転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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今回はフェイトさんの初戦闘回です!

時の庭園でえげつない速度にまで到達したフェイトさんの戦い方が判明します。

‐12/26 追記‐

一部文章を修正しました。

詳細な変更箇所は後書きに記載しています。


‐12/30 追記‐

一部文章を修正しました。

詳細な変更箇所は後書きに記載しています。


襲撃

――轟音が俺の体を通り抜けたような感覚だった。

 

激しい音に耳がやられたのか、水の中にでも居るかのように聞きづらい。

霞む視界で辺りを見回せば、仲間が()()()()()()()ところだった…

 

…何やってるんだ、雷に魔力弾なんか…

 

ふと、俺のバリアジャケットが腹の辺りで真一文字に裂けているのが見えた。

 

なんで俺は腹なんか見てんだ…?

 

 

あぁ、違う。飛翔魔法の制御が出来て無いのか…

 

景色が、回って…あぁ、落ちてるなこれ…

 

 

 

「…い、しっか………!!」

 

うぐっ!

 

ったく、受け止めるならもう少し優しくしてくれ…頭に響く…

 

誰だ、視界がぼやけて…

 

「…ぐに治癒………か……………らな…!」

 

ダメだ、意識落ちるわ…みんな、済まねえ…

 

 

 


 

 

向こう側の雲が光ったと思ったら、雷がこっちを目掛けて真っすぐに飛んできた。

 

いや、しっかり見ていたから分かるがアレはフェイトだ!

恐ろしい速度で、雷を彗星の尾の様になびかせて襲ってくる!

 

「くそっ!神宮寺がやられた!」

 

突然の戦力ダウンに思わず呻く。

 

「おい、ほんとに神宮寺なのか!?」

「えっ!?多分そうだ!王の財宝の奴だ!」

「マジかよ、神宮寺が真っ先に…!」

 

名前はあっている筈だ。あいつとは結構仲も良いからな…見間違える訳がないと思う。

 

「大丈夫だ、神王?が助けに行ってる!」

「神王は俺だ!」

「…今はそんな話をしている場合じゃないはずだ!まずはフェイトだ!」

「まぁ、分かってはいるけどよぉ…!いくら何でも速過ぎる!!」

 

勿論、ただ無駄口を叩いている訳ではなく魔力弾も放っているのだが…

全然当たらない!

 

≪Shooting Edge Sniping Shift!≫

 

神王も高速の魔力刃を撃っているが、結果は同じだ。

 

あの速度では偏差撃ちをするにも大分前方を狙う必要があるが、

そんなもの軌道予測で軽々避けられてしまう!

なんであの速度で鋭角に曲がれるんだ、反則過ぎるだろう!

 

絶対的な速度で接近してからバルディッシュによる一閃。

神宮寺もそれでやられた。

フェイトはその戦い方に拘っているのか、フォトンランサーの類を使う気配が無い…

 

明らかに原作とは違う動きだ。

それに、アニメと主観の違いがあるとはいえここまでの速度をフェイトが有していただろうか…?

何かがおかしい。フェイトの戦い方を変えるような何かがあったんだ!

 

狙われた奴はプロテクションでかろうじて防いでいるようだが時間の問題だろう。

空中で雷が何度も曲がり、プロテクションをひたすらに削っている…

 

今も十人以上が同時に魔力刃を撃ち込んでいるのに、それを全て避けてなお攻撃に回せる余裕がある。

 

圧倒的。

そんな言葉が相応しい蹂躙劇だ。

 

既に神宮寺以外にも3人墜とされた。

 

俺達が無事なのも、()()俺達が狙われていないだけだ…

狙われたが最後、墜とされた奴らの二の舞だろう。

 

 

 

…っちぃ!次は俺か!

≪Protection!!≫

 

――バヂィッ!!

 

フェイトの攻撃をプロテクションで受け止めるが、

スパークの様な鋭い音と共に凄まじい衝撃が伝わってくる…!

 

一撃受けただけで体勢が崩されそうな程の衝撃…!

そう何度も受けられる様なものじゃないと即座に理解するが…

 

――バヂィッ!!

 

二撃目!しかも、真後ろか!

ほんとに雷と同等の速度出てるんじゃねぇのか!?これ!?

 

「おい、神王!手を貸してくれ!」

 

だが、近くに居たはずの神王からの返答が無い。

フェイトの攻撃に間隙等は無く、

こうしている間もフェイトの連撃は俺の守りを削っていく…

 

「神王!?」

 

フェイトの攻撃を必死に受けながらも目を凝らして見回すと、

およそ5m程離れたところに神王の姿が見えた。

 

アイツ逃げやがった!

いや、少し離れたところで申し訳なさそうに魔力刃撃ってやがる!

って言うか、やっぱり当たらねぇ!

 

まずいぞ、これ…こんな攻撃受け続けたら持たねぇ!

それなのに、解っていても防ぐしかねぇ!

型も何も無い突撃だけなのに速度だけで隙を完全に無くしている!

