カントー出身の俺氏、南国で教師をする。   作:静かなるモアイ

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ニャビー…旅立ちの時


38時限目

どんな物でも無限の存在ではない。この世の万物には必ず終わりと言う物が存在するのだ。

 

それは人の命でも、物の存在でも、ましてやポケモンの命でも例外(但し、創造神アルセウスは除く)ではないのである。

 

 

 

 

 

雨が降りだした。リンドウとブルーは折り畳み傘を差しながら、小走りでポケモンセンターに向かう。メレメレ島のポケモンセンターは一ヶ所しかなく、ハウオリシティの中に有る。

勿論、このポケモンセンターもジョーイさん一族が切り盛りしており、メレメレ島でポケモンセンターと言えばメレメレ島ハウオリシティ支店のポケモンセンターを指すのだ。

 

「いったいどうしちゃったのよ!」

「分からん。野生のポケモンの小競り合いや縄張り争いだと良いが…メレメレ島は基本的に縄張り争いは少ない。木の実も人々がポケモンに振る舞う位だし、基本的に餌には困らない。

だとすると……急病か観光客に虐められたかだな。そんな事は有って欲しくないが…」

 

サトシから伝えられたムーランドの事を案じながら、リンドウとブルーは急ぐ。やがて、ハウオリシティ支店のポケモンセンターに辿り着いた2人は自動ドアを潜ってポケモンセンターの中に入った。

 

「アローラ!リンドウ先生!ムーランドは奥だよ!」

 

中にはワシボンを抱き抱えた男の娘、アストルフォが居たのだ。

 

「えっ!?アストルフォ!?」

「ブルーは知らなかったな。アストルフォはジョーイさん一族で、家族と共にポケモンセンターに暮らしているんだ」

 

アストルフォはまさかのジョーイさん一族。アストルフォとその2つ年上の姉は歴代のジョーイさんと似ていない。しかし、一番上の長女はジョーイさんの顔をしているのだ。

 

「あっそうだったんだ」

「うん!今ね、一番上のお姉ちゃんがムーランドを見てるから、直ぐに元気に成ると思うよ!」

「分かった。奥だとすると、緊急用の処置室だな」

 

緊急用の処置室の場所はリンドウも知っている。過去、密猟者に傷つけられたポケモンを運んだり、スイレンのアシマリが彼女の手持ちに成る前にスイレンと共に運んだ事が有るからだ。

奥の処置室に向かうと…扉の前ではサトシとピカチュウ、人モードのラティアス、そしてサトシの手持ちではないニャビーが居たのだ。

 

ニャビーはムーランドが心配なのか…扉の前で声を出して、ムーランドを呼んでいる。

 

しかし、扉の先の処置室で処置を受けながら…点滴や栄養剤、薬品等を投与する為の管で繋がれたムーランドは返事が出来ない。

 

「先生!ブルーさん!」

「サトシ…」

 

リンドウ達に出来るのは何もない。強いて言うなら、ムーランドの処置が終わるまで待つことだろう。

 

「サトシ…そのニャビーは?」

「ムーランドの家族なんです。コイツ…ムーランドを親のように慕っていて、この前は火の粉をムーランドから教えてもらっていて、今は炎の牙をムーランドから教えてもらって練習してるんです。

ムーランドが居なくなったら…ニャビーは…」

 

このニャビーはリンドウの知らない所でサトシと交流を深めていたのだ。

本来…野生のポケモンが進んで人間に助けを求めるのは少ない。事実、人間の中にはポケモンを道具のように扱い、使い潰したり虐待する物も多いのだ。

 

「そうか…むっ?ブルー…どうした?」

「あのムーランド…随分とお爺ちゃんね」

 

ブルーはオーキド研究所で様々なポケモンと触れあってきた。だからなのか…ムーランドが高齢のポケモンである事を見抜いたのだろう。

 

「どれぐらい?」

「人間で例えるなら、100は超えてるわ」

 

人間で言えば100歳。何時亡くなっても可笑しくは無いだろう。

 

だからなのだろう…リンドウもサトシも、ピカチュウも言葉が出なかった。そして理解してしまった。もう、ムーランドが長く生きられない事を。

 

やがて、中からアストルフォの一番上の姉であるハウオリシティ支店のジョーイさんが出てきた。

 

「ジョーイさん!ムーランドは!?」

 

サトシはジョーイさんに問う。すると、ニャビーはムーランドが心配なのか…処置室の中に入ってムーランドの足をなめる。どうやら、ムーランドを心配させたくない為に、側に向かったのだろう。

 

「サトシ君。ムーランドは病気も怪我も無いの…リンドウ先生、これを」

 

ジョーイさんはそう言うと、リンドウにムーランドのカルテを手渡す。そこには様々な数値が書かれていて、サトシは理解が出来なかった。

 

「内臓に疾患は無し。なのに…脈拍、内臓機能が低下している…………そうか、そういう事か。

サトシ…残酷な事を言うぞ。でもな、言わないといけないんだ。ムーランドは近い内に亡くなる…怪我や病気じゃなくて、寿命でなんだ」

 

ムーランドはもう何時老衰しても可笑しくは無い。その事をリンドウから告げられ、サトシとラティアスは俯く。特に過去、アルトマーレで実の兄を亡くしたラティアスはニャビーに思う事が有るのか、悲しそうな視線をニャビーに向けるのだった。

 

「先生…ニャビーはこの事を」

「薄々…分かってるだろうな。野生のポケモンは敏感だ。それに、長い間…ムーランドと一緒に居たんだ」

 

