転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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色々と説明臭くなってしまっています。今まで碌に描写を挟めなかった弊害がここにきて……
滅茶苦茶難産回です。


集結の兆候

高町なのはがティアナとスバルから過去の出来事を聞いている丁度その頃、時空管理局本局のとある研究室には、とある女性の姿があった。

 

「ふぅ……新型ストレージデバイスの構造に関するレポートの提出は済んだし、専用の拡張フレームに関する仕様書も完成。

 ……これで後は、諸々の手続きを済ませれば……」

 

腰まで伸ばした黒髪が特徴的な白衣姿の女性の名は『プレシア・テスタロッサ』。

機動六課ライトニング分隊隊長を務める時空管理局執務官フェイト・テスタロッサとその姉、アリシア・テスタロッサの実の母である。

 

嘗て『ジュエルシード事件』を引き起こした張本人である彼女は、二人の娘の努力と献身により刑期が大幅に短縮され、自身もいくつかの事件に関する捜査協力や技術提供等の貢献が評価された事で無事に釈放。その後は時空管理局本局の技術部に所属し、デバイスの整備やロストロギアの解析を始めとした様々な分野でその手腕を振るっていた。

 

そして彼女は『転送完了』と表示された端末を指先で一撫ですると、名残を惜しむように目を細めた。

そんな彼女の様子から、大体の事情を把握したのだろう。同僚らしき女性がプレシアに近付き、声をかける。

 

「……今までお疲れ様でした、プレシアさん。

 もうすぐお別れなんですね。」

「あら、貴女もお疲れ様。

 お別れなんて大げさね、ちょっと出向するだけよ。」

「確かにそうなんですけど……やっぱりちょっと不安で。

 私、プレシアさんにはお世話になりっぱなしでしたから……」

 

偏に同僚と言っても、その技術力や経験が近いとは限らない。プレシアはまさにその最たる例であり、同僚どころか上司にさえ頼られる、この技術部に於いて無くてはならない存在だった。

そんなプレシアが何故出向する事になったのか……それは他ならぬプレシア自身の望みであり、出向先が『機動六課』……即ち、愛娘達の勤める職場だったからだ。

 

……そう、完全に私情である。

 

では何故最初から機動六課に出向していなかったのかと言うと、その原因は次元航行部隊……通称『海』の上層部の横やりだった。

機械工学に秀でたプレシアの技術力を次元空間航行艦船の機能向上に活かしたい『海』にとって、プレシアを一時でも手放すのは非常に惜しかったのである。

 

しかし『海』の上層部の彼等は知らない事であったが、機動六課の存在意義は彼等が思うよりも遥かに重要であり、しかしそれを公にする訳にも行かない事情がある。

だが彼等の言う事にも一理あり、プレシアの技術を活かせば遠い次元世界で起きた事件にも今までより迅速な対応が出来るようになるのも事実だった。

 

よって双方のメリットを考慮した結果、最高評議会は一つの決断を下した。

それこそが彼女が今まで本局の研究部に留まる事となった理由……即ちプレシアの出向を認める代わりに、現行の次元航行部隊の設備レベルを引き上げるだけの技術提供をする事だったのだ。

 

具体的には『次元空間航行艦船』と、『量産型ストレージデバイス』の強化が条件として出された。

しかしこの二つは『海』からの要望であるが、改善案を出したところで当然直ぐに反映される物ではない。いくつかの試作機を作り、理論通りに動作するかの検査と調整を幾度と無く繰り返す事で初めて実用段階に至る物だ。

 

なのでプレシアに出された課題はこれらの基礎部分……『駆動炉の設計図』『艦船の補強案』『ストレージデバイスのプログラム』『量産型デバイスのフレーム設計図』等だった。

 

そして条件が決定し次第、愛娘と同じ職場に行く為にプレシアは全力を注いだ。

彼女の本来の仕事を熟しながら空いた時間で理論を組み、設計し、レポートに纏める作業を続けた。

最初はその為に残業したり睡眠時間を削る等の無茶をしたものだが、ある時通信越しにアリシアから「めっ!」と言われて以来きっぱりやめた。どうやら彼女の同僚からフェイト(アリシア)に連絡が行ったらしい。

 

「……あの時はアリシアが可愛すぎて心臓が止まるかと思ったものよ。」

「す、すみません。でもあまりにも鬼気迫る表情で研究に打ち込んでいたので、つい……」

「構わないわ、おかげであれ以来体の調子も良いもの。」

 

