転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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執筆の時間があまりとれず、若干急いで書き上げたのでちょっと変な所が残ってるかも……


フォワード陣の初任務 その5

砲撃を受け止めた障壁から腕に伝わる衝撃は重く、そして絶え間ない圧迫を常に与えて来る。

例えるならばそれは台風の日に風上に向けて傘を構えるような物で、今の俺はとても身動きの取れない状況だ。

 

それに……

 

――拙いな、ちょっと耐えられそうにない。

 

残党のリーダーが担いでいた装置……恐らくはロストロギアを組み込んだ兵器と思われる『それ』から放たれた砲撃の威力は、俺の想像を遙かに超えていた。

 

ヴィータとの模擬戦形式の訓練でも重い一撃を何度も受けて来た経験で今の自分の障壁の強度は理解しているが、この砲撃の威力は俺のプロテクションをもう数秒と経たずに抜いて来るだろう。

 

「ティア! 早く逃げて!!」

「ご……ごめん、スバル……脚が震えて……!」

 

見れば、確かにティアナの左脚はガクガクと震えて一人で歩く事も難しそうだった。

その様子にあの時の光景が脳裏を過る。

 

「やっぱりトラウマが……!」

「……ホント、情けないったらないわ。ちょっとあの時と似た環境ってだけでこの様だもの。

 スバル……アンタだけでも逃げなさい。あたしは何とか障壁で耐えてみる。

 大丈夫よ、シャマルさんも来てるから死ななければ助かるわ。」

 

そう言って覚悟を決めたように笑みを浮かべるティアナだが、そんな選択を許す訳には行かない。

今でこそ落ち着いたようだけど先程魔力弾の乱射に使った魔力量は相当の物だった。それに今のティアナの様子を見る限り、障壁に使う魔力もそれほど残っていない筈だ。そんな状態で挑む賭けじゃない。

 

――障壁を解除して、ティアナを抱え、マッハキャリバーの全速力で振り切るって言う手もあるけど……

 

いや、これも確実とは言い難い。確かにローラーブーツからマッハキャリバーに替えた事で速度も機動力も上がったけど、今の地面の状況が良くない。昔の水の浸食で滑らかになった足場で、もしもマッハキャリバーのローラーが空回りを起こせばどうなるか……いや、そもそもそう言ったアクシデントが無かったとしても、砲撃が直撃するより早くティアナを抱えて離脱できるかどうか……どっちの賭けも分が悪すぎる。

 

――やっぱり、確実にこの砲撃をやり過ごす手を使うしかないか。

 

目を瞑り、自分の中でスイッチを切り替える。それはある種の意識的なスイッチの切り替えであり、それと同時に文字通りの意味でのON/OFFの切り替えだ。

身体の内側で今まで動いていなかったパーツが駆動し、その『振動』が体の外へと溢れていく。

 

「! スバル、あんた……!」

「ティア、伏せてて。」

 

巨大なエネルギーに、もう一つの巨大なエネルギーをぶつける……考えるまでもなく、危険な行為だ。だけど、少なくともこれが二人とも助かる可能性が最も高い選択肢なのだ。

 

溢れ出す振動に魔力を纏わせると、その独特の波形が視覚化されていく。

 

「――IS(Inherent Skill)

 

元々戦闘機人として持っていた能力……スバルが危険な力と判断し、積極的に使用しなかったその力を、俺はこっそり鍛えていた。

力をコントロールする事に比重を置いて、可能な限りリスクを排し、安全に使えるようにする為に。

この力はその副産物に見つけたものだ。本来は『対物』にのみ圧倒的な破壊を齎す力『振動破砕』……そのバリエーション。

 

振りかぶった右の拳に波形が集約されると、俺の魔力の色を反映して空色の輝きを放つ。

 

「振動破砕・改!」

 

名前は付けていなかったので安直だが、その性質はこの状況に即している。

 

「ハアアァァァッ!!」

 

俺が輝きを放つ拳を自分の障壁に叩き込んだ瞬間……波形の魔力が俺の障壁に伝わり、更に残党のリーダーが放った砲撃にまで伝わって行く。

 

そして、一瞬それらが歪み、捻じれた。

 

 

 


 

 

 

「!」

 

唐突に凄まじい爆発音が響き、地面が大きく揺れた。

先程も小さな揺れが数回あったが、今回のはそれらとは比べ物にならない規模の振動だ。

 

思わずたたらを踏むが、グラーフアイゼンを杖のように地面に刺す事で何とか倒れないように持ち堪え、耳鳴りが煩い中、音のした方向を見据える。

 

