転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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時間がかかりました。

色々原因はありますけど、メモ帳を間違って消しちゃったのが痛い…


交錯する運命

暴走体の封印から数日が経った。

 

ジュエルシード集めは難航しており、現在は5個。

今ある全てのジュエルシードがあの夜までに集まった物だ。

 

つまるところこの数日の成果が0なのだ。

 

一日に探せる時間こそ限られているが、人数で言えば原作の比じゃない。

この数日の間収穫0と言うのは、いくら何でもおかしいと言わざるを得ない。

 

 

 

…一応、原因として思い当たる可能性は3つある。

 

1つ目は単純にこの付近にはもう無い。または奇跡的なまでに見逃している。

 

俺も神社のジュエルシードやプールのジュエルシードを予め確保してしまったし、

取っていない物でも温泉街のように俺一人で行ける距離には無い物もある。

 

更に言えば原作知識を持っていたとしても、

そもそもジュエルシードは原作で詳しい場所が描写されていない物が多いのだ。

 

例えばフェイトとなのはがジュエルシードを暴走させてしまった市街地は、

そもそもどこの町なのかもわかっていない。

なのはが出歩ける距離であることを考えれば、そう遠くはない筈なのだが…

 

2つ目は俺達以外の…いや、あるいは俺達の中の転生者が隠し持っている可能性。

 

あまり考えたくない事だが、『自分の望みを叶えようとしている』可能性だってある。

俺達はそもそも『一度願いを叶えて貰った存在』だ。

「一度あった事だから二度目だって…」そんな風に考える者が居ないとは言い切れない。

 

3つ目…俺としてはこれが本命だが、フェイト・テスタロッサが集めている。

 

前回の暴走体を倒した後、学校の屋上で倒れている銀髪オッドアイが居た。

何故か満足そうな本人の証言から、フェイト・テスタロッサが既にこっちに来ている事が分かったのだ。

 

勿論その場で意見が分かれた。

 

「直ぐにフェイトを追ってアジトを突き止めよう」と逸る者、

「戦闘をした上に魔法を王の財宝に補填したばかりで魔力が無い。今はおとなしく帰ろう」と諭す者。

 

多分前者はフェイトに会う事の方が目的な気がする。

結果的にその場で解散と言う事になったが、あの後彼らがどうしたのかは分からない。

 

一つ言える事は、これからはフェイトと戦闘になる事も考えないといけないと言う事だけだ。

 

 

 

…ただ、一つジュエルシードの当てはある。

 

なのはの『全力全開精神』発祥の事件。大木の暴走体。

作中で唯一、()()()()()()()()()()街を呑み込む暴走体だ。

 

正直何を願えばあんな事になるのか分からないが、

もっと分からないのがあの少年がジュエルシードを拾った時期だ。

少なくとも俺達が集めたジュエルシードの中にシリアルⅩは無かった。

 

折角原作を変える決意もしたんだ。

どうせならあの暴走体は完全に防いでおきたいのだが…

 

 

 

「なのは、また考え事?」

「最近多いよね…私達に相談できない事なの?」

「あっ、ううん、何でもないの!」

 

どうやら随分考え込んでいたらしい。

慌てて取り繕うが二人は疑念を持ってしまっている様子だ。

 

≪なのは、多分そろそろ時間よ≫

≪ありがとう、ユーノ≫

 

ユーノの念話で目線を士郎さんの方に向ける。

 

「みんな、今日はよく頑張ってくれた!この調子で、次の試合も頑張ろう!」

「「「はい!」」」

 

そう、俺達はつい先ほど少年サッカーの試合を見学した。

結果は士郎さんのチームの勝ち。今は翠屋でその祝勝会をしていたのだ。

 

「じゃあ、解散!帰りも気を付けるんだぞー!」

「「「ありがとうございました!」」」

 

(たける)、この後どうする?」

「わりぃ、俺今日予定有ってさぁ…」

「おっけー!…えっと、お前はどうよ!?」

「今日かぁ、ちょっと用事が入りそうでなぁ…後、神瀬(かみせ)な。」

「すまん、名前は憶えてるんだけどな!」

「解ってるよ、また俺と迷ったんだろ?」

神坂(かみさか)ぁ!お前この後行けそうか?」

「済まねえ、俺も多分用事入るわ…」

「いや、神瀬もそうだけど用事が()()()()ってなんだよ…」

 

うん、普通に考えたら変だよなぁ…

銀髪オッドアイが二人ほどチームに入っている以外は原作通りの光景だ。

そしてジュエルシードも確認。

 

あのジュエルシードは予め回収しておきたいんだけどなぁ…

 

でも()()()()()()は見間違いと思ってるから…ここは、

 

≪ユーノ、行けそうか?≫

≪そうね…ちょっと待って、あの二人にも念話で相談してみる。≫

 

そう言って念話が途切れる。

ユーノと念話しているのだろう、あの二人の顔が真面目なものに変わる。

 

そして、数十秒ほど経過してユーノから念話が届いた。

 

≪行く分には問題ないけれど、リスクもあるわ。

 あの男の子がジュエルシードを取られまいと抵抗した時に発動すれば、

 この辺り一帯の被害は免れない。

 だからあの二人の転生者も今は動くに動けないのよ。

 …ここには、翠屋があるからね。≫

≪そうか…翠屋が。≫

 

あの大木は出現した際にアスファルトに根を張る。

整備された歩道や車道はぐちゃぐちゃになり、水道管や下水道、

電線もいくつか切断されてしまうだろう。

 

