プロットが纏まれば次回は『if マテリアル娘が居る日常』となります。
纏まらなければ別の季節イベントが入ります。
「ただいまー! みんなー、ちょお手伝ってくれへんかー!?」
3月14日――日も暮れて来た頃、八神邸に帰宅を知らせる
「おかえりなさい、はやてちゃん! 一体なにが……あら、そう言えば今日は……」
「うん、ホワイトデーのお返しや。
何かみんな真剣に考えてくれたらしいで?」
声にいち早く反応し、玄関に駆けつけたシャマルが見たのは、大量の包みの入ったビニールで両手を塞がれたはやての姿だった。
「まぁ、重かったでしょう? 後は私に任せて下さいね。」
「お願いするわ。
重いゆうても中身はお菓子やし、それほどって訳でも無いんやけど……
30人分となるとどうしても嵩張るからなぁ。」
そう言ってはやてはシャマルに二つの袋を手渡した。
彼女の言うように、はやてがお返しに貰ったお菓子は彼女が学校で配ったものよりもやや多い。
これは学区の関係で別の学校に通っている図書館メンバーからのお返しを、帰り道で貰って来たからだった。
「はやてー! どうした……ってシャマル、その荷物なんだ?」
「……あぁ、そう言えばホワイトデーでしたね。」
「この匂い……こっちの袋の中身はキャラメルか。
もう一つの方は……いくつか種類が混ざっているが、一様に菓子類のようだな。」
続々と集まって来たヴォルケンリッターの面々も、シャマルの持っているお返しに反応を示す。
狼の嗅覚を持つザフィーラに至っては、早くもその中身を看破したようだ。
「うん、キャラメルの方は学校で貰った奴やな。
本人達に聞いたけど、ホワイトデーのお返しの為に意味まで調べてくれたみたいや。
……その所為でみんな同じお菓子になってもうたみたいやねんけどな。
もうどれが誰からのお返しかもわからへん。」
そう言って少し困ったような笑顔を浮かべるはやて。
因みに彼女は知らないが、このプレゼントを決める際に彼等は会議を開き、相談の後に『抜け駆け禁止』と言う紳士協定に基づき、同じプレゼントに決めていたと言う経緯がある。
……こう言うところが彼等の見分けをつかなくさせる原因の一つなのだが、彼等がそれに気付くのはいつになるのだろうか。
「うへぇ、この数全部キャラメルかよ……消費する前に飽きそうだな。」
「まぁ、5人で食べれば割と直ぐやろ。それに、もう一つの方は色々と入ってるみたいやで?」
「ふぅん?」
そう言って確認するようにザフィーラを見るヴィータ。
臭いで確かめてくれと言わんばかりの視線に、渋々と言った様子でザフィーラが匂いを確認すると……
「これは、カステラとマカロン……それにプリンもあるな。
……ほう、気が利いた奴も居るようだ。紅茶も入っている。」
「あたしそっちにする!」
「いや両方均等に分けるからな? 私もキャラメルだけ食べるんは嫌やし。」
キャラメル袋と違い、様々な物が入った袋に飛びつくヴィータをはやてが優しく窘める。流石のはやてもキャラメル漬けの生活は嫌だったのだ。
「……なぁはやて、早速ひとつ食べて良いか?」
「晩御飯の後でならええで。何食べたい?」
「んー……確か豚肉ってまだあったよな、シグナム?」
「ああ、確か残っていた筈だ。」
「じゃあ、トンカツが良い!」
「ふふ、任せとき!」
そう言ってエプロンを付けたはやては、今日も台所に立つのであった。
やがてはやて達が夕食を済ませ、ホワイトデーのお返しの一つに手を付けようとした時の事……
――ピンポーン
と、来客を知らせるインターホンの音が鳴った。
「うん? こんな時間に客か?」
「はやて、私が出ましょうか。」
「いや、一応私が出るわ。多分用事があるとすれば私やろうし。」
「では私達は直ぐ近くの部屋で控えておきます。何かあれば思念通話で合図を。」
「あはは、そないに警戒せんでも……」
だがはやてがそう言ってもヴォルケンリッターとしての矜持と言うか、長年の生活で身に付いた習慣はなかなか抜けないものだ。それが数百年規模ともなればなおさらだろう。
セットアップまでして警戒するヴォルケンリッター達の様子に苦笑いを浮かべつつも、慣れた様子ではやては玄関へと向かった。
「はい、どなたですか……って……」
「やっほ~はやてちゃん。さっきぶりだね~。」
夜も半ばにインターホンを鳴らしたのは、はやてが思っていたよりも随分と小さな来客だった。
