心技体という言葉がある。
スポーツなどで精神・技術・体力の三要素を総称した表現として使われ、大抵の運動部員は一度は耳にした事がある筈だ。
『心』
メンタルの強靭性。試合に掛ける思い。
これは鷺ノ宮も
だってみんな勝ちたいからスポーツやってんだもんね。
『技』
技術。両校選手たちの持つスキル。
これも大差なく拮抗している。
『体』
体力。又は
これについては、
ドガァッッ!
「ナイスキー、ナイスキー、あーじーきー!!!」
うーむ、今度は決められてしまいもした。
相手のセッターさんも強気ですな。さては、さっきのブロック根にもってやがんな。
いや、こっちは別に良いんですけどね。出番があるのは嬉しいですし。
にしても、やっぱりデカい。
何がって?そりゃあ、奴さんのタッパですよ。
両校スタメンでの平均身長差がおよそ5、6cm。
夜久パイセン入れたらもっと差が広がるのでリベロはナシd『ギロリ』ナンデモナイデスヨー?
やっぱり身長差あるのは地味にきついカモ。
音駒はイケイケのチームには基本相性が良い。
相手チームの攻撃を見て、癖を知って、穴を塞いでいく。
気付けば穴のなくなったフロアディフェンスと地上で待ち構える化け猫レシーブ。
実に老練というか嫌らしいというか、まぁ某もそのチームの一員なんですがね。
で、そんなウチですが弱点もありまして。
それが身長。
とても、シンプル且つ難敵なんですね、コレが。
結果、フロント勝負で惨敗の為、どうしてもレシーブに負担が多く掛かってしまうのです。
逆に相手さんは守りでも、高身長を活かしたブロックで、完全にとは行かずとも、ウチの攻めの勢いを阻んでいるのが現状です。
因みに今のでスコアは18-22となっておりますが、音駒自慢の守備は未だ整い切る兆しがないのです。
困った困った。
「分かってたけど、デケーなクソがッ!!」
「ミケ、くちょー悪いよー」
「でも、キレたくなるのも分かる。あの高さ」
三年生組は一見ドライな関係に見えるけどこう何と言うか目に見えない繋がりがある気がします。
「よし、ルーキー。ここらで一発スンゲーのブチかましたれ!」
「理不尽な命令。千賀線香はあげてやるからな」
「成仏しろよ」
こういうノリの良さとか。
あと、某の扱いが酷いdeath。
因みにサーブは向こうさんですし。
ピッ
ほら、サーブは・・・夜久パイセンのトコ!
バシッ!
これまた綺麗にあげるんですから。
もう、惚れてまうやろぉぉぉ!
で、ハクジョーパイセンが選択したのは
パンッ!
ライトから海様でしたぁ~
素晴らしい!もう全てがパーフェクト!
「ナイスキー、ナイスキー、ノーブーユーキー!」
ほらそこ!
もっと声出して!
「あいつの琴線がイマイチ分からんわ」
「簡単じゃん、海の狂信者」
「それな」
何だか褒められている気がする。
結局、第一セットは21-25で取られましたこわさ。
つよし・・・!
「スプレッドだとセンターがきちぃな」
「でも、リリースだと一枚に負担が大きいですよね、特にサギ高は」
「これまで通り基本はリードでしょ」
「結局センターが走んのね」
「じゃないとバックがキツイって」
「俺は何度だって拾ってやりますよ。その為のリベロですから」
「夜久はホント、バレーイケメンだよなぁ」
ヒッソリ
ここに何度もぴょんぴょん跳ねて、フラれた㎆がいますよう。
言わないけど。
「千賀、次のセットは相手を打たせてみなさい」
監督、まさかの名指しデスカ?
それほどまでに某のミスに耐えかねていると・・・ッヒィィィ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
「あんまり喋んないけど、アイツって表情豊かだよな」
「先生怒ってないって教えてやれよ」
「面白いから却下で」
不肖、この千賀拾、命懸けで頑張ります!
