転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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過去編 スバルとティアナ

訓練校時代の事だ、俺達は強化合宿の様な行事で無人世界に行く機会があった。

 

内容は至ってシンプル。広大な樹海が広がる無人世界で、全クラスメイトが別の場所からスタートし、予め聞いていた座標を目指すと言う物だ。

 

訓練の成果を発揮する為の行事と言う事もあり、この無人世界にはちょっとした魔導生物が生息しているが、その魔導生物も人に大きな危害を与えられる程のものではないと言う話だ。

無人世界でありながら訓練校が使用するという事もあって、次元犯罪者が潜んでいないかのチェックも万全。

そうそう危険や問題など起こらない……その筈だった。

 

 

 

 

 

 

――大体20mって所かな……そんな事を考えながら痛む腕を頭上にまで持ちあげ、ごつごつとした岩肌に狭く切り取られた青空に向けてアンカーガンの引き金を引く。

 

が……

 

≪――Error.≫

「くっ……! やっぱり駄目か……!」

 

どうやら滑落した際に何処か壊れてしまったのだろう。

ヒビの入ったアンカーガンは俺の期待とは裏腹に、アンカーを射出してはくれなかった。

 

「参ったなぁ……訓練の時間が終われば、教官が()がいない事に気付いて捜索隊を出してくれると思うけど……」

 

周囲に誰もいない状況から、素の口調が漏れ出す。

呟いて見上げれば、俺の心とは裏腹に清々しい程の青空が見えた。

 

――訓練が終わるのは夕方で、今はまだ昼を少し回った辺り。

 

昼食をとった後なのが不幸中の幸いか、体力はまだしばらく持つだろう。

だけど……

 

「ッ! ……(っつ)ぅ……!」

 

滑落の際に負傷した脚が痛み、血が伝う。

傷口はそれほど深くは無い。しかしこういった擦過傷は、土や細菌が入り込んで膿んでしまう事がある。

 

薄暗い中、荷物から水筒を取り出して傷口を軽く流す。

貴重な飲み水ではあるが、俺の推測では後数時間以内には捜索班が組まれるはずだ。

 

「……とは言っても、やっぱり自力で脱出できるに越した事はないよなぁ……」

 

しかし見上げる崖は高く、適性の低い俺の飛翔魔法ではあの高さには届かない。

なんとか現状を打開しようにも、頼みのアンカーガンはこの様だ。

 

「――ッ!! あぁ、もう! いくら何でも不注意すぎるだろ、俺ぇ!」

 

あまりの情けなさに叫んでしまう。

 

俺がこんな状況に陥った原因は、一匹の虫だった。

……いや、正確には虫のような魔導生物だ。リンカーコアを持っており、針や毒と言った武器の代わりに簡易的な砲撃を使って狩りをするタイプ。

 

砲撃と言っても人間が扱う程のサイズではない。せいぜい鉛筆程の直径の太さのもので、威力もそれに比例するように低い。非殺傷設定ではあるが、人間の場合は潜在魔力が防御となって、直撃しても痛みにちょっと怯む程度の物。

 

――その『怯み』が致命的だった。

 

 

 

 

 

 

……俺は兄に付けて貰った訓練のおかげもあって、訓練校でもトップクラスの成績を誇っていた。

機動六課に入る為にはランクの調整をしておく必要があると考え、実技では手加減こそしていたがそれでも俺は周囲から頭一つ抜き出ていた。

 

唯一の例外はスバルだったが、彼女の場合は戦闘機人と言う事情も考えればおかしくはない。時々戦闘機人である事を隠す為か動きがぎこちない時もあり、そんな時は俺がアシストする事が常だった。

 

そう、俺達は訓練校で最高のコンビだった。

 

そんな自負……というか、プライドのせいもあるだろう。

俺は急ぐ必要のない今回の訓練でも、一番に目標地点に到着するべく走っていた。

 

勿論最低限の警戒は怠っていなかった。

この無人世界で最も危険とされる鷹のような魔導生物の事は調べていたし、上空からの襲撃を避ける意味もあって森の中を突っ切っていた。

だが、警戒する対象は上空だけではなかったと言う事を次の瞬間思い知った。

 

「――ッ!?」

 

視界の端に一瞬映った光……それに反応し、アンカーガンの銃口を向けた時にはもう遅かった。

 

――この虫、リンカーコアを!?

