転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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凍結魔法

多少のいざこざこそあったものの結果として作戦は纏まったようで、クロノからの念話で作戦の詳細が神場を除く全員に共有された。

 

作戦についておさらいすると、先ずは神場の魔法で周辺区域に民間人がいないかを確認後、もしも民間人が居た場合は多少強引な手を使ってでも避難所に送り届ける。

始めから居なかった場合、または避難所に送り届けた後にこの周囲全てをデュランダルの広域凍結魔法で封印し、敵の行動を全て封じた後で本体の捜索を行うという事らしい。

 

神場が外された理由だが、彼は既に魔法の作成に入っており、目を瞑ってイメージを固める事に集中しているからだ。

神場曰く、イメージがホントに少しでもずれると変な事になるらしい。そうして出来た失敗魔法は10や20では無いのだとか。

……因みに銀色の変な玉は成功判定らしい。何のこだわりがあるのか、そこは頑なに譲らなかった。

 

≪――作戦は以上だ。何か質問のある者は?≫

 

……俺が変な事を思い出している間に、作戦の共有が済んだのだろう。

念話でそう尋ねるクロノに対して、フェイトが小さく手を挙げて尋ねる。

 

≪凍結封印を成功させたとして……それで敵の行動を全て封じられるという保証は?≫

 

質問の内容は凍結封印の信頼性に関してだ。

確かに転生者側の持っている知識だと、エターナルコフィンは闇の書の闇に対しては時間稼ぎの用途で使われた印象が強い。……トリプルブレイカーの印象が強いだけかもしれないが。

 

≪あの魔法は元々……あー、まぁ、気を悪くしないで欲しいんだけどさ……闇の書の主に使う予定だったんだ。

 闇の書は主から引き剥がされたり、主の死を感知すると転生しちまうって厄介な機能があったからね。

 何を言いたいかって言うと、要するにそれらを防ぐための機能は一通り揃ってるって事だよ。

 『主の生命保存』『魔法の封印』『行動の阻害』……氷の中で出来る事って言ったら、それこそ『考える事』だけだよ。≫

 

この質問に答えたのはクロノではなく、リーゼアリアだった。

デュランダルに記録する魔法を決めたのは彼女達であり、その際に闇の書についてどんな魔法が有効かは当然吟味したはずだ。その事を考えればリーゼアリアが質問に答えたのは当然の流れと言える。

 

言えるのだが……

 

≪……貴女達は、そんな魔法をはやてちゃんに……!?≫

 

その情報を明かされると、俺としてはこう聞き返す他ない。

 

あらゆる自由を奪い、生かし続けながらも思考以外を許さない魔法……改めて聞かされると、やはり小学生の女の子に使って良い魔法ではない。

はやての友達として、これについて言及しない訳にはいかなかった。

 

≪今更言い訳はしないよ。そのくらいの事をしないといけない理由があった。

 まぁ、実際やり方は間違ってたんだろうけどね……≫

≪この一件が終わったら然るべき裁きは受けるよ。元々そのつもりだったしね。

 ……勿論『だからそれで許してくれ』なんて言うつもりは無いけどさ、今だけでもそれで納得してくれないかな。≫

 

リーゼアリアの返答に、リーゼロッテが補足を入れた。

然るべき裁きがどれほどの物か、管理局法について詳しくない俺には正確な事は分からないが、それでも覚悟していた事だけはその声から伝わって来た。

 

≪なのはちゃん、私はもう気にしてへんから大丈夫や。

 結果論になるけどこうして私は助かったし、ヴォルケンリッターって言う家族も出来て……今こう言うのは変やけど、結構幸せなんよ。

 だから大丈夫や。≫

≪はやてちゃん……うん、分かった。

 ……ごめんね、ちょっと気になっちゃって。≫

≪ううん、心配してくれてありがとうな。≫

 

はやてがそう言ってくれた事もあって、俺は矛を下ろした。

やはりと言うかなんと言うか、はやてはかなり大人びた……と言うか、自己犠牲的な思考をしているらしい。

あんな話を聞かされたらもっと動揺と言うか、ショックを受けると思ったのだけど。

 

