転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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はやてさん視点です


トリプルブレイカー

「す、凄いなぁ、フェイトちゃん……」

 

今日初めて目の当たりにしたフェイトちゃんの戦いは、私の心に大きな衝撃を齎した。

何せ、アニメで知っていた戦い方と全然違うのだ。

きっと銀髪オッドアイ達が絡んだことで、彼女の成長や魔法にも大きな変化があったのだろう。

 

特にあの結晶状のバルディッシュに関しては全然知らない魔法だったし、今後の変化に備える為にも一度話を聞いてみたいな……

 

「はやてちゃん!」

「あ……うん!」

 

なのはちゃんの声に意識を引き戻され、思考に没頭していた私は慌てて杖を構える。

 

そうだ、デレックは今フェイトちゃんの魔法によって感電している。なのはちゃんの体験談によれば、あの状態の時は魔法の発動も阻害されるらしく、現にデレックの結界が再生する兆候も見られない。

作戦通り、バインドを撃つ絶好の機会なのだ。この機を逃す訳には行かない。

 

なのはちゃんの足元にミッド式の魔法陣が、

私の背後にベルカ式の魔法陣がそれぞれ浮かぶ。

そしてアイコンタクトでタイミングを合わせると、私達の魔法が同時に発動した。

 

「レイジングハート!」

≪All right! Restrict Lock!≫

「リインフォース!」

<はい、はやて!>

「<“グレイプニル”!>」

 

私の放った細い紐状の光がデレックの四肢を縛り、なのはちゃんの生み出した光輪がその上からさらに拘束する。

これでなのはちゃんのレストリクトロックが行動を、私のグレイプニルが魔法の発動をそれぞれ封じた。

 

後はデレックに最高火力を叩き込めば……と言いたいところだが、どうやらデレックはまだ足掻こうとしているらしい。

 

「ぐっ、この魔法は……グレイプニルか! それならまだ……!」

 

そう言うとデレックの背中から突然生えた無数の触手が、その先端に鋭利な爪を備えるのが見えた。グレイプニルはデレックの生きた時代には既にあった為、奴もグレイプニルの弱点……魔法そのものの脆さを知っていたのだろう。

 

しかし、それが振り下ろされる瞬間……

 

「「“ストラグルバインド”!」」

「なっ……!?」

 

死角から伸びた()()()魔力の糸が触手を縛り、そのまま切り落とした。

それを成したのは、この状況を想定していたであろうクロノ君と……

 

「今の声は……ユーノ君!」

「ふぅ……間に合ったようで何よりだよ、なのは。」

 

なのはちゃんが見つめる先にいつの間にか現れていた、ユーノ君の二人だった。

 

「ユーノ、急な要請に応じてくれた事……感謝する。」

「いや……実のところ、僕もお世話になった地球の危機には正直力になりたいとは思っていたんだ。

 ただ、僕自身は戦闘があまり得意ではないからね……地球には何故か魔導士も多いし、正直戦力外だと思って遠慮していたんだよ。

 だから、寧ろ頼って貰えたことは僕にとって嬉しいくらいかな。」

 

二人の会話から察するに、ユーノ君を呼んだのはクロノ君の計らいだったらしい。

中々見ないなと思ってはいたけど、本当に地球に居なかったのか……

 

「君のサポート能力の高さを見込んで頼みたい事がある。

 とは言っても、内容に関してはもうエイミィから聞いているとは思うが……」

「うん、大体の事は聞いている。長距離転送に人手が足りないんだろう?」

「ああ。軌道上に転送する際の魔力量の試算結果では、流石のシャマルでも一人では厳しいらしい。

 ただ転送するだけならば問題無いのだが……転送中に術式に抵抗されれば、却って奴の逃亡の手助けにしかならないからな。

 うちの魔導士(銀髪オッドアイ)達は魔力は高いんだが、戦闘特化が殆どでね……

 転送魔法の適性そのものが無い者も……っと、今は愚痴を言う時ではないな。後はあそこに居るシャマルと段取りをつけてくれ。

 奴の抵抗の阻害は僕一人でも問題無い。」

「分かった。じゃあなのは、また後でね。」

「うん!」

 

そう言ってシャマルの所に飛んでいくユーノを見送ったなのはちゃんは、やがて気付いたように私に彼の事を話してくれた。

 

「あ! さっきの子はユーノ君って言ってね、私に魔法を教えてくれた子なんだよ!」

 

前世の記憶で知っているけど、ここは話を合わせておこう。

 

「へぇ、そうだったんや! なら私も後でお礼せんとあかんなぁ。」

「お礼?」

「うん。私を助けてくれたなのはちゃんに魔法を教えてくれたなら、私にとっても恩人同然やし。

 ……もしかして、困るやろか?」

「ううん! そんな事はないと思うよ!」

 

……なんか騙してるみたいで心が痛むな。一応ユーノ君に感謝の念を抱いているのは本心だけど、こうして私が口に出すのは『(はやて)が無害な人間だ』と管理局の人達に思わせたいと言う理由もある。

 

そうまでしないと不安なのだ。

アニメでは闇の書に恨みを持つ者が多いと言う描写があったし、この後の私やヴォルケンリッターに対する当たりの強さは想像に難くない。

私がヴォルケンリッターの皆と一緒にいる為に、私は『良い子』でないといけないのだ。

 

≪こちらユーノ! 転送魔法の準備できたよ!≫

≪シャマルです! 同じく準備完了、いつでも行けます!≫

「……やろう、はやてちゃん。これできっと最後だから、『全力全開』で!」

「うん、『全力全壊』やね!」

 

