突き抜けなくて何が悪い   作:鈴漉

7 / 9
とある選手の独白日

 6月になりIH予選の時期となりました。

 地区予選は危なげなく勝ち進めましたまる

 やっぱ先輩たちウメーです。

 

 

 しかし、この都大会から相手さんのレベルもグッと上がって、エクストラモードになるとはゲームボーイ談。

 確かに皆、強そうです。猛者感が滲み出ております。

 うぉ、あの人身長2m近いだろ!

 

 「けんま氏ー、あの人どうやって攻略する?」

 「物理高そうだから、魔法で」

 

 誰がゲーム要素求めた。

 これだから、ながらゲーマーは頂けない。

 

 「聴く相手間違えた。ショウヘイヘイ、カモン!」

 「あの高さ、まさに、規格(ガイ)

 

 キミのギャグ嫌いじゃないけれど、今求めてるのはそれじゃない。

 助けて虎さん!

 

 「根性で何とかする!」

 

 一見真面っぽいけど、それは前二人が滅茶苦茶だからであって。

 さして、真面な答えじゃねえんだな、これが。

 

 

 「田母神の比江島だな。高さじゃどうしようもねえから、崩すならやっぱりサーブか?」

 「それが妥当だわな。サーブで乱して、気持ち良く打たせない」

 「セッター狙いもありじゃないかな?」

 

 2年生方の会話。

 これ、これなんですよ!

 こーゆー会話がしたかった!

 

 「何故アイツは打ちひしがれてる?」

 「何時もの発作だろ」

 「まぁ、大丈夫じゃないか?」

 

 項垂れる後輩を眺める先輩組。

 

 「根性出せや、千賀ァァァ!」

 「ドンマイ三昧」

 「・・・(ソッとその場を離れる)」

 

 そして、相変わらずまとまりに欠ける一年生組であった。

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 「ウルサイな」

 

 そんな喧騒を少し離れた場所から耳障りに思う人物がいた。

 大柄でパーマの掛かった黒髪。

 マスクで顔の大部分は覆われているものの、鋭い眼付がとても印象的な人物。

 井闥山学院高校一年、佐久草聖臣。

 名門井闥山に鳴り物入りで入って来た逸材で、

 入部から二か月程だが既にベンチメンバー入りし、出番も少なくないスーパールーキーである。

 因みに、多少、否、かなり自己管理意識が高く、人の集まる場所ではマスクが必需品となっている。

 

 「音駒か~、俺としちゃあ一度はやってみたいなぁ」

 

 そんな彼に話し掛けたのはチームメイトの古森元也。

 こちらも一年生ながら、既にベンチ入りしている逸材である。

 

 「何処とやろうが変わらないだろ。俺たちが勝つ。それだけだ」

 

 そう言ってその場を離れる佐久草。

 

 「相変わらず、そんなつっけんどんな言い方。程々にしろよ~」

 

 溜息をついてから後を追う古森。

 彼らが高校バレー界に名を轟かせる時はもうすぐそこまで来ていた。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 アップ中。

 緊張であっぷあっぷ。

 ・・・・悪かったって、だからゴミを見るような目は止めて欲しけれ。

 ゲームボーイよ。福永マンは拍手してくれてるぞ?

 

 

 それにしても、今日はすごく体が軽い。

 足がスッと出るし、ボールも良く見える。

 コートを蹴って跳ねる瞬間のカンジ(・・・)も凄くべりぐー。

 

 「調子良さそうだね」

 「うむ、我、快調なりけり」

 

 この感覚は偶にある。

 で、この状態の時、大抵試合相手は

 

 「お強い方々んですよねー」

 

 我々、音駒高校の都大会初戦の御相手。

 前年度、春高予選東京都ベスト4、鷺ノ宮学園。

 超強敵さん。

 でも、何故だろう不思議と嫌な感じはしない。

 何ならオラワクワクすっぞ状態。

 

 何とスタメン平均身長185cmなんだとか。

 恐ロシア・・・

 

 「(グッ)」

 

 

 リアクションありがとう、しょうへいへい。

 とまぁ、おふざけは程々にして。

 ちょっとこんな話がある。聞いて欲しい。

 

 

 