 

フェイトの攻撃の合間に魔力刃が何度も通過しているのが見えるが、

やはりどれも当たらない…

…どうやら、俺も墜ちる事になりそうだ。

 

≪Reflective wall!!≫

 

ガァン!!

「あぐっ!!」

 

なんだ!?目の前に銀色の壁…?

いや、それよりもフェイトが止まった!…いったい何が…?

 

「へへっ、どうやら俺の出番って訳だな!」

 

いつの間にか俺の傍に来ていた銀髪オッドアイ…誰だ?

 

「さぁ、俺の鮮烈なデビュー戦って訳だ!この神場 虎次郎が相手してやるぜ!」

 

どうやらあの壁は神場が張った物らしいな…いや、って言うか!

 

「いや、そんな魔法持ってるなら早く使ってくれよ!?」

「悪い!作るのに時間がかかった!」

 

作った…?って事はコイツの特典は!

 

「おっ、その表情は分かったみてぇだな!俺の能力!」

「魔法の…作成…?」

「創造と言ってくれ!なんかスケール小さくなってる気がするから!」

 

言い方はともかく…さっきのフェイトの反応を見るにこの魔法は…

 

「攻撃の…反射…!」

 

フェイトが忌々しそうに呟く。

 

「正解だ!この壁に攻撃すれば、その衝撃も!魔法も!全部お前に跳ね返る!」

 

なるほど、悲しい話だが俺達の攻撃ではフェイトに届かない。

だからフェイトに自分の攻撃で墜ちてもらうって訳か…だが…

 

「おい、自分の能力の解説は…」

「知ってるよ!死亡フラグだろ!?気持ちが高ぶって思わずやっちまった、悪い!」

 

まぁ、俺達って活躍した順番に名前覚えられるからな…主になのはに。

 

ともかく、コレで一先ずは安心って訳だ。

守りを解いてフェイトの出方を見ると…

 

「…随分、余裕があるみたいだね。」

 

なんだ?…怒ってる?

 

「あなた達が、もしも…この世界をまだ『物語』だと思っているのなら…」

 

俺達のふざけているような態度が癇に障ったのか…?一瞬そう思ったが…

 

「この世界の『現実』を教えてやる!」

 

そう叫んで突っ込んで来た!

今の言い方…転生を知っているのか!?口調も少し違う!

こいつ、まさか…!

 

「させるかよ!」

 

≪Reflective wall!!≫

 

直ぐに目の前に銀色の反射壁が現れるが…

 

「ふっ!」

 

フェイトがバルディッシュを振り抜く。

 

――ガォン!!

凄まじい雷鳴と衝撃…結果は…

 

「マジか…!」

 

反射壁が凹んだ…こっちの方に…

フェイトを見ると突撃する前の位置に戻っている。

 

「今の攻撃で吹っ飛ばされたのか…?」

「違ぇ!反射よりも速く元の位置まで戻りやがった!」

 

…は?

えっ、もうこの魔法破られたの?早くね?

 

「おい、だから解説なんかするなって!」

「くそっ!まだこっからだ、≪Reflective wall≫!!」

 

反射壁が俺達を守るように立方体の形に展開される。

 

「これで時間稼ぎして次の魔法を作り出す!」

「おい!これ以上フラグを重ねるな!」

「へっ、知らねぇのか?死亡フラグを重ねればよ…逆に生存フラグになるんだぜ!?」

 

そう言うと目をつぶって集中し始める神場…だが…

 

「この世界は物語ではない。」

 

――ガォン!!

 

「先ずはそれをあなた達に証明する。」

 

――ガォン!!!

 

「それで漸く…」

 

――ガォン!!!!

 

()()()()()()()()()()()!」

 

――ガォン!!!!!

 

フェイトが正面の壁を集中的に攻撃しては元の位置に戻る。

その繰り返しで壁はどんどん歪み、まるでトンネルを掘るようにフェイトが俺達に近付いてくる…!

 

「おい!魔法早くしてくれ!めっちゃ怖ぇんだけど!!」

 

フェイトの一歩目!?何を言っているんだ!?

フェイトに何があったらここまで原作から変わるんだ!

 

「出来た!…うおぉっ!なんじゃこりゃあ!?」

 

魔法が完成したのだろう。

目を開けた神場が、眼前まで()()()()()()反射壁に怯んだその一瞬が命取りだった…

 

――ピシッ…

 

ガラスにヒビが入るような異音。

その次の瞬間には、銀の反射壁を突き破る黄金の雷光。

 

「捉えた!」

 

「う…ぐっ!」

「く…そぉ…っ!」

 

身体を貫く衝撃…雷の魔力変換資質のせいか、体が痺れて動かない…

 

神場も俺と同じだろう。

 

ボロボロと崩れていく反射壁がそれを雄弁に語っていた…

 

って言うか、フェイト…

 

 

 

幾らなんでも脳筋過ぎないか…?

