転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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午前の訓練を終えて

「結局なのはさん達、午前中は来なかったね。

 特別な訓練ってどんなのなのかな?」

 

機動六課隊舎の食堂にて、エリオとヴィヴィオと同じ円卓で昼食を取っているキャロが午前中の訓練を思い返しながらそう零した。

 

「私も気になります!」

 

キャロの疑問に真っ先に明るく返したのはヴィヴィオだ。

午前の訓練を共にした事で遠慮が無くなったのか、以前よりも積極的に交流している様子が見て取れた。

 

「午後の訓練から合流するって言う話だったし、その時に聞いてみようか。

 もしかすると昼食は一緒に取れるかもしれないし……あ、噂をすればって奴みたいだよ。」

 

そんなヴィヴィオを宥めながら食堂の入り口を見たエリオが、見知った面々を見つけて二人に示した。

 

 

 

「遅かったね、なのは。訓練の結果は大丈夫だった?」

「うん、想定よりもずっと上手く行ったよ。

 遅れちゃったのはその後に模擬戦してたからなんだ。」

「模擬戦……」

 

フェイトの質問にそう明るく答えたなのはの様子を見て、スバル達の事が不安に思ったのだろう。フェイトは直ぐに二人の方に向き直ると目をしっかりと合わせて尋ねた。

 

「――スバルとティアナは大丈夫だった?」

「あ、はい! 模擬戦に関しても元々訓練とは関係なく、あたしからお願いしたんです!」

「それにあたしとスバルのペアとなのはさんでの2vs1の上、更にハンデも多少貰いましたし、フェイトさんの心配するような事にはなってませんよ。

 寧ろ、自分達の成長を感じられる良い体験が出来ました。」

 

二人の返答を聞いたフェイトが、トラウマが増えていない様子に安堵のため息を吐くが……続くスバルの言葉に耳を疑った。

 

「――それにしても、後ちょっとで拳が届いたんだけどなぁ……」

 

模擬戦を振り返って自然と漏れ出たスバルの言葉に、フェイトは確認の意味を込めてなのはの方へと振り返る。

するとなのははどこか誇らしげな笑顔を見せ、スバルに対して告げた。

 

「ううん、ちゃんと届いてたよ。私もちょっとだけ焦っちゃったもん。」

「いえ、まだ辛うじて()()()だけですから……次はきっと届かせて見せます!」

「あはは……流石にまだそう簡単に直撃は貰えないよ。

 でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()けど……うん、二人とも私の想定を超えてくれていて嬉しいよ。」

 

なのはの激励の言葉に「今度こそ」と拳を握り奮起するスバルと、褒められる事に慣れてないのか落ち着かない様子でもじもじするティアナ。

 

そんな彼女達の会話に思わず食事の手を止めていたエリオとキャロは、慌てた様子でフェイトに駆け寄り――

 

「フェ、フェイトさん! 僕達もこの後! 模擬戦をお願いします!」

「お願いします!」

 

と、自身の成長に対する不安と期待が()()ぜとなった表情で懇願する。

 

「エリオと……キャロも?

 ……そうだね。久しぶりに二人を見て凄い成長しているのは分かったし、午後の訓練の後にでも時間を作れるか考えてみるよ。」

「「ありがとうございます!」」

 

フェイトも今日の訓練の様子を見て一度成長の具合を測りたいと思っていたらしく、二人の提案に乗る事にしたらしい。

 

その一方で、ヴィヴィオは少し離れたところから彼女達……特に、スバルとティアナを探るような眼で見て考察する。

 

――なのはさんのプロテクションの強度は私も模擬戦の見学で知っているけれど……私の見立てでは、聖王オリヴィエでも彼女のプロテクションを破るのは容易ではないと言う結論が出ている。

  スバルさんも素晴らしい素質を持っている事は感じますが、まだ研磨の済んでいない原石と言う事も分かっている。今の時点で彼女がなのはさんのプロテクションを破ったと言うなら、そこには必ず何かしらのカラクリがある筈……

 

それが何なのか、必ず突き止めなければならない……現状の最優先事項をそう定めた彼女は、早速スバルに対するアプローチを開始するべく動き出す。

 

――あの予言が最悪の形で的中し、なのはさんが世界の脅威となるならば、プロテクションを破る方法は知っておかなければならない。

  もしもその方法が私にも適用可能な物であれば、以前父に報告した勝率も50%程に跳ね上がる……!

