突き抜けなくて何が悪い   作:鈴漉

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視点がクルックル回るので気を付けてくだされ


とある選手の合宿初日

 IH予選も終わり、一部の三年生たちが引退した。

 進学に備えるのだそうな。

 

 試合後に知ったのだが、ミケきゃぷはボンボンらしい。

 茶道の家で、行く行くは継ぐ予定との驚愕情報。

 茶髪の口が悪い不良系ミケきゃぷが茶道とは。

 全く想像がつかない。

 本人も「俺も想像つかねぇよ」と笑っていた。

 まぁ、でも普段の姿勢とか確かに綺麗だし、良いのではないでしょうか?

 

 そんなミケきゃぷは引退して受験勉強するらしい。

 果たして出来るのだろうかと疑問に思ったが、我が身可愛さの為、お口はチャックだった。

 

 「あっという間に引退しちまったな、三年生たち」

 

 虎さんはおセンチな気分らしいです。

 しかし似合わない。これも言わないけど。

 

 「・・・・・引退速いんだい」

 「10点中5点!」

 「・・・・・精進」

 

 最近掴めてきたが、しょうへいちゃんは思いついたネタをそのまま口にしてるだけっぽい。

 脊髄反射駄洒落マシーンとは?

 

 

 で、ウチのセッターちゃんはと言うと、

 

 「・・・・シンドイ。なんで暑いの?意味分かんない。丁度いい気温で良いじゃんか」

 

 珍しく饒舌だ。独り言だけど。

 この子は疲れて来るとキレちゃうタイプかな?

 ってか、何にキレてるお年頃?

 

 不思議なゲームボーイを観察していると、集合が掛かる。

 因みに音頭を取るのは新キャプテンの黒尾パイセン。

 これは三年生たちからの要望であります。

 

 「IH予選も終わり、これからは春高予選に向けてビシバシいくからな!」

 

 直井コーチは相変わらず熱い。

 かく言う猫又せんせーはニコニコしてだんまり。

 

 「で、だ。以前から話していた合同合宿についてだが、今回は生川で行うことになっている。各自体調管理に気を付けて合宿を迎えられるように」

 

 『ウィッス!!』

 

 合宿と聞くとなんだかワクワクすっぞ、な気持ちになる。

 決して某の童心が疼いている訳ではない、と思いたい。

 で、生川って何処ぞや?

 聞き耳発動!!

  

 どうやら神奈川の高校らしい。

 ふむふむ。

 

 空き時間で中華の街に行けるだろうか。

 麻婆、炒飯、回鍋肉、餃子・・・じゅるり

 腹が減った。動物性タンパク質が欲しい。

 

 「ウォォォォ!!! 燃えて来たぁぁぁーーー!!!!!」

 

 虎さんが燃えている。 

 しかし、声がデカい。あれは

 

 「山本、ウッセェ!」

 

 やっぱり、怒られた。

 興奮しても騒いじゃ駄目だよな。

 南無。

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 合宿前の休日。

 部活がおやすーだったのでおとんとプチ帰省。

 おみやは勿論平和の象徴サブレ。

 

 「使えねーな、マジで。この愚弟!!」

 

 愚兄が何かほざいてるがちょっと何言ってるかワカンナイデス。

 

 「しゅーにい、こういうのはワンパターンって言うんだよ?」

 

 ぐはっ、天使のつぶらな瞳は俺に効く。

 ならば、これでどうだ!

 

 「こ、これは・・・」

 

 そう、乗車中に食べたお菓子の残り!!!

 移動時って無性に口の中が寂しくなるんだよね。

 ほら、いっぱいあるぞぉぉ?

 

 「処刑」

 「いぎなし」

 

 ちょっと待ってブラザーズ。

 ハイライト消えたの何でぇぇ?

 怖いよぉ?生気戻ってプリーッズ!!

 

 「アンタらほどほどにしときなよー」

 

 ウェイウェイウェイト、マイマザー!

 プリチーユアサンが処されそうになってるのに随分と軽くないですかね?!

  

 「見返りは?」

 「え、ここは親の持つ無償の愛でひt「一昨日来やがれ、バッキャロー」

 

 何と言う冷酷さ。。

 どいひーどいひー!

