あの怪物が敵の本体ではないと判明し、最早手段を選んでいる場合ではなくなった。
だが手段を択ばないとしても、それは作戦の成功を前提としなくてはならない。
その為には当然、奴の本体が何処にあるかと言う問題が立ち塞がる。
「神場、奴の本体の場所を探し出す魔法は作れるか?」
俺は手始めに神場に魔法が作れないかと確認を取るが……
「……すまん、魔法を創る時は具体的なイメージを組まないといけないんだ。
サーチ系の魔法だと、例えば捜索対象の魔力波動を知ってるかとか言う条件が必須になる……」
例の怪物と本体の魔力波動が一致する確証がない上、一致した場合は怪物も捜索対象になるから身を隠される……か。
いくら自由に魔法が作れるとは言っても、何でも出来る訳じゃないって事か。
俺は神場に「分かった、ありがとう。」とだけ告げ、次にアースラに対して呼びかけた。
「エイミィ、アースラからの解析で奴の本体の座標に辺りを付けられるか?」
アースラに搭載されている設備を用いれば、力業になるがかなりの精度で探査が可能だ。
それを期待しての事だったのだが、エイミィからの返答はあまり芳しくない物だった。
『もうこっちでも解析は進めてて、あの怪物に魔力のパスが繋がってるのは分かったんだけど……それが一つや二つじゃないの!』
「何!?」
エイミィが言うには、ジュエルシードの捜索時にも使用した大規模魔力探査を試みたものの、魔力反応を示す光点が海鳴臨海公園中に多数確認されたらしい。
更に狡猾な事にその光点全てと怪物の間には魔力のパスが繋がっており、本体の判別が難しいとの事だった。
『その上魔力の流れも気配もバラバラで、もう虱潰しに叩くしか……』
「時間稼ぎのつもりか……!」
どうやら奴は俺達の予想通り、逃げるつもりらしい。
時間稼ぎをしている理由としては、恐らく転移魔法に必要な術式の構築や座標の割り出し辺りだろう。
奴もこの地球の次元座標は知らないから相対座標で飛ぶ事も出来ないし、知っている次元世界に座標指定をしようにも転移先まで魔力や術式が持つのかが不透明なのだ。
だが奴は一つミスを犯した。
海鳴臨海公園中に散らばった
それだけ分かっていれば方法はこの手の中にある……氷結の杖、デュランダルに……
「デュランダルの凍結魔法なら、この周辺全てをカバー出来る……か。」
「ふぅん……それがアンタの出した最善策って訳だ。」
「アリア、ロッテ……」
頭の中で大体のシミュレーションを済ませ、早速指示を出そうとした俺に待ったをかけたのはリーゼアリアだった。
そのすぐ隣にはリーゼロッテも並んでおり、こちらに向けているその目には何やら企んでいそうな気配が見えた。
「少なくとも僕にはこの方法が一番手っ取り早く、確実に思える。
奴が何を企んでいたとしても、行動を起こす前に封印してしまえば捜索もじっくり行えるだろう。」
「ま、アタシもアリアも概ねその意見には賛成なんだけど……ちょっと詰めが甘いかなってね。」
「……詰めが甘いと言うのはどういう事だ?」
今回のような状況下では敵の行動を封じるのが最優先だ。
対象の正確な位置こそ分からないが、潜伏している可能性がある範囲全てを覆えば問題は無い筈だが……
「なぁクロノ……アンタ今、どの範囲を凍らせるつもりだったんだい?」
「それは当然、海鳴臨海公園全域を……」
「その認識が甘いって言ってんだよ。
……クロノも本当は分かってるだろ?
アイツだっていずれあの怪物がデコイってバレる事が分かってたから、態々ダミーを幾つも用意したんだろうってさ。
そこまで想定して行動する奴が、ダミーの魔力波動を一切隠蔽しないなんて妙だと思わないかい?」
「ま、要するに『見つかった反応の中に本体が居る』なんて甘い考えじゃ、裏をかかれかねないって事だよ。」
アリアの言葉にロッテが捕捉を入れるが、そんな事は俺だって分かっている。
だからこそ俺は各個撃破ではなく広域封印を……待てよ、まさか……!
「まさか、君達は……正気か!?
そんな事をすれば民間人が巻き込まれる可能性が……」
「さっきも言ったろ? 考えが甘いんだって……さぁッ!」
俺の問いかけに、アリアは行動で以て答えた。
行動……即ち、俺が持っていたデュランダルを奪う事で。
「!? アリア、何を……!」
「クロノ……あんたこの期に及んで、『まだ街を傷付けない』とか考えてるだろ?