≪……話を戻そう。凍結魔法の信頼性についてだったな。≫

≪あ、会議を中断させてごめんなさい……≫

≪いや、他ならぬ友人の事とあっては仕方がない。寧ろすぐに矛を収めてくれて助かったよ。

 ……さて、肝心の凍結魔法『エターナルコフィン』についてだが、これは先程アリアが言ったように、大抵の生物に対しては有効だと考えられる。

 元々対闇の書も想定されていた事もあって、凍結された対象の魔法も封じる事が出来る事は確かだろう。

 ただし、今回の相手に限って『絶対』は無い。だからこそ、凍結魔法を使用した後も油断はしないでくれ。≫

≪はい。≫

≪それと……あぁ、これは先に伝えておくべきだったな。

 今回この魔法を使う主目的としては『敵の行動を封じる事』だが……僕としては、この魔法の発動で敵が()()()()()()()()()を起こす事を期待している。

 それこそ本体の居場所を自らバラす様な、大きなアクションをな。

 各員、その様子にも注意を割いてくれると頼もしい。≫

≪はい!≫

 

その後それぞれの立ち回りに関する確認を終え、いよいよ作戦開始の合図を待つのみとなった。

俺の役割は砲撃による支援だ。

……とは言っても、ヴィータがデレックをずっとドリってるので支援の必要性は薄いが。

 

≪……良し、ではそろそろ動くとしよう。

 神場の魔法で民間人の存在を確認し……周囲に民間人が居なければ、僕はエターナルコフィンのチャージに入る。

 それまでこの作戦が敵にバレないよう、注意してくれ。

 では、作戦開始!≫

 

 

 

 

 


 

 

 

≪ああ、クソッ! コイツのこう言うところが昔っから気に食わなかったんだ!!≫

≪落ち着け、ヴィータ。作戦がバレる原因になりたくはないだろう。≫

≪解ってるよ!≫

 

……ヴィータはどうやら余程ご立腹らしいな。

 

クロノの作戦を聞いた後、ヴォルケンリッターに念話を繋いだところで、間を置かずに彼女の怒声が響いた。

 

ザフィーラが宥めているが、彼女の腹の虫はしばらく収まらないだろう。

何せ今までの怒りを込めた魔法を放った相手が身代わり人形だったのだからな。

 

……思えば、彼女にあの魔法を使うように言ったのは私だったな。彼女には後で何か奢るなりして機嫌を取るとしよう。

 

そう考えながら、周囲を見回す。

今、私の視界に広がっているのは海鳴臨海公園の林……そして、その所々で不気味に蠢く黒い肉片の数々だった。

 

先程クロノから伝えられた作戦を心の中で反芻する。

 

――やはり、あの怪物はただの人形だったか。

 

あの戦いの途中、私の記憶にあるデレックの行動との齟齬に違和感を抱き、海で火を消したついでに少し調べてみたが……その結果として見つかったのが、これらの大量の肉片だ。

 

最初はヴィータの攻撃で飛び散ったものかと思ったが、様子から見て明らかに違う。

それぞれがまるで心臓のように脈動し、その度にまるで呼吸するかのように魔力を吐き出している。

 

この行動に何の意味があるのかは不明だが、どうせ碌な物ではあるまい。

 

≪シグナム、そちらの様子はどう?≫

 

肉片の観察をしていると、シャマルから念話で呼びかけられた。

調査の傍ら、彼女には定期的に観察の結果で分かった事を伝えていたのだ。

 

≪例の肉片に関しては相変わらず自発的に動く気配はない。

 最初はこの中に奴の本体が、とも考えたが……私の記憶にある奴の性格から考えて、恐らくはこの中に本体は無いだろうな。≫

≪そうね、彼の性格から考えれば……『放置していると鬱陶しいけど、触るともっと面倒な何か』って可能性が高いと思うわ。≫

 

シャマルも私と殆ど同じ結論に至ったらしい。

彼女もあの男には色々と嫌な目に会わせられていたからか、どこかその口調には刺々しいものが混ざっているように思う。

 

≪同感だ。……まぁ、クロノの作戦が上手く運べれば本体の場所は分かるだろう。

 調査は切り上げて合流する。≫

 

そろそろ私が戻らない事を奴が不審に思ってもおかしくはないからな。

 




アンケートの結果、クライド君生存ルートに決定しました。
ご協力いただき、ありがとうございました!

ただ生存しているとは言っても、事前に書いた通りクライド君は本筋にはあまり絡まないです。

クライド君の生存発覚&再会→その後に関してはA's編の後の空白期に短編として書きます。
多分1話で纏めますが、長くなれば2話になるかな……って感じです。

他の短編は基本的に空白期を利用した季節イベント(今までガン無視していたクリスマスとか)と、結構前に感想欄で希望のあったマテリアル娘がいる世界のIFになります。

実はまだ内容に関してはぼんやりしてますが、元々リクエストが切っ掛けですので大体の内容をアンケートで決めたいと思います。


マテリアル娘IF話 内容は? (長くなっても3話くらいになります)

  • GOD後の日常回
  • GOD本編の終盤
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