そんなこんなで色々あって、プレシアは手続きが完了するまでの数日間を本局の研究部で過ごせば晴れて機動六課入りである。

もっとも自前の魔力を殆ど縛られる程の重いリミッターは課されるだろうが、元より外部の魔力を扱う事に長けた魔導士でもあるプレシアにとってリミッターは何の意味も無い。

 

彼女は明るい未来を思い描きながら、同僚の女性と共に帰路につくべく本局の通路を歩いていた。

 

そんな時、プレシアは通路の正面から一人の男性が歩いて来るのを見つけ、立ち止まる。

 

「――失礼、プレシア・テスタロッサ殿。一つ尋ねたい事があるのだが……」

「あ、えっと……すみません、デバイスの整備でしたら今は深夜スタッフが……」

「私は構わないわ、話を聞かせて頂戴。ブラバス少将。」

 

男性の要件をデバイスの整備と思った同僚の女性がそう応対するが、プレシアは男性の名札を一瞥し名前と階級を把握すると、同僚の女性を制止して男性の前に歩み出た。

それは、ここで位の高いこの男の心象を良くしておけば後々役に立つかもしれないと言う思惑もあっての行いだった。

 

「済まない、では……そうだな、先ず確認の為に聞きたい。

 君が以前関わった『生死体事件』の事を覚えているだろうか?」

「……どうやら詳しく聞く必要がありそうね。良いわ、休憩室を使いましょう。」

「話が早くて助かる。」

 

ブラバスの切り出した話題を聞き、その意味を理解しない彼女ではない。

数年経った今でも鮮明に覚えているあの奇妙な事件……それに関係した何かが起きたのだろう。

そう直感した彼女は、同僚の女性に先に帰るように言うと歩いてきた道を引き返し、休憩室迄歩いていった。

 

あの時、少女の身体を検査した時に抱いた『既視感』にも似た違和感。

今度こそその正体を掴む為に。

 

 

 


 

 

 

夜の闇を切り裂くように二筋の雷が翔け、遥か彼方を飛翔する機体を追う。

 

≪ターゲット確認! 標的までの距離、約10㎞!≫

≪あと約40秒で接敵する。アルフはこのまま追って。私はその間に標的の前方に回り込む!≫

≪あいよ!≫

 

黄金と蒼、夜空を並行して翔けていた二つの雷は二手に分かれ、黄金の雷の速度が一段階あがった。

 

フェイトは音速を超える代償を、プレシアから教わった次元魔法のフィルターを用いる事で既に克服していた。

周囲の空間を次元魔法により疑似的に引き延ばす事で、音速を超えていながら衝撃波を生じさせない飛翔魔法を手に入れたフェイトを捉えられる者は誰もいなかった。

 

――まったく、フェイトの速度には参ったね。折角追いついたと思ったのに、また引き離されちまった。

 

ぐんぐんと自分を引き離していくフェイトを見て、アルフは困ったような笑みを浮かべる。

 

「あたしも追いつきたいけど、今度ばかりは無理かねぇ……

 流石に次元魔法まで必要となると、ハードルが高いよ。」

 

そう呟いたアルフの声は、その声と同じ速度で空を駆けるフェイトには届かない。

だがそれでもアルフは嬉しいと感じていた。フェイトがずっと越えられなかった壁を乗り越えられたのを、隣で見届ける事が出来たのだから。

 

もっとも次元魔法の弊害と言って良いのか、本人の体感する速度はこれまで通りの亜音速である為、本人は内心でコレジャナイ感を抱いているのだが……

 

<いや、生身で音速を体験したら普通に死んじゃうからね?>

<解ってるよ、姉さん。

 ……あ、訓練用の仮想空間でなら生身で音速を出せないかな?>

<それ実装されたらフェイトのスピードジャンキーが悪化しそうだから、実装しないように私から言っておくね……>

<そんな……>

 

音速で飛翔しながらも内心はいつも通りのやり取りを交わしているフェイトとアリシアだったが、追われている方は溜まったものではない。

 

「ボ、ボスゥ!!? 奴等、このヘリに追いついてきますぜ!?」

「バカな!? 十分な距離は稼いだだろ!?」

 

