転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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今回でフェイトの過去編は完結です!

次回からは…また、皆(銀髪オッドアイ達)に会えるね…!
…名前、新しいのとか考えておかないとなぁ…

それと大体3日に1話のペースで投稿していけたらなと思います。
時間がかかっている場合は…多分転生者の名前で詰まってますね…


少し昔の物語 その4

 

「これが本物のバルディッシュ…今は、休眠状態か?」

 

俺は今、主の居ないリニスの部屋にいた。

とは言っても、別に泥棒に入っているわけではない。

 

もうすぐリニスはフェイトと最期の訓練を終えて戻ってくるはず…

俺はその帰りを待っているのだ。

 

…そろそろリニスが契約を完了するのは知っていた。

予想よりも若干早い気がするが、他でもないプレシアの見立てだ。

まず間違いは無いだろう。

 

そんな時期にリニスの部屋に居る理由は一つ。

それは俺がこの()()()()()()()()()()()()でもあるリニスの救出だ。

 

その為の能力も、神様に用意してもらった。

 

『生死に直接影響を与える能力の付与は出来ない』…

あの神様はそう言っていたが、リニスはある種裏技と言っていい方法で助ける事が出来る。

 

簡単な話、俺がリニスの契約主になればいい。

 

リニスが消滅する理由は契約を完了したからであり、

プレシアがリニスへの魔力供給を断つからだ。

 

プレシアも言っていたが、リニス程の使い魔を維持するのは楽じゃない。

病に冒されているプレシアには、リニスの維持は相当な負担となっている。

 

ならば俺がリニスと契約し、

魔力を供給し続ければリニスの存在は維持されるはずだ。

 

そこで俺が神様に願ったのは『イケメン』『使い魔契約を上書きする能力』そして『絶大な魔力量』だ。

 

正直に言って、普通ならば容量を超える願いだった。

 

だが俺はハンター×ハンターの『制約と誓約』の様に、

自ら能力に制限をつけることで強引に容量に収めたのだ。

 

『契約上書きの能力』に付けた制限は4つ。

 

1.相手が望まない内容での上書きは出来ない。

コレは元々契約の魔法がそう言う仕様だ。

だがこの制限が無いと『簡単な内容で契約し、その後相手が望まないような内容で強引に上書きする』事が出来てしまう。

だから、それを出来ないようにした。

 

2.使用できるのは1度きり。

元々使おうとしているのはリニス一人だ。

特に躊躇は無かったな。

 

3.契約を上書きする対象の使い魔が、既に前の契約を完了している事。

これが個人的には一番付けたくなかった制限だ。

俺がリニスの消滅するタイミングに居合わせる事が出来るか?

更に言えばそのタイミングを知る機会があるか?

俺としては消滅以前のどのタイミングでも使えるようにしたかった。

まぁ、『ある方法』でここに執事として潜り込めたから結果良しとしよう。

 

4.転生者には使用できない。

これが意味わからない。

この制限は神様から出された条件だ。

好き好んで使い魔に転生する奴がいるのだろうか…?

自由な時間は間違いなく減ると言うのに。

 

ともかく、この4つの制限によりこの能力を付与してもらった。

後は『絶大な魔力量』だが、コレの制限はシンプル。

『自分の意思で一度に使える魔力量を極端に少なくした』のだ。

 

例えば一般的な魔導士の魔力量を25mのプールに見立てたとして、プレシアをその10倍程とする。

その場合、俺の魔力量はちょっとしたダム程だろうか。

 

そして一般的な魔導士が一度に使用できる最大魔力量を消防車のホースに例えよう。

プレシアは大体その5倍以上は軽くあるだろう。

その場合、俺はプールで目を洗う用の蛇口と言ったところだ。

 

戦えばどっちが勝つかなんて解りきっているだろう。

25mプールの魔力を消防車のホースで発射できる方が勝つ。

つまり俺はプレシアどころか『一般的な魔導士より弱い』のだ。

 

…正直もう少し間を取るべきだったと後悔している。

 

だが、これは使い魔を維持する魔力タンクとしては破格だ。

 

使い魔の維持に必要な魔力はダムから勝手に流れていく。

『俺の意思で使う訳じゃない』のでそこに制限はかからない。

神様にも確認したので間違いない。

 

そうだ。ここまで来て失敗は出来ない。

 

ここで失敗したら俺はこの願いのやり場を失ってしまう。

 

…リニスがこの目の前の扉を開けて、

バルディッシュの最終調整を行うタイミングが最大にして唯一のチャンス。

原作が始まる前の、今この時が俺のクライマックスだ!

 

 

 

 

 

 

そう思ってたのに…

 

ナンデフェイトサンイッショニイルンデス!?

 

いや、居ても良い。

むしろ手なんか繋いで仲睦まじくてなんかむしろ良い。

 

問題は俺が咄嗟に隠れてしまった事だ。

 

想定外の事態でパニックになってしまった…

これでは本当に泥棒みたいじゃないか!?