「敬礼て」
「逆に不敬だわ」
「おwなwかwいwたwいwww」
「草生えすぎて最早大草原不可避」
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
その時、とあるバレー部員ととあるコーチにははっきりと夜叉の幻影が見えていたとかいなかったとか。
第二セットの幕開けでごわす。
両校ともにスタートは第一セットと変わらず。
しかし、第一セットと異なる点がある。
それは
「千賀、ナイサー」
「千賀、いっぽーん!」
そう、某のサーブから始まるのでごわす。
では、参りましょうか。
目標:後衛の一番デカい人。多分レシーブそこまで得意じゃないと思う。
強さ:控えめ?ノンノン、バリ硬強めで!
精度:うん、まぁ、何とかなるさ。
ピッ
ボールを投げて
ゆ~っくり~とぉあるぅい~て
からの
jumping floater serve←ネイティブ風味
お、良いとこいった。
相手のデカい人に向かったボールは奴さんの手元で確かにぐにゃりと曲がって、オーバーハンドに当たりあらぬ方へと飛んで行った。
ピッ
『ナイサーしゅーう、ナイサーしゅーう、もう一本!!!』
よっしゃサービスエースキタコレ!
「ナイサー」
「もう一本」
「決めたら三源屋のラーメン奢っちゃる」
マジですかミケきゃぷ。
喜んで次もサービスエース狙いますよ~
いくぞ、出でよえくすかりbあっ、トスみじけぇ
「オーライッ!」
あー、リベロの人に取られちった。
やべ、バックアタック来た。
ドガァッ!
ピッ
ぺらり
音駒1-1鷺ノ宮
うーむ、まだまだ完璧とはいかんか。
日々精進あるのみ。
戻って時間あったらサーブ練させてもらおっと。
「スイマセン」
「胸張れ、ナイスサーブ」
夜久パイセン相変わらず男前すぐる。
コソコソとベンチに戻る。
「相変わらずジャンフロスゲーな!」
「よー決めた!」
「あざっす」
先輩方が褒めてくれるけど、やっぱり悔しいよなぁ。
よし、次はもっと決めてやりますかぁ。
あ、三源屋のラーメン・・・
許すまじ鷺ノ宮。
◇
第二セットは追い越し追い付かれを繰り返し16-15となったが。
相変わらず、相手がデカい。
そりゃあ、戦っている相手が突如小さくなるなんてことは有り得ないし、その逆も当然ない。
けれども、常に壁が立ち塞がるというのは、結構フラストレーションが蓄積されるし、それから点を取るのも尋常じゃなく疲れる。
ゲームボーイ風に例えるならば「ボスが常に攻撃・防御バフを受けている状態」という感じ?
互いに体力が減って来てMPが減ってくる中で、こちらの手札は減り、通常攻撃は効きにくく、向こうの攻撃はより凶悪に。
うん、クソゲー確定ですね。
でも、これはゲームじゃあないし、ましてや相手は常に高火力のボスモンスじゃない。
常に一定の攻撃なんてないし、あ、ターン制なのは共通項だな。
それに、二セットもやってりゃあ、それなりに見えてくるものもある。
例えば、
ドガァァ!!
ミケキャプテンの強烈スパイクを何とか相手が拾うも、乱れが生まれる。
このような時、向こうのセッターさんはそれなりの確率で、ニアよりもファーに余裕のある高いトスを上げる。
恐らく、高さに自信があるからこその選択なんだろう。
間違っちゃいない。
タッパが売りのチームなのだし、実際ウチはそれで何点か取られている。
でもね、ハメ技攻略って飽きない?
「せぇーーーのっ!」
レフトとタイミングを合わせて飛ぶ。
ストレート側はしっかり〆て、そして。
こっちに打たないでね(ニッコリ)
スパイクは内に向かう。
それでも強烈なのは変わらない。
しかし、そこで待ち構えるのは
「ナイスブロック」
ウチの守護神なんですよねー
柔らかく優しく上がるボール。
何時見ても惚れ惚れするなぁ。
おっと助走に入らんと。
この後、第二セットは何とか捥ぎ取りました。
音駒1(21-25、26-24)1鷺ノ宮
最終セットまで続くのは良いけど、疲労ガガガ。
誰かー、スポドリ―をー、塩分をー
「ほら、飲め!」
おぉ、あんがと虎さん。
ごくごくごく、ぷはぁ生き返るぅぅ
あーアイシング首元気持ち良ぃぃぃ
って、ショウヘイヘイじゃマイカ!