 

 

 


 

「次は…」

 

やべぇよ…やべぇよ…

何だよあの速さ!もう5人やられちまった!

 

救助の為に人数も割かないといけないし、どんどん止められなくなるぞ!

 

「…っ!」

 

マジかよ、目があっちまった!

 

こっちにくる!

 

思わず身構えた瞬間…

 

「――くらえ!!」

 

突撃してきたフェイトが、銀の奔流に呑み込まれたように見えた。

 

「っ!…この技は!」

「完全復活だ!さっきはよくも不意打ちしてくれたな!」

 

王の財宝の神宮寺!

 

「神宮寺!やったのか!?」

「いいや、躱された!」

「自信満々に言う事かよ!?」

「しょーがねーだろ!?()()()()()()に命中させるのがどんだけ難しいと思ってるんだ!」

 

解っているけどさぁ…!

 

「ほら、引っ込んでろ。ここからは俺のリベンジマッチだ!」

 

え、何そのヒーロームーブ。俺もやりたい。

 

「あなたは、確か最初の…」

「あぁ、顔を覚えてくれて嬉しいぜ!本当にな!」

 

周りを見ると墜とされていた3人全員が復活しているのが見えた。

 

「さっきの2人に、時間をかけ過ぎた…」

「そう言う事だ。観念するんだな!≪王の財宝≫!」

 

神宮寺の正面に無数の揺らぎが現れてフェイトに照準を合わせる。

 

「その魔法の事は知ってる。撃つ為に魔法を予め込める必要がある事も。」

「…」

「私に当てる為にどれだけ撃つ事になるか…試してみる?」

「俺だって出来れば撃ちたくないんだ。退いてくれればお互い助かるんだけどな?」

「出来ない相談。」

「じゃあ俺も無理だ。」

 

――ゴォッ!!

――バヂィッ!!

 

大量の魔力刃が放たれるのと、フェイトがスパーク音を鳴らして高速機動を開始するのはほぼ同時だった。




はい。

フェイトさんの戦い方は
『全部避けての見敵必殺』『速度にまかせた強行突破』です。

…脳筋過ぎない?と言う疑問が出るでしょうが、
戦い方の勉強よりも飛翔魔法に時間を割いてたからですね!仕方ないね!

そしてもう一つ、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


以下補足

原作の戦いを知っているのに何故バインドを設置しないのか?
と言う疑問があるかと思いますが、

一部の人はちゃんと設置してます。

ただしフェイト自身もバインドが天敵である自覚がある為、
バインドの兆候を見つけ次第、回避してます。

原作の描写的にそんな兆候あるのか?と言う疑問はありますが、
ここは『兆候がある』と言う設定で行かせてください。
(でないと転生者がこれだけいる以上フェイトさんに勝ち目が…)

そして設置した人を最優先で墜としに行ってます。
使用者が意識を失えば設置したバインドも消えるはずなので。
2人目と3人目がそうですね。

神場(魔法作れる人)が最後に完成させたのもバインド系です。
『特定の魔力波動を持つ者のみに作用する広域型のバインド』です。

フェイトさんに対してこの上ない特攻魔法ですね。

因みに魔法作成のルールは以下。

・魔法を作る際はその場を動く事が出来ず、視界も閉じて集中しないといけない。
・完成した魔法は魔法の効果が直ぐに解るような名前でないといけない。
・完成した魔法の譲渡は出来ない。
・完成した魔法の効力(威力)・範囲・発動速度は作成した後に変更できない。
 作成後に使用者が強くなったとしても、
 この能力で作成された魔法の威力は作成時の物に依存する。
・魔法の効力(威力)・範囲・発動速度が優秀であるほど、
 魔法の作成時、使用時に多くの魔力を要する。
 消費量を製作者が弄ることは出来ない。

‐12/26 追記‐

一部文章を修正しました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「…」

嫌に静かにこちらを見つめていた。

「フラグ…?」

死亡フラグの意味を理解できなかったのか…?一瞬そう思ったが…

「…この世界をまだ『物語』だと思っている奴に、負けるつもりは…無い!」

そう叫んで突っ込んで来た!
今の言い方…転生を知っているな。
こいつ、まさか…!



「…随分、余裕があるみたいだね。」

なんだ?…怒ってる?

「あなた達が、もしも…この世界をまだ『物語』だと思っているのなら…」

俺達のふざけているような態度が癇に障ったのか…?一瞬そう思ったが…

「この世界の『現実』を教えてやる!」

そう叫んで突っ込んで来た!
今の言い方…転生を知っているのか!?口調も少し違う!
こいつ、まさか…!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここ以外も少し修正していますが、微妙な差異なので割愛します。

問題は次回の分なんですが…ちょっと修正点が多くなりそうなので、
もしかしたらいつもより少しだけ遅れるかもです。



‐12/30 追記‐

アンケートに伴い擬音の数を若干減らしました。

もう少し減らした方が良いのかもしれませんが、作者の描写力不足ですね…
表現力を鍛えねば…

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