転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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同時上映『模擬戦-スターズ-』
やっぱり先に結末を書いた以上、模擬戦の方は描写少なめとなりました。


スバルとティアナ‐スターズ‐

一日の訓練を終え、夕食後。俺はスバルに誘われて隊舎の外……訓練の為によく使われる広場にやって来ていた。

ここは先週のちょうど同じ時間帯に俺がなのはさんにトラウマを打ち明けた場所であり、状況も併せてあの時の記憶が自然と脳裏に思い起こされた。

 

「突然呼び出して、何の話?」

「……ねぇ、ティア。今日のエリオ達の模擬戦、覚えてる?」

「え? ……えぇ、勿論。凄かったわ、二人共。」

 

ライトニングの模擬戦、その結末は()()()()()()()()()()()()()()()事で決着していた。

いくらフェイトが動きの大半を封じていたとは言え、相手の攻撃を読む眼は本物だ。並大抵の魔導士が行える事ではない。

 

そしてそれはエリオとキャロの実力がそれが可能なところまで引き上げられている証明だった。俺達が戦ったなのはさんとは戦い方も制限も違うが、それでも俺達はエリオ達よりも一歩遅れている事を実感せずにはいられなかった。

 

「……あたし、なのはさんのプロテクションを破ったってだけで満足してた。

 アレは元々なのはさんが攻撃を受け止めるタイプの魔導士で、あたしの能力(IS)()()()に特化しているから出来たってだけなのにね。」

「スバル……」

 

その珍しく静かな語り口調で、スバルがどれほど落ち込んでいるのかが伝わってくる。

訓練校時代では無敵のコンビと呼ばれ、当時はその連携もトップと呼ばれていた俺達が、今は子供の背を追う立場に甘んじている。

 

「――あたし、自分が情けない。ティアはどう?

 あたし達、()()()()でいいと思う?」

 

スバルの眼がこちらに向けられる。その真面目で真っ直ぐな視線は、俺に『何一つ誤魔化すな』と伝えて来た。

昼の訓練を思い出す。『自分達は成長した』と言う高揚感を引き摺ったままの訓練、『褒められる事に耐性を付ける』なんて頭の悪い事を考えていた自分自身。

 

それを思い返して今、この胸の内に湧き上がるのは――もう『高揚感』なんかじゃない。

 

「あたしは……昼間の自分を客観的