転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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あの人の再登場回です。


戦力

「――勝率12%、か……なるほど、やはり相当な力を持っているらしいな。彼女は……」

 

クラナガンに聳えるビル群の中、燦然と輝く『J・C』のロゴが眩しい大企業『ジェイル・コーポレーション』の最上階。そこにある社長室で今、一人の男が自らの端末に送られてきた『報告書』を難しい表情で見つめていた。

 

「かつて聖王として戦った記憶を持つ彼女の見立てに間違いは無いだろう。

 だが、その彼女を含む機動六課が全員で掛かっても彼女……高町なのはに勝てる確率がこれか。

 戦闘の様子を確認できなかったザフィーラが何かしら打開の一手を持っている可能性はあるが、不確定な要素に期待できる状況でもない。

 ……全く、彼女が正しい意味で『光』であって欲しいものだな。」

 

カタカタと端末を操作し、ヴィヴィオから送られてきたいくつかの情報を精査しつつ、彼はデスクの上に置かれた通信端末を手に取り、内線である人物に通話を開始した。

 

『……はい、こちらセバスチャンです。』

 

応答したのは彼の会社では珍しく普通の人間であり、かつてプレシアとリニスを救うために時の庭園に執事として潜り込んだ男、セバスチャンだった。

 

「私だ。確認したい事があるんだが……」

『詐欺っすか?』

「違う! ビジネスフォンで振り込め詐欺が通用する筈がないだろう!?」

『冗談っすよ。……で、俺に連絡って事は使い魔関係っすね?』

 

セバスチャンのジェイル・コーポレーションでの役割、それはスカリエッティが調()()する事が難しい人材の提供だった。

 

ジェイル・コーポレーションと言えばクラナガンでは知らない者のいない大企業ではあるが、その反面で社内の事情が一切外に出ない事でも知られる企業だ。

特に一流企業でありながら人材の募集を一切していない事等、一時はその不透明さから『裏で兵器を開発しているのでは』等と言うゴシップ記事まで作られ、管理局の調査が入った事もあった。

 

それらは全て、彼の娘達の情報を可能な限り隠す為であり、彼女達が休日に気兼ねなく普通の人と同じように楽しめるようにと言う願いもあった。

そんな事情から外部の人材を雇用できないのだが、その欠点を補うのが彼……セバスチャンの役割だった。

 

「……ああ、そうだ。」

『いつもの()()の件っすか?』

「いや、今回はそちらではない……が、そうだな。

 丁度今大きなプロジェクト(新作)が動いている事だし、アレットの予定は開けて置いてくれるかな?」

 

アレットとはセバスチャンの使い魔の内の一人、地球で言う『オウム』に似た性質を持つ鳥をベースにした使い魔だ。

ジェイル・コーポレーションの提供するソーシャルゲームで声優名が『???』となっている者は軒並み彼が担当しており、その為スカリエッティからの指名率を常に1位でキープし続ける稼ぎ頭だった。

 

『アレットっすね、了解でーす。

 ……しかし、本題がこっちじゃないって珍しいっすね。』

「ああ、実はとある事情で()()が必要になるかもしれないんだ。

 そこで君に頼みたくてね。」

 

ジェイル・スカリエッティが『戦力』と口にした途端、通信越しのセバスチャンの表情が強張る。

 

『……随分と物騒な話みたいで。

 まさかとは思いますが、何かしら事件を起こそうなんてつもりじゃないですよね?』

「そんな事はしないとも。君も私がどういう存在か知っているだろう?」

『……なら良いんですがね。

 それにしても、戦力って言うのなら貴方の会社にも大勢いるんじゃないですか?

 ()()()()()が。」

 

『オートマタ』とはジェイル・スカリエッティが『娘』と呼ぶ彼女達の事である。

 

「あぁ、彼女達か。

 彼女達がそう言う意味で戦力になる事はないよ。

 荒事をさせる為に生み出した訳でもないし、ISのような能力だって一部の子にしかついていない。

 あくまで自衛や護衛の為の能力なんだ。

 それに何より……自分の娘をすき好んで戦場に送り出す親はいないよ。」

『いや、それは俺も同じなんですが?

 俺にとっても使い魔たちは家族なんですが?』

 

ジェイル・スカリエッティがオートマタや戦闘機人の彼女達を娘として愛しているように、セバスチャンも使い魔達を家族として愛している。

共に数十人規模の家族を持つ者同士であり、それ故に『そんな事は分かっているだろう?』とセバスチャンはジェイル・スカリエッティを睨みつけた。

 

「ああ、済まない。勘違いをさせてしまったらしいね。

 君に融通して欲しいのは『ゲームが得意な』使い魔だよ。

 我が社がゲーセンに提供しているゲーム、『魔装空戦 VR』ってあるだろう? アレが得意な使い魔をそうだな……20人程雇いたい。」

 

その言葉に、睨みつけていた表情から一転キョトンとした表情になったセバスチャンが尋ねる。

 

『……大会荒らしでもするんです?』

「誰がするかそんな事。こちとら大会に出たいとごねるセインを何度も説得して我慢させてるんだぞ。」

『いやぁ、流石にあんだけ大会を荒らし回ったらそれは仕方ないんじゃないっすかね……』

 

セインとはジェイル・コーポレーション立ち上げの時期から存在する12人の戦闘機人の一人であり、潜行能力と言う貴重なISの保持者だ。

そんな彼女の趣味の一つがゲームであり、記念すべき一回目の大会『魔装対戦-1st-』にスカリエッティにも秘密で出場し圧勝。事の顛末を知ったスカリエッティの説得により、出禁を喰らった過去がある。

 

『でもそれなら何の為に態々うちの使い魔を?』

「実は戦力の目途は既についていてね。

 最高評議会に提供したような、遠隔で安全な所から一流の魔導士のポテンシャルを発揮できるボディを作ろうと思っている。

 最初は魔導人形のような物でも良いかと思ったのだが、今の私の技術でAIなんてものを作ろうとしたら間違いなく人格が芽生えて娘になってしまうだろうからね。」

『……それならやっぱりオートマタ達の方がパイロットに向いてるんじゃないです?