彼等はこの管理外世界にアジトを持つ次元犯罪組織だったのだが、つい10分ほど前にそのアジトにフェイト・テスタロッサ率いる時空管理局が乗り込んできたのだ。

 

アジトには当然戦闘を得意とする構成員も多く、金で雇った傭兵も配置していたのだが、そんな精鋭も管理局員達を相手にして直ぐ壊滅状態に陥った。即座にアジトの転送装置で逃げようとしたが、周囲に張られた結界の所為でそれは不可能……それならばと部下の殆どをトカゲの尻尾切りに、ヘリで逃げ出したのがつい数分前の出来事だった。

 

既にアジトの周囲を覆っていた転送防止の結界は抜けたが、そもそも次元世界を渡る規模の転送魔法は難易度が高い。

扱える者は連れているが、転送先の座標に魔力のパスを通すのに時間がかかっていた。

 

その間に……

 

「ヒッ!?」

「時空管理局です。直ぐに降伏するのであれば、これ以上手荒な真似はしません。」

 

黄金の雷が、彼等の前を奔っていた。

 

 

 

 

 

 

「――いやぁ……流石はフェイト、相変わらず速いなぁ。」

 

組織のボスを捕縛し、引き渡して直ぐの事。銀髪オッドアイが軽い調子で話しかけて来た。

 

「先ずそちらの状況を報告して。」

「ああ、そうだった。

 と言っても、特にこれと言って問題は起きてないな。こちらは全員無傷、敵の構成員は傭兵共々一人残らず捕縛済みだ。」

「分かった。」

「見つかったロストロギアは押収済みだが……一応自分で確認するか?」

「……そうだね、一応確認する。」

 

彼等の事を信頼していない訳ではない。何せ、地球に居た頃からの付き合いなのだ。寧ろ互いに対する信頼は深い方だと言える。

 

しかし、ことロストロギアと言うものは慎重に扱い過ぎると言う事はない。これまで関わって来たいくつもの事件でそれを実感しているフェイトは、彼……神田の案内に従って押収したロストロギアを保管しているケースを確認しに行く事にした。

 

 

 

「ん? ……おお、フェイト。ロストロギアの検分か?」

「うん、報告書にも書かないといけないからね。」

「やっぱ執務官って大変そうだよなぁ……確か神宮寺の奴もそうなんだっけ?」

「うん、私よりちょっと早く執務官になったから、一応先輩になるのかな。この前の事件で久しぶりに会ったけど、元気そうだったよ。」

「マジか。アイツ今は『海』だからなぁ……中々会う機会が無いんだよな。」

 

ケースの保管庫でばったり会った神崎と昔を懐かしむように話しながらロストロギアのデータを解析しては報告書にまとめていると、思い出したように神田が話し始める。

 

「そう言えば、機動六課の方はどんな感じだ? 順調に新人は強くなってるか?」

「うん。私はたまにしか見れてないけど、会う度に強くなってるのが分かるよ。

 特にエリオの成長は凄く速くて……きっとああ言う子の事を天才って言うんだと思う。」

「天才か……他の3人はどうだ? エリオに比べて。」

「スバル達も順調に強くなってたよ。成長速度ではエリオには負けるかもしれないけど、実力は皆同じくらい高いと思う。

 あ、でも……」

 

そこまで言って、フェイトが一度端末を操作する手を止め、少し考えるように目を閉じる。

 

「でも……何だ?」

「ううん、ちょっとこの間入って来た5人目の子……ヴィヴィオはちょっと分からないかな。

 何て言うか、掴み所が無いって言うか……底知れない物を感じる。」

「なるほどな……ヴィヴィオが……って、え? 5人目?」

「うん。5()()()()()()()()()。まだライトニングかスターズかも決まってないんだけどね。」

 

時空管理局が保有するヘリの中で、銀髪オッドアイ達の驚愕の悲鳴が上がった。




ここ最近ずっと出番が無かったフェイトさん&一部の銀髪オッドアイ(地球産)の現在報告とプレシアさん再登場回。
神宮寺は現在別の次元世界の事件を追ってます。今後も出番はあるので、そろそろ存在を仄めかさないと……そのおかげで展開が進まないって言うね。(反省)

プレシアさんがちょっと親バカ過ぎるかなと思わなくはないのですが、INNOCENT的に考えてまだセーフかなと思わなくもない気もしなくはない。(曖昧)
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