転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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チャンピオンミーティングの育成と古戦場が重なったばかりか、ミラーズランキングとオリンピックも重なるっていうね……へへ……

イベント密度がエグイ!!


アルカンシェル

「ここまでは大丈夫……後は、私がコアを捕らえるだけ……!」

 

3つの閃光が空を白く染める中、シャマルは『旅の鏡』の探査機能を用いてデレックのコアを探していた。

 

本来『魔力波動の反応を追う』と言う探査魔法の性質上、今のように高濃度の魔力砲撃の中とあってはその精度が落ちるのが一般的だ。

しかし、シャマルにはそんな状況下でも対象の反応を見つけられると言う自信があった。

その根拠は今まで長い間戦ってきたからでも、鍛錬を欠かさなかったからでもない。

 

「貴方の魔力を……私達(ヴォルケンリッター)が見失うはずがないでしょう……!」

 

その言葉の通り、シャマルは程なくして魔力の奔流の中を泳ぐように逃げるデレックのコアの魔力を捕らえた。

 

「捕まえ……た!」

 

『旅の鏡』の中心にデレックのコアが浮かび上がる。

白く力強い魔力の激流の中にあってもなお、そのどす黒い魔力波動の放つ不快感はシャマルの顔を顰めさせた。

 

「これが……彼の核かい?」

 

シャマル同様、その魔力波動に対する嫌悪感を隠さぬ表情でユーノが尋ねる。

 

「ええ、間違いないわ。後はこの核を衛星軌道上まで転送するだけ……!」

「分かった。アシストは任せて。“ストラグルバインド”!」

 

そう言ってユーノが旅の鏡に手を翳すと、その手の平から伸びた術式がコアに纏わり付いた。

 

「これで数分間は動きを封じられる。今の内に!」

「ええ!」

 

ユーノの合図で二人は同時に転送の術式を組み上げる。

 

「「長距離転送、開始!!」」

 

そして術式の発動と同時に環状魔法陣が発生し、天の果てまで伸びた光がデレックを地球から追放した。

 

 

 


 

 

 

「デレックのコアの転送開始を確認!」

「術式安定! 術式に対するデレックの抵抗も確認できません!」

 

アースラのブリッジ内に、オペレーター達の声が響く。

闇の書事件の恒久的な解決を目前に、その声には隠しきれない興奮が浮かんでいるように思える。

 

……そして、それは私も同じ。

 

「アルカンシェル、バレル展開!」

 

アースラの前方に伸びる環状魔法陣……アルカンシェルの砲身を見て、脳裏に過るのは11年前の闇の書事件。

私にとって、クロノにとってかけがえない、大切な人を失った事件の記憶。

 

「ファイアリングロックシステム、オープン!

 命中確認後、反応前に安全距離まで退避します! 準備を!」

「「「了解!」」」

 

懐から起動用のキーを取り出し、『Arc-en-ciel』と書かれたその文字を見つめる。

『アルカンシェル』……11年前の闇の書事件の際に使用され、結果的にとは言え私の夫であるクライドの命を奪う事になってしまった兵器だ。それに対してかつて抱いた思いは、決してポジティブな物ではなかった。

 

だけど、今再びそれが必要とされる時が来た。……必要としている、私が居た。

 

その事を実感しながら、起動キーを空中に浮かんだ箱状の端末に差し込む。

 

アースラの遥か前方には、長距離転送の術式で作られたシリンダーが伸びている。

その中を、術式に包まれたデレックのコアが上って来るのが見える。

 

全て『転送直後に狙い打てるように』と、ユーノ君達がわざわざ可視化させてくれたものだ。

彼等の頑張りを、気遣いを無駄にはしない。チャンスは一度切り……転送直後、デレックが何らかの方法で逃げる前に確実に決める!

 

「アルカンシェル……発射!」

 

宣言と同時に、差し込んだカギを回す。

アルカンシェルの砲身を通り、アースラに蓄積された魔力がレンズのように広がる。

その直後……

 

『――ッ!!』

 

転送が完了したデレックが、着弾地点に姿を現した。

距離が遠く、肉眼では判別しづらいが……モニターの映像によると肉体の再構成は終わったものの、ユーノ君のストラグルバインドにより身動きが取れず、もがいているようだ。

 

その顔に浮かんだ恐怖に、僅かばかりの憐れみを抱くが……既に引き金は引かれた後だ。仮に私に止めるつもりがあったとしても、もう誰にも止められない。

 

そして全てを消滅させるアルカンシェルの閃光が、デレックの身に着弾した。

 

「――着弾確認、反応を観測しつつ退避開始!」

「「「はっ!」」」

 

直ぐにオペレーターに指示を出し、モニターに映る対消滅反応を眺める事数分後……

 

「効果空間内の物体、完全消滅……再生反応は――ありません!」

 

エイミィの報告によって、因縁が終わった事を実感した。

 

 

 


 

 

 

「グレアム提督、私達の……闇の書への因縁は終わりました。」

 

全てを終え、歩いてきたリンディ提督が私にそう告げる。

 

「……ああ、ここでしかと見届けさせてもらったよ。

 この結果は私の予想していた形とは大きく違ったが……

 これで良かったのだと、心の底からそう思う。」

 

この言葉に嘘偽りは一切ない。

計画こそ阻止されたが、結果としてそれが良い結末に繋がるのならば本望だ。

 

「事件の解決直後ですが、貴方にはお尋ねしたい事があります。」

「……ふむ。私が答えられる事であれば、答えよう。」

 

