再開する動機として残る。
終わりのない、その繰り返しによって徐々に悪化していくプラント市民たちとザフト残党軍、同じコーディネイター同士での関係性。
「そろそろ、いい頃合いでしょう。占領地を反乱軍の手から奪い返すため出撃します。
ヤキンの部隊と呼応して挟み撃ちにして下さい。間違っても民間人が暮らすコロニーには攻撃しないように。
コッチから撃たなければ、アッチから勝手に門を開いてくれるでしょうからね。
下手に撃って個人的感情のため利敵行為する人がいたら、一族みんな銃殺です。心しておくように」
直属の討伐軍兵士たちに、そう訓示を告げて反乱討伐に出陣してきた勝利国の最高司令官ひきいる大艦隊を前にして、無謀な突貫以外の戦いを挑める戦意と志を維持していたザフト残党兵は多くいなかった―――後の歴史書には、そう記される事件は終結することになる。
今となっては存在を隠す意味も必要もなくなったことから、新たな世界における経済的支配者層のトップに君臨する立場となっていたロゴス・メンバーの1人から、セレニアは問われたことがある。
「君がブルーコスモス信奉者ではないのは承知していたが、正直に言ってコーディネイターのことは嫌っていると思っていたのだがね。
彼らのことを、皆殺しにせんのかね? 地球の者には、それを望む者が多くいるが」
「彼らを殺して、誰が宇宙資源の採掘と精錬をやってくれるのです? 代わりの人がいるのでしたら、今すぐ虐殺を命じさせますが?」
「ふむ・・・・・・」
それがセレニアの、コーディネイターたちを殺し尽くさない理由であり答えだった。
彼女にとって、宇宙資源採掘の労働者種族としてこそコーディネイターは存在し、それさえ果たしてくれて反乱を起こさず、鎮圧にかかる費用が節約できるなら、多少の権利やら自由やら内政不干渉やらいう『タダで喜ばれる代物』は保証してしまって構わないと割り切っていた。
彼女は『反乱軍』の手からプラントを再解放した時にも、コーディネイターたちに罰則を科そうとはしなかった。
残党軍への資金提供をおこなった者達を『不満分子への協力者』として探しだすこともなかった。
それどころか、プラント内部に一歩も足を踏み入れることすらないまま、反乱軍だけを倒して地球へと帰ってしまっている。
戦力を失って残余が逃げ散るか自爆するなどした後、『事件の終結』を宣言して『駐留軍の指揮下に戻ること』だけをコロニーの外側から命じただけで、彼女自身も主要な部下たちにもプラント内部に入った者は一人もいないという徹底ぶりだった。
驚くべきことに、占領地でありながらアプリリウス内に連合軍の兵士たちは一人も駐留していないのだ。
不満分子を監視するための治安維持部隊さえ、旧首都コロニー内部にまで入ることは堅く禁じられている。
「コロニー中のあちこちに不満分子種族だけが充満しまくってる、巨大な密閉空間に入っていって都市ゲリラの鴨になりたがる趣味も、部下を無駄死にさせたがる変態趣味ももった覚えはありませんよ。
コロニーの中に留まる限り、そこで何をやって、何を造ってたところで一向に構やしません。反乱軍用のMSを造りたいなら造ればいい。そこがコロニーの中である限りは、私は全てを許容しますし、させましょう」
「―――ただし、コロニーの外へ出た瞬間から、プラントとは関係のない問答無用で壊して殺していい犯罪者として対処させて頂きますが。
たまには反乱なり内乱なりが起こってくれないと、ご老人方に懐を潤したい気持ちがわきますし、出世したい軍人たちが陰謀たてはじめて面倒ですし」
そう言ってセレニアは政策を有言実行で実地し、違反者に対する罰則もまた有言実行で裁判なしでの処刑を断行し続けている。
もともと、地下資源が枯渇してきたからこそ、旧来の主権国家群が維持できなくなり、各地で連邦としての連合国家体制へと移行せざるを得なくなっていたのが近代の地球なのだ。
これからも減る一方でしかない地球資源を当てにして、宇宙からの資源を獲得してくる者達を皆殺しにするなど、彼女には地球市民たちによる遠回しな集団自殺としか思いようがない愚行でしかなかったのである。