いい加減、秤にかけるって事を覚えな。
管理局に長く勤めりゃ、こんな選択肢なんて……何度も自分で選んで行かなきゃならなくなるんだよ!」
アリアはそのままデュランダルの矛先を海鳴臨海公園に向け、魔力を込め始めた。
込められた魔力の量は、明らかに海鳴臨海公園を封印するだけに留まるようなものではない……!
「なっ……アリア! 待て!」
その様子を見て彼女が何をしようとしているかを理解し、俺は咄嗟に声を上げた。
脳裏に過るのはアニメでクロノがそれを使用した際、海が
そんな物を今、この場所で撃てば……!
そう思い、止めようとしたところでロッテが俺とアリアの間に割り込んだ。
「待つのはアンタだってば、クロスケ。
心配しなくても大丈夫、アリアも何も街全部凍らせようって思ってないよ。
避難所にまでは届かないって。」
「バカを言うな!
避難所まで届かせるつもりが無くたって、民間人が付近に残っている可能性が……!」
先程のカメラマン達のように、興味本位で近くに来ている者が居るかも知れないんだぞ!
「
……聞き分けなよ、クロノ。事ここに至っては『犠牲を出さない』って正義すらエゴでしかないんだ。」
「――っ!」
リーゼロッテの言葉に、自分の覚悟が足りなかった事を気付かされる。
先程グレアム提督が言った『何が何でも見つけ出せ』とは、これほどの行為を要する事だったのだと。
次元世界全ての未来をかけた決断は、これほどの覚悟を強いるのだと。
「……ま、次からはこんな選択肢を選ばなくて良いように動きな。
今回は私が手本を見せてやるからさ。」
リーゼアリアに視線を移すと、集中を終えて開いた彼女の目が一瞬こちらに向けられた。
俺はその一瞬、彼女の目の中に宿る物を見て……こんな土壇場で、初めての覚悟を決めた。
「……リーゼアリア、デュランダルを返してくれないか。」
「さっき言っただろ、クロノ。アンタのやり方じゃ……」
「そうじゃない、アリア。……僕がやる。
僕の方が魔力の扱いにも魔法の制御にも長けている。君がやるよりも確実だ。」
俺がそう告げると、彼女はこちらを横目に見てニヤリと挑発的な笑みを浮かべた。
「……へぇ、言うようになったじゃないかクロノ。
だけど生憎、こればっかりは譲りたくないんでね。アンタは他の役目を……」
「僕の手を汚させない為に……か?」
「!? アンタ、なんで……」
俺の予想が当たっていたのか、初めてアリアが狼狽えた。
そして原因に辺りを付けたのだろう、鋭い眼でロッテを睨むが……
「えぇ、アタシ!? 喋ってないよアタシは!」
「ロッテじゃない。
……どちらかと言えば君の方だ、アリア。僕にそれを気付かせたのは。
君はロッテよりも魔法に長けている癖に、本心を隠すのはロッテよりも苦手らしい。
あんな眼で見られれば流石に気付くよ……僕だって君達の弟子なんだから。」
あの一瞬こっちに向けられた視線と目が合っただけで、なんとなくそれが分かった。
彼女の目には憎しみも野望も無く、ただ強い覚悟と……深い優しさしか無かったのだから。
「君が不安に思うのなら誓おう。
僕はこの魔法の制御に絶対に失敗しない。僕の手をこんなところで汚すようなミスはしない。」
「……さっきアンタが言ってたように、民間人の方が巻き込まれにくる場合だってあるだろう。
魔法を撃てば、例えそんな事情があったとしても撃った側の責任になるんだよ?」
「それも含めてだ。
まだ民間人が残っている可能性があるのなら、先にそれを0にするまで。」
「方法は?」
「神場がいる。」
「……へっ?」
視線を遣って名前を告げてやると、まさか自分の名前が出るとは思ってなかったのか間の抜けた声を出す神場。
「探査対象は魔力波動を持たない生物……これならば、君の言う具体的なイメージを固められるんじゃないか?」
「い、いや確かに出来なくはないけど、虫とか鳥とかまで探査対象に……」
「それなら問題あらへんで!」
やり取りに割り込むように話し始めたのは、八神はやてだった。
「最初にリインが張った結界の中に居るんは人間だけや。
そう言う風に区別して閉じ込めたってリインが言うとる。」
「リインフォースか……一つ確認なんだが、一度この結界を解除してから民間人を巻き込まない結界を張りなおす事は出来ないか?」
「それなんやけどな……リインフォースが言うには、可能やけどせえへん方がええらしいんよ。
今張られてる結界に転移を阻害する効果があるらしくてな?
