転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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奇襲

本体を引き摺り出されたデレックの行動は早かった。

 

「直ぐに僕の手で殺してやる」……その言葉を言い終わるか否かと言うタイミングで、奴は俺に向けて奇襲じみた先制攻撃を放ったのだ。

 

魔力を片手の先に集めて放つ……そんな単純な魔力弾さえ、膨大な魔力が注がれれば致命の一撃だ。

そんな威力の一撃に対して事も無げに立ち塞がったばかりか、魔法の補助も無くあっさりと斬り飛ばしたシグナムに俺はただただ驚愕する他なかった。

 

「どうしたデレック? お前との因縁は私が最も深いだろう。」

「シグナム……!

 ……ふん、貴様が斬ったのはただの人間(オリジナル)に過ぎない……僕はアイツとは違う。

 さっき僕に燃やされて逃げ出す事しか出来なかった奴が、僕に口答えするな!」

「どうやら、あの時から何一つ成長していないらしいな。

 だからこそ……これからあの時と同じ末路を辿る事になる。」

 

やはりシグナム達ヴォルケンリッターとしては、自らの手で決着を付けたいのだろう。

レヴァンティンを構えるその眼の鋭さは、今まで何度も対峙したのにも拘らず見た事の無いものだった。

 

「待て、シグナム……既に情報は十分得られた。

 これ以上君達に任せっきりでは、流石に管理局の沽券に関わる。」

「しかし……いや、これ以上は我が儘と言う物か……」

「……因縁の決着に拘る君達の気持ちは、僕にもよく分かる。

 だからここは共同戦線と行こう……どうやら僕の因縁の相手も、同じらしいからな。」

「クロノ……分かった、ならば指揮は任せる。

 我等、ヴォルケンリッターの力を存分に活かすと良い。」

「感謝するよ、シグナム。」

 

シグナムの要請を受けたクロノは、早速念話にてこの後の作戦を伝え始めた。

その中で前衛を任されたシグナムは既にデレックに切りかかられる形で戦闘に入っており、クロノの指示で前衛を任されたフェイトがその支援に入った。

 

俺はどうやら今のところ、後方支援と言う役回りになるらしい。魔法にまだ慣れていないはやても俺同様、後方支援だ。

 

「よろしくね、はやてちゃん。」

「なのはちゃん! こちらこそや。

 それでな……魔法の事はリインフォースに教えて貰ったんやけど、実戦にはまだ慣れてへんから、アドバイスとかお願いしてもええか?」

「もちろんだよ! ……って言っても、私もまだ半年くらいなんだけどね。」

 

俺とはやてがそんな会話をしていると、直ぐ近くで会話しているヴィータとシャマルの声が耳に入った。

 

「……? んー……?」

「なんだよシャマル、なんか気になってんのか?」

「ちょっと、さっきのシグナム達の会話が頭の隅に引っ掛かってて……

 多分、あまり関係無い事だとは思うんだけど……?」

「? ……まぁ、関係無いなら今は良いじゃねぇか。あたしは前衛任されたし、そろそろ行くぞ?」

「ええ、怪我をした時は任せて頂戴ね。」

 

そう言って前線に飛んでいくヴィータの他にもザフィーラやリーゼロッテ、恐らく近接戦闘が得意であろう数名の銀髪オッドアイがデレックに対して攻撃を仕掛け始めた。

 

「じゃあ、私達も始めようか!」

「うん!」

 

その様子を見ていた俺とはやても、それぞれの杖を構えるが……

 

≪後方支援担当の者へ!

 標的の体を覆う鱗は魔法を受け流す性質がある為、

 それを無効化できる攻撃かバインドを中心とした支援を頼む!

 繰り返す! 標的の体を覆う鱗は……≫

 

――という事らしい。

 

いや勿論忘れていた訳ではない。ザフィーラの魔法が鱗によって歪められた光景だって見てた事だしな。

念話を送ったクロノの目が俺を見ていた気もするが、きっと気のせいだろう。

……でもとりあえず、砲撃のチャージは中止しておこうかな。

 

「と、とりあえず私達はバインドで支援を……」

 

気を取り直してはやてにそう伝えようと振り向くと、何やら考え込んでいる様子のはやての姿があった。

……いや、はやての状況を考えるともしかしたらリインフォースと話していたのかも知れない。

 

そして考えが纏まったのか、はやてがその口を開いた。

 

「……なぁ、なのはちゃん。私、あの鱗どうにか出来るかもしれん。」

「えっ」

 

……えっ!?