「今のは……ったく、あいつ等一体何やってんだ?」

 

震源はともかく、音の発生源は間違いなく今あたしの前にある洞窟からだった。

そう、ここは奴らの逃走ルートだろう洞窟の出口だ。

門番代わりか、それとも偶々か、出口付近の沼に生息していた巨大な魔導生物を倒したあたしは、ここで奴らが逃げて来るのを出待ちする予定だったんだが……

 

「……どうものんびり待ってる余裕も意味もなくなったみてぇだな。」

 

洞窟の奥から多量の魔力が漏れてきている。そしてその内の一つは、あたしが今訓練を見ているスバルの物だ。

 

敵の逃走経路を見つけたって所は評価点だが……どうやら相当無茶な事をしているらしい。状況次第だが、コレは減点対象かもな。

 

≪なのは、予定変更だ。動いてくれるか?≫

≪うん、いつでも!≫

≪助かる。じゃあ、そうだな、先ずは……≫

 

「――さて、あたしも行くか。」

 

なのはに段取りを伝え終えたあたしは、洞窟の中へと駆け出す。他でもないあたしの教え子を助ける為に。

 

「実戦になった途端に無茶しやがって……! そっちがその気なら、こっちはその無茶が無茶じゃなくなるくらいに扱いてやるからな!」

 

 

 


 

 

 

――あのガキ、何しやがったんだ……!?

 

赤い髪のガキにロストロギアを組み込んだ魔導砲の一撃を放った瞬間、青い髪のガキが割り込んだのは見えた。

おおかた赤い髪のガキの方を助けようとしたのだろうが、そんな行為は俺からすりゃあラッキー以外の何物でもない。赤青セットで仕留めてやろうと、魔導砲の出力を上げ、若干次のチャージ時間を伸ばしてでも決めるつもりで撃ったんだ。

 

だがその結果、砲撃は奴等を飲み込む前に捻じれて中程で爆発……俺もその衝撃で随分吹っ飛ばされちまった。

 

――そうだ! 魔導砲は無事か!?

 

近くに転がっていた魔導砲に駆け寄り、様子を見る。

……どうやら機能に問題は無いらしい。レバーを下ろすと、正常にチャージが始まった。

 

ったく、焦らせやがって……コイツはこの洞窟を抜ける時にも、あの魔導生物を仕留める為に必要なんだ。こんな整備も出来ねぇところで壊れて貰っちゃ困る。

 

安堵のため息交じりに魔導砲を肩に担ぐと、先程の爆発の煙も晴れてきた。

ガキどもの状態を確かめる為に目を向けると……

 

「……ちっ、仕留めそこなったか。」

 

煙の向こうに人影が見える。どうやら多少ふらついているようだが、自分の足で立っている以上戦闘は可能か……

 

くそ、なんだって砲撃が捻じれるんだ!? あんな()()()さえ起こらなければ仕留められたはずだったのに!

やっぱりメカニックが全員捕まっちまったのが痛手だった……たまたまこのアジトに残っていた試作品の設計図を流用したのも間違いだったか? いや、だが俺達にはコイツに賭ける以外の手段は無かった。それは間違いねぇ。

 

……そうだ、そもそも俺はツイてるんだ。あの逮捕劇の中で何とか逃げ出せただけじゃない! 偶然目の前に転がって来たロストロギアだって手に入った! 何とかここを切り抜けちまえば、今度はこのロストロギアと兵器を交渉材料に別の組織に入ってやり直す事だって出来る!

 

――この煙が晴れていない今がチャンスだ!

 

俺は踵を返し、洞窟の出口に駆け出す。

魔導砲のチャージはまだ済んでないが、出口に着く頃にはチャージも完了してる事だろう。そうなればあの魔導生物をコイツで殺し、近くの岩場にある秘密の隠れ場所に身を隠せる!

この通路がバレようと、隠れ場所を知る者はいない! 俺は助かる! 逃げ切れる! 逃げ切って今度こそ革命を……!