 

体長は20㎝程だろうか、虫にしては大きいそいつはサソリの様なしっぽの先端をこちらに向け、サソリであれば針があるだろう箇所から細い光線を放っていた。

 

――迎撃を……駄目だ、間に合わない!

 

その光線は真っ直ぐに俺の左脚に向かい、太ももの付近に命中した。

 

「痛ッ!」

 

咄嗟に振り向いた所為で姿勢が若干崩れているのも災いし、俺は思わずたたらを踏んで背の高い草むらを突っ切ってしまう。

その先に有ったのは――

 

「……! 崖!? 嘘ッ!??」

 

地面に奔った罅のような崖だ。

ごつごつした岩肌の所々から木の根が飛び出し、鋭利な先端をのぞかせている。

 

「くっ……!」

 

既に体は空中へと投げ出され、後は落ちるばかりだ。

だけどこう言う時の対応もシミュレーションは済んでいる!

 

――アンカーガンを構えていたのは、不幸中の幸いだったな。

 

空中で姿勢を変え、アンカーを崖の淵に撃ち込む。

アンカーは崖のギリギリのところに突き刺さり、落下は止まった。

 

「ふぅ……何とかなった、わね。」

 

危機を乗り越えた事で安堵のため息を吐く。

だが、崖上に戻る為にアンカーを巻き上げた瞬間……

 

ボロリ、とアンカーを固定していた部分が崩れてしまった。

どうやら運悪く、浅い所に埋まっていた石にアンカーが刺さってしまっていたらしい。

 

「あ……くっ!」

 

アンカーの支えを失った身体が、再び自由落下を始める。

 

――だったら、もう一度!

 

今度は飛び出した木の根に向けて……!

そう狙いを定めた瞬間、手の先に重い衝撃。

……それは先程崩落したこぶし大の石が、アンカーガンに直撃したものだった。

 

――アンカーを巻き上げた所為で、アンカーガンの方向に落ちて来たのか……!

 

少し考えれば当たり前の事にさえ気が回らなかった事実は、俺の思考に一瞬の空白を生む。

そして同時に腕に奔ったその衝撃は手を痺れさせ、その隙にアンカーガンは手から離れてしまった。

 

スローになる視界の中、咄嗟にアンカーガンを掴もうとするが……先程石が落ちて来た事で勢いが付いた為かアンカーガンが落下する方が速く、手が届かない。

 

空を切る手の間隔に今の自分の状況を理解し、サッと血の気が引いたのを感じる。

 

デバイスを手放した……それは、魔法の術式を組む際に補助を受けられない事を意味する。

 

俺の飛翔魔法の適性は高くない。決して飛べない訳ではないが、地面から離れた高い所を自由に飛べたりはしない。

 

――そして、その決してレベルの高くない飛翔魔法でさえも『デバイスの補助があってのもの』なのだ。

 

「ひっ……! あ、あああぁぁぁっ!!」

 

落下する先……どこまでも深い暗闇に呑まれる恐怖の中、咄嗟にフィールド型の障壁を張る事でダメージを最小限に抑え、突き出た木の根の対処や落下の衝撃に備えてバリア系の障壁を張る。

 

「ぁグッ!!?」

 

僅かに対処が遅れたのだろうか、左脚に鋭い痛み……!

恐怖の為に瞑った目が緊張して開かない! 体も錐揉み回転しているのだろう、上も下も分からないままに拙い飛翔魔法を使ってみるが、成功しているのか、失敗しているのかさえ分からない!

 

――何処まで落ちる!? 地面はどっち!? 後どれくらいで衝撃が来る!?

