転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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ちょっと情報過多になっちゃったかもです。
まだ完全に本編に出てない設定とか若干漏れてます……


ヴィヴィオ

『高町なのはさんに会いに来ました!』

 

受付でそう挨拶をすると、やがて一人の女性が現れた。

栗色の髪をサイドテールにした落ち着いた雰囲気の女性……聞いていた特徴と符合する事から、彼女が高町なのはさんで間違いないだろう。

 

アポも無くあっさり会って貰えた事には少々意外だったけれど、今の私の容姿を考えればおかしくはないかも知れない。なにせ、外見上は10歳にもなっていない少女なのだから、少なくとも怪しまれると言う事は無いだろう。

このエントランスにはざっと見ただけでいくつか魔力感知の類のセンサーがつけられているし、変身魔法の類を使ってない事も見抜かれているのだろうし。

 

「――あ、高町なのはさんですよね?

 始めまして! 私、『ヴィヴィオ』って言います!」

「……えっ」

 

そんな内心を悟らせないよう、子供らしさを前面に出し、元気に挨拶する。

 

しかし成程、近くで見れば嫌でも実感する物だ。リンカーコアが励起していない状態でこの魔力……確かに『彼』が言っていた通りだ。

……『光』の最有力候補と言うのも頷ける。

 

「えっと、ヴィヴィオちゃん……で、良いんだよね?」

「はい! これからよろしくお願いします!」

 

何故か少し動揺した様子のなのはさんに、あくまでも子供らしく元気な挨拶を心がける。

目的を気取られない為でもあるが、それ以上にこれからしばらくの間厄介になる相手……やはり第一印象は大切だ。

 

「え!? これからって……?」

 

聞いてないよ!? と言いたげななのはさんの様子に、そう言えばまだ事情を話していない事を思い出す。

どうやら私も重要な任務を前に少し冷静ではないらしい。

 

「あっ、そうでした! えっと……これ、読んでください!」

 

肩にかけたポーチから一通の封筒を取り出し、なのはさんに手渡す。

『彼』から聞いた話では、あの手紙には用意された私の身分の事や、機動六課に入る理由について書かれている筈だ。

 

「手紙……? 差出人は……『ジェイル・スカリエッティ』さん!?」

 

なのはさんが彼の名前を見て驚いた事から、本当に彼は有名人だったのだな……と、私は彼に貰ったウサギのぬいぐるみを見ながら、彼との出会いを思い返していた。

 

 

 


 

 

 

――意識が浮上する感覚を感じる……私は、眠っていたのか……?

 

意識の覚醒に伴い、自然と目が開く。

そこにあった光景は、眠る前の私が見た光景と随分違うものだった。

 

「――ここ、は……? 私は確か、聖王のゆりかごを起動させて……それで……?」

 

……ダメだ、よく思い出せない。仲間の反対を押し切り、聖王のゆりかごの玉座に座った事はおぼろげながら覚えているけれど……どうやら記憶の混濁が激しいらしい。

 

そんな事を考えながら頭を押さえた自分の手に、はたと気付く。

 

――普通の腕だ。少し小さいけれど、義手ではない本物の腕……

 

私の腕は物心つく前に事故で……思えば内臓の感覚も微妙に違う気がする。もしや私の体が治って……? ゆりかごを起動した影響の一つか?

 

感覚を確かめるように腕や腹をさする私の耳に、私の知らない声が聞こえた。

 

「お、驚いたな……まさか、君は記憶を引き継いでいると言うのか……?

