「聞いての通りだ! 現在闇の書の主がこの結界に干渉している!」
シグナムの斬撃を障壁で捌きながら、クロノが声を張り上げる。
敵のシャマルが妨害しているのだろう、念話が使えない為だ。
「この結界が破壊されれば最後、諸君等の住むこの街は戦場と化す! 結界に守られる事無く、闇の書の暴威に晒される!!
なのは、フェイト、アルフ! 事件解決の為、この世界を守る為、力を貸してくれ!」
「うん!」
「勿論!」
「任せな!」
その言葉に心を決めなおし、目の前に立ちふさがる敵を改めて見据える。
「ヴィータちゃん、あの時以来だね。」
「……ああ、そうだな。」
「リベンジマッチだよ。あの時は敗けたけど、今度は全力で勝ちに行くから。」
「そうか。」
……まるで別人だな。見た目は体に赤いラインが走っている以外に変化は見られないが、それでも初めて会ったような印象を受ける。
多分今の彼女に言葉は届いていないし、彼女の言葉もこちらの言葉にただ返しているだけで、きっとこの会話に意味なんて無いのだろう。
それでも、ここで宣言しておきたい事がある。あの時のバカな俺と決別する為にも……!
「……全力全開! 本気で行くよ、レイジングハート!」
≪Yes, my master!≫
「かかってこい。」
もう手加減なんかしない!
「はあっ!」
高速で接近し、すれ違いざまの一閃。
普段の組手ならば最初の一撃は大抵、防がれるか躱されるかのどちらかの対処をされる。その隙に鋭角に折り返して次の一閃を放ち、それを繰り返す事で敵に攻撃を許さないと言うのが私の得意とする戦い方だ。
私の速度を最大限に活かす、いつものヒット&アウェイ……いつもと違ったのは、相手の取った対処法だった。
「はっ!」
「く……ッ!」
防御も回避もせず、カウンターのように振るわれる拳を辛うじて回避する。
先程まで確かに存在していたバルディッシュの光刃は今は無く、ザフィーラが纏う白色のヴェールにかき消されてしまった事を理解する。
<魔力をかき消す魔力……厄介だね。>
<あんなのズルだよ! 攻撃も障壁もかき消されるなんて!>
姉さんの言う事も分からなくはない。あの魔法一つと素の戦闘技術だけで戦闘を支配されている今、私が出来る事の大半は封じられてしまっているのだから。
<でも……飛翔魔法はかき消されていない。>
<……うん、それだけが本当に救いだね。それまでかき消されちゃったらそれだけでフェイトは……>
空中で高速近接戦闘を行う私がその途中で飛翔魔法を消されたら……待っているのは働いた慣性による滑空だ。地面か壁面に衝突する前に再度飛翔魔法を使えれば問題無いけど、それが出来なかった場合の結末は言うまでもない。
<多分だけど、かき消す魔力には何かの条件があるんだと思う。
無条件で全部かき消すんだとすればザフィーラも空を飛べないし、何よりあの魔法自体が自壊する筈なんだから。>
<……『自分の魔力以外』なんて条件じゃない事を祈るばかりだね。>
<そうだったら流石にズルかなぁ…>
飛翔魔法が消されてない辺り、そう言う条件じゃないとは思うんだけど……
<……それでも戦わなくちゃ。この世界の為にも、母さんの為にも。>
<解ってる。私の魔法で色々条件を探ってみるから、フェイトは攻撃を躱す事に専念して!>
<うん、ありがとう。>
シグナムの陰に隠れていたけど、ザフィーラもとんでもない使い手だ。シグナムともなのはとも神宮寺とも違うやり方で、私の速度にしっかりと対応して来る。だけど……
「行くよ姉さん、バルディッシュ。……絶対に勝とう!」
敢えて声に出して気持ちを整える。
≪Yes, sir.≫
<勿論!>
そうすれば二人は絶対に応えてくれるから。
「タァッ!!」
「……」
飛翔魔法で急接近してからの蹴撃は突如として空中に開いた穴に吸い込まれ、その穴の繋がった先で危なげなくシャマルに掴まれる。
「っうおぉ!?」
「……ふっ!」
そのまま穴に引きずり込まれてからのジャイアントスイング。海面に叩きつけられるように投げ出されるが……
「させるか!」
「うっ……!」
俺を投げたシャマルが穴に潜るのを確認した直後、俺は自分の体から放電。目論見通り、シャマルの追撃を防ぐ事に成功するが……
「……またそれかい!」
追撃しようと振り返ればそこにシャマルの姿は無く、今まさに閉じようとする空間の穴があるだけ。再度振り返れば、シャマルは元居た位置に戻っていた。
「そうやって逃げ回って、ジャミングに専念するつもりかい?
