転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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即席ミッション勃発

アースラのモニターに表示されている複数の映像……私はその内の一つを確認しながら、現地との間に繋いだ通信に向けて最終確認を行っていた。

 

「皆、配置についたね? こっちの合図で一斉に仕掛けるよ!」

『了解っす!』

 

海鳴市を包んだ結界の全域を映し出したマップに表示された幾つもの点は、彼等の配置状況を示したものだ。

その大半は海鳴臨海公園の入り口に密集しており、ここが最終防衛ラインであると如実に示している。

 

「神場君、捕縛用の魔法は出来てる?」

『バッチリだ! 魔力波動の観察も十分に出来たしな!

 これなら味方に影響は出ねぇよ!』

 

神場君……銀髪オッドアイと言う容姿で分かるように、転生者の一人だ。

彼の持つレアスキル……まぁ、転生の特典だと思うけど『魔法の作成』は非常に強力な能力だ。

その場で新しい魔法を用意できるという事は、あらゆる相手、あらゆる作戦に於いても中心に据えやすい万能性を持つ。

今回の迎撃作戦でもそれは同様で、彼のレアスキルに頼った部分が大きい。……管理局に入ったら、さぞ引く手数多だろうなぁ……

 

そんな事を頭の片隅で考えながら、作戦の全体像と現地の戦況を照らし合わせ、今のところ問題が起こっていない事を確認する。

 

「……うん、オッケー! じゃあ、闇の書の主をもう少し引き付けてから一斉に……」

『エイミィさん! 忙しい所すみません!』

「なのはちゃん!? どうしたの!?」

 

これで後は闇の書の主が所定のポイントに来るのを待つばかりだ。フェイトちゃんとなのはちゃんに協力して貰って、上手く引き付けられれば……

 

そんな感じで頭の中で流れを整理していた時、唐突になのはちゃんから通信が届いた。

その切羽詰まった声から緊急事態だと判断し、直ぐに応対する。

 

『エイミィさん! 今、私の目の前にテレビの人が……!』

「えぇ!? ちょ、ちょっと待ってて! こっちも今、あまり手が離せなくて……!」

 

慌ててなのはちゃんの居る付近の映像を表示すると、そこには困惑しながらも避難の指示を出すなのはちゃんと、彼女に詰め寄りマイクを突き出す民間人の姿があった。

 

いや、嘘でしょ!? よりにもよって、なのはちゃんに協力して貰おうと思っていたこんなタイミングで!?

勘弁してよ……野次馬根性に命賭け過ぎでしょ!?

 

なのはちゃんとフェイトちゃんは作戦に不可欠だし、だからと言って付近の局員に連絡するにしても、もう闇の書の意思の位置も迎撃ポイントまで近い。

現地の魔導士は避難誘導で近くにはいないみたいだし……!

 

「一般人に被害を出す訳には……でも、合図も出さないと……!」

「落ち着きなさい、エイミィ。」

「艦長!」

 

振り返ると、いつの間にか艦長が私のすぐ後ろに立っていた。

 

「民間人の安全が最優先よ。

 闇の書の主に関しては避難誘導が進んでいる以上、多少迎撃ポイントをずらしてもそれほど大きな問題は無いわ。

 問題は……あの場所を離れる気の無さそうな民間人ね……」

 

映像を見ながら彼女が優先順位を決めていくも、やはりネックは民間人があそこに居る事だ。

迎撃ポイントからあまり離れているとは言えないあの位置は、交戦区域に入る可能性が非常に高い。

いざとなれば強制的にでもあの場から引き離す必要があるのだが……

 

「エイミィ……闇の書の制御下にある結界内から、結界内の別の場所に転送する事って出来る?」

「……すみません。『アースラを経由すれば』可能だと思いますが、直接となるとリスクが大きいです。」

 

闇の書の制御下にある結界は、あれから度重なる改竄が行われ、既に私が構築した物とは完全に別物になっている。

 

その所為なのかアースラから結界内に送り込むか結界内からアースラに回収する分には問題無いが、結界内から直接別座標に飛ばそうとするとどうしても処理の途中で座標情報に干渉されてしまい、転送先が安定しないのだ。

 

現に街中に転送しようとして、海上や上空に転送されてしまった事も何度かあった。……だからこそ人員の配置に手間取ったのだ。

 

