――これは、無数に存在するとされる次元世界の数よりも、遥かに多く存在する『可能性の世界』の話。
無限と言える程に枝分かれした『誰かが選んだ選択肢』の最先端。やがて再び無数の枝分かれを生むであろう、そんな『今』の物語である。
――過去からの因縁とイレギュラーが絡んだ『闇の書事件』の約三ヶ月後……二つの事件が再び海鳴市を舞台に起こった。
一つは『闇の欠片事件』。
闇の書の残滓により生み出された3体のマテリアルと、同じく記憶から作り出された無数の『闇の欠片』を使い、『砕け得ぬ闇』が復活を目論んだ事で巻き起こった事件だ。
高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやての容姿を写し取ったマテリアル達、見分ける事さえ困難な無数の銀髪オッドアイの『闇の欠片』との戦いは熾烈を極めたが、クロノの胃を犠牲に無事解決した。
更に、その事件の痛みも引かぬ間にもう一つの事件……『砕け得ぬ闇事件』が起こった。
未来から来たと言うフローリアン姉妹が求める『永遠結晶エグザミア』。それが先の『闇の欠片事件』で復活を阻止した『砕け得ぬ闇』の中にある事で起きたこの事件は、他でもない3体のマテリアル達や、フローリアン姉妹に巻き込まれる形でやって来た力強い味方の助けもあり無事に解決した。
……ヴィヴィオ達について来る形で未来からやって来た銀髪オッドアイの姿に、クロノの胃は再び犠牲となったが。
……出会いがあれば必然的に別れもある。
未来からやって来た者達が、この時代に留まる訳には行かないのが道理だ……この時代には、楽しかった『思い出』さえも正しい形で置いて行く事は出来ない。
「記憶処理?」
「うん。未来から来た私達の事を、貴女達が覚えていると色々と大変な事になりかねないからね。
例えば……生まれる筈だった人が生まれなくなっちゃったり、助かる筈だった人が助からなかったり、ね。」
キリエ・フローリアンの説明に納得したなのは達はその処理を受け入れる事になり、何人かの『未来からの渡航者』は『別の次元世界からの漂流者』となって、彼女達の記憶に刻まれた。
……
――大地は罅割れ、海は澱み……森の木々は立ち枯れ、食料を失い斃れた動物の亡骸を奪い合うように狂暴化した生物が争う……死にゆく世界。
人が生きる事が出来ない大地が増え続ける中、辛うじて僅かに緑が残る荒野に今……異なる時空を繋ぐ扉が開き、3人の人物がこの地に足を付けた。
「――ここが、エルトリア……フローリアン姉妹の生まれた星……」
一人は日の光を眩く反射する銀髪と、異なる色を宿す両目が特徴的な少年だ。
死と絶望……そして諦念しか抱かせない世界を何処か感慨深げに眺めるその姿は、まるで初めて見た筈のこの地を昔から知っていたような印象を抱かせた。
「この辺りはまだ草も残っているみたいだけど……遠くの山々が青くない。
墨汁を塗りたくったように真っ黒だ……あれが『死蝕』か。」
最初に口を開いた少年の言葉に続いて口を開いたのは、これまた白銀に煌めく髪と異色の瞳を持つ少年だった。
一人目の少年と瓜二つなその姿は、さながら双子のようにさえ思えるが、その瞳は感慨よりも決意を強く宿らせていた。
そしてそんな二人の言葉を受けて、もう一人の少年が口を開く。
「ああ……だけど、いずれはあの山も森も……空も海も、蘇らせるんだ!
俺達の手d「疾く退かんかこの大莫迦者共が!!」がッハァ……ッ!?」
キメ顔で語り始めた銀髪オッドアイの背後から放たれた蹴りが、そのまま彼を突き飛ばし、言葉を遮る。
そして彼が吹っ飛んだことで空いたスペースに現れたのは、一人の少女だった。
「何時迄も何時迄も入口を塞ぐように立ち呆けおって!
『先に行きたい』と言うのであればさっさと行け! 我等は止めぬし追いもせぬわ!」
「そんな、せめて追ってくださいよ……」
「喧しいわッ!!」
少女の名は、ロード・ディアーチェ。
『闇の欠片事件』で初めて姿を現し、『砕け得ぬ闇事件』を解決に導いた立役者の一人であり、他ならぬ『砕け得ぬ闇』の担い手……否、保護者である。
「すみませんが、王……後ろが控えております。」
「む……済まぬなシュテル。」
「いえ。」
背後から聞こえた声にディアーチェが道を譲ると、更に数人の少女たちがぞろぞろと現れた。
その中には当然、先程ディアーチェに声をかけた少女……シュテル・ザ・デストラクターの姿もあった。
「おー! ここが、キリエが言ってた世界かー!