どうもありがとう(片手シュタッ!)
「(グッ)」
口数少ないけど、やっぱ気遣いマンだな。
感謝やで~
「よく取った!良いぞ!」
コーチのいつもの大声。
相変わらず喧しい。
でも言わない。
「きちぃーな、おい、二試合目あんだろ。地獄か」
「お願いだから思い出させるな」
「・・・(ヽ''ω`)」
あ、ミケきゃぷの無差別口撃で複数の被害者が。
でも、先輩たち二試合目のことなんて勝つ気満々ですな。
悪くない。そーゆー気風は嫌いじゃない。
「はい、タオル」
あら、ゲームボーイとは。
明日は聖剣のち神槍でも降って来るのかな?
「その顔すごく心外なんだけど」
悪い悪い。
同級生組がこうも気を回してくれるなんて何だか変な感じだ。
「イイけど。それと、相手セッター、二セット目エースの打数減らしてたから」
ほー、そうだっけ?
言われれば思い当たる節があるようなないような。
とりま、気にしとこうか。
笛が鳴る。
はぁ、三セット目も行きますかぁ。
「助言サンキュ」
「それと」
うん?
「相手サーブからだから千賀くんはこっち」
じーざす
そう言えばそうだった。
「へばってんのか!? 根性出せや、根性!!」
虎さんやこの場合根性必要かね?
むしろ、休む方が大事じゃないかね?
助けてけんまもーnっていねぇし。
虎さんが近くにいるとこっちこねえな、ゲームボーイ。
相性良くない?
かもしれない。
「混線なコンセント・・・ふふ」
なぜ今それ?
ショウヘイヘイのチョイスに某疑問しかないです。
やはり、こいつ等変人だ。
はぁ、つらたん。
そうやって溜息をつく本人がチームメイトから一番変人兼問題児と見られているとは思いもしていない背番号13だった。、
◇
俺はバレーが好きだ。
中学から始めたきっかけは単になんとなく。
小学校入学前から続けていた習字と実家の茶道という渋すぎる習い事に飽きていたというのもあった。
野球やサッカーのような花形のスポーツに入って行く勇気はなかった。
かと言って文化部に入るのも躊躇われた。
あまりにも消極的でパッとしないヤツだなと過去の自分ながら思う。
最初はトスに合わせてスパイクを打つことすら苦労した。
案外、アレは初心者には難しいものなのだ。
レシーブは嫌いだった。
痛いし、きついし、難しい。
顧問のセンセが「これが出来なきゃバレーは始まらん!」と言っていた当時は終ぞ理解できなかった。
中学時代の成績は特筆することがない。
大会で個人賞を獲ったことも当然ない。
平々凡々を地で行くような、何処にでもいる選手。
それが何をトチ狂ったか、都内でも有数の「守りの音駒」に進学した。
理由は言いたくない。
決して、「このチームなら俺がエースになれるだろ!」とイキった訳ではない。
地獄だった。
来る日も来る日も拾う拾う拾う拾うひrrrrrrrrrrrr
おっといけねぇ。トラウマが。
けれど、その地獄の日々のおかげか、レシーブへの苦手意識は何時の間にか消え去っていた。
ユース選手のスパイクを完璧に上げた時の爽快感は格別だった。
そんな俺だが、スパイカーとしての才能はそれほどだった。
スパイクに関して言えばそれなりに自信はあった。
だが、俺程度の技術があって、俺以上に身長のある選手はそれこそいくらでもいた。
惨めな気持ちにもなった。
それでも、俺は諦められなかった。
だから、二つのことに全力を注いだ。
一つ、筋トレ
身長に見切りをつけ、より威力のあるサーブ、スパイクを打つため。
自分を追い込むのが嫌いじゃないと気付けたのは幸いだった。
一つ、タイミング
ネット越しに競うバレーにおいて、俺は決して身長が高くない。
だが、ブロッカーという壁は何時如何なる時も立ちはだかる。
だから、少しでも僅かでも、壁のタイミング、型を崩す為に。ジャンプのタイミング。ボールインパクトのタイミング。相手ブロックの飛ぶタイミング。ありとあらゆる“間”を徹底的に刷り込んだ。
練習で何度も飛んだ。見学する機会があれば、ブロックのタイミングに合わせて何度もイメージトレーニングを重ねた。
そして、
「ッラァァ!!!」
強く打ったボールは僅かに崩れた壁から零れ、ネット際に吸い込まれて行った。
ピッ
音駒23-24鷺ノ宮
ッシャオラァァ!!
