転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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ものを書くと言うのは初めてなので、変な箇所があれば指摘していただけるとありがたいです。


一期開始前
想定外の転生


空は快晴。

小鳥のさえずりが耳に心地良く、清々しい朝。

 

俺はいつものように学校に向かう。

()()を含めれば二回目の小学生として。

 

「いってきまーす!」

 

皆さんこんにちは!!

 

俺の名前は『高町なのは』!

 

私立聖祥大附属小学校に通う何処の小説にでもいるような普通のTS転生者!!

 

何でこうなったんだろうね!?俺にも分かんねぇ!!

 

 

 

…でも思い返してみると、

 

そう解釈されかねない事を願ったような…

 

 

 


 

 

あれは、通学中の電車内でソシャゲを遊んでいた時の事だった。

突然正面の車窓が真っ白に光ったんだ。

 

強烈な光に目を焼かれたかと思えば、その次の瞬間には俺は知らない所に居た。

 

辺りを見回しても何も無いとしか形容できない世界。

目の前には凄い神々しいお爺さんが居る。

なんかこんな状況どっかで聞いた事あるなぁ…

 

「済まんがお主達には転生してもらう事になった」

 

これは、もしや…

 

(異世界転生!?)

 

って、あれ?

 

(咄嗟に声に出したと思ったけど…声が出ない!?)

 

「あぁ…重ねて済まんが、お主達の身体はもう存在しておらん。

 いわゆる『魂だけがここにある』状態でな、

 肉体の方は()()()()()()()()()()()()()()()()と言うやつじゃ。」

 

言われて下を見てみると、確かに俺の身体も無くなっているようだった。

なんか身体が一切無いって不思議な感覚だ…

と言うか、今『俺達の居た星が木っ端微塵』とか聞こえたような…?

 

「儂らの方で手違いがあってな…星の寿命が一気に消し飛んでしまった。

 結果として『全生命転生』と言う事になったのじゃ。」

 

神様の話を纏めるとつまりはこういう事らしい。

 

・地球はもう無い。身体も無い。

・手違いで星を滅ぼしてしまった為、転生先はこちらの希望に合わせてくれる。いつもの。

・転生後の人生が良いものになるように色々能力とか容姿とかを調整してくれる。要するに転生特典。いつもの。

 

「流石に全生命転生と言っても全ての生命に細かに説明していては埒が明かないのでな。

 微生物などの自我を持たない生命の魂は既に転生済みじゃ。

 後は自我の特に強い人類のみと言う訳じゃな。

 お主等には分からんと思うが今この場には80億を超える魂がおる。」

 

言われて見回しても全然わからない…霊能力者が本当に居たらその人には分かるのだろうか。

 

「今、お主等を転生する世界毎に振り分けた。

 ここに居るのは『魔法少女リリカルなのは』の世界に転生を希望する者のみのハズじゃ。」

 

さっきと様子は変わらないけど、それぞれ転生先が振り分けられたらしい。

何処に転生したいか聞かれてもリリカルなのはの世界を望んでただろうし、問題無いな。

 

「…む?済まぬ、手違いがあったようじゃ。

 『リリカルなのは』ではなく『まどか☆マギカ』が良いと言っておった者を数百名振り分けなおした。

 他には居らんか?儂も万能ではないのでな、似ている世界だと間違いがあるかもしれん。」

 

神様も時には間違えるんだな…

いや、よく考えたら『地球爆発』っていうワールドワイドなミスしてたな…

 

「お主等も他に行きたい世界があれば思い浮かべてくれ。

 転生後は変更出来んからの。」

 

俺は魔法が使えて、()()()()()()()()()ならどこでも良いな。

 

『リリカルなのは』って言うのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()けど、

確か3()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()くらいだしきっと平和な世界のハズだ。

 

『まど☆マギ』も好きだけど、あの世界はちょっとハード過ぎるからなぁ…

『ドラクエ』みたいなRPGの世界は確実に魔王とかそれに類する存在が居るから平和ではないし…

 

多分『リリカルなのは』が一番平和なはず!多分!

あ、でも原作知識は特典で貰えたら貰っとこう。

 

「ふむ、転生先を変更したい者が数百名居るようじゃ。

 今の転生先で構わないと言う者にはすまぬが、もうしばらく待ってくれんか?」

 

…この神様、実はかなりおっちょこちょいなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

体感で10分くらい経ったかな?

結構人が行ったり来たりしてたみたいだけど落ち着いたようだ。

 

「うむ。それではこれから個別に希望を聞いてお主等の『調整』に入る。」

 

いよいよ特典の時間だ!色々定番の能力はあるけど、どれにしようかな…

 

「予め言っておく。

 『他者の精神に干渉する能力』『神々の力に匹敵する能力』の付与は出来ん。」

 

選択肢が急に狭まったな。

続く説明によると『転生者が洗脳されたら第二の人生どころじゃない』ってのと、

『世界を無茶苦茶にされない為』ってのが理由らしい。

 

「では個別に『調整』の相談をしよう。

 先ほどの説明で向かう世界を変えたい者が居るようだが、

 それはこの後個別で対応するから安心してくれ。」

 

 

 

(個別か…同じ世界に何人行くのか分からないけど時間がかかりそうだなぁ…)

 

「そうでもないぞ?個別と言っても儂が全員に同時に対応しておるからな。」

(!?えっ、もう俺の番か!?…ですか?)

「ほっほっほ…そう硬くならんでも良いわい。

 気軽に普段の調子で話してくれれば良い。」

 

なんか思ってたよりも寛大と言うか、フレンドリーと言うか…

 

(あ、ため口ではむしろ話し難いのでこのままで…

 それと、なんか声が出てないみたいなんですけど、コレ聞こえてますかね?)

