転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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予想以上に長い過去編。

その3まで続きます。

今回の転生者アルフが皆に受け入れてもらえるか少し心配。


少し昔の物語 その2

狼として生まれてから、家族がずっと一緒だった。

 

群れで一緒に狩りをし、一緒に眠り、一緒に起きた。

当たり前だった。

 

でも私は追い出された。

 

何でなのかは分からない。

この身体の痛みと、息苦しさが悪いのか。

 

それでも生きようと夜も眠らずに彷徨った。

動くのを止めたら、眠気に負けたら、二度と動けなくなる気がして怖かった。

 

それでも、だんだんと起きているのも辛くなって…

眠ってしまいそうになった時、

突然人間が現れた。

 

人間の前足が光ると体の痛みや息苦しさが軽くなった。

 

人間に運ばれて別の人間のもとに連れていかれた。

でかいのと小さいのが居る。どちらも雌のようだ。

 

でかい雌の片方が人間の巣の中に走っていったすぐ後、

小さい雌が何かを呟くと私に対して光が伸びてきて繋がった。

 

頭の中に声がした。人間の言葉なのに意味が分かった。

 

≪私と一緒に居て≫

 

何故か言う通りにすれば元気になれる気がした。

 

その声に私が応じると私の体が光り出して、再び眠気が私を包んできた。

 

痛みと苦しみに限界を迎えた時の眠気とは違った。

どこか暖かくて、ホッとする眠気だった。

 

 

 

…

 

 

 

目が覚めた時、全部思い出した。

そうだ、俺(・)はなのはの世界に転生したんだったと。

 

 

 

なぜこんなことを忘れていたんだ…

いや、と言うかさっきまで俺は完全に野生に生きていた。

 

狼と一緒に動物の肉を生で食っていた。

 

 

 

えっ、怖っ…野生怖っ…

 

前世じゃ羽虫以外の生き物を殺したことなんてなかったのに、

こっちじゃ四足動物襲ってるんだぜ…四足動物として。

 

前世の記憶が無かったとは言え、あそこまで野生に染まるなんてなぁ…

 

…まだ記憶に異常が無いか確認しておこう。

 

 

 

俺の前世は…なんだったっけ?全然思い出せない。

 

いきなりこんな調子で大丈夫かな…

まさかまた野生に戻ったりしないよな…?

 

なんかの仕事に就いていたのは覚えてるが、その内容がさっぱりだ。

 

ただ地球が爆発したと聞いた時、少しだけ得をした気分だったのは覚えてる。

 

それでその後は神様が転生させてくれるって言って、

転生先を振り分けたんだったな。

 

現実に嫌気がさしていた俺は…なんで嫌気がさしていたんだったか?

 

…まあ良いや。

 

昔好きだったリリカルなのはの世界が良いなとぼんやりと考えて、その通りになったんだ。

 

あの後神様になんて願ったんだったか…

 

そうだ、確か

 

『フェイトの使い魔になりたい』

『フェイトを助けたい』

『フェイトと一緒に居たい』

 

…

 

いや、確かにあのアニメで一番好きなキャラはフェイトだけど…

我ながらものすごい執念だな。

 

疲れていたせいか凄いテンションだったからな。

…なんであんなに疲れてたんだ?

 

後もう一つ何か願ったな…

そうだ…確か『仕事の事をきれいさっぱり忘れたい』って…

 

あぁ、なるほど。

 

前世の記憶が曖昧なのは、もしかしなくてもコレのせいか。

 

願いは叶ってるな、間違いなく。

 

もう予測しかできないが、俺は多分ブラック企業に勤めてたんだろう。

地球が爆発したのが何時か知らないが、その時も仕事が忙しかったに違いない。

 

『来世にこんな記憶持ち込みたくない』って思って願ったんだろうな…

 

その後アルフとして転生したのは…まぁ良いとして、

問題は狼の脳では単純な思考しか出来なかったことか…

 

前世の記憶も引き出せず、危うく病で死ぬところだった。

 

今こうして意識がハッキリしてるのは、

契約でフェイトの使い魔になった事で脳の容量が増えたとかそんな感じだろうな。

 

そのおかげで前世も思い出せるようになったって訳だ。

 

 

 

しかし、前世の記憶が戻ったから分かるが…

確か死にかけているアルフを見つけたのはフェイト本人じゃなかったか…?

 

フェイトの行動が変わるような何かがあったって事だろうか…?

そもそもあの女性は何者なのだろうか…?