「よー決めた、ミケ!」
「もう一本決めてくれても良いのよ?」
高校入ってからずっと面突き合わせてやってきた奴ら。
ボコしてやろうと思ったことは一度や二度ではない。
こいつらも多分同じだろう。
「谷間の世代」
平凡な奴らばかりの俺たちにつけられたクソな通称。
そんな風評を覆そうと俺たちは練習に打ち込み、気付けば何時の間にか気の置けない仲間になっていた。
因みに先週俺のスイーツ取った奴はまだ見つかっていない。
見つけたらシバく。
「ミケさんナイスキー!」
「次も頼んます!」
このやたら頼もしい二年生たち。
入部早々、「目標は全国制覇」などとぶちまけた隠れ問題児たち。
しかし、バレーに対する態度の真摯さには、先輩ながら頭が下がる。
『ナイスキー!!』
『ミケさんもういっぽーん!!』
そして、超問題児率いる、悪魔の一年生世代。
よくも、ここまで多様な問題児が揃ったと思う。
入部して一週間経たずだったろうか。
超問題児千賀が寄って来て言ったのだ。
「キャプテン、タイミングのずらし方教えてもらえませんか?」
ゾッとした。
その眼はぎらついていておおよそ身内に向けるものではなかった。
その時、瞬時に悟った。
コイツはバレーに対して貪欲で誰よりも真摯な男なんだと。
俺はその請いを一刀両断した。
欲しかったら盗んでみろ、と。
それからというもの、アイツは時折こちらを見ている時がある。
その眼はまるで、観察しているような温度のない目。
恐らく、奴の頭の中では俺のプレーを学習しているのだろう。
大した熱意だ。
やられた方は堪ったものじゃないけどな。
ボールが高く舞い、次の瞬間叩き付けられる。
鳥の翼で打たれたそれは猫の手を掻い潜り、地へと落ちた。
全くクソだな。
ただ、ボールを落とさない為に汗水流して、息切らして、膝ガクガクになるまで踏ん張って。
結果がコレ。
サギ高の奴らが抱き合うのが見える。
暑苦しッ、絵面がグロいわ~。ないわ~。
でもなぁ、
もう一回こいつらとあんな風に燥げても良かったかもしらんな。
ふと、クソ親父との会話を思い出した。
「
「あぁ?出会いを大事にとかだろ」
「確かにその意味が世間には定着しているな。けど、少し違う意味も持っているんだ。それはな
「例え何度でも顔を合わせる仲でも誠心誠意その人の為に尽くしましょう、だっけか」
これからも、この仲間たちとは学校で顔を合わせる。
それでも、部活という関わりにおいては恐らくこれ限り。
なるほど、言い得て妙だ。
一期一会の何れの解釈にも現状は当て嵌まる。
クソ親父が「一期一会を大事にしなさい」と何度も言っていたのも頷ける。
周りでは泣いている奴もいる。暗い顔の奴もいる。
こいつらに囲まれて俺は今日までクソシンドイ練習に耐えてバレーなんかやって来たのか。
そんなこいつらに
「オメェら、俺みたいなんに付いて来てくれてあんがとよ」
俺は今心から笑えている。
そんな気がする。
「明日は雪かな?」
はい、千賀アウトォォォ
こっちこぉぉぉい
音駒高校 IH予選都大会一回戦敗退
音駒1(22-25、26-24、23-25)2鷺ノ宮
後半主人公空気
すまぬ|д゚)
誤字報告感謝!