私の家族を長年にわたり苦しめ続けた相手だ。言われなくとも容赦はしない。

 

「じゃあ急いで場所を移そう! レイジングハート!」

≪Axel Fin.≫

「“スレイプニール”、羽搏いて!」

 

砲撃の余波が街の方に行かないように、予め打ち合わせていた通りに街を背にする座標へ急ぐと、そこで既にフェイトちゃんが待っていた。

 

「なのは、はやて……終わらせるよ。」

「うん!」

「ああ!」

 

三人で頷き合った後、互いに距離を取る。

これはそれぞれの砲撃が互いに干渉しないようにする為であり、決してSLBが怖いからではない。

 

「バルディッシュ!」

≪Yes, sir.≫

 

先程の攻撃で刃を失ったバルディッシュに、再び刃が生み出される。今度は純粋な雷の刃が。

そして足を開き、バルディッシュを振りかぶった姿勢で静止……目を瞑り、しばらくするとバルディッシュの刀身が激しく輝いた。

 

「レイジングハート!」

≪Star Light Breaker Over Charge Shift!≫

 

なのはちゃんが正面に構えたレイジングハートの前に星が集い、先ほど見たよりも大きな光球が生み出されて行く。

エクセリオンモードは使わないようだが、その代わりに……

 

「カートリッジ、ロード!」

≪Load Cartridge.≫

 

レイジングハートがロードしたカートリッジの数は“6発”……なのはちゃんが持っているマガジン丸々一つ分だ。

すると光球の周りに薄い膜の様な光が生まれるのが見えた。

 

なのはちゃんも私が知らない魔法を……いや、この場合はバリエーションと言うんだっけ? を持っているみたいだ。

名前の響きから察するに、多分とびきり物騒な魔法に違いない……『全力全壊』にふさわしい一撃になるだろう。

 

私もそれに応えられる一撃を撃たなければ……!

 

杖を掲げる。

足元に円を基調としたミッド式の魔法陣、放射面にベルカ式特有の正三角の魔法陣がそれぞれ展開する。

 

今の私が使える最大規模の砲撃である『ラグナロク』は、発動に夜天の魔導書に蓄積された莫大な魔力を使用する。

その上消費された魔力の回復には時間がかかる為、失敗は許されない。だけど……

 

<リインフォース、アシストお願いな!>

<お任せ下さい、はやて!>

 

リインフォースと二人で撃つのなら安心できる。

この魔法の制御に失敗する事は、万に一つも有り得ないのだと。

 

私の身長を優に超える大きさのベルカ式魔法陣……その三つの頂点にチャージされた魔力が、それぞれ巨大な光球を形成する。

 

 

 

「雷光一閃! “プラズマザンバー……!」

 

フェイトちゃんがバルディッシュを大きく振りかぶった。

その魔力が呼び寄せたのか、バルディッシュに落ちた雷がその輝きを更に強くした。

 

「全力全開! “スターライト……!」

 

なのはちゃんの前方に浮かぶ光球は今にもはちきれんばかりに膨らんでおり、まさに破裂寸前の風船といった様子だ。

そこから感じる魔力の威圧感は、味方である筈の私にさえ何処か恐ろしさを感じさせた。

 

「響け、終焉の笛! “ラグナロク……!」

 

そして私のラグナロクもまた、それに負けず劣らずの輝きを放っている。

だが威力と言う一点では流石に今のSLBには一歩譲る事になるだろう。

 

<……少し、悔しいですね。

 私は自らの力を誇示する趣味は持ち合わせていませんが、

 それでも私達の最高の一撃をここで示すつもりでしたから……>

<リインフォース……>

 

……リインフォースは、まだ私に隠している事がある。

その理由の為に、ここで彼女の言う『私達の最高の一撃』を刻みたかったのだろう。

 

「「「ブレイカー”!!」」」

 

そして放たれた3つの砲撃は、未だ拘束を破る事の出来ていないデレックに直撃し……

 

「――――――ッ!!」

 

その断末魔さえかき消す程の轟音と共に、私達の因縁の終わりを告げた。

 

 




えげつないオーバーキルを受けたデレック!
でもコアはまだ残ってる! ここを耐えられれば生き延びられるんだから!

次回「アルカンシェル」! デュエルスタンバイ!



以下補足

捕捉1
トリプルブレイカーの時、フェイトさんが通常のプラズマザンバーブレイカーを撃った理由は、アリシアとの連携時の効果が協力砲撃と言う状況に向いていないからです。
因みにどうなるかを分かりやすく説明すると、「ブラストカラミティ」みたいな事になります。
砲撃が拡散してしまうと威力が集中できないので、今回は無しという事になりました。

捕捉2
途中ではやての使用したグレイプニルですが、多分原作には登場しないオリジナルの筈です。
(全ての魔法を覚えている訳では無いのでもしかしたら名前は出てるかも)
『A's時点で』はやてが使用した魔法(スレイプニール、ミストルティン、ラグナロク)はどれも北欧神話からとられているので、北欧神話で拘束と来たらやっぱりグレイプニル!と、それに因んだ名前としました。

効果は魔法の発動の阻害と拘束です。ただし魔法の阻害にリソースを多く割いており、バインドそのものの強度はかなり弱く、本当に対象の行動を封じようとするならば他のバインドで補助する必要があります。
そしてストラグルバインドとは違って脆い為、体を魔力で構成する魔法生物に対しても攻撃として使用は出来ません。

ついでに言うと『魔法の発動を阻害する効果』は『既に発動された魔法をかき消す効果ではない』為、強化魔法の解除も出来ません。(こう書くとコンマイ語っぽいですね)
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