 とある海外スター選手が出身国の同じ代表選手に対してこんなことを言った。

 

 「君はフィジカルもセンスないのによくバレーを続けられるね」←恐らくこんなカンジ(意訳)

 

 確かに貶された選手は高さに恵まれているとは口が裂けても言えないような選手だった。

 逆にスター選手と言えば、高身長に抜群のバレーセンスを誇り、その国のエースと呼ばれる存在だった。

 

 

 そんなスターに「余計なお世話や!」と、関西人なら突っ込んだだろう。

 実際、この発言は物議を醸した。

 

 「その通りだ」とスターを擁護する声もあれば、「言われた選手が可哀想だ」という反論もあり、あたかも二人の代理討論のようなナニカ(・・・)がネット上を飛び交った。

 スター選手は自身のSNSで持論を展開し、メディアや世間を賑わせた。

 しかし、言われた選手は何も言わなかった。

 メディアのインタビューにも一切取り合わず、テレビ番組のオファーなども一切受けなかった。

 唯々、練習に時間を費やしていたという。

 次第に、世間もメディアも自分の考えを話題として提供するスター選手に流れて行った。

 口の悪い著名人に周りが慣れて行くといった現象である。

 SNS上で貶された選手を擁護する声はごく一部になっていった。

 

 

 が、この後、その評価は正に逆転する。

 

 

 

 騒動からおよそ一年後、スター選手が所属する海外チームと、貶された選手の所属する国内チームで試合が行われた。

 ともに各々のリーグを制覇したチーム同士によるエキシビジョンだった。

 メディアはこぞって二人の対立かのように囃し立て、国民らもそれに熱を上げた。

 当のスター選手もそれに乗っかり堂々と勝利宣言を発表した。

 

 

 しかし、その試合、蓋を開けてみれば、スター選手チームの完敗に終わった。

 スター選手も果敢に攻撃し見せ場を作ったが、それ以上に貶された選手の活躍が目立った。

 隙が一切なく、恐ろしい程に終始正確なプレーは却って、圧倒的に見えたという。

 試合後のインタビューではレポーターがこんな質問をした。

 

 「散々、あなたを扱下ろしていたスター選手に何かありますか?」と

 

 熱に浮かされた者は、刺激的で毒のある返しを期待したのだろうか。

 横柄な態度を見せていたスター選手が無下に扱われるのを待っていたのだろうか。

 

 彼は答えた。

 

 「どうでもいい」

 

 一言だった。

 そして続けた。

 

 「それより今日の試合でミスしたプレーを今すぐ練習したい。私は誰かの上に立ちたいんじゃない。上手くなりたい。それだけなんだ」

 

 

 この日、とある国で新たな英雄が誕生した瞬間だった。

 

 

 

 

 話が長くなった。

 つまり、何が言いたいかというと、

 

 この相手と戦って俺はどれだけ上手くなれるだろう、ということだ。

 

 ぶっちゃけ勝敗は然したる問題じゃない。

 勝敗も大事だけれどそれは結果の一つに過ぎないから。

 

 自分より高い壁を打ち破れるか。それとも躱せるか。

 そればかりが楽しみで仕方ないのだ。

 で、それが出来て序でに試合に勝てたならば万々歳だね、って感じ。

 

 胸の高鳴りが酷い。

 ただ、悪くない。

 

 「ルーキー怖っ」

 「目付きがやべえぞ」

 「うん、あれはちょっとな」

 

 

 おっと、悪い癖ががが。

 ステイステイ。

 楽しみは試合まで、って某出れるか分からんやん!

 猫又せんせー頼んます!

 直井コーチも何卒!

 なむなむ。

 

 「あの子の情緒はジェットコースターか何かかな?」

 「クロ、気にしても無駄だと思うよ」

 

 へっくしゅん!

 はて、誰か噂してんのかね?