 かの聖王、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの……」

 

声に振り返れば、そこに居たのは何処か怪しげな雰囲気を纏う白衣の男だった。

彼は本当に驚いている様子で、私の記憶がある事が予想外らしい。

 

……或いは私の体を治し、代わりに記憶に細工をした犯人ではないか。

そんな疑念から、私は彼に事情を聴く事にした。

 

「そのお話……詳しく聞かせていただけますか?」

「……そうだね、場所を変えよう。

 それと、先ずはこの服を着たまえ。話はそれからだ。」

 

そう言って彼が差し出された服の小ささに、私の体がどれほど小さくなっているのかを自覚した。

 

 

 

 

 

 

結論から言えば、私はどうやらずっと昔に死んでいたらしい。

より正確に言えば、記憶の持ち主である聖王、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトが……だが。

 

そして今の私はオリヴィエの聖骸布に残っていたDNAから生み出されたクローンなのだとか……道理で腕や内臓が戻っている筈だ。

記憶に関しては本当に計算外で、何なら一から勉強させる覚悟もあったらしい……と、教科書らしき物を見せて説明してくれた。

 

「私の記憶と体については理解しました。

 ……ではもう一つお尋ねします。なぜ私を……オリヴィエのクローンを生み出したのですか?

 聞けば今の私は随分と……それこそ、『聖骸布』等が保管される程の扱いをされている様子。並大抵の事情ではないと推察いたしますが。」

「……ああ、そうだね。

 君が何も知らない子供に生まれていれば、まだ話すつもりは無かったが……

 今の君の様子なら話してしまっても良さそうだ。

 実は……」

 

彼から聞かされたのは『滅び』の予言の話だった。

何でも『未来を詩と言う形にして書き記す能力』を持つ者がいて、彼女が近い未来に訪れる滅びを記してしまったらしい。

予言も内容は大雑把な物で、具体的に何が起こるか、いつ起こるかと言った物があやふやな為、今の……時空管理局? は可能な限りの選択肢を求めているらしい。

 

「……成程、その一つが『聖王』の力と『聖王のゆりかご』だったのですね。」

「ああ。……ただ、聖王のゆりかごに関しては今の君が使える保証はないし、なるべく使わないに越した事は無いと言うのが彼等の共通見解でもある。

 大きな力は争いを呼ぶ……彼等もなるべくゆりかごは眠らせたままにしておきたいらしい。」

「そうですか……それを聞いて少しだけ安心しました。」

 

聖王の力を蘇らせるように指示した彼等……『最高評議会』とやらも、『力』の持つリスクは理解しているようだ。

……いや、或いは『ゆりかごこそが滅びの原因となり得る』からだろうか。

 

その後も彼……『ジェイル・スカリエッティ』といくつかの問答を交わし、ある程度の現状を把握した私は、いよいよ彼に本題を尋ねた。

 

「……それで、貴方は……貴女に指示を出した最高評議会は、私にどんな行動を求めているのでしょうか。」

「……そうだね、それについて話す前に、さっきも少し話した『予言』の内容について話しておこう。」

 

そう前置きして彼が話してくれた『予言』の内容は、以下のような物だった。

 

『燦然と輝く星々に 暗き凶星は救いを騙る

 捻じ曲がる時の針は 栄光と滅びを共に指す

 法の光の射さぬ地に 欲望の結晶が光を示す

 凶星の背後に滅びは潜み 凶星のみが姿を知る

 

 凶星が照らす先は虚構 光が行き着く末は絶望

 守護者達が地を去るとき 天の眼が開き滅びは来る』

 

「……随分と前半と後半で雰囲気の変わる詩ですね。

 前半では『光』が解決策のように描かれておきながら、後半では寧ろ……」

「ああ、先に言っておくべきだったね。

 予言は『2回』あったんだ。前半部分は……もう随分と昔だね、10年以上前だろうか?