 ぶーぶー!!

 弱き者もこの理不尽には断固として抗う所存で

 

 

 ギロリ

 

 

 アッ、イエ、ケッコーデスゥー

 何だよあの目つき、最早鬼だよ鬼。

 全く、ウチのオトンはあの鬼嫁の何処が良かったのやら、ほとほと疑問でごわす。

 

 

 「それではこれより刑を執り行う」

 「おこなう」

 「主文、被告千賀拾は更生の余地なしと見なし、くすぐり地獄の刑と処す」

 「しょすしょす」

 「裕、掛かれー!!!」

 

 うきゃーと跳び付いて来る可愛らしいマイブラザー。

 しかし、この度に限れば、その凶悪さは愚兄を上回るのである。

 

 「どりゃー」

 

 可愛らしい声に気が抜ける上に、手荒くあしらおうものなら千賀家ヒエラルキーの頂点から拳骨が飛び出す為、如何ともし難いのである。勿論、可愛い可愛い弟を足蹴になどしないが。

 

 

 こうしてぷち帰省は家族と団欒して過ごしたのであった。

 

 「シネやクソ愚弟ェェェ!」

 「貴様が滅びろリア充愚兄ェェェ!!」

 

 

 うん、団らんと言ったら団乱です(意味深

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 「お父さん、あの子はどう?ちゃんとやってる?」

 

 子どもらが自室に上がった後、居間では父母が話し合っていた。

 話題はやはり、慣れぬ土地に移り、碌に知り合いもいない中、進学した次男についてだった。

 

 「僕が見た限りでは朝食もしっかり食べて学校に行っているし、夕飯も自炊しているよ。凄く有難いけど、手が掛からないというのも寂しいものだね」

 

 そう言って父はコーヒーを啜る。

 妻の淹れてくれたくれたコーヒー。

 砂糖は入っていない筈なのに、いつも自分で淹れるものより仄かに甘く体の芯から解れていく感覚があった。

 

 「昔から変に我慢強いと言うか、弱味を見せようとしないでしょあの子?そっちでもしかしたら無理してるんじゃないかって。連絡も全然してこないし!」

 

 怒りながら心配している妻を見ていると、夫は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 この!女性《ヒト》は昔から変わらないなぁ、と一人心地に着いていた。

 そして、件の息子について考える。

 

 

 

 

 

 幼い頃は好奇心旺盛さにとても振り回された記憶がある。

 近所を散歩している時、地に列を組む蟻をジッと眺めていたかと思えば、突然走り出し、道路を走って行く車を追い掛け、急停止して今度は何かと窺っているとぼんやりと空を眺め始めたりと何かと手の掛かる子であった。

 

 しかし、不思議と夜泣きしたりイヤイヤ駄々を捏ねたりといった面倒事はほぼほぼなかったと記憶している。

 極め付けにはこんなエピソードもある。

 

 次男が保育園の年長だった頃。

 次男の所属する組で大喧嘩が起こったらしい。

 二人の男の子と女の子による玩具の取り合いから始まったそれは回り回って組中を巻き込む大騒動になったんだとか。

 あっちでは叩き合い。そっちではお互い泣きながら口喧嘩と、ここは戦国時代か!と突っ込みたくなるほどの荒れ具合だったらしい(歴女先生談)

 

 先生方もほとほと困り果てていた時。

 

 

 「みんなー、お昼だよー。ぼくおなかぺこぺこだよー。おべんとたべよー?」

 

 

 何とも場違いで気の抜けた声だったそうな。

 しかし、それが功を奏したのか、一人二人と喧嘩を止め、自分のお弁当を持って席に着いて行き、最後には息子の「いただきます」の音頭で昼食が始まったんだとか。

 

 食後は喧嘩が再び起こることもなく、皆仲良くお昼寝していたらしい。

 

 

 その話を先生から聞いた帰り路にふと息子に尋ねてみた。

 なんでそんなことを言ったのか、と。

 

 

 「おなかぺこぺこだったから、はやくおべんとーたべたかったし。それに、みんなムカッってしてて、いやだったから」

 

 「皆が怒っているのが嫌だったの?」

 

 

 「うーん、Maybe」

 