 

 「千賀、集中しろっ!」

 「すいません!」

 

 コーチに怒られちった。

 反省反省。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 「今日の相手はタッパがあって、パワーがある。で、ウチのやり方はいつもと同じ。粘って拾って。ボールに触れば何かが起こるもんだ」

 

 相変わらず猫又監督のこの安心感よ。

 これがあるから選手は落ち着いてプレーできるんだよなぁ。

 では、両校のスターティングメンバーをご紹介。

 まずは、ウチから、自陣レフト側前衛から時計回りに。

 

 ➀黒尾  二年 7番 MB 185cm

 ➁海   二年 8番 WS  174cm

 ➂三家谷C 三年 4番 WS 179cm

 ➃千賀  一年 13番 MB 183cm (夜久 二年 9番 Li 164cm)

 ➄白城  三年 2番 S  171cm

 ➅芥川  三年 1番 WS  177cm

 

 

 この前身長測ったら中3の身体測定時より2cmも伸びてましたV

 目標は188cm!夢は大台190cm!

 尚、夜久パイセンに正直に身長を伝えたら、説教されました。

 身長寄越せと言われたので、無理ですと言ったらケツにタイキックくらいますた・・・

 りふじん。。。

 

 そんでもってお相手さんの陣容はこんなカンジ。

 敵陣レフト側前衛から時計回り順にご紹介。

 

 ➀大黒 三年 5番 WS 193cm

 ➁柿澤 二年 2番 S 180cm

 ➂坂田 三年 4番 MB 188cm

 ➃國  二年 9番 WS 184cm

 ➄虻見 三年 7番 WS 180cm 

 ➅安食 三年 8番 MB 185cm (関中 三年 Li 177cm)

 

 とりあえずでかい。

 一に二にでかい。

 ここまで高さ重視のチームもそうない気がする。

 とりまよく集めたなぁ、と思う。

 

 何より、これだけタッパあるチームでも全国行けないのか、という東京クオリティに絶望が。

 この陣容、夜久パイセンも涙で枕を濡らすことでしょぶぇっ

 

 「テメェ、今くだらねぇこと考えてただろ。表情で丸分かりなんだよ!」

 

 み、みなさんも奇襲にはご注意ください。

 

 

 さて、向こうさんのサーブから試合開始。

 某、後衛の為、夜久パイセンが出ております。

 おぉ、向こうさんのジャンサーを一発目からAパス。

 やりおるわ。。。

 それをハクジョー先輩が軽く上げる。

 ミケやんキャプテンがそれをブロックアウトで決める。

 一点目は音駒がゲッツ!

 

 いよっ!名人芸!!

 憎いねぇ

 

 などと、観戦気分だったら出番が回って来ますた。

 前衛レフトへ登・場・で・す!

 

 黒尾パイセンの嫌らしサーブは後ろに下がった相手の最高身長スパイカーを狙う。

 あ、膝着いた。その代わりにサーブの威力自体は強くないので、セッター易しいボールが上がる。

 でも、これで一つ選択肢が消えた。で、今の前衛で一人この試合始まってから碌にボールに触ってない奴がいたりする。

 そんでもって、良いセッターってのはそーゆーのを気にするナマモノらしい。

 だから、少しその選手からワザと視線を外し、重心を逆サイドに傾ける。

 ここまでやるのが大事だって、少年団時代の監督さんが言ってた。

 詳しくは知らない。

 

 でも、目敏い優れたセッターほどそーゆーのには殊の外敏感だとか。

 そして、来た。

 

 

 「(8番)だよね」

 

 

 これはコミットと言えるのだろうか。

 感覚的なものだから言えないかもしれない。

 そんなことぁ、どうでも良い。大事なのは決めるか決められるかのみ。

 

 ドガッ!とこの世のものとは思えない殺人的な音がするが、不思議と怖くない。

 まいはんどにHitしたBallは相手コートに落ちた。

 

 ン゛ア゛ア゛ッッシ!

 

 おろ、何か名場面と繋がった気ががが。

 まぁ、特に気にせず。

 

 

 「スゲーな、おい」

 

 黒尾パイセンあざっす!

 

 「よくやったね」

 

 あぁ、海様よりお褒めの言葉。

 これで救われる。。。

 

 「そいじゃあ、ウチのスーパールーキーも調子良さそうだし、俺らもやんぞ!」

 

 『応ッ!!』

 

 おうふ、凄い気の入りよう。

 そして相変わらず口調が荒いミケきゃぷ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ、所で某ってスーパーなルーキー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 v( ̄Д ̄)v イエイ

 

 

 

 

 




へいお待ち!
捏造一丁!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。