事件は終わった……想像し得る中で最も犠牲の無い方法で。

この後自らの罪を告白すれば、私が時空管理局に戻る事もまた無くなるだろう。

 

その前に何か彼女の力になれる事があるならば、何でもしよう……そう考えて返答した私にとって、彼女の発した言葉は衝撃だった。

 

「……『より良い未来の為に』。」

「! そうか、もうそこにまで行きついたか……!」

 

彼女の成長の速度に驚かされるのは、これで何度目になるだろうか。

部下であったクライドや、教え子だったクロノにも劣らない才覚とひたむきな性格。彼女達なら、もしかすると……

 

「貴方から押収した端末に残されていた、正体不明のログ……10年前の物とあって解析には苦労しましたが、それでも内容の一部は復元できました。

 ……貴方を唆した、()()の正体について教えていただけませんか。」

「……この話は、どこか落ち着ける場所でしよう。

 約束を反故にするつもりは無いが、()()の事となると私も心の準備が要る。

 それまで、君に話すべきかどうかを考えさせてほしい。」

「……分かりました。」

 

私の返答に対してリンディ提督は短く答えると、再び部下に指示を飛ばし始めた。

 

――『唆した』か。

 

その言葉を反芻しながら考える……10年前、私が出会った少女について。

そして、()()についてどう伝えるべきなのかを。

 

……彼女について、私が知る事は決して多くない。

何せ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

だが一つだけ言える事がある。

 

……彼女は恐ろしい女性だ、決して近付くべきではない。

当時、傷心中だった私に接触してきた彼女の事を思い出す度にそう確信する。

 

 

 


 

 

 

『――失礼、ギル・グレアム提督ですよね?』

 

私が彼女に出会ったのは10年前、月のきれいな夜だった。

当時、クライドと言う優秀な部下をこの手にかけた事で傷心の只中であった私は、リーゼの勧めで気分転換の為に夜風に当たっていた。

 

夜風に当たると言っても、月を見ながら物思いに耽るだけ……考えるのはやはり、1年前の決断が正しかったのか。

正直、気分転換という目的が達成されているようには思えなかった……そんな時、私は彼女に出会ってしまった。

 

声に振り向けば、いつの間にそこに居たのか一人の少女が立っていた。

『左右で異なる目の色』と『月光を反射し、妖しく輝く銀の髪』……そして、年齢にそぐわない『圧倒的な魔力』を持つ少女だった。

 

――これほどの魔力を放つ者の接近に気付けないとは……!

 

自らの衰えと、死の予感を感じて身構えるも……

 

『その様に構えないでください、私はただ貴方とお話ししたかっただけなのです。』

 

その言葉通り、彼女はそれ以上距離を詰めようとする事は無く、私は気分転換になるかもしれないと思った事もあって彼女の話を聞く事にした。

 

『――貴方は、この世界の未来に横たわる運命を知ってみたいと思いますか?』

 

正直、一言目で聞かなければ良かったかも知れないと思った。

彼女の言葉の内容は『お話し』等と言う物ではなく、『宗教の勧誘』と言った方が近いように感じたからだ。

 

或いは変身魔法で少女の姿に化けているだけで、本当に宗教の勧誘なのかもしれない。

実際魔力の量が多い事や特徴過多ともいえる容姿からその可能性は高いと判断し距離を取った時、彼女はもう一度口を開いた。

 

『――貴方は、今何処に“闇の書”があるか知りたくはないですか?』

『!? 君は何者だ……何の目的でここに来た!』

 

その名前を出されて何も反応しないと言うのは無理な話だった。

 

『私のお話、聞いてくださいますよね?』

『――ッ! ……良いだろう。』

 

話を聞くだけだ、何か特別に要求される事があれば突っぱねれば良い。

そんな言い訳を自らにしつつ、私は自らの求める情報の為に彼女の話を聞く事にした。

 

 

 


 

 

 

結果的に彼女の言葉が切っ掛けで闇の書を見つける事になった以上、『唆した』と言う言葉はあながち間違いではないのだろう。

 

彼女が口癖のように話していた『よりよい未来の為に』と言う言葉が、ある宗教の合言葉になっている辺り……今の彼女の居場所は想像に難くない。

それでも『もう一度会おう』と思えなかったのは、偏に彼女が怖かったからだろう。

 

未来を憂いているような言葉を紡ぐ口とは裏腹に、全てを無価値と見下す瞳。

全てを受け入れるような笑顔を浮かべながらも、決して立ち入らせぬ一線を感じる佇まい。

 

そんな無茶苦茶な在り方をしているのに、彼女と話していると妙に心が安らかになる。

 

それがあまりにも恐ろしく感じて……私は一度話した後、彼女と距離を取ったのだ。

いや、『逃げた』と言い換えた方が正しいか。

当時持っていた通信用端末を替えた。家を替えた。ありとあらゆる方法で、可能な限り彼女と接触する事が無いように気を配った。

 

普通であれば過剰と考えるかもしれない。

だが私は当時の判断を、今思い返しても『正しかった』と思う。

もしも彼女と何度も会って話していたら……私はいつの間にか、例の宗教に取り込まれていたのかも知れないのだから。

 




『少女』に唆されなかったらグレアム提督は計画を実行に移さなかったの? と言う疑問を抱く方もいると思うので、先にお答えします。

A.止めようと言う転生者が居ない限りは行動に移します。
 転生者、或いは転生者の影響を受けた者の干渉が無いと未来は変えられないのです。
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