「わあ、人がいっぱい」
私こと隠岐紅音はリニアで東京まで来ました。全国大会の時にも来ましたが、この人の多さには驚くばかりです。
今回、東京に来たのはオフ会という集まりに招待されたからです。急な誘いで両親の許可を得るのが大変でしたが、ペンシルゴンさんがビデオ通話で説得を手伝ってくれて、22時までに帰ることを条件に許してくれました。
既に待ち合わせ場所に着いているらしい仲間の皆さんを探し、周囲を見渡して………あっ
一目でわかった
あの人がサンラクさんだ
聞いていた特徴と一致しているとか
他にも知った雰囲気の人たちがいるだとか
そんな理由ではなくて、何も根拠のない直感が「彼がサンラクさんだぞー!」って叫んでいます。そして、私の胸の奥から熱く燃え上がるような感情が溢れてきて。なんだろう、すごくドキドキします。
そのことを自覚すると、私は思わず走り出していました。溢れる感情が私の足を前に出す。サンラクさんも私に気付いたようで、他の人に声をかけています。でも私はブレーキを掛けずにそのままサンラクさんに抱きついた。
「サンラクさんっ!」
「うおっ!? な、ええっと秋津茜、だよな? なんで抱きついて………」
「どうしましょう! サンラクさん! どうやら、私はサンラクさんの事が好きみたいです!!」
「え………」
口から出たのはそんな言葉。顔がかぁっと赤くなる。
キョトンとするサンラクさん。なんて言ってくれるんだろうと、いきなりで迷惑だったかなと、不安に思いつつも体を離してサンラクさんを見上げる。そこには顔を赤くして視線が泳がせている想い人。私が手を伸ばした人。
「………あー、えっと、失礼承知で聞くけどさ………マジで?」
突然の告白ですし驚くのも無理はないですよね。私自身、自分の行動に少し驚いていますし。それでも。
「はい! マジです! 本気なんです! 私は本気で、男の人としてサンラクさんが好きなんです!!」
絶対に振り向かせてみせます! 私は過去の自分に誇れる自分でいたいから。
◇◆◇
秋津茜に告白された。
うん? なんでこうなった? 内心めちゃくちゃ動揺してるのがわかる。幻聴じゃないよな? 今日はライオットブラッド飲んでないし。とりあえず状況を整理して落ち着こう。
JGEに参加して
↓
急遽オフ会することになって
↓
駅前で待ち合わせしてて
↓
秋津茜に抱きつかれて告白された←今ここ
うーん急展開。告白されたのは初めてだ。まさかこんなタイミングでされるとは。突然のことだが………うん、まぁ、正直に言うと嬉しい。めちゃくちゃ恥ずかしいけど、秋津茜の強い想いが伝わってくる。
俺のどこが好きなんだと思わなくもないが、今考えるべきなのはそういうことじゃないよな。どんな返事をするか、要するに俺が秋津茜をどう思っているのか、だ。ちょっと考えてみるか。
少なくとも嫌い、では断じてないな。あの純粋で明るい性格は時に眩しく思うことはあれど、
それと、周りを引き摺るような勢いで突っ走るスタイルも相まって、一緒にゲームするのは中々に楽しい。あの手のタイプが周りにいなかったから新鮮ってのもあるかもな。
俺も秋津茜と似たような突っ走るタイプだと思うが同族嫌悪を感じる訳でもないし。むしろ俺が突っ走っても余裕で追いついてきそうだ。
便秘の他、ワゴンゲーを買い漁ってるらしいし、他にもクソゲーをプレイしてるかもしれない。そういう意味では似た趣味と言うか、一緒に遊ぶと楽しそうで………そこまで考えてふと気付く。
いや、それ以前に
「あー。つまりそういうこと、なのかな」
「えっ?」
「………とりあえず、告白してくれてありがとな。本当に嬉しかった」
「は、はい、どういたしまして!」
「俺はゲームが趣味で、ゲームと学校中心の生活を送ってる。で、それは恋人が出来てもあまり変わらないと思うんだよな」
「それでも構いません。私はそんなサンラクさんが好きになったんです! それに学校は無理ですが、ゲームなら遠くに居ても遊べます!」
「お、おう、俺もそう思う。今までもお前とゲームで遊ぶのは楽しかったしな。だからさ、これからもっと一緒に遊べたら良いと思う。」
「え、じゃあ………」
「一般的な男女の交際とは掛け離れたものになるかもしれないけど、お前みたいに強い想いを持ってる訳じゃないけど、それでも良ければ、その………俺と付き合って欲しい」
「っ……! はいっ! 勿論です! よろしくお願いします!」
そう言うと、感極まったみたいに目に涙を溜めて、秋津茜が胸に飛び込んできた。
………ところで、ここ普通に人通り結構あるんだよなぁ
周囲から拍手や歓声が聞こえて漸く状況に気付いたようで秋津茜の顔がさっきよりも真っ赤になる。
「行こうか」
「はい……」
俺たちは駅から反対方向へ逃げるように駆け出した。
………やっべ、他の連中のこと忘れてた。
【旅狼】
サンラク:お前らまだ駅前いる?