 

そんな思惑を表面に出さない様に意識しながらスバルに近付いたヴィヴィオは、興奮した様子を前面に出しつつ尋ねた。

 

「スバルさん! 私、今のお話、凄く興味があります! 教えてくれませんか!?」

「えっ、ヴィヴィオが?

 ……ふっふっふ、気になる? ならば聞かせてしんぜよう! 私の拳が……あぃたぁっ!?」

 

ヴィヴィオのキラキラと輝く尊敬の眼差しに気を良くしたスバルが、珍妙な決めポーズと共に語り出そうとしたところで、ティアナがスバルの頭に軽くチョップを入れて引き留める。

 

「バカな事やってないで、さっさと食べるわよ。午後も訓練はあるんだから。」

「はーい。ごめんね、ヴィヴィオ! また後でね!」

「むぅー……!」

 

そう、彼女達とて午後の訓練が控えた身。昼食の時間に少しとは言え遅れた事もあって、栄養補給は急務なのだ。

それが分かっているヴィヴィオもここは深追いせず、次の機会を待つ事にしたらしい。むくれた様子を見せながらも無理に引き留めたりはしなかった。

 

 

 

やがていつものように器から溢れんばかりの料理を持ってきたスバルが、先に自分の席についていたティアナからやや遅れて食べ始めると、ティアナが小さな声で話しかける。

 

「スバル、さっきの話なんだけど……」

「んむ? ――んぐ。 ……さっきの話って、ヴィヴィオの?」

 

先程のやり取りで気になる事でもあったのか、周囲をそれとなく確認しつつもティアナは警告するような様子で続ける。

 

「そう。模擬戦の事を話すのは良いけど……」

「! ……もぅ、分かってるって。心配性だなぁ、ティアは。」

「なんだ、あんたも気付いてたのね。分かってるなら良いのよ。」

 

スバルの返答にホッとした様子を見せ、再び昼食を取り始めようとするティアナだったが……

 

「勿論! ちゃんとティアの活躍も話すから安心してよ。」

「ちっがうわよ、バカスバル!」

 

突然叫び出したティアナに視線が集まるが、

 

「す、すみません。ちょっとこっちの話で……」

 

とティアナが言うと、割といつもの事でもあるので直ぐに視線は離れていった。

 

「もぅ、急にどうしたのさ?」

「~~っ! ……はぁ。まぁ、あんたに気付けって言っても無理かもね。

 あたしもついさっき気付いたようなものだし……」

「なにをぅ!?」

 

冗談めいた様子で両手を振り上げるスバル。こちらはいつもの事過ぎて視線は一瞬向けられただけで離れて行った。

 

ティアナも慣れた様子で両手を上げたスバルに顔を寄せ、ひそひそと話を続ける。

 

「……あのヴィヴィオって子、ちょっと怪しいわ。」

「! ……怪しいって?」

「さっきアンタが模擬戦の事を話してた時なんだけど、あの子の表情……って言うか、眼がちょっと気になったのよ。」

「……もしかして、あたしにキラキラとした熱視線を?」

「はぁ……アンタ分かって言ってるでしょ? ……あの子、普通の子じゃないわ。

 普通の子はあんな……()()()()()()()()()()は向けないもの。」

「……もしかして、あたし狙われてる?」

「さぁね……狙っているのはアンタか、それとも……」

 

そう言ってティアナは昼食をとりながらフェイトと談笑するなのはに視線を向ける。

 

「――もっと大きな相手かも。」

「……!」

 

その言葉に、スバルの表情が変わった。

 

 

 


 

 

 

フェイトと同じ席で昼食を取っている途中、ふと視線を感じて目を向けると慌ててこちらから視線を外すスバルとティアナの様子が見えた。一瞬だったけど、その表情は凄く険しかったように思う。

 

ティアナは割と珍しくない表情だったけど、スバルもって言うのは珍しいな。

……いや、ちょっと前にも似たような表情は見てたっけ。

 

あの時の感覚が残っている様な気がして、スバルに掴まれた襟元に手を触れる。嫌われる可能性は覚悟してたけど、やっぱり少し悲しいかも。

 

「――なのは?」

「! あ、ごめんねフェイトちゃん。えっと……どこまで話したっけ。」

 