 確か彼女達って、電脳内に入って機材を直接動かせましたよね? そのおかげで新作ゲームが信じられない速度で作られてるって。』

「そうなんだが……さっき言ったプロジェクトがね。

 本当に大作なんだよ。VRのゲームは彼女達の能力をもってしてもかなり時間がかかる。

 それに、人気シリーズの最新作だからね。下手な失敗はシリーズの信頼性に関わる。」

『えぇ……』

 

ジェイル・スカリエッティの言葉に呆れたような反応を返すセバスチャン。

それもそうだろう、今しがた彼は世界の命運が乗った天秤のもう一つの皿に自分の会社を乗せ、更にはそちらを重視したのだから。

 

「とは言ったが、当然うちからも何人かは出す予定だ。

 ……と言うか、ある一人から熱烈なアピールを受けていてね。大会に出られない鬱憤が相当溜まっているらしい。」

『あー……はぁ、まあうちの子達に危険が及ばないのなら……後、正しい目的の為の戦力なら提供しますけど。』

「よろしく頼むよ。」

 

 

 


 

 

 

「――戦力、ねぇ……今度はスカさん、一体何するつもりなのやら。」

 

それからいくつかの打ち合わせを行い通話が切れた後、セバスチャンは椅子の背もたれに体を預けて天井を見上げる。

そうしてしばらくすると、気を取り直したようにデスク上の端末に再び向き合い、スケジュールの確認を行う。

 

「……取りあえず、アレットの予定は開けて置かないとな。

 相当大きな案件みたいだし。」

「ん? またボクをご指名?」

「ああ、何でも大きなプロジェクトが……って、お前何時からそこに……?」

 

独り言の筈の呟きに思わぬ返答があり、セバスチャンが振り返るとそこに居たのは肩のあたりで切り揃えたクリーム色のショートボブと、頭頂部に一房のアホ毛が特徴的な少女……に見える少年だった。

 

「ちょっと前から居たよ? 父様がカッコいい事言ってた辺り。

 『うちの子達に危険が及ばないのなら……後、正しい目的の為の戦力なら提供しますけど』ってとこ。」

「人を声真似でいじるな。ちょっと恥ずかしくなって来ただろ。」

 

セバスチャンの反応に気を良くしたのか「にしし」と笑うと、アレットは自分の次の仕事について尋ねる。

 

「ねぇねぇ! なんか面白そうな仕事入ってたよね!?

 『ゲームのキャラを現実で動かす』みたいなさ!」

「え? ……あー、まぁ似たような感じだな。」

「ボクもそれ出来るの!?」

 

期待にキラキラと輝く目から視線を逸らし、セバスチャンはもごもごと答える。

 

「ん-、まだ正確な日時も決まってないし……お前の場合、もう一つ仕事が入っててなぁ……

 まぁそっちがそれまでに解決してれば、かな。」

「えー! 何それ!

 だったら早くその仕事終わらせる! 行こ! 父様!!」

「なっ!? 待て待て、引っ張るな! そっちも今直ぐって訳じゃないんだから!」

 

絶対に『戦力』に入るんだ! と言わんばかりの勢いで部屋の外に向かおうとするアレットを宥めつつ、この話を使い魔達にした時の反応が今から怖くなるセバスチャンだった。




ジェイル・スカリエッティとセバスチャンの再登場回です。
今回の話で多分アレに関してある程度までの答えに行き着く方も多いかと。

以下、これ以降も詳しく書く暇が無さそうな設定の捕捉です。

〇オートマタ
戦闘機人に似て非なるもの。素体を必要とせず、生体パーツで組まれた身体に人格を備えたもの。
デバイスに人の体を与えたような物で、融合騎とは違ってユニゾンは出来ない。
また、人と同じ体の構造である為、後天的に戦闘機人化する事も可能。この世界のスカさん製の戦闘機人(ナンバーズ)は初期ロットの12人を含み、オートマタから『昇格』した者しかいない。
オートマタの人格ベースはデバイスの物と同様(リインⅡのように、感情も持ち合わせたもの)であり、戦闘機人化も『デバイスのカスタマイズの延長』と解釈する事で、法的なアレコレや倫理的なアレコレをすり抜けている。

〇戦闘機人とオートマタの関係
戦闘機人はオートマタ達からはJCの幹部と捉えられている。
初期ロット(1~12の原作勢)のナンバーズと共に会社が設立され、経営が軌道に乗ってからはどんどんと社員が増えていった。
当初は皆平等に戦闘機人化しようと考えていたが、とにかく人手が必要だったため、オートマタのまま数を増やしていった結果、いつしか戦闘機人は『幹部』と言う位置に収まった。
スカリエッティが遠方へ外出する場合は警護も務める為、エリートと言う扱い。
事業規模の拡大や部署の増設に従い、戦闘機人は現在24人程になっている。(生まれた順番で24人目の娘までが戦闘機人)

〇アレット
オウム(に似た性質の鳥)をベースにセバスチャンが生み出した使い魔。名前の元はオウムの英語名『ペアレット』から。
どんな声も出せるが、普段は中性的な声で話す。見た目は女の子にしか見えない。
スカリエッティからの指名率No.1。(声優的な意味で)
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