ヴィヴィオが機動六課の訓練に見学と言う形で参加している丁度その頃、機動六課隊舎の課長室にて、八神はやては『とある人物』達と秘密回線による通信を行っていた。
「――それじゃ、ヴィヴィオの一件は貴方達も関係していると?」
『うむ。だが彼女について全ての情報を君が知る必要は無い。』
『然り、機動六課の役目は変わらぬ。戦力を育て、かの予言を覆す事に専念せよ。』
『彼女もまた来るべき脅威に対する戦力の一人として考えよ。』
通信の相手は『時空管理局最高評議会』……彼女の勤める組織、時空管理局の事実上のトップであり、機動六課が作られる切っ掛けにもなった人物達だ。
ヴィヴィオを訓練に参加させてほしいと言うジェイル・スカリエッティからの手紙を受けたなのはも既に一度彼等と連絡を取っていたのだが、その事情をなのはから聴いたはやては今回の定期連絡のついでに彼等に再確認を取っていたのだった。
「……分かりました。
彼女の能力や適性につきましては、次回の定期連絡の際に進捗と合わせて報告します。
……予言の解釈について、何か進展は?」
『うむ……『凶星』が示すモノに関しては以前も告げた通りだ。
少なくとも、
既に調査に適した人物を送り込む事も決定済みだ。いずれ報告は君の元にも届くだろう。』
『『光』についても我等の解釈は変わっていない。
管理外世界で起きたジュエルシード事件により我々が知る事になった魔導士、『高町なのは』だ。
彼女の素質も併せて考えれば、間違いなく栄光と滅びを左右する鍵と見て間違いない。』
「……はい。」
『……あの時の一件に関しては、我々も反省している。
彼女の精神面に対する配慮が足りていなかった。』
空中に投影されたモニターに映る彼等の姿は時空管理局のエンブレムで代替されており、その素顔や表情を伺い知る事は出来ない。それは声も同様で、壮年の男性の声を模した合成音声からはその正体どころか感情の機微さえ判別できなくなっている。
しかし、はやては彼等の言葉に込められた思いは、言葉通りの物だろうと感じた。
常に自分達こそ『正義』であると言う前提で話す彼等らしくない謝罪の言葉は、きっと彼等にとっては非常に重い言葉なのだろう。
「あ、いえ……高町教導官もその一件は謝罪を受け入れて気にしていないみたいなので……
体に負荷がかからない様にと、
それに彼等からの謝罪はこれが初めてではない。今機動六課が使用している訓練用の仮想空間シミュレータは当時の最高峰の技術で作られており、今市場に出回っているジェイルギアと比べても数十倍の精度を誇る程だ。
それを現在保有しているのは首都クラナガンにある地上本部と時空管理局の本局、そして機動六課のみであり、この状況は彼等の協力があったからこそ実現していると言っても過言では無かった。
『……そうか。今はもう問題は無いのだな?』
「はい、フォワード陣の訓練も時折確認していますが、影響は残っていないようです。」
『分かった。……話を戻そう。
とは言っても、こちらも今話した以上の進展はない。
いくつかの説は浮上しているが、どれも根拠に欠けるものばかりだ。
間違った情報で混乱するような事を避ける為にも、一つ一つを伝える訳にはいかん。』
予言について話を戻した評議会がそう告げると、はやては少し考えて問いかけた。
「そうですか……では、一つだけ質問を許してもらえますか?」
『なんだ、申してみよ。』
「私が伝え聞いた予言ですが……
続きがあったり、秘匿している部分はありませんか?」
『! ……伝えられる予言は全て伝えている。』
「つまり、
そう問いかけるはやての表情にはある種の確信があり、最高評議会の面々の動揺が珍しく音声に乗った。
『何故そう思う。』
「六課稼働前に行った定期連絡での会話で、貴方達は『滅びは人為的な攻撃である可能性が高い』と教えてくれました。その為、六課での訓練もそれを想定したものになっています。
しかし、私が知る予言の文章では、滅びが『自然現象』や『事故』である可能性を否定できません。
『……なるほどな。』