 そして後半部分は比較的最近、5年ほど前の事だ。

 詩が分かれているのは前代未聞だが、共通する名称が多く登場している事等から『予言の続き』と考えられている。」

「成程……約5年前にこの予言が。

 ……? 確か機動六課を()()()()()()()()()()と言うのも……」

「そう、その予言があったから最高評議会は『光』が所属する部隊に戦力を集中させたんだ。

 『夜天の書とヴォルケンリッターを動かせる唯一の存在である八神はやて』、『リンカーコアを2つ持ち、高い戦闘力と機動力を持つフェイト・テスタロッサとアリシア・テスタロッサ』を……とは言え、彼女達はここまで深い事情を知らされた訳ではないがね。

 予言についても後半部分を知るのは特に限られ、最高評議会と予言を記した騎士と側近、そして君と私……くらいかな。私の知る限りは。

 いわば『機動六課』は滅びに対抗する戦力を培う部隊であると共に、『光』の最有力候補の『高町なのは』が滅びの原因だった時に抑える役割なのだ。

 ……そして、君もね。」

 

確か『機動六課』は新人育成として4人のフォワード陣を抱えていた筈……彼女達が育てている力は、滅びに対処する力……例えそれが、自らの仲間の一人だったとしても。

しかし、そうであるならば……

 

「……やはり、八神はやてとフェイト・テスタロッサはこの予言を知っておくべきでは?」

「そこが彼等の悪癖の一つでね、実に凝り固まった考え方と言うか……極端な秘密主義者なのだよ。

 必要があれば話す事もあるが、必要が無ければ絶対に話さない。

 確かに時としてその対応が正しい場合もあるが……今回はどうなる事やら。」

「……成程。」

 

オリヴィエの記憶にもそう言う人物がいたと言う情報がある。悲しい事だが、そう言ったところは時代が変わっても同じらしい。

 

とは言え、彼の話を聞いた事で私の役割は分かった。

 

「つまり私に求められている行動は、私自身が機動六課に入り、力を培うと同時に、『光』……『高町なのは』の力を測る事ですね。」

「……君を生み出した私がこう言うのも変な話だが……本当に良いんだね?」

 

確かめるように問いかける彼の眼からは、私を案じるような温かさを感じた。

彼の話と予言の内容を信じるなら、『機動六課』は滅びに最も近い場所だ。そこに向かう私を、きっと本心では止めたいのだろう。

 

……オリヴィエの記憶にある、『誰か』の眼にも似たものを見た。

今の状況は、もしかしたらあの時の状況に少しだけ似ているのかも知れない。

 

ならば私の答えは決まっている。

 

「はい。

 世界に滅びが迫っていると言うのなら、私の力がそれを防ぐ助けになると言うのなら、私は喜んでその使命に生きます。」

 

聖王オリヴィエは自らの出生の事情から、半ば自己犠牲的な精神でその任に就いた。

聖王のゆりかごの玉座に座る意味を知っていながら、仲間の……愛する友の手を振り払った。

 

……そうまでして守ったのがこの世界だ。

彼女の記憶と力を継いだ私が、その使命から逃げる訳には行かない。

 

「……君の覚悟は分かった。

 だが、たとえ君に前世の記憶があったとしても、今の君は今の君だ。

 使命だけに生きないでくれると私は嬉しい。

 ……私は私が生んだ娘に、そんな寂しい生き方はして欲しくない。」

「娘……」

 

そう言えば、いくら記憶を遡っても『母の命を啜って生まれた鬼の子』とさえ呼ばれた私に、こんな温かい目を向ける『親』はいなかったな……

 

……いや、これはオリヴィエの記憶だ。私ではない……だけど、もしも彼女でない私が、ただ一人『父』を選べるとするなら……

 

「む、確かにこう言うのは本人の意思が尊重されるべきか……済まない、今のは忘れて……」

「いえ、気にしないでください。

 ……ですが、そうですね……私は貴方の事を『父』と呼ぶ事にしましょう。」

 

もしも『父』と呼ぶ相手を選べるのなら、この人が良い。

彼の眼を見て、自然とそう思った。

 

「い、良いのかい?」

「はい、今の私はオリヴィエではないのでしょう?