 

 何処からそんな言葉仕入れて来たんだろうと不思議に思ったのをよく憶えている。

 そのまま、家に帰り着くと、息子は妻に言われて弁当箱を渡した。

 

 「あれ、今日はピーマンとグリンピース全部食べてる」

 

 嫌いなものは意地でも食べようとしない息子のまさかに妻が目を見開いて、

 そんな彼女も新鮮で美しかった。。。

 

 かく言う息子は渾身のドヤ顔を決め、悦に浸っていたのが凄く印象的で、

 「頑張ったね」と頭を撫でると「まぁね」と言ってニヤリと不敵に笑っていた。

 

 

 やっぱり、この子は変わっているのかもしれないとその時少し不安になったのは秘密です。

 それと共に幼いながらに優しい気配りさんだな、と当時は親として嬉しさを感じたものです。

 

 

 

 懐かしさに自然と笑ってしまう。

 それを見た妻が不思議そうな顔でこちらを見ている。

 ああ、今日も彼女は美しい。

 

 

 「そうだね。返事はするように言っておくよ。優しい頑張り屋に」

 

 「???」

 

 

 更に不思議そうな顔をする彼女との夜はまだまだ終わりそうにありませんね。

 

 

 

 

 

 □

 

 

 

 

 

 はてさて、帰省も終え、期末テストゥーを乗り越えて、合宿さんがやって来ました。

 理系科目というやつはチンプンカンプンでいかんですね、はい。

 それにしても

 

 「虎さん、よく期末クリアできたね」

 「千賀は俺のこと、どぉぉおもってんのかなぁぁぁ?」

 

 見た目の如く!

 あ、暴力はダメよー。

 

 「ほらほら、そこの問題児ども。暴れんなよー」

 

 あ、黒尾キャップチィーッス!

 今日もトサカ極まってますねー!

 言わないけど。

 

 「そういやあ、一年の結果見たけど、何気にお前、50位以内の掲示載ってたな」

 「『ミスりまくって死にました!』って言ってたけど」

 

 あ、夜久パイセンちーっす。

 海先輩!どうもお疲れ様っす!!

 

 「てめっ、この野郎!俺と海で扱い違い過ぎんだろ!何が違えってんだよ!」

 

 え?

 威厳とか、身長とか、優しさとか、朗らかさとか、しんtyグハァァ

 

 タイキックはあかん。

 ケツが爆発四散です。

 しくしく(´Д⊂ヽ

 

 

 「ヘイヘイへェェェイ!! 化け猫どもめ、漸く到着かっ!!」

 

 

 何故か聞き覚えのある声。

 音源の方に視線をやると、何やらとてもパワフルそうで特徴的な髪型をした人が仁王立ちしていた。

 はて、パっと見、初めましてだと思うが、初めて会った気がしない。

 

 

 「(ゲームボーイ、あれ誰?)」

 「(梟谷の木兎光太郎。全国区のスパイカー)」

 

 成る程わからん。

 ・・・・・・・・・・いや、梟谷ってのは聞き覚えが。何処で聞いたんだっけ?

 

 

 ぽくぽくぽく

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちーん

 

 

 ああ、確か去年の夏にちらっと立ち寄ったっけ。

 確かおもろそうな声が聞こえて・・・・

 あ、この人か。

 

 全てが一つになった。

 シンジツハイツモヒトトゥ!!

 スーパーストレートマンだッ!!

 

 「何その昭和のヒーローみたいな名前」

 「かくかくしかじかまるまるうまうま」

 「僕、エスパーじゃないから」

 

 ったく、ノリが悪い奴やな~

 なぁ、福永っち?

 

 「・・・スーパーなスーパー・・・・くふっ」

 

 

 

 

 

 

 ( ^ω^)・・・10点中3点!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 合宿が始まりまして、総当たりの戦いが始まりましたこわさ。

 先ずは、ホーム生川とのゲーム。

 

 

 「強烈サーブ来んぞ~。体張れよー」

 「ウイッス!」

 「サッ、コーイ!!」

 

 グワッ!って感じでボスッ!!って威力の強力なおサーブがポンポン飛んできます。

 うん、固定砲台か何かかな?