 

…いや、隠れ続けるから疑われるんだ。

 

幸いにしてリニスと俺は所謂『同じ職場の同僚』だ。

 

ここから何気ない顔して出て行って『リニス、話がある』と切り出せば、

まぁ…それでも十二分に怪しいが、話は出来るだろう。

 

よし、出るぞ…!

 

 

 

 

 

 

そう思ってたのに…(二回目)

 

ナンデソンナカナシイハナシハジメチャウンデス!?

 

いや、しても良い。

むしろこんな場面に立ち会えて(隠れてるが)嬉しいし、なんかエモい。

 

問題は完全に涙腺をやられた事だ。

こんな状況で何気ない顔なんて出来る訳ないだろ!いい加減にしろ!

 

どうしよう!?もう絶対に時間が無い!

何も言わずに飛び出したら、今丁度セットアップしたフェイトにやられる!

飛翔訓練見てたけど、あんな速度無理だって!

俺一般的な魔導士にも勝てないんだぞ!?

 

あぁ、ヤバい!リニスが光になっていく!

くそっ、誰かヒーローみたいに俺をここから救い出してくれ!

そんでリニスを助けて…

 

 

 

ん…?

 

待てよ…!?

 

 

 

俺がヒーローになれば良いんだよ!(錯乱)

 

そうだよ!今はフェイトだってそう言う存在を望んでいるはずだ!

だったらここでヒーロームーブで出て行けば、

なにはともあれ契約の上書きまでは出来るかもしれない!

 

行くぞ俺!

行くと決めたら俺は止まらないんだよ!(二回止まった)

 

オラァッ!

 

「お"ぉっと!(かだ)()はここ()でだぜ!!」

 

 

 

…そういや俺泣いてたんだったわ…

 

 

ポーズもなんだコレ。

とにかく奇抜で我ながら表現しづらい…

なんで内股にしちゃったんだろ…?

 

「フヘッ…」

 

自分でも惚れ惚れする様なやらかし具合に思わず口元がにやける。

泥棒には見えないかもしれないが完全に変質者だ…

 

「なっ、あんた!いきなり何なのさ!」

 

アルフが鬼の様な形相で凄んで来るが、今はそれどころじゃない。

そう、俺の一回限りの特典を使う時が来たのだ!来てしまったのだ!

 

「アルフ、今は少し待っててくれ!」

 

こうしている間にもリニスの体が粒子になっていく!

 

「≪コントラクト・オーバーライド≫!」

 

俺の願いの一つ、『使い魔契約の上書き』を使う!

 

伸ばした俺の手から魔力のパスが伸び、リニスに…繋がった!

 

「これは…!?」

 

リニスが動揺しているが、ここは強引にいかせてもらう!

 

「使い魔契約だ!

 契約内容は『フェイトと共に生きる事』!

 文句は無いだろう、リニス!」

「!!」

「似非執事…あんた…」

 

なんか失礼なこと言われた気がする!?

なんか俺変な事してたのかな!?さっきしてたなぁ!

 

「『契約』!」

 

部屋が激しい光に包まれる。

光が収まるとリニスが唖然とした表情で立っていた。

 

「魔力が、安定して…

 いえ、それよりもこの魔力量、プレシアよりも…」

 

パッと見た感じ、ちゃんと『リニス』のままのようだ。

どちらかと言うと『使い魔を奪う』と表現した方が近いらしいからな…

俺が変な契約で縛り付けなければ問題は起こらないはずだ。

 

さて、

 

「フェイト、アルフ。

 これで大丈夫。リニスは消えないで済むぞ。」

 

「「リニス!」」

 

状況を伝えるや否や二人がリニスに飛びついて抱きしめる。

良い光景だ。

やはり物語はハッピーエンドに限る。(始まってもいないが)

 

…せっかくだからデバイスにわざわざインストールしたカメラ機能で撮影しておこう。

 

「リニス、私の事解る?何か変な契約埋め込まれてない!?」

「記憶は問題無いかい!?あの執事に対して変な感情抱くようになってたりしないかい!?」

 

おぅ、さっきまでの良い雰囲気を返せ。

特にアルフ、流石にそんな無粋なことしねぇって…

 

「え、えぇ…大丈夫ですフェイト、アルフ。

 あの方はプレシアの執事ですね。

 特にそれ以上の感情もありません…」

 

リニスさん、フォローと追撃を同時に撃つのやめてくれませんかね?