秋津茜:あの! 挨拶も出来ずすみません!
鉛筆騎士王:まぁ、それはいいんだけどねぇ
ルスト:私達は帰る
サンラク:なんで?
ルスト:何か言葉をかけられるほど仲良くもないから
モルド:そういうことなので、僕達は失礼します。お疲れ様でした。
鉛筆騎士王:二人ともお疲れ様〜
鉛筆騎士王:じゃあ悪いけど、サンラク君と茜ちゃんは別の店行ってね
鉛筆騎士王:こっちは玲ちゃんと京極ちゃんと3人でご飯行くことにしたから
カッツォ:え、どういう状況?
サンラク:これもしかしなくても俺らのせい?
京極:もうすぐ着くんだけど、何かあったの?
鉛筆騎士王:二人にも後で動画送ってあげるよ。京極ちゃんは個チャに地図送るから直接きてね
カッツォ:なんかよくわからないけど、面白そうなのはわかった。
鉛筆騎士王:サンラク君。ここで話すのもなんだし、個チャ行こうか
【鉛筆騎士王】
鉛筆騎士王:端的に言うと出来立てカップルの邪魔するつもりはないってこと
サンラク:なっ……!?
鉛筆騎士王:とりあえず安くておすすめのレストランの番号と住所送るから。気になった方に行ってみなよ
鉛筆騎士王:03-▽▽▽▽-▽▽▽▽ 東京都○○区〜
03-▲▲▲▲-▲▲▲▲ 東京都●●区〜
サンラク:……なんでそこまでする? 自分で言うのもなんだがお前らにとっちゃ格好のネタだろう
鉛筆騎士王:思う所がないとは言わないけどね。こういうのは一応早い者勝ちだし。
サンラク:は? 何の話だよ
鉛筆騎士王:何か企んでる訳じゃないからさ。こっちは任せて二人で楽しんできなよ
鉛筆騎士王:勿論、後日しっかり煽り……祝福して上げるからさ。じゃあ、またね〜
サンラク:おい待てって!
「なんか二人で楽しんでこいって」
「えと、どうしてなんでしょう?」
駅から離れた俺たちはコンビニ前で話していた。どんな状況なのかよくわからないが、それよりも今日の22時に帰らなければならない秋津茜と一緒にいようと思った。
「さあな。ま、それは今度聞けばいいだろ。ペンシルゴンがおすすめの店教えてくれたから、そこ行こうぜ」
そうして秋津茜の手を握った。俺の行動に目を見開くもすぐに満面に笑みを浮かべて握り返してくれた。交際を始めてすぐなのに、その笑顔にドキッとして嬉しくなることが、どこかおかしくて笑ってしまう。
「あの、なんで笑ってるんですか?」
「いや、なんでもないよ」
「えー、私気になります!」
そんな他愛もない話をしながら、二人寄り添って歩き出した。
例のツイートとヒロインちゃんの扱いを鉛筆に丸投げするという天啓を得て書き上げました。ヒロインちゃんと鉛筆には悪いと思ってます。
あと、これオフ会と言えるか微妙な気がするけど、ギリギリセーフということで。
感想待ってまーす