そして彼等は魔導士だから何とかなったものの、魔法が使えない一般人が同じ状況になればどうなるか……考えるまでもない。

 

「……民間人の安全の為にも、先ずは迎撃班の準備を万全にしましょう。

 それと、避難誘導中の魔導士に連絡を。彼等を避難場所に送り届けるのもそうだけれど、彼等がカメラに収めてしまった映像データの回収も済ませたいわ。」

「はい!」

「なのはちゃん。民間人の安全も大事だけど、フェイトちゃんの戦況もあまり良くないわ。

 闇の書の主の空間攻撃に対応するには貴女の防御力が必要よ。向かってあげて。」

『は、はい!』

「神場君、合図はエイミィに代わって私が出します。

 いつでも魔法の発動が出来るように備えてちょうだい。」

『うっす!』

 

テキパキと指示を出す艦長に感謝しながら、私は避難誘導中の魔導士達に通信を繋いだ。

 

 

 


 

 

 

「……はぁっ!? 民間人!?」

『うん! 場所は――』

 

……マジかよ。

臨海公園に近い場所じゃねぇか……!

 

『比較的近い位置に居て、動けそうな人は現地に向かって!

 それと避難誘導も大事だけど、撮られた映像の回収も出来たらお願い!』

「了解っす!」

 

≪おい! お前らのとこにも通信来たか!?≫

≪来た!! って言うか、魔法も使えないのに首突っ込むか!? 普通!≫

≪危険性を理解してないんだろ。ジュエルシードの時にネットの掲示板で注意促した時もそうだった。≫

 

そう言えばそうだったな……情報を規制した分、危険性も伝わらないって事は前にもあったか。

 

≪取りあえず、誰が一番近い!?≫

≪一番とかは良いから、取りあえず動けそうな奴は闇の書の主との大体の距離を測れ!

 腕を伸ばして人差し指を立てて、大体どれくらいの大きさに見えるかってくらいで良いから!≫

≪おい、それって身長によって結果代わるだろ!?≫

≪大丈夫だ! 銀髪オッドアイの身長は大体同じだから……!≫

≪あっ……その、ごめん。≫

≪同情してんじゃねぇぞ、トシィ!!≫

 

そんなこんなでそれぞれが距離を測り、報告し合う。

こう言う時にやっぱり念話ってありがたいな……情報の共有が早い。

 

 

 

≪距離が近いのは……トシか。≫

≪マジかよ……いや、行くけどさ。≫

 

テンション低いな……まぁ、マスコミの護衛って滅茶苦茶面倒くさそうだしな。

 

≪エイミィによれば保護対象はアナウンサーとカメラマン、加えて音声スタッフ1名の合計3人だ。

 転送魔法が安定しないから、身体強化+飛翔魔法とかで直接運ぶ流れになるだろう。

 加えて無防備な運搬中の護衛も欲しいな……お前の近くに他に動けそうな奴居ないか?≫

 

一人ずつ割り振っても4人は必須か。安全も考慮すると5人は欲しいな。

 

≪居るには居るけど、そんだけ一度に動かしたらこっちの誘導に支障が出る。

 動かせるとしても俺ともう一人くらいだ。≫

≪もう一人って言うと……≫

≪当然、あたしが行きますとも! 連携だって一番とれるしね!≫

≪トシ、もげろ。≫

≪もげろ。≫

≪理不尽過ぎる!?≫

 

いかん、思わずもげろと追撃してしまった。まぁ、幼馴染といい感じの付き合いしてるんだから甘んじて受けろとは思う。

 

≪……まぁ、これで二人は確保したな。最低でも後二人は欲しいが……神谷は行けそうか?≫

≪障壁担当な、了解。まぁ、こっちはもうすぐ避難場所に着くし、後二人くらいならこっちから出せると思うぞ。≫

 

神谷の誘導先って……確か学校の体育館だったっけ?

確かにあそこならもうそろそろ着いてもおかしくない頃合いだな。

 

≪よし、そんじゃあ人選は神谷に任せるわ。≫

≪あいよ。≫

≪トシ、股間にブラッディダガー受けてこい。≫

≪嫌だよ!?≫

 

……こんな調子で大丈夫なのかとは思うが、なんやかんやで上手く行ってきたからな。

まぁ、何とかなるだろう。

 

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