アイツが時間稼ぎに徹底している理由の大半が結界を越える転移をする為って話や。
それを一時でも解除してもうたら……」
「なるほどな……」
エイミィもそんな事を言っていた。
複雑な転移や長距離の転移を行おうとすると、転移先の座標がブレるとか……
恐らくは結界内の対象を確実に閉じ込める為の機能なのだろう。
「ならばやはりここは神場に魔法を作って貰うのが確実だ。
聞いての通り、今の結界内に人間以外の生物はいない……この状況ならば可能だろう?」
「ん……まぁ、多分な。それなら魔法の創造にかかる時間も短くて済みそうだ。
……魔力の消費は、範囲が範囲だしちょっときつそうだが。」
「良し、では早速魔法の作成に掛かってくれ。
発動に魔力が足りないのであれば、シャマルに伝えて回復して貰うと良い。」
……取りあえずはこんなところか。
後は氷結魔法の範囲をどれだけ広げるかだが……
「まったく……あれだけ偉そうに啖呵切っておいて、最後は他人頼りかい?」
「適材適所、それを見極める事も指揮を任された僕の役目だ。
そして自分の指揮した作戦の責任を取るのもな。さぁ、デュランダルを僕に渡してくれ。」
正しいと信じる目的の為なら、他人を頼る事を躊躇うべきではない。以前はそれが出来ていた彼女達が、それを出来なくなった理由は想像に難くない。
きっと俺が知らないところでも色々と動いていたのだろう。そして背負う物ばかりが増えて行った……それこそ、誰かに手伝って貰う事を嫌がる程に。
いい加減にその荷物を払い落としてでも背中を軽くしてやるべきだ。
「……ふぅ、ここで私が強情張ったら、私とロッテを倒してでも奪い取るって目だね。」
「例えそうなったとしても、奴の転移魔法が完成する前には倒して見せるさ。」
「ホント、そう言うところはそっくりだね……今度は私達に引き金を預けてもくれないって訳だ。」
「……何の話だ?」
「ん? ……ああ、そう言えばあの時はまだ幼かったからね、話してなかったか……クライド君、アンタの父親の話だよ。
そうだね……この一件が片付いたら、今度こそ話すよ……アイツの最期の事……私達の罪を。」
そう言って、彼女は俺の手にデュランダルを返してくれた。
アリアに奪われる前よりも少し重く感じるその杖を、今度は誰にも取られないようによりしっかりと握りしめる。
「そうか……ならば絶対に成功させないとな。
父さんに胸を張って、仇を取ったと報告する為にも。」
≪……良かったの、アリア?≫
≪仕方ないよ、私が思ってるよりもクロノが強くなってたってだけさ。
私達も今までどうにかやって来てたけど、これはいよいよ本格的に世代交代って奴だね。≫
≪世代交代かぁ……見たところ次の世代はかなり豊作みたいだし、こりゃあ先輩風も吹かせられなさそうだね。≫
≪……引退したのに口出しなんて、未練がましい真似しないでよロッテ?
双子の私まで同じ目で見られるんだからね。≫
≪ちょ、ちょっとしたジョークだってば。≫
≪ふふっ、どうだかね。≫
≪……≫
≪何さ?≫
≪いや、笑ってるなーって。≫
≪急に何気色悪い事言ってんのさ……別に笑う事くらい今まで何度もあったでしょ。≫
≪フッ……それは君の笑顔が久しぶりにキレイに見えたからだゼ、baby……≫
≪……≫
≪痛ったぁ!? 何も
≪顔がムカついた。≫
クライド君完全に死んだ扱いですが、実は未だに原作通りの死亡ルートにしようか生存ルートにしようかで迷ってます。(生きてたとしてもどのみちグレアム一派は知らないのですが)
そして迷っているという時点で分かるように、ここで生存しても特にこの後出番が増える訳でもありません。
……プロットがまた壊れたら出番があるかも?(そうならないようにはしますが)
そんな感じなので個人的には生存ルートでも良いとは思ってるのですが、
クライド君が生存してるとグレアムさん達の空回り感が凄い事になるんですよね……
と言う訳でアンケートです。
クライド君は生きている?
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原作通りエスティアと……(死亡ルート)
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Yes, I am!(生存ルート)