 

疑問は尽きないが、ともあれあの女性は俺の命の恩人な訳だ。

目覚めてすぐにあの女性に礼を言おうと見まわしたのだが、

その場に居たのはリニスとフェイトのみ。

 

俺が眠る前、あんなに必死にリニスに頼み込んでくれていたにしては結構ドライな人だな…

 

フェイトとリニスと少しばかり話をしてあの女性の名前を知る事が出来た。

 

アンジュさんか…間違いなく恩人ではあるけど行動が気になる人だな。

 

 

 

…

 

 

 

フェイトと一緒に生活するようになってからは天国だった。

 

目を覚ますとフェイトが居て、寝る時までフェイトが居る。

 

前世ではよく

『テレビ越しに見ていた有名人に実際会ったら、それ程でもなかった』

みたいな話を聞いたりしたものだが、フェイトは3Dになってもやっぱり美少女だった。

 

特に空を飛んでいる時の表情はずっと眺めていられた。

あんなに明るい笑顔を浮かべて飛んでいるのを見ると空を飛び回るのが本当に好きなんだなと思う。

 

『好きこそ物の上手なれ』って言葉もあるくらいだ。原作の強さも頷ける。

 

…ちょっと、位置が悪いな…もうちょっと、こう…左に…みえt

 

 

 

…

 

 

 

ここで生活するようになって早数ヶ月。

 

間取りも完全に覚えたし、アンジュと変なやつ(銀髪オッドアイ)とも仲良くなった。

まぁ、一応変な事しないか監視も兼ねてるのだ。特に変なやつ(銀髪オッドアイ)。

 

変な事と言うのは主にプレシアの事だ。

俺自身この数週間でプレシアを見た回数は決して多くない。

 

プレシアは殆ど研究室に籠りっきりと言った感じで、

折を見てアンジュや変なやつ(銀髪オッドアイ)が食事を持って入っていく。

 

気になるのは食事を持って入ってから出てくるまでの時間があの二人は明確に違うのだ。

 

アンジュは本当に食事を持って入っていき、食事を置いて出てくる…

それくらい短い間しか研究室に入っていない。

 

変なやつ(銀髪オッドアイ)は明らかに違う。

数分…長い時は数十分はプレシアと一緒にいる事もある。

 

見るからに転生者だし…裏で何かが動いているというのも居心地が悪い。

 

俺を見つけたのがフェイトではなくアンジュだった原因も、

あの変なやつ(銀髪オッドアイ)が何かしていたのではないだろうか?

 

プレシアを止めようと説得しているのか…

それとも逆に唆し、原作よりも大きな事をさせようとしているのか…

 

何とかして情報を掴みたいが、研究室は防音が徹底していて中の音が聞き取れない。

注意するべきはアンジュよりも変なやつ(銀髪オッドアイ)の方だな。

 

 

 

そうだ。もう一つ懸念事項があった。

 

それは俺自身の体の事だ。

 

使い魔が皆こうなのか、それとも狼が素体だからなのか…

身体の成長が早い…いや、早すぎるのだ。

 

数ヶ月しか経っていないと言うのに外見年齢はフェイトをすっかり追い抜き、

少し年の離れた姉妹と言った具合になっている。

 

 

 

非常にまずい。

 

何がまずいかと言うと…絵面だ。

 

これまで少女同士だからこそ絵面的にも許されていた数々のスキンシップ…!

この年齢差では一緒のベッドで寝たがることも許されない…!

 

実際、つい先日あ(・)の(・)プレシアに新しい部屋を用意されてしまった…

訳を聞くと

 

「あなたがフェイトを見る目がそろそろ本当に危ないと判断したから」

 

と答えられてしまった。

 

いや、あんたアニメじゃもっと放任主義と言うか…育児放棄してなかったか!?

 

…いったい、何がプレシアを変えつつあるんだ…?

 

フェイトに対しては相変わらず冷たい対応をしているようだが…

 

これから先、原作は開始するのだろうか?

それともこのままテスタロッサ家ハッピーエンドルートに向かうのだろうか?

 

 

 

…

 

 

 

そして、部屋を分けられてから数週間経ったある日の事…

 

≪アルフ!早く来て!≫

 

フェイトから緊急を知らせる念話が送られてきた。

使い魔になったからか、フェイトの抱いている強い感情を感じる。

 

それは、流れてくるだけで俺も涙が流れてしまうほどに強い悲しみの感情だった。




何気にプレシアが軟化してます。

フェイトの努力の成果か例の変なやつの仕業か…

それはともかくアルフの前世についてですが、
転生後のアルフの予想がほぼ正解です。

ブラック企業で仕事中に地球が滅びました。
時刻は午前8時ちょっと前。徹夜でした。

『得した気分』だった理由は仕事から解放されたからですね。

アルフの体になっても戸惑ってない理由は
『フェイトと一緒に居られるから』と言う理由の他に
『上司が美少女とか社畜冥利に尽きるぜ!』と言う謎の理由があります。

彼には、社畜としての調教がひっそり行われていたのです…

-12/10修正-
アルフの前世での社畜調教レベルを若干下方修正いたしました。
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