はやてが見つめるモニターの先……管理局の秘匿エリアにて、最高評議会の議員は愛らしい少女の顔を苦々し気に歪める。
――年端も行かぬ少女に見抜かれるとは、我々も老いたモノだ。
……因みに現在の彼等の外見年齢は既にはやてよりも年下なのだが、今は置いておく。
そんな議員の様子を知ってか知らずか、議長が口を開いた。
『……確かに予言には続きがある。』
『! 待て、伝えるにはまだ……』
『確かに伝える事でリスクは生まれる……だが、ここは私に任せて貰おう。』
『……むぅ。』
『……仕方あるまい。』
「
制止しようとする議員を宥め、議長は続ける。
『滅びが人為的に引き起こされると言う説の根拠として、秘匿していた一節を明かそう。
文面はこうだ――『守護者達が地を去るとき 天の眼が開き滅びは来る』。
未だ情報の精査が足らず、明確なタイミングは分かっていないが、
推察するに『レジアス・ゲイズ』か『機動六課』が第1管理世界ミッドチルダを離れるタイミングである可能性が高い。』
「! 『守護者』……これが『レジアス中将』か『機動六課』……?」
『『地』を『地上本部』或いは『ミッドチルダ』として捉えた場合、そうなる。
だがこれを伝える事で、『機動六課』がミッドチルダを離れにくくなれば、滅びが来るタイミングを計る事が出来なくなる可能性があった。
それ故伝えなかったのだ。』
結局彼が予言の全文を明かす事は無かったが、今彼が言った『伝えなかった理由』もまた真実の一つだった。
残る一文を隠したのも、その部分を伝えるリスクがそれを遥かに上回るからだ。
「この一節を読む限り、滅びはミッドの守りが薄くなる隙を突いて来る……?
だから『自然現象』や『事故』ではなく、『人為的な攻撃』……レジアス中将にはこの一節は?」
『伝えていない。本来ならば君にも伝えず、地上を離れる予定が組まれた際に注意を促すつもりだった。
言うまでも無い事だが、高町なのはやフェイト・テスタロッサ達には今の情報は伝えてはならぬ。理由は分かるな?』
「はい。」
『ならば良い。君も出来る限りこの一節については気にしない事だ。
その状態で地上を離れるタイミングこそ、最も危うい時期と心がけよ。』
「はい……因みに、この『天の眼』に関しては……?」
『不明だ。現在、それに類するロストロギアの情報について調べているが……成果は芳しくない。
分かり次第、伝えよう。』
「ありがとうございます。」
その後、いくつかのやり取りを行い通信は切れた。
はやては考える事が増えてしまった事を内心で嘆きつつ、椅子の背にもたれ、凝りを解すように体を伸ばした。
「――ふぅ……予言っちゅうのも厄介なもんやな。
地上を離れる時が一番危険なタイミングかも知れんなんて言われたら、予定組むたびに緊張してまうやん……」
そう言葉にして思い出すのは、機動六課が設立される少し前の騒動……
――なのはちゃんは、きっともっと辛かったんやろな。
それは今から約5年前……高町なのはが倒れた日の事だった。
次回は過去編になります(と言っても短いので1話か2話で終わる筈)
矛盾やおかしいと感じる点があれば遠慮なく教えてください!
あと、前回し忘れていたアンケートです。よろしければ気軽にお答えください。
『ヴィヴィオ・スカリエッティ』と言う名前について感想欄で触れられる事が多かったので、それに関する物です。
と言っても、アンケートの結果で変わるのはあくまで名前から『・スカリエッティ』が消えるだけで関係性は変わりません。(ちょっと本文は修正する必要が出ますが)
-追記-
レジアス・ゲイズの名前を間違えていたので修正しました。ごめんよ中将。
『ヴィヴィオ・スカリエッティ』と言う名前について
-
良いと思う
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気にならない
-
どちらでも良い
-
やや苦手
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断固NG