ねぇねぇ、キョーボーセーブツってのはどこに居るの!? ダンジョンは!?」
青く長い髪をツインテールにした少女……レヴィ・ザ・スラッシャーは、興奮気味に髪を揺らしながらエルトリアの景色を見回し、続いて現れた少女の一人に問いかける。
「ごめん、後で案内する! 今は先に博士の様子を見ておきたいの!」
彼女の問いに答えたのは、桃色の髪を伸ばした少女……キリエ・フローリアンだ。
キリエは申し訳なさそうに手を合わせて謝ると、少し遠くにある建物に目をやりつつ理由を簡潔に語った。
「あー、病気なんだっけ。良いよ、待ってる!」
「ありがとう!」
彼女の言葉にレヴィは理解を示し、キリエはレヴィに礼を言いながら彼女の姉……アミティエ・フローリアンを伴って駆け出した。
彼女達の言う博士……生みの親であるグランツ・フローリアンは、死蝕の影響で死に至る病に侵されていた。
この世界を離れていた期間が僅かであるとは言え、容体が心配なのだろう。
その様子を見ていた一人の少女が、傍らに立つディアーチェの裾を引っ張りながら声をかけた。
「ディアーチェ、私達も……」
少女の名はユーリ・エーべルヴァイン。かつて『砕け得ぬ闇』と呼ばれ、ディアーチェ達の手によって救われた少女である。
「む? ……そうだな、出来る事の一つや二つはあるかもしれん。
桃色、赤毛、我らも同行しようぞ。」
「ありがとう、王様!」
ユーリに促されたディアーチェはその申し出を受け、ユーリを連れてフローリアン姉妹について行く事にしたようだ。
「ほらレヴィ、ディアーチェが彼女達について行くようですよ。」
「えっ、王様も行くの? じゃあボクも行こうっと!」
「む、貴様らも来るのか? 特にレヴィよ、貴様は見て回りたいところもあるだろう。」
「んー……でも後で案内してくれるみたいだし、それなら王様と一緒に居ようかなって!」
「我が身は如何なる時も王の傍に。王が行くのであれば、私もついて行きます。」
そんな彼女達の言葉に、ディーチェは満更でもなさそうな様子で口を開く。
「……ふ、そうか。ならば好きにせよ。」
「それに……」
「む?」
「彼女達が言うにはあの建物は一見ああ見えて立派な研究室も備えているという話でしたし、その設備も気になります。特に死蝕と言う現象を解明する為、代々受け継いでは設備、データ共に拡張を繰り返しているそうですし、その内容にはいたく心を惹かれる物があります。」
「……シュテルよ、貴様もしやそちらが本命ではないか?」
「『理』のマテリアルの性……と、言う物です。我が敬愛する『王』よ。」
「貴様本当に我を尊敬しておるのか?」
「勿論です、我が親愛なる『王』よ。」
シュテルの本意がどうであれ、ディアーチェが彼女達の選択を拒む事はない。
フローリアン姉妹が案内し、ディアーチェ一行がそれについて行った今、この場に残されたのは3人の銀髪オッドアイだけだった。
「……なぁ、分かってるだろうな?」
「勿論だ。……お前達も約束は守れよ。」
「当然。例え夢破れても、互いに干渉は無し……恨みっこも無しだ。」
取り残された3人は、これ幸いとばかりにひそひそと話し合う。
当たり前の事ではあるが、彼等は彼等の目的があってここに来た。
その為に高町なのは達の記憶から
「俺はディアーチェの……」
「俺はシュテルの……」
「俺はレヴィの……」
「「「パートナーになる!!」」」
ただ、その願いの為に。
「……いきなり立ち止まってどうしたのだ、ユーリよ。」
「いえ……ただ、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がして……」
「?」
ユーリさん、ここに来てまさかのライバル(?)発生(?)。
因みにディアーチェの好感度
→ユーリ:まったく愛い奴め!
→転生者:誰ぞ貴様?(素)
それと題名に『復興録』とありますが、復興までの流れを全部書く訳ではなく、その中の日常を切り抜くダイジェスト形式を予定しています。大体あと2話くらいで終わらせられたらいいなと思ってます。
以下今回出てきた転生者の設定(一部抜粋)
・相神 明(あいがみ あきら):
GODの後、なんやかんやでさらっとついてきた転生者。親無し勢。
時間遡行に関する記憶処理の関係で、なのは達の記憶からは存在が抹消されている。
元出席番号1番。
記憶処理の際にはキリエから念入りに確認を取られたが、『俺には親も居ないし』と譲らなかった。
ディアーチェのパートナーになりたいと思っている。(人生設計含む)
・池神 万(いけがみ ばん):
GODの後、なんやかんやでさらっとついてきた転生者。親無し勢。
相神同様、なのは達の記憶からは存在が抹消されている。
キリエから念入りに確認を取られた際、相神同様『俺にも親は居ないし』と譲らなかった。
レヴィのパートナーになりたいと思っている。(人生設計含む)
・上神 九朗(うえがみ くろう):
GODの後、なんやかんやでさらっとついてきた転生者。親無し勢。
上記2人同様、なのは達の記憶からは存在が抹消されている。
キリエに対しても池上同様『俺も親は居ないんで』と譲らなかったが、流石にキリエも「この世界の家庭環境、問題あり過ぎじゃない!?」と突っ込んだ。
シュテルのパートナーになりたいと思っている。(人生設計含む)
因みに名前の元は苗字が『あ』『い』『う』、名前が『A』『B』『C』です。