翠屋はケーキやシュークリームも評判の喫茶店だ。

電線が切られたりしたら店の冷蔵庫は動かなくなり、主力商品がほぼ全滅。

 

そうなれば翠屋の受けるダメージは計り知れない。

 

原作ではどこかの横断歩道で発動していたが、そこまで待つべきなのだろうか…

 

≪あの二人の転生者は横断歩道まで尾行して、

 発動後まもなく封印に移ろうって言ってるけれど…どうする?≫

≪…ちなみにあの二人はユーノが俺にこの情報を渡すって知ってるのか?≫

≪言ってないわ。『少し考える』って言って念話を切ったの。≫

 

…そうすると、今は『なのはが気づいてない状況』って訳だ。

ユーノに教えてもらった事にして追いかけるか、

翠屋含めこの周辺に被害が出ない様に動くか…

 

「そろそろ時間ね。またね、なのは!」

「またね、なのはちゃん!」

「うん、アリサちゃんもすずかちゃんもまたね!」

 

思考と念話と二人との会話…我ながらマルチタスクにも慣れたもんだな。

これも『なのはと同じ能力』を貰ったおかげか…

 

…なのはがこの状況を知ったら先ず速攻で動くんだろうなぁ…

『知っちゃったのに無視は出来ない』って。

 

どうするか…

ここで動かないのは完全に『私情』だ。

この辺りが受けるかもしれない被害を、

原作の場所に引き受けて貰うと言う自分勝手な都合でしかない。

 

言ってみれば『なのはなら絶対にしない行為』。

 

でも、尾行するメリットは大きい。

何故なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 

発動した直後に封印すれば…

いや、プレゼントしようと取り出した瞬間に封印すれば被害はほぼ0に収められる。

 

かなり魅力的な選択肢なのだ。

 

…俺は後者を選ぶ事にした。

このまま気づかなかったふりをして、横断歩道まで…

 

≪なのは、転生者達から念話があったわ≫

≪念話?こんな時にするって事はあのジュエルシード関連か?≫

≪ええ、上空から街を俯瞰して調べたら横断歩道を特定出来たらしいわ。≫

≪特定したって事はもうその場所に何人か行っているのか?≫

≪そうね…神瀬と神坂も合流したって。≫

 

そう言えばあの二人いつの間にかいなくなってたな…

いや、チームのみんなが解散したのに残ってた方がおかしいか。

 

≪向こうにいる皆がそろそろなのはを呼んでくれって言ってるわ。

 行きましょう。≫

≪うん…≫

 

今回ばかりは緊張するな…

自分の選択のせいで被害が出るかもしれないんだから。

 

≪フライアーフィン!≫

 

 

 


 

「良し、これでユーノさんがなのはを連れてきてくれるはずだ。」

 

神楽坂がユーノとの念話を終えて俺達に向き直る。

 

「でもよ神場、あの少年がジュエルシードをこう…ポケットから取り出すとするだろ?」

 

ふと、何か考え込んでいた神谷がジェスチャーも交えてそう切り出した。

神楽坂じゃなくて神場だったのか?

 

「神無月だ。それで、取り出したとして?」

「あ、あぁ。済まねぇ…問題は発動前にどうやって封印するんだ?」

 

神無月だったのか…

最近は皆慣れてきたな。…間違える事にも、間違えられる事にも。

 

さて、実際それは難しい問題だ。

まさか上空から直接封印の光線を浴びせる訳にもいかないだろう。

 

「そうだな…この中に念動力的な物でジュエルシードを回収できる奴はいるか?」

 

…えっ、まさかのノープラン?

 

周りを見回すが、皆周りを見回してる。…誰も持って無いって事だよな…

能力を貰える時にシンプルなサイコキネシスを選ぶかって言われると、もっと派手なのが欲しいしなぁ…

 

「ふむ…じゃあ、時間停止は?」

 

時間停止か…ザ・ワールドに代表される強力な能力だし、それならだれか持っていても…

 

「あ、それなら…」

 

お、居たか。これで安心…

 

「俺も頼んでみたけど、能力が強すぎてNGだって。」

 

あっハイ…

このOKな能力とNGな能力の区分が結構曖昧なんだよなぁ…

実際俺の能力だって十分チートになる筈なのに…

 

「そうか…じゃあ、神宮寺」

 

ん、俺か?

 

「なんだ?神無月。」

 

俺の能力(王の財宝)はもう周知のはずだが…

 

「お前の王の財宝の()()()あるだろ?」

「ん?あぁ、あるな…」

「あそこからさ…吸えないか?カービィみたいに」

「出来ねぇよ!?王の財宝なんだと思ってんだ!?」

 

ダメだ、こいつ集めたは良いけどここからのプランが何にもない!

 

「…なぁ、思ったんだけどさ?」

「なんだ?…えっと、神田」

「あっ…」

「…どうした?」

「…いや、正解だったから。」

「良いだろ正解したんなら!なんで間違えた方がスムーズに会話になるんだよ!?」

「まぁ、そうなんだけどさ…じゃなくて!」

 

神田の気持ち少し解るな。

一発で名前当てられると動揺するよな…解るわ…。

 

「あの雲の中にさ…誰か居たんだけど…」

 

…えっ?

 

 

 

その瞬間だった。

 

 

 

雷を思わせる轟音が、俺を貫いたのは…

 




雷のような轟音…いったい誰が…!?

今回は色々難産でした。
なのはの登場が久しぶりで、どんな感じに行動してたかなって…

間違えて消しちゃったメモ帳?

「銀髪オッドアイの名前メモ.txt」

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