 

「あー、流石に傷ついちゃいますよー…

 俺も結構頑張ってるのにさあぁーぁあ?」

「あ、あはは…ごめんなさい。」

「いや、まぁ流石に悪かったよ…」

「す、すみません。せっかく助けてもらった?と言うのに…」

「いや、なんで疑問形何スか?」

 

し、信用無えなぁ…

まぁ、何とか原作より良い結果になった?って事は収穫か。

後で『向こう』にも報告しないとな…

 

あ、そうだ…これだけは言っておかないと…

 

 

 


 

リニスが助かった。

その姿を確認したとき、俺が最初に抱いたのは感謝の気持ちよりも不安と疑問だった。

 

前世に読んだこともある二次創作では、銀髪オッドアイの登場人物はハーレム志向が強い傾向にあった。

場合によっては洗脳紛いな手法を取る事さえあった。

だから考えてしまったのだ。

 

リニスは今、『本当に元のリニスのままなのか』と。

 

結論から言えば、(多分)元のリニスのままだった。

そうなるとあの似非執事は純粋な善意でリニスを助けた事に…

 

その後、拗ねだした似非執事には三人で謝った。

みんな多かれ少なかれ似たようなことを考えていたらしい。

 

許してくれたらしい似非執事が、思い出したかのように口を開く。

 

「リニスさん、貴女は今消滅したと言う事にして姿を隠してください。

 プレシア様とのリンクが切れている今なら可能なはずです。」

 

リニスのこれからの行動か…リニスが助かった事に頭がいっぱいで考えてなかった。

 

「しかし、姿を隠すにしてもいつまで…」

「…近い内にフェイトさんはこの時の庭園から離れる事になります。

 プレシア様がそう御命じになるからです。」

 

リニスがちらりと俺を見た。

 

「私が…庭園を?」

 

まぁ、知ってるんだが。

 

「はい、貴女の教育をリニスさんに任せたのもその時の為。

 全てはプレシア様の研究の為に。」

「その時にフェイトに付いて行け…そう言う事ですね?」

「…あんたの言う事があってんのか知らないけど、そん時ゃあたしも付いていくからね!」

「えぇ、もちろんでございます。」

「…解りました。私としても不満はありません。」

「肝心なのはここからです。

 …リニス、貴女は時が来るまで時の庭園に帰って来ない様にしてください。

 フェイトさんに付いて行った後も魔法関係の事柄は御二人に任せ、

 出来る限り目立たぬように…」

「それは…どう言う?」

「…今は話せません。ただ、『未来をより良くする為に』としか…」

 

リニスが再びちらりと俺を見る。

未来を知っているような発言でこの似非執事の正体に思い至ったようだ。

 

「…解りました。

 その『時』に関しては明確な指定は無いのですか?」

「そうですね…今はまだ、分かりかねます。

 しかし、明確な兆しはあります。それを見逃さない為にも、お願いします。

 『時』が判明し次第、貴女に伝えますので。」

「…ふむ、解りました。」

 

≪フェイト、彼はあなたと同じくこの世界を『物語』として知っており、

 その結末を変えようとしている…

 そしてそのタイミングを計る為、本来の流れを可能な限り崩したくない…

 そう言う事ですね?≫

 

バレテーラ。

 

まぁ、あれだけ情報引き出されてバレないはずないか…

 

≪そうみたいだな。

 兆しに関しては心当たりが幾つかあるけど、

 あいつがどのタイミングで動きたいのかは俺にも分からない。

 目的の推測は出来るけどな…≫

 

だが、原作の流れの通りにか…

俺はリニスに自分として生きて欲しいと言われた。

 

似非執事のおかげでリニスは助かったし、そのことには本当に感謝している。

だが、今になって原作のみを重視する考え方は俺にはできない。

 

『より良い未来の為』…

コイツの言った目的は本当だろう。

 

現に今、俺は未来が変わる瞬間を見たのだ。…それも良い方向に。

コイツはその目的の為に生きて、実現している。

 

なら、俺にだって出来る事があるはずだ。

 

「ねぇ…えっと、執事さん。」

「はい、なんでしょうか?フェイトお嬢様。」

 

…こいつの事、少し聞いておいた方が良さそうだ。

 

「さっきの『より良い未来』の話…もう少し教えてくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

「『より良い未来の為に』…なんか胡散臭い話だねぇ。

 あたしは新しい宗教かなんかかと思ったよ。」

「うん。でも…」

「…解ってるよ。実際、あいつが居なきゃリニスは今頃消えちまってた。

 あたしだって、あいつに対して感謝はしてるさ。」

 

『より良い未来の為』…結局あの似非執事はその事について教えてくれなかった。

フェイト()に変な知識を与える事で、原作の流れが変わる可能性を恐れたのだろう。

 

だが…会話の口ぶりから、あいつの()()にまだ誰かが居ると言う事は分かった。

 

そして、そいつが俺の知らない転生者である事は自明の理だ。

 

そいつは本当に『より良い』未来の為に動いているのか…

それとも個人的に別の目的があるのか…

 

 

 

まぁ、今は良い。

『物語の世界』のように、未来が決められていないと言う事実を知れただけで十分だ。

 

俺は俺として生きる。

例えジュエルシードが地球にばら撒かれたとしても、

最後まで自分の意思で戦い抜く。

 

…可能であるのなら、()()()の計画を中止させたいんだけどな…

 

 

 

 

 

 

そして、運命の時が来た。

 

ユーノの輸送船への攻撃は、ついに止める事が出来なかった。

 




リニス救済完了!

そして既に裏で暗躍していた名前も知らない(考えてない)転生者達…
彼らの思想は本当に『より良い未来』なのか?

…まぁ、しばらく出番は無いのですが…

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