 

「うむ、問題無く聞こえておる。

 これから君の魂を調整…いや、君の知識で言うと『転生特典』と言った方が馴染みが深そうじゃな。

 特典を決めてくれ。」

 

特典かぁ…『洗脳系』と、世界を無茶苦茶にできる『ぶっ壊れ』はNGだったよな…

『洗脳系』は大体のイメージはあるけど、『ぶっ壊れ』って何処からダメなんだろう?

 

「考える時間は十分にある。

 良いか?後悔せぬようじっくり考えて答えてくれ」

 

改めて考えると特典の幅と言うか、OKな範囲が解り難いなこれ。

特典の個数とかルールについてもう少し詳しく聞いておこう。

 

(えっと、特典のルールについて先にいくつか質問をしたいんですけど良いですか?)

 

「ふむ、良かろう。

 …いや、そういう事ならば『()()()()()』」

 

神様がそう言ったとたんに転生特典のルールが情報として流れ込んできた。

マニュアルを一文字一文字丁寧に何回も読み返したかのように全て理解できる。

 

「転生者全員に『調整』のルールを教えた。

 『お告げ』と言うやつじゃな。これで問題ないじゃろう。」

 

やっぱり神様すげー…

『特典の個数は魂の器の容量いっぱいまで』

『強力な能力ほど容量を取る』

『特典を一つでも付与したら行き先の変更はできない』

『原作知識程度であれば極少量で済む』

『一度付与した能力は取り外せない』

『神々の力に匹敵する能力とは“概念”や“命”に干渉する能力や、

 対象や現象に直接任意のルールを遵守させるもの等を指す』

 

なるほど、なるほど…

じゃあ、最初はやっぱり…

 

(先ずは『原作知識』をください!)

「うむ…これでどうじゃ?」

 

その言葉とともに膨大な知識がオーマイガッ…!

―ロストロギア、次元震、次元断層、闇の書etc…etc…

 

どこが平和な世界だ!?ソシャゲのコラボでこんなこと言ってたっけ!?

 

(…あの、今から世界の変更は…無理って()()()()しなぁ…)

 

「そうじゃなぁ…

 『調整』と言うのは『その世界で○○をやっても良い』と言う許可証のような物とセットでな…

 一つでも付与してしまうと世界とお主の間に『縁』が生まれてしまう。

 ただの『知識』だとしても『縁』は『縁』、

 今から他の世界に行くと二つの『縁』の力でお前さんの魂が裂けてしまうぞ。」

 

はぁ、早速前途多難だなぁ…

せめて原作知識を活かしてしっかり対策できるような特典を貰おう!

 

そもそも転生者なんていなくても主人公達はこれらを乗り越えたんだ!

強力な能力を持った転生者が居ればもっと簡単に…

 

簡単に…

 

…強すぎる能力を闇の書に取られたら詰みますねコレェ!?

いや、そもそも転生者が多いほどヤバいまである!?

 

(神様!リリカルなのはの世界って何人くらい向かうのでしょうか!?)

 

「ふむ、今確定しておるのは…3000人ほどじゃな。」

 

…どうするかなぁ…コレ…

 

『強すぎる能力は闇の書にとられると詰む可能性がある』

『向こうに行く転生者は3000人であり、原作通りには先ず行かない』

 

以上の情報から考えてここで欲しい特典は

『足手纏いにはならず、万が一相手にコピーされても致命的にならない能力』だ。

 

正直な話、俺一人が気を付けても他の人が全員そうしてくれるとは思ってない。

けど、油断して能力をとられたときに『俺の能力で世界崩壊』なんて事態は避けたい。

 

…確か、『高町なのは』って『スターライトブレイカー(星を軽くぶっ壊す)』をコピーされてたな…

 

つまり『高町なのはのレベルまでならたとえ必殺技をコピーされても乗り切れる』わけか…

そしてなのはは主人公であり、物語の最終編までトップレベルの活躍ができる!

 

多分ここが『リスク』と『チート』の境界線だろう…

確かあの魔法って魔力の収束とか、放出とかはなのは個人の才能だったよな…

 

…良し、決めたぞ!

 

俺の特典は『高町なのはと同じ能力』でお願いします!!

 

「ふむ…?

 …まぁ良かろう。」

 

えっ、何その反応?

 

 

 


 

 

…やっぱりあれが原因だよなぁ…

 

あの後、残った容量分いくつかの小さな特典を願って転生したんだけど…

能力どころか存在レベルで高町なのはになってしまった時は愕然としたね。

だって転生者3000人いるんだもの。

みんな程度の差はあれど『高町なのは』『フェイト・テスタロッサ』『八神はやて』のファンな訳だ。

 

例えばアイドルや歌手のライブに行ったとして、舞台に上がってきたのが『よく似たものまね芸人』だったらお客さんの反応はどうだろう?

 

A.キレる。

俺は前世含めてアイドルや歌手の追っかけになった事はないけど、間違いないと断言できる。

 

ガチギレる。

 

返金騒動やバッシングの嵐で済めばまだいい。

場合によっては舞台に上がった芸人の命が危ないまである。

 

そしてその『舞台に上がった芸人』とはすなわち『俺』なのだ…

 

この世界に転生して、原作知識の中で見た事のある顔の両親に初めて名前を呼ばれた瞬間に俺のするべきことは決まってしまった。

 

『高町なのはRP(ロールプレイ)

 

観客(騙す相手)は総勢3000人…

 

開幕でえげつない理不尽だけど、身の安全の為にはやるしかない!

 

俺の受け取った最大のチート…『原作知識』を使って!!




投稿ペースは不定期になると思います。

文章を書く事に慣れる事が目的なので、全体的なストーリーは短めにするつもりです。

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