 

実際は数秒の出来事だったはずだが、視界も無く混乱する頭ではもうどれだけ落ちているのかも分からない。

全力で障壁を張り、耐えられるかどうかも分からない衝撃をただ待つと言う恐怖の時間は、数分間のようにも数時間のようにも感じられた。

 

 

 

 

 

 

――そして、今に至る訳だ。

 

我ながら運が無い。……いや、自分の不注意が情けない。

訓練校のトップと言うプライドに意識を割き、あの虫のような魔導生物にその隙を突かれ、挙句の果てに不安定な岩肌にアンカーを撃ち込むなんて……

 

「ティーダに何て言えば……!」

 

確かに兄の前では実力を隠していたし、傍から見れば俺は成長が乏しいようにも見えただろう。

だけどそれはあくまで俺が意図的にそう見せていただけだし、そう見られる覚悟もあった……だけど、今回のは間違いなく『素』なのだ。流石にこんなの情けなくて報告できない……!

 

「……いや、嘆くのは後だ。

 今はとにかく、何としてでもここから出るんだ……機動六課に入る為に!」

 

こんな所で躓いてはいられないと、自分の目標を声に出して気合を入れる。

 

そう、今の俺の目標は機動六課に入る事! この世界のこの時代に生まれる事を選んだ以上、なのはやフェイト、はやて達に会いたい! 話がしたいし聞いてみたい事もある!

アニメでは語られていない出来事を知りたいし、その時にどう思ったのかを教えて欲しい!

 

それに、ティーダとの訓練で色々な魔法を見せて貰った時に思ったんだ。この世界にはアニメに登場しなかった魔法がごまんとあるし、自分で魔法を作る事だって出来る!

俺は色んな魔法を見たい! 作りたい! どんな思いで魔法が生まれるのか、自分の手で生み出した魔法に俺はどう感じるのか……触れたいものはまだまだある!

 

そうだ、アンカーガンがダメだとしても……例えデバイスの補助が無くても魔法の力は使えるんだ! 何とかするんだ、何とかなる筈だ!

 

そう意気込みも新たに崖の上を睨んだ――まさに、その時。

 

 

 

「――もしかして、ティア!? 何やってんの、そんなところで!?」

 

崖の淵からひょこっとスバルが顔を出した。

 

「スバル!? ぉ……あ、アンタこそ何で……!」

 

慌てて普段の口調に戻して問いかけると……

 

「いや、何かどこかからティアの声が聞こえた気がして!

 探したんだよ!」

「……えっ、声……?」

 

俺の声、聞こえてたのか……!? っていうか、さっきまで素で喋って無かったっけ!? しかもちょっと前は『俺』とも言った気がする……!

え、どこから聞こえてたの!? どれくらい聞こえてたの!?

 

「ちょっと待ってて、直ぐ()()()()()から!」

「えっ、ちょ……待ちなさい! この地形じゃアンタのウイングロードでも……!」

 

普段から良く一緒に訓練しているから知っているが、今のスバルのウイングロードはそんなに小回りが利く能力ではない。

曲がるときには緩やかなカーブを描く必要があり、今回の様な地形では俺の二の舞になる可能性も……!

 

「とぉっ!」

「聞きなさいよ!?」

 

俺の忠告も聞かずスバルは崖の淵から飛び降りると、ほぼ直角の岩肌をローラーブーツで滑るように降りて来る。

 

……ホント、こう言う時に後先考えないスバルの性格は嫌いじゃないが、心臓に良くない。

 

そんな事を考えている間に華麗なヒーロー着地を決めて駆けつけたスバルは、自身の鉢巻で俺の脚を手早く止血すると……俺が何か言う間もなく、お姫様抱っこの要領で抱え上げた。

 

「大丈夫? ティア?」

「……へ、平気よ。

 それで……どうするのよ、ここから!」

 

くそ、不覚にもカッコいいなんて思ってしまったが……ソレはソレでコレはコレだ!