心配そうなフェイトの声に、慌てて表情を取り繕う。

フェイトもアリシアもきっと気付いたと思うけど、無理に聞きだすような事はしないでいてくれるみたいだ。

 

「二人との模擬戦。ティアナの幻影の精度が凄かったって所だよ。」

「そうそう! 幻影の魔法ってあまり相手にした事が無かったんだけど、話に聞くよりもずっと凄いよ。

 魔法で作られた物だから魔力を持ってるのは当然なんだけど、魔力操作技術を鍛えると『攻撃の瞬間の意』まで再現できるみたいなんだ。

 数も多くて、20人のスバルとティアナに囲まれた時は私も本体を見失っちゃったもん。」

「それは……確かに凄いね。私達って小さい頃から魔力感知は特に鍛えられてるはずなのに……」

 

そんなフェイトの言葉に、昔皆でやっていた魔力弾スーパーボールを思い出す。

あの時の訓練のおかげで私達の魔力感知はかなり鍛えられている。魔力の量や持ち主だけじゃなく、攻撃的な物か友好的な物か、はたまた魔力が狙う相手は誰か、戦闘中で感覚が研ぎ澄まされていればその敵意の強さから本命かフェイントかまで一瞬で読み取れる。だけど……

 

「皆『本物と全く同じ魔力量と意志』をぶつけて来てたよ。

 訓練の成果をさらに応用して、ちゃんと自分の物にしてくれてるって凄く伝わって来た。」

「! ふふ……良かったね、なのは。」

「うん。やっぱり、ちゃんと訓練が形になるって嬉しいものだね。

 ……だからこそ……」

 

――心が離れてしまったかと思うと、余計に寂しい。

 

「……大丈夫だよ、なのは。」

「フェイトちゃん……?」

「スバルもティアナも、なのはの事を嫌ってなんていないと思う。

 だって、二人が一番わかってるはずだから。なのはの厳しさが全部、優しさから来るものなんだって。

 訓練の成果が出ているなら、なおさらだよ。」

「! ……あはは、全部バレてたんだね。

 ……でも……うん、そうだったら嬉しいな。」

「そうだよ、自信を持ちなって!」

「……うん! アリシアちゃんもありがとね。」

 

どうやら言葉にしなかった不安が表情に漏れていたらしい。

優しい笑顔で私を諭してくれたフェイトとアリシアに、心からの感謝を告げる。

 

何となく心が軽くなった気がして、自然と笑顔になれた。

そんな様子を見てアリシアも安心したのだろうか、フェイトとは少し違う満面の笑顔を見せてくれた。

 

「どういたしまして!

 そ・れ・と……」

 

そして素早くテーブルクロスを捲り上げ、アリシアが手を突っ込むと……

 

「――盗み聞きしてる子は、いい大人になれないぞ~?」

「わぁ、見つかっちゃった!」

 

テーブルクロスの下に潜んでいたヴィヴィオが引きずり出された。

遊んでいるつもりなのだろう、その表情は笑顔のままで思わず私も和んでしまう。

 

「最初から分かってたよ、ヴィヴィオちゃん。」

「えぇ~っ!?」

 

正直、テーブルクロスの中に入ったタイミングも分かっていたのだが、あえて黙っていたのだ。

彼女は見ての通りまだ子供だし、聞かれて拙い話をする訳でもないからね。

 

そんな事を考えていると、アリシアが何か思いついたような表情を見せるとヴィヴィオに尋ねた。

 

「そうだ! 今度はヴィヴィオのお話を聞きたいな。フェイトの訓練はどうだった?」

 

その質問になるほどと思う。

フェイトがヴィヴィオの訓練を見ていた話は既に聞いているが、本人がどう感じていたかは重要だ。

スバル達と違ってヴィヴィオはテストも受けずにフォワードになった子だ。だからこそ行った訓練が適正だったのか、この機会に知っておきたいのだろう。

 

……若干、強引な話題逸らしに聞こえなくもなかったけど。




アリシアさん渾身の話題逸らし。

なのはvsティアスバの模擬戦に関する戦闘描写ですが、2話くらい後に少し入れるかも程度の予定です。
と言っても、今回書いた部分である程度の予想が付いた方も多いと思いますので、もしかしたら書かないかも……?
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