恐らくはニャビーもムーランドの事を理解しているか、感ずいているだろう。

だが、これはニャビーとムーランド…野生のポケモンの問題。ポケモンセンターに運んだり、木の実を分け与える事は出来ても…それ以上の事をサトシ達は出来ないのだ。

 

しかし…別れの時はゆっくりと近付いている。

 

翌日、その日はポケモンスクールでの授業が有ったのだが、サトシはリンドウとククイ博士から許可を貰ってポケモンセンターにお見舞いにきた。勿論、彼が会いに来たのはムーランドとニャビーであり、ムーランドはポケモンセンターで入院する事に成ったのだ。

 

「ムーランド!会いに……てっいない!?」

 

だが、ムーランドはもぬけの殻と成っており、ポケモンセンターには居なかった。だとすると…考えられるのは

 

「きっと…彼処に違いない!!」

 

サトシはムーランドの居場所だと思われる所に急いだ。そこはサトシがムーランドを保護した小川が流れる橋の下であり、そこにムーランドは帰ったと思ったのだ。

 

そこに向かうと、ムーランドはニャビーと共に居た。ムーランドは今日もニャビーに炎の牙を教えている。しかし、ニャビーは未だ炎の牙が出来ず、不発に終わってしまう。

 

ふと、ムーランドはサトシに気が付いたのか…サトシを見る。

 

――頼む。今日だけは、この子と2人にしてくれ

 

サトシにそんな事を言いたいのか、ムーランドは小さく頷いた。

 

ムーランドの気持ちを察したサトシはその場から去っていく。だが、同時に枯れかけの木からまた1枚、葉っぱが落ちてしまった。その時が近いのかも知れない。

 

 

 

そして…その時が来た。

 

その日は雨が降っていた。大雨が降りしきる中、ニャビーはムーランドを呼ぶ。

 

「ニャー!ニャー!!」

 

だが、その叫びはムーランドには届かない。当然だ、ムーランドはもう其処には居ない。ニャビーが寝ている間に自分の意思で姿を消したのだ。誰にも…勿論、家族であるニャビーに悟られる前に姿を消したのだ。

 

「ニャビー…」

 

そんなニャビーの事を心配したサトシ。彼はリンドウとラティアス、セレナと共にニャビーとムーランドの所にやって来た。しかし、肝心のムーランドは居ない。だが、先日のムーランドの様子から察するに、サトシはムーランドがどうなったのか理解したのだろう。

 

「せっ先生!あのムーランドは……」

 

認めたくない、認めたくないからセレナはリンドウに問う。

 

「すまない…それは聞かないでくれ」

 

リンドウは分かってた。あのムーランドが遅くて数日、早ければ直に寿命が尽きてしまう事を。だが、悲しみにくれるニャビーを助けることは出来ない、それが出来るのは…

 

(さてと…サトシ。ニャビーはお前を頼ったんだ。お前しか、ニャビーは救えない)

 

この未来のポケモンマスター位だろう。

 

翌日。雨は止んだ。だが、側の木には葉っぱが1枚も無い。まるで、ムーランドの命と共に木も枯れてしまったのだろう。

 

――お師さん…何処に居るんだ

 

ニャビーはムーランドがどうなったのか理解している。でも、認めたくない。もし、認めれば…ムーランドの死を認めたことに成るからだ。

 

「探したぞ。やっぱり、ここに居たか」

 

その声が聞こえ、ニャビーは声の方を見る。そこにはサトシとラティアス、ピカチュウが居たのだ。

 

「辛いよな…でもな、ニャビー。乗り越えなくちゃなダメなんだ。

今日はさ…ラティアスが話をしたいんだよ」

 

サトシがそう言うと、サトシとラティアスはニャビーを挟むように座る。

 

――辛いよね、お爺ちゃんが居なくなって。私も知ってるんだ…大切な人がもう居ない辛さを

 

ラティアスの言葉を受けて、ニャビーは人と同じ姿をしているラティアスを見上げる。

 

――私さ…お兄ちゃんが居たんだ。物凄く強くて、サトシよりもカッコいいお兄ちゃん。でもね…もうお兄ちゃんは居ないんだ。お兄ちゃんは私の故郷を救うために、瀕死の身体を引き摺ってラスターパージを放って故郷を救ったの。

 

――だからさ…炎の牙、完成させようよ!私達と一緒に強くなってさ、ムーランドのお爺ちゃんがビックリさせよう!

 

ニャビーはラティアスの言葉を受けて頷く。だが、少し移動すると…ラティアス目掛けて身構えた。

 

――誘いは感謝する。だが、俺は筋は通す…俺と戦い、俺を実力で認めてほしい!!俺の仲間に相応しいかどうかを!!

 

ニャビーの言葉を受けてラティアスは笑みを浮かべると、変身を解いて本来の姿に変身した。

 

「ニャビー…バトルで認めろ…そう言う事だな!」

「ニャー!!」

 

その日、ニャビーはこの場から旅立ち…サトシのポケモンに成ったのだった。

 

 

「良かったな…ニャビー」

 

その一連の流れを橋の上から見守っていたリンドウであった。




えっ?サトシのポケモンが6体を越えたって?自在に預け引き出しできる、ククイさん家ボックスだから問題なし(笑)

出張先(メレメレ島以外での課外授業)では、人モードラティアスかククイ博士にボックス組のボールを持ってもらいます(笑)

次回!ギエピー…シロデスナに捕まる。

ギエピー「助けてっピ!!」
全員「自業自得だ」

ほしぐもちゃんの進路アンケート

  • ルナアーラに成って飛ぼう!
  • ソルガレオに成って駆け抜けよう!
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