 

さっき俺が忠告しかけたように、この急斜面をウイングロードで踏破するには、今のスバルの魔力操作技術では足りない。

崖の裂け目の形に添うようにして伸ばすにしても、ここを少し行ったところには木の根が幾つも突き出している。ウイングロードの軌道制御が未熟なスバルでは、その無数の障害物を避けて道を安定させる事は難しいだろう。

 

助けに来てくれた事は嬉しいし、安心感はあるが……ミイラ取りがミイラになってたんじゃ意味がない。

 

「あー……確かに、これは道を作るのも大変そうだね。

 ……うん、でも大丈夫だよ。安心して、ティア!」

「その自信はどこから来るのよ……」

「ふっふっふ……私も秘密の特訓をしてたってとこかな!

 『ウイングロード』!」

 

そう言ってスバルは俺の体を右手一本で支えると、残った左手で地面を叩く。

地面から伸びた青い道はグルグルと螺旋状に伸びていき、やがてその先端が崖の外へと繋がったのを見て、その光景に目を見開く。

 

――おかしい、確かにウイングロードは扱いを極めればこれくらいの事は出来るが、

  昨日のスバルにはこんな精密操作は出来なかったはずだ。

 

「――ちゃんと掴まってて!」

「えっ……ちょっ!?」

 

頭上に伸びた道を唖然と見上げていた俺は、慌ててスバルの体にしがみ付く。

その瞬間、体に伝わる圧迫感……!

恐らくはウイングロードのカーブが厳しすぎる所為で、凄まじい遠心力が発生しているのだろう。

だけど、裏を返せばそれほどの遠心力が発生する速度で、あの急カーブを走っているという事だ。

 

――これ、秘密の特訓で何とかなるレベルじゃない……!

 

さっきのウイングロードの軌道制御もそうだが、速度も魔力操作も普段のスバルとはまるで違う!

いや、魔力操作の技術で言えば……!

 

――俺と同じか、それ以上……!?

 

ティーダの下で直々に手解きを受け、原作のティアナより早い段階から鍛えて来た俺と並ぶか、それ以上の技術だ……

普段のスバルは実力を隠している俺と同じくらいだって言うのに。

 

――もしかして、スバルも……?

 

俺と同じなのか? そこでさえ(転生者である事)も……?

スバルを見上げる俺の表情が不安げに見えたのだろうか、スバルが俺を見て安心させるように笑った。

 

 

 


 

 

 

「到着! っと、いや~何とかなって良かった!

 ティア、脚の状態は大丈夫?」

「う……へ、平気よ。」

 

腕に抱いたティアナを見ながら足の様子を尋ねると、ティアナは顔を赤くしながらぶっきらぼうに返答する。

 

――え、何このかわいい子。

 

いや、ティアナは元々美少女ではあるけどね!? でもこんな反応をされたのは初めてって言うか……!

 

それに、あの時微かに聞こえて来たティアナの声……

 

『……()()()()に……為に!』

 

うん、確かにあの時ティアナは『機動六課』って言った! って事は、このティアナは俺と同じ転生者なはず!

 

……なんだけど……

 

「……な、なによ。」

「えっ!? いや、何も……!」

 

じっと顔を見ていたのが拙かったのだろう。涙目で睨まれて、思わず怯んでしまう。

そしてそれと同時に、やっぱりかわいいな……なんて感情も湧き上がる。

 

……いや、でもこれは仕方がないと思うんだ。

例え転生者だろうと、今ここに居るのは間違いなくティアナなんだから。

 

「~~っ! も、もう大丈夫だからさっさと下ろしなさい!

 何時までこうしているつもりよ!!」

「あ、ちょ……ダメだってティア! 脚、怪我してるんだから……!」

 

もがくティアナをそう宥めると、ティアナは「くっ……!」と言って大人しくなる。

そして……

 

「せめて……背負う形に……」

「えっ?」

「だ、だから……お姫様抱っこじゃなくって……!」

 

そこまで聞いて、ピンと来たので彼女に聞き返す。

 

「あぁ、おんぶすれば良いんだね! 分かった!」

「い、言い方はもうちょっとこう……なんとかしなさいよ!」

 