 ……そうだ、折角ですから意識を切り替える為にも『私』に名前をいただけませんか?」

「名前?」

「はい、古来より名前は親より授かる事が一般的。

 ですから、貴方に今の私の名前を付けて欲しいのですが……」

 

『オリヴィエ』と呼ばれる事に抵抗や違和感は無いが、流石にこの眼を持っている者がそう呼ばれるのを聖王教会の者が聞けばトラブルの火種になりかねない。

それに、心の内で『自分はこう言う存在だ』と彼に決めて欲しいと思う自分もいる。

 

実際に今の世に私を生み出した者である以上、少なくとも『親』ではあるわけですし。

 

そう申し出てみると、彼は今までで一番の動揺を見せた。

 

「な、成程。確かに道理だが……むぅ、果たして私がこの名を付けて良いものか。」

「お願いします、『父』よ。」

 

何やら悩む彼に重ねて頼み込むと、彼は一つの決心をしたような表情で一つの名前を口にした。

 

「『ヴィヴィオ』……ああ、そうだな娘よ。君の名は『ヴィヴィオ』だ。

 この世界に於いて、この時代に於いて、君は間違いなく『私の娘』だ。」

 

彼が口にした名前は、かつてオリヴィエが親しい友人から呼ばれた愛称とよく似ていた。

もしかしたらあの呼び名が今の時代でも残っていたのか、それともこれを運命と呼ぶのか……

 

いずれにせよ、私の名前は決まった。

 

「『ヴィヴィオ』……良い響きですね。

 ……ありがとうございます、父よ。私の名は『ヴィヴィオ』。

 貴方の娘、『ヴィヴィオ・スカリエッティ』。」

「んむむぅ……!? そうか、そうなるのだな……」

 

彼は私がフルネームを名乗った時に頭を抱えていたけれど……今の時代、ファミリーネームは名乗らないのが普通なのだろうか……?

 

 

 


 

 

 

……あの後、彼の娘が思っていたよりも大分多かったことに驚いたっけ。

家族で会社をやっているようだったけれど、あの人数なら納得だ。

 

一緒に過ごした期間は1年程だけど、皆優しい人ばかりで、ここに来るとき少し寂しく感じたものだ。

 

そんな事を振り返っている間に、なのはさんは手紙を読み終えたようで、私に質問が飛んできた。

 

「えっと……お手紙には貴女がスカリエッティさんの娘で、制御できない程の高い魔力を持っているから扱い方を教えて欲しいって書かれてるけど……」

「はい! ヴィヴィオ・スカリエッティです!」

「……うん、そっか。

 ちょっと色々確認しないといけない事があるから、一旦落ち着けるところまで案内するね。」

「お願いします!」

 

確認と言うのはきっと部隊に入る事に関する規約や裏付け等だろう。

しかし、この任務は元々最高評議会から言い渡された物でもあるし、問題はないと信じて今は素直に彼女について行くとしよう。

 

……どうか子供のフリをする姿を父や姉達に見られませんように。




と言う訳で、ヴィヴィオの正体はコ〇ン君状態のオリヴィエ(一部記憶のみ)でした。
本人的にはある意味転生者みたいなものですね。

原作ではヴィヴィオの生みの親は明言されていなかったと思いますが、この小説ではジェイル・スカリエッティが生みの親となっております。

六課の出来る過程や事情に関してはまた後で詳しく書く予定ですので、変に感じたところや疑問点を感想欄に書いていただければその時にその部分に関して詳しく書くかもです。(直ぐに答えられるところは感想返しで直接書きます)

一応今の六課の認識を纏めておきます
・機動六課隊長陣→『滅び』の予言の『凶星』に対抗するための組織
・機動六課フォワード陣→スカリエッティが転生者な為、何のための組織か分からない
・最高評議会→『凶星』への対策部隊兼、『光』の防波堤

因みにその後のなのはさんの確認↓

なのは「(戦力過多問題やら試験やらの諸々は)良いの?」
最高評議会「(君の対策の為に入れるんだし)良いよ。」
なのは「あっはい(結構ガバいんだなぁ……)」
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