 まったく、ここは戦場じゃなぶろわっ!!

 

 「長いッ!」

 

 さーせん!!

 夜久パイセン、レシーブに関しては鬼だかんな、マジで。

 でも、頑張って上げたんだからちょっとは褒めて欲しい今日この頃deth

 

 相手の生川さんは攻めのサーブを信条とするチームで、パワー系が多い。

 当然スパイクも力強いのでブロックの時、腕が折れないか不安で仕方がない。

 それでも、バレーと言う競技はボールを地面に落としちゃいかんので、手は出しますがね。

 

 あ、サーブ回って来たな。

 さてさて、いつものるーちーん。

 くるくるぽんぽんバシッ、と。

 

 ふぅー、うっし。

 さあさあ、遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ!

 そこ退けそこ退け、拙者が通~る~

 でりゃ!

 

 速さ:それなり

 変化量:大きめ

 精度:そこそこ

 

 どうかなどうかな

 あ、取られた。

 チクショー、次は決めたる!

 

 

 ・・・

 

 

 

 「相変わらず化け猫レシーブは粘っこいなぁ~、してやられたぜ」

 

 休憩時間中、生川高校次期主将、強羅昌己に話し掛けて来たのは、こちらも森然高校次期主将、小鹿野大樹であった。

 互いに「タラコ(強羅)」「ブロッコリー(小鹿野)」と言い合う仲の二人は体育館の縁側に腰を下ろし、話し始めた。

 

 

 「高さはないが、あの隙の無い守りは見事だ」

 「武士か」

 

 強羅の称賛に小鹿野は突っ込む。

 合宿に参加している四校が最もやりにくい相手を挙げろと言われれば間違いなく、三校は音駒を挙げる筈。

 コンビネーションプレーを主体とする森然ではあるが、音駒の前ではそのコンビネーションを抑えられることも少なくなかった。当然良い思いを抱くことはない。

 

 「小粒でも粒ぞろいだかんなぁ、アイツら」

 

 同学年どもは知っての通りだが、一学年下にも個性のある面子が揃っていると小鹿野は見ている。

 

 「両WS(山本・福永)はパワータイプとテクニックタイプで守備も一年生にしては確りとしていて素晴らしい」

 

 強羅は思い返し、一人心地に着く。

 

 「それに、セッター(弧爪)な。ありゃ食えねえタイプだな。めんどくせえ」

 

 小鹿野は眉を顰め、溜息をつく。

 余程嫌な目に遭ったのだろうか、と強羅は少し気になった。

 

 「で、極めつけはあのトンデモ野郎だ」

 

 が、次に出て来た選手によって興味は直ぐに移されるのだった。

 

 「13番(千賀)か。確かにな」

 「ったく、MBのくせに高火力だし、何より一年であの落ち着きっ振りってのが腹立つわ~」

 

 その上、随所で見せた嫌らしいブロックは、嫌でも溢れる彼のセンスに気付かされる。

 

 

 「黒尾たちから聞いたが、更に練習の鬼らしいぞ?」

 「うげぇ、ちょっとはサボれよなぁ。ホントに下から才能が迫って来る感覚は肝が冷えていけねえな」

 

 

 この合宿に集ったチームは何れも各地区で強豪と呼ばれる存在である。

 しかし、そんな梟谷グループも近年での全国大会出場は梟谷学園に限られており、対等な関係とは言い難いものが生まれつつある。

 その現状を理解しているからこそ、強羅や小鹿野は化け猫共に後れを取る訳にはいかなかった。

 

 

 「休憩もうすぐ終わりでーす!」

 

 

 生川高校バレー部マネージャー宮ノ下の快活な声が届く。

 

 「おっしゃ!行くかぁ、次も勝ぁぁつ!」

 「受けて立つ。次は負けない」

 

 小鹿野と強羅は腰を上げる

 風がふわりと頬を撫でる。

 若葉が茂り、夏はすぐそこまで来ていた。

 

 

 「ヘイヘイへェェェイ!」

 

 

 

 「アイツにゃ情緒ってもんがねえのかねぇ?雰囲気が・・・」

 「ああいう奴だ」

 

 

 

 

 

 

 




中々指が動かず、真に申し訳なし。
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