いや、多分ティアナも他に言いようが思い浮かばなかったから口籠ってたんでしょ? とは声には出さず、ティアナを優しく地面に下した後、俺もしゃがんで背中を差し出す。

 

「さ、どうぞ?」

「……ありがと。」

 

 

 

……その後、俺とティアナは無事に教官の元に辿り着いたが、しばらくティアナは怪我の療養に勤めるべく、しばらくの間訓練には出られなくなったのだった。

 

 

 


 

 

 

当時の事を思い返しながら、転生者関係の事を除き、なのはさんに話していく。

 

「……そう、そんな事があったんだ。

 思い出すのも辛いのに、よく話してくれたね。ありがとう、()()()。」

「あ……いえ、そんな……」

 

過去の出来事を一通り話し終えると、それまで静かに聞いていたなのはさんは優しい表情でそう言った。

本来は訓練に入る前に話しておくべき事だった。それなのに今まで話せずにいたのは、単に怖かったからだ。

 

あの日の事を……特に、あの出来事を言葉にする度に、あの時の暗闇が迫る感覚が呼び起こされる。

今にして思えば、俺は左脚に攻撃が当たるのを恐れていたのではなく……きっと、その後にあの暗闇が待っている気がして、それを恐れていたのだろう。

こうして言葉にする事で、やっと俺は恐怖の本質を自覚できた……そんな気がする。

 

……それはそれとして、だ。

 

「何でアンタがここに居るのよ、スバル!」

「あはは……ティアがなのはさんと二人っきりで出て行くのが見えて、つい……」

 

スバルをジト目で睨むと、スバルは悪びれる様子も無くそう言った。

実際、ついて来た事に関してはとやかく言うつもりは無い。多分逆の立場だったら俺もこっそり後を付けるだろうし。

だが、問題はそこではない。そこではないのだ。

 

「最後の方、別に補足しなくても良かったでしょ!?」

「最後の方って言うと……おんぶ?」

そ、そっちもそうだけど……! ……そうよ! 言い方は何か他にあるんじゃないの!?」

 

『おんぶ』の事もそうだが、このバカはよりにもよって『可愛かったなぁ』みたいな感想まで補足していたのだ!

こっちは真面目にトラウマと向き合って話していたと言うのに!

 

「あはは……そっか。

 ……うん、だから二人は訓練校を卒業してもずっと一緒に居るんだね。」

 

そう言って一人うんうんと頷き、何か納得した様子のなのはさん。

何か変な誤解とかされてないと良いが……

 

「はい! あたし達、最高のコンビですから!」

「ちょ、いきなり肩を組むな!?」

 

今こっちは当時の感情とか色々ぶり返してるんだぞ!?

そりゃスバルは大した事はないかも知れないけどさぁ!

 

俺が慌ててスバルから離れようと藻掻いていると、その様子を見てなのはさんが言った。

 

「……ねぇティアナ。恐怖の克服なんだけど、一つ考えがあるの。」

「えっ。」

「自分でも酷い荒療治だと思う。だけど、ティアナが話してくれたおかげで、向き合わないといけない物はハッキリしたから。」

 

そう言って真っ直ぐ俺を見るなのはさんの表情で、俺も何となく『それ』が何なのか理解する。

 

「今度の訓練……って言ってもちょっと準備もあるから、来週くらいかな?

 ティアナは午前中の訓練から『仮想訓練所』の方に来て。

 それと良かったらスバルも、協力してくれないかな。……午前中の訓練は出来なくなっちゃうけど。」

「はい、任せて下さい!」

 

なのはさんの問いかけに、いつも通りの明るい返事が響く。

そんな彼女の様子から、なのはさんがスバルに協力を求めた理由を察した。

 

――ホント、敵わないな。

 

なのはさんが何処まで見抜いているのか分からない。だけど、きっとその判断は正しい。

来週の訓練、きっと俺にはスバルの協力が必要だ。

 

……あの時、文字通り暗闇の中から俺を救い出してくれた彼女の協力が。




二話に分ける場所が見当たらなかったのでちょっと強引に一話にしました。
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