「朱莉ちゃん……って事は……!」
「そそ、ハッピーホワイトデー! ……ってね~」
そう軽い様子で空中に持ち上げた手の上に、瞬きもしない間に丁寧にラッピングされたプレゼントボックスが現れた。
送り主が誰かなんて考える必要は無い。はやては自然とそのプレゼントボックスに手を伸ばし、大事そうに受け取った。
「いやぁ……一応
何か上司も『
……私の時と対応が違い過ぎるんだけど、どう思う? って、ありゃりゃ聞いてなさそう……」
地獄の上司の対応の差について軽く愚痴をこぼした朱莉だったが、はやての方を見れば彼女はぽろぽろと涙を流し、それをシャマルがハンカチで拭いてやっているところだった。当然ながら朱莉の愚痴に関してはスルーされており、この状況を前に愚痴を零す気分でもなくなった朱莉は口を閉ざした。
……因みに彼女の言う対応の差に関してだが、話に出て来た
ただ単純に『サボりが原因で5回も地獄に来た問題児』に対しては心を鬼にしているだけである。
「……朱莉殿、美香殿の様子はどうでしたか。」
「相変わらず固いねぇシグナムちゃんは。……まぁ今は良いか。
みーちゃんは至って元気だったよ。
まぁお仕事の疲れくらいはあるだろうけど、少なくともこうしてケーキを作れるくらいには余裕があるみたい。
あ、材料に関しては安心してね。ちゃんと
「そうですか……感謝します。」
――やっぱり固いなぁ。
内心でそう呆れつつも、きっと彼女はこういう性分なのだろうと思い、指摘する事はやめた。
そもそも朱莉自身、転生者とはあまり深く関わらないスタンスを取っているのだ。人前で会話する機会もそうそうないだろう。
「……じゃあ渡す物は渡したし、最後に伝言だけ伝えておくね。
『クッキー美味しくいただきました。私もいつかまた貴女の家に帰る日を目指して頑張ります。』……だってさ。
天使を誑し込む人間なんて、随分と久しぶりに見たよ。」
さて、最後の用事である伝言を済ませた以上はここに留まる理由も無い。
そう考えて転移の術式を組もうとしたところで……
「わ、私も……」
「ん?」
「『私も楽しみに待ってる』って……美香さんに……」
――私、伝言係じゃないんだけどな……
そう思いながら浮かべた苦笑いは、夜の暗がりが原因かはやてには伝わらなかったらしい。
「お願い、します。」
その上お願いまでされてしまっては断るのも胸が痛い。実際、彼女達の言葉を伝えられるのは自分も含めた天使しかいないのだ。
「……あ~、うん。任せてよ~ あはは~……」
仕方ないと割り切って、転移先の座標をこの世でない座標へと繋げて転移する。
――どうかこれが最後の伝言になりますように。
そう願いながら。
因みにこれは余談だが、この後彼女はこの世とあの世を4回ほど往復する事になった。
流石に最後は堪忍袋の緒が切れて「私は往復はがきじゃない!」と柄に無く怒鳴ってしまったが、その結果『二人のやり取りはバレンタインとホワイトデーにそれぞれ一回ずつ』との取り決めがなされ、彼女の平穏は
……後に彼女は「どうして『○文字』じゃなくて『一回』って言っちゃったのかなぁ……」と、激しく後悔する事になるのだが、それはまた別の話である。
はやて「一年の間にあった事、いっぱい共有しような……」
美香「一年ぶりのはやてちゃんの言葉を受けて、私もいろんな思いが溢れてきます……」
朱莉「せめて文字数は二桁にしろグアアァァァァ!!」(暗記地獄)
2年後、更に取り決めは改正され、やり取りは手紙形式となった。
図書館メンバー捕捉
図書館メンバーの学区が違うのは、はやての家か図書館の近くに生まれたがったからと言う理由が大きいです。
個人的にはやてさんの家って校区の境目付近にあるイメージなんですよね……なんでかは分からないのですが。
ホワイトデー捕捉
銀髪オッドアイ達がキャラメルを送った理由は、ホワイトデーのお返しの意味を調べた結果です。
『好きな人』へ送る『キャンディ』は人数を考えると消費が難しいと考え、
『特別な存在』に送る『マカロン』はこの時代ではあまり手に入りにくく、
『クッキー』の『友達』は『
その他諸々の事情があり、結果的に『安心できる相手』を意味する『キャラメル』に落ち着きました。
因みにこの会議の流れを書いた文章が3000字以上あったのですが、書き終えた後に「どう考えても需要無いな」と思い全没となりました。