アンタだってベルカの騎士って奴なんだろ? ちゃんと戦いな!」
「……」
いくら挑発しようと誘いに乗ってくる気配はない……か。
実際シャマルはああして戦場に居るだけで敵の通信手段の大半を封じている。守る必要のないジャミング装置って訳だ。
「まったく……折角のリベンジだってのに、肝心の相手があれじゃ張り合いがないじゃないか。」
一泡吹かせてやろうと頑張って来たってのに、ノーリアクション……流石に悲しくなってくる。
だけど俺がシャマルを倒す事にはリベンジマッチ以上の価値があるのも分かっている。
「そっちがあくまでもあたしを無視するってんならさぁ……」
思っていたシチュエーションとはだいぶ違うが、新しい力って奴を振るわせてもらおうか!
「……力尽くで振り向かせてやるよ!」
使い魔の魔力は主から供給された魔力だ。自分のリンカーコアで生み出す物とは違い、その特性は主の物をそのまま受け継ぐ。
俺は主から貰った
――激しいスパーク音と共に体を覆うのは青い雷。
フェイトとの契約を維持したうえでの、アリシアとの二重契約。フェイトとアリシアの特殊な関係が可能にした、文字通り
「……?」
「やっと興味を持ったかい?」
そしてその魔力は、
「じゃあ……あたししか見えなくなるまで、もっと興味を引いてやろうかねぇ!」
海面を蹴る瞬間、海面と
「……!?」
次に先程と同じ要領で空中を蹴る瞬間、空気と
「!」
何度も繰り返すほどにその速度は上がり、やがて青い雷がまるで彗星の尾のように伸びていく……
なるほど、これがフェイトとアリシアの見ている光景か。
フェイトがあれだけ速度を求めるのも頷ける。敵が全く自分について来れていないこの優越感は勿論だが、自分だけの世界がここにあるような高揚感は他じゃ中々体感できない。
……だからと言ってブリッツアクションを許可したりはしないが。
「隙だらけだよ!!」
「ッ!!」
がら空きの背中に拳を突き出す一瞬、シャマルの背後に開いた穴が腕を呑み込みシャマルの眼前に現れる。
それを掴もうとするシャマルだが……
「ぁう……っ!」
「電気の塊に手を伸ばすバカが何処に居るんだい!?」
知能が封じられているのか、本当に触ろうとするとは思わなかった。
だがこれは明確なチャンスだ。今のでシャマルの体には
空間の穴に自ら飛び込みシャマルの眼前に飛び出すと、左手をシャマルに翳す。
「!?」
シャマルが何かしらの対処をする前に、フェイトとアリシアの魔力の持つもう一つの性質……
「今度は真正面から食らいなぁ!!」
そして反発の性質を付与した右手が、ついに初めてシャマルを捉えた。通常の拳の威力がその性質で更に引き上げられ、数倍に増幅した衝撃と感電がシャマルを襲う。
「カハッ!?」
「まだまだァ!!」
そして今の攻撃でシャマルには再び俺の魔力が流れた! 再び左手がシャマルを引き寄せる!
「どこまで耐えられるか、試してみるかい!?」
口では余裕ぶっているものの、実はこの状態は長続きしない。何せ二人分の魔力を絶えず消費している状況だ。時間制限はかなり厳しい事になっている。だからこそ、もう逃がさない! 離さない!
反発と吸着、そして感電のループで終わらせる!
そろそろ本気で捏造設定タグが必要だと思ったので、A's編完結後辺りにでも追加しようかな……
と言う訳で、以下アルフの魔力に関する設定です。
・フェイトとアリシアの魔力
フォトンランサーやプラズマランサーでも描写しているように、二人の魔力は互いに意図して干渉させることで『反発』と『吸着』が可能です。
この性質のおかげでフォトンランサーやプラズマランサーが分裂したり、不可視の速度で進む魔法が一定の軌道をなぞったりできる訳です。
元々『魔力の干渉』と言うものがあるのかに関してですが、「ブラストカラミティ」等の例から可能であるとこの小説ではしています。(もっともこの小説はあくまでアニメ版なので、多用はしないつもりではありますが。)
要するにフェイトはアリシアと協力する事でそれが常にできると思ってください。アルフはその性質を一人で再現できますが、魔法の再現では無いので極端な事は出来ません。(ただ魔力量も相応に増えているのでかなり強くはなっている)