とは言え、既に一度は独立戦争に勝利して、二度に渡る大戦をも仕掛けてくるのにも成功した『敵性種族の国“だった場所”』を警戒する必要性や、危険を排除したい気持ちは理解できる。
「近くにいると、“人に与えてもらった優秀さが鼻について気にくわないから、殺したくなる”。
遠くにやると、“見えないところで知らない内に何やっているか分からなくて怖いから、殺したくなる”。
・・・・・・という事でしたら、彼らを管理するため宇宙へ上がっての監視役、私が引き受けても構いませんが?」
「ほう? 君が?」
「ええ。ジブリールさんを補佐してた時間が結構あったからでしょうかね? なんか身体が、あっちの環境に慣れちゃったみたいで苦じゃないんですよ。なら丁度いいかなと」
「ふむ」
そういう理屈で納得と承諾を得たことにより、コーディネイターたちが暮らすプラントの監視がしやすい宇宙へと上がり、地球の支配者層として初めて宇宙から宇宙を統治する最初のナチュラルとして歴史に名を記すことになる。
彼女は宣言どおり、プラント内部に限っては全てを見逃し、許可された範囲内でのコーディネイターがどのような活動をおこなっていようと、何の監視も干渉もしてくることは一切ない統治をおこない。
一方で、許可された範囲外や、侵入禁止が言い渡されていた区域内でコーディネイターを見つけたときには、理由の如何に問わず、相手の年齢・性別を問わず、地位身分階級なども一切合切配慮することなく問答無用で即座に射殺だけで対処させた。警告すら行わない非常さに非難する声もあったが、彼女は全く気にせず罰しようとも思わなかった。
一方で、地上に残ったブルーコスモス残党勢力に対してもセレニアの大鉈は振るわれ続けている。
多くの将校たちを無惨に殺戮し、国家を私物化していると糾弾してきたユーラシア連邦は、
「では、文句があるようでしたら連合から除名して下さい。
あなたの国内でも、お仲間を多く匿いたがってるみたいですし、分担した方が効率いいでしょう?」
平然と言い切って、その場でユーラシア連邦の離脱に署名すると、代表者に突っ返して衛兵に命じて議場から叩き出させてしまった。
怒り狂った代表が母国に戻った直後から、ユーラシアが有形無形の反ロゴス運動に蠢きだしたことは言うまでもない。
こうなることは最初からしれていた。
所詮は敵同士だった国が、同じ外敵と戦うため手を結んだだけの握手が永続するはずもない。
半端に形だけ長続きさせて、内憂外患を背負い込む趣味はセレニアにはない。
どーせなら、自分に強い恨みと反感を抱いたであろうブルーコスモス勢力が集まる新たな拠点となってもらい、一纏めに反乱勢力を一掃するのに役立ってくれた方が少しはマシというものだ。
連合から追い出された後、ユーラシア自身からも周辺諸国が彼らから独立するため反乱や内乱が続発するようになっている昨今。
適当に武器やら資金やら、必要なようなら軍需物資やらを各地の反乱勢力に売り買いする顧客ができたと、老人たちからは好評なようだし、ろくでなしの後継者しかいない老い先短い支配者層を今の時点で抹殺する必要など全くない。
それはまさに、恐怖と暴力と効率による、圧倒的な支配。
地球圏は非常なる独裁的軍事指揮官の手によって、赤く染まりながら、効率よく統治システムの再構築が進められていく。
「唯一気になるとすれば、この国ですか・・・・・・《ファウンデーション・ショック》で独立と建国に成功できた只一つの王政国家。
今のブルーコスモスを支えている最大のスポンサーも、多分ここか・・・」
窓外に映る景色を眺めながら、セレニアは久しぶりに降りてきた地上の1G重力を足下に感じさせられながら・・・・・・一枚の紙片をもう一度、今度は声に出して読み上げる。
『今や地球圏全てを席巻した大西洋連邦に、事実上君臨しておられる偉大なる御方へ。
迂遠な言い様は好まれない方と見込んで、単刀直入に申し上げます。
我が国は、あなた様にとって【役立つ情報】を提供する用意がございます。
どうか、その人物の正確な所在と首を以て、我が国を独立国として国際社会に認めて頂けるよう口利きをお願いしたく存じます。
ファンデーション公国の女帝アウラ・マハ・ハイバルより
この地球の真なる支配者様へ』
つづく