 

 

 


 

 

 

≪クロノ君! あの鱗、はやてちゃんが対処出来るかもって!≫

≪何、本当か!?≫

≪は、はい……リインフォースが言うにはですけど……≫

 

なのはちゃんに言われた通り、クロノさんにリインフォースから聞いた方法をそのまま伝える。

その詳細を聞いたクロノさんから許可を貰い、私に一つの魔法の使用が許された。

 

「はやてちゃん、冷静にね……!」

「う、うん……!」

 

既にチャージを済ませ、白い光を湛えた杖の先端が大きく震える。私の緊張がそのまま腕を伝わり、表出しているかのように。

 

……この魔法だけは外す訳には行かない。

万が一にも魔導士の誰かに当たるような事があれば、悲惨な事になるからだ。

故に今はこの魔法を確実に当てる為の、味方に絶対当たらない為のクロノさんの合図待ち。

 

<はやて、大丈夫です。私もアシストしますから。>

<う、うん……お願いな。リインフォース……!>

 

はやてちゃんとリインフォースに支えられ、少しだけ杖の震えが収まったその時……

 

≪はやて、準備は出来たか? カウント行くぞ!≫

≪ク、クロノさん……はい、いつでも……!≫

 

まだ完全に緊張が解れた訳じゃないけど、クロノさんもそれは分かっている筈だ。

だから私はそれを信じるしかない。この魔法は私しか使えないから……!

 

≪5!≫

 

「アクセルシューター……!」

 

なのはちゃんの構えるレイジングハートの先端に光が灯る。

普段ならば主火力となるであろう彼女の魔法も、今回は私の魔法の補助だ。

 

≪4!≫

 

「――シュート!」

 

光が弾け、合計20本の光の筋が空気を裂いて標的に向けて翔ける。

それと同時に、前衛を任せられていたシグナム達が一斉に距離を取った。

 

≪3!≫

 

「!?」

 

急に開けた視界に戸惑ったのか、硬直していたデレックを中心に包囲するように旋回するアクセルシューター……

 

「“バースト”!」

「ちっ……!」

 

なのはちゃんのその掛け声で10個のシューターが融合……5つの魔力爆発により、デレックの視界は煙に包まれた。

 

≪2!≫

 

「“バインド”!」

≪Long Range Bind.≫

「ぬぅっ!」

 

なのはちゃんのコマンドワードと、リーゼアリアさんのバインドの魔法が煙の中で炸裂する。

煙に包まれたデレックの様子は分からないが、

なのはちゃんは手応えを感じたらしく、シャマルに合図を送っている。

 

≪1!≫

 

「クラールヴィント!」

 

先程の再現とばかりに強化されたワイヤーで縛りにかかるシャマル。

クラールヴィントが飛び込んだ煙が晴れた時、そこにはワイヤーと複数の拘束魔法で雁字搦めになったデレックの姿があった。

 

≪0! はやて!≫

 

<リインフォース!>

<はい、はやて!>

 

リインフォースがアシストしてくれたのだろう、魔力が体に漲り、震えが止まる。

……あれ、これ強制的に固定されて……いや、今は好都合!

 

「彼方より来たれ、宿り木の枝……」

 

この魔法は威力こそ無いが、他の魔法には無い強力な効果がある。

 

「――銀月の槍となりて、撃ち貫け!」

 

それは対生物に於いて『絶対』だと、リインフォースが保証してくれた。

 

「石化の槍、ミストルティン!」

 

そう、その効果とは……生体細胞の構造を作り変え、凝固させる性質だ。

どんな魔法も受け流せる鱗だろうと、生物の持つ特徴の一つでしかない……そして当たり前だけど、受け流すという事は『触れる』という事だ。

 

自らに迫る合計7本の光の性質を知らないデレックは、拘束されながらも自信満々と言う様子で魔法を受け……

 

「……なぁッ!!?」

 

その体が石と化していく光景に、その目を見開いた。

そして数秒の後、そこには顔を醜く歪めた男の石像だけが残った。

 

「……ふぅっ……!」

<ありがとな、リインフォース。>

<いえ、大した事はしておりません。それよりも……>

<うん……分かってる。まだ終わってへんよな……>

 

リインフォースと会話しながらも、決してデレックから目を離さない。

魔法の力を得たからこそわかる……今も奴の中で蠢く膨大な魔力の鼓動が。

 

そして石像の表面に罅が入り、内側から魔力が漏れ出す。

漏れ出た魔力は直ぐに形を成し、再びあの邪悪な意思の元に動き始めるだろう。

 

次の戦闘に備えて意識を切り替えようとした、その刹那……

 

<はやて!!>

<えっ>

 

私の意識の間隙を縫うように、石像の罅から黒い槍状の何かが飛び出し……凄まじい速度を以て迫って来るのが見えた。

 

狙いは私の心臓……やけにスローに見えるその一撃を躱そうにも、身体はそれ以上に重く、思うように動かない。

当然だ、ゆっくり見えているのは私の意識が加速しているだけなのだから。

 

これはまるで死を直感した瞬間に見る走馬灯の様な物で、それが見えてしまったという事は私は……

 

 

 

――ごめん、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ……私、ここまでみたい。

 

別れの言葉を伝える事も許さないそれは、私の直ぐ目の前に迫り……

 

 

 

「はやてちゃんッ!!」

 

私を突き飛ばした誰かの体を貫いた。

 

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