 

 

 


 

 

 

煙が晴れていく……残党のリーダーの姿は、無い。

さっき微かに聞こえた足音から考えても、どうやら逃走した事に間違いは無さそうだ。

 

「……ティア、無事?」

「スバル……アンタ、その腕……」

 

腕? ティアナの言葉で右腕の様子を確認しようとしたが、腕が上がらない。

視線を動かして確認すると、腕の至る所に罅が入り、機械の部品が覗いているのが見えた。

 

「あー……うん、やっぱりこうなっちゃうか。」

 

俺が振動破砕・改をあまり使わない理由はまさにこれだ。振動破砕はただでさえ周囲に危険が及ぶISだ。しかし、ただそれだけならば使いこなしさえすればその影響を最小限に抑えられる。

だが、振動破砕・改はダメだ。敵の魔力波動との共振現象を引き起こす振動破砕・改は、その技の性質上どうしてもこっちの体にフィードバックが来る。

この腕も整備して貰うまではこのままだ。

改善しようのないデメリット。重すぎるリスク。だからこそ使う機会は無かったし、使う事も無いと思ってたんだけどな……

 

「やっぱりって……痛みとかは無いの……?」

「うん。そりゃあちょっとは体も痛むけど、訓練の扱きの方が痛いかな。

 ティアの方も……とりあえずは大丈夫そうだね。安心した。」

 

どうやら体の震えも収まったみたいだ。俺が安心していると、ティアナは恐る恐ると言った様子でこちらに近付き、俺に抱き着いて来た。

 

 

 

……

 

 

 

…………?

 

 

 

!!!!!!??????

 

ぅえッ!!? ちょ、ティアッ!!??」

 

突然の事に動揺し、唯一動く左手で咄嗟に肩を掴もうとして……

 

「ごめんなさい……っ! スバル、ごめんなさい……!」

 

そんなティアナの震える声を聞いて、どうするべきかと考える。

何と言うか、こう言う事に詳しくない俺でも肩を掴んで離すのは絶対に違うなと言う事は分かる。だけどいざどうするのが正解かと考えると、さっぱり分からない。何か漫画とかアニメとか映画とかドラマだとここからする事って大抵抱きしめ返して何かイケメンな事言うんだろうけどそんな事言えるほど俺のワードセンスって良くないしぶっちゃけティアナには申し訳ないんだけど今すっごい緊張状態で頭も回らないって言うか、そもそも普段から頭回ってないって言うか……! えっ、こういう時どうするの!!?

 

誰か、誰か教えて!

 

「すまねぇ! 遅れ…………ふっ……」

「あっ、ちょっと!?」

 

そこの銀髪オッドアイさん!? 待って! クールに去ろうとしないで!!? 今ある意味すごいピンチだから!

 

「良いか、二人共。こう言う時、二人っきりにしてやるってのが空気の読める大人な行動って奴だぜ。」

 

待って、エリキャロも連れて行こうとしないで!!

 

「ちょっと待って! 今…………ん?」

 

その時、俺の耳が微かな物音を聞き取った。

まだこの作戦は終わっていない……そんな感覚がして、途端に頭が冷静になる。

 

「ティア……あたしの後ろに居て。」

「えっ……」

 

ティアナを緊張させない様に優しく背中を撫でてそう言い、俺はティアナを庇う様に洞窟の奥へ向けて一歩だけ踏み出す。

 

物音はアイツが逃げて行ったであろう洞窟の奥からだ。耳をすませばだんだんと音の詳細が分かって来る……

 

――コレは、打撃音……? それも一撃一撃が相当に重い……それが絶え間なく続いている。

 

この先で戦闘が起きている! つまり、アイツは逃げきれていない! 俺は戦闘不能だけど、今からでもエリオとキャロ、それに銀髪オッドアイを向かわせれば……!

 

……あれ、でもこの音のリズムと重さ……どこかで日常的に聞いていたような……?

 

その瞬間、一際重い音がした。そして空気を裂いて何かが飛来するような音……凄い速度で、何かがこっちに飛んでくる!

 

ティアナが俺の背後にいる事を確認し、残る左腕を構える。

俺の予想が当たっていれば、今からここに飛んでくるのは……!

 

 

 

……見えた! って……

 

「や、やり過ぎじゃないかな……ヴィータ副隊長……!」

 

飛んできたのは残党のリーダーだ。全身に痛々しいあざを作り、意識を失っているのか白目まで剥いている。

 

俺は錐もみ回転で飛んできた彼を……

 

「――せいッ!!」

「ぐはッ!!?」

 

拳で受け止めた。

 

そのまま地面に落ちた残党のリーダーを恐る恐る覗き込む。

 

「……ッ! ……ァ……!」

 

どうやらさっきの俺の一撃が気付けの役割を果たしたのか意識は戻ったようだが、今度は全身を苛む激痛に声も無く悶えている。

 

直後、洞窟の奥からヴィータが高速で飛んできて、目の前に着地した。

 

「よぉ、無事……って感じじゃねぇな、スバル。」

「は、はい……!」

 

咄嗟に敬礼しようとしたが、右腕が上がらずに直立してしまう。

 

「その腕、治るのか?」

「はい! 設備のあるところで整備して貰えれば、ちゃんと治ると思います!」

「……なら、今は良い。後で詳しく聞くからな。」

「は……はい!」

 

――ヒィ……これ絶対後で怒られるヤツだぁ……!

 

内心半泣きになりながら覚悟を決めていると、俺の後ろからティアナが飛び出した。

 

「あ、あの! ヴィータ副隊長!」

「あん?」

「ス……スバルをあまり責めないでください! 悪いのは、あた……あたしなので!」

 

ティアナ!? 気持ちは嬉しいけど、今はあまり口を出さない方が……!

 

「……はぁ……何が有ったかは後で聞く。誰が悪いとか、正しいとか関係無しだ。

 そんで作戦が終わった後はそれぞれの反省点を洗い出し、次の事件までに改善するだけだ。

 ……折角生き残った奴を無駄に責め立てる時間なんかねぇよ。」

「ヴィータ副隊長……」

 

ティアナ……天使か!? いや、諸々の説明後にどうなるかはまだ分かんないけど、ティアナの言葉でヴィータは少し落ち着いたように見える。

もしかしたら今のヴィータなら話せばわかってくれるかも……!

 

「ぐ……この、バケモン、が……!」

 

ヴィータからのプレッシャーが減ったのか、残党のリーダーがヴィータを睨みながらそんな事を口走る。

……いや、お前凄いな。ヴィータがいくら見た目が子供だからって、お前をそんな目に遭わせた相手にそんな口をきけるなんて。

 

「魔導砲のチャージさえ済んでいれば、てめぇなんか……!」

「あ? 魔導砲……? ああ、この()()()()の事か。」

 

そう言ってヴィータは片手に持った装置をフリフリと見せつけて挑発する。

 

「て、てめぇ……!」

「チャージ率……これか。100%になってるな。

 これがあればあたしに勝てるって? 本気で言ってんのか?」

「当たり前だ! フルチャージで撃てば、その威力は魔力発揮値600万の砲撃に匹敵する!

 魔導士一人がどうにかできる威力じゃねぇ!」

 

魔力発揮値600万!? ……確かにそれは脅威だ。それだけの出力の魔法は一般的には、ランクS以上の魔導士が扱うレベル。それをチャージが必要とは言え、魔力量も適性も関係無しに撃てるとなると恐ろしい事だ。

しかし、ヴィータはそれがどうしたと言わんばかりの表情でこう告げる。

 

「随分と思い上がりが過ぎるな……やっぱわからせるしかねぇか。」

「は?」

 

次の瞬間、薄暗い洞窟に光が刺した。いや、違う……()()()()()()()()と言うべきだろうか。

 

恐ろしく高密度の砲撃が、数十mはあろうかと言う岩盤を一瞬で穿ち抜き、僅かな振動も無く地面につき立ったのだ。

 

そしてコルク栓を抜いたような真円形の穴から、一人の女性がゆっくりと舞い降りて来た。

 

……そう、高町なのはである。

 

「おい、なのは! ちょっとプロテクション張れ。」

「え? 良いけど……」

《Protection.》

「はっ、えっ? なのは? なのはって……」

 

二人の短いやり取りに激しく動揺し始めた残党軍のリーダーの反応を余所に、ヴィータは例の装置……残党軍のリーダーが『魔導砲』と呼んだそれをなのはに向けて躊躇なく撃った。

 

そして砲撃が直撃し、その煙から傷一つないなのはが現れ……

 

「もう! ビックリさせないでよ!?」

 

その声が洞窟に響いた瞬間、残党軍のリーダーは忽ち土下座し無言で両手を突き出した。

 

……こうして、フォワード陣の初任務となった事件は解決したのだった。




取りあえず事件は今回で解決です。
他の残党はなのはさんが素顔を見せた状態で空を飛んでいるのを見た瞬間に降伏してます。

次回1話挟んで、そのままスバルとティアナの過去編(例の事件だけなので短い)に入ると思います。


以下おまけ
・魔導砲→魔力発揮値600万
・小学生なのは→魔力発揮値793万(ディバインバスター)

機動六課で個人で対応できる人物一覧(フォワード以外)
・なのは→プロテクション
・フェイト/アリシア→当たらない
・はやて→対応できる魔法多数所持
・リインⅠ/Ⅱ→はやてに同じ
・シグナム→普通に切れる
・ヴィータ→アイゼンで打ち返せる
・シャマル→旅の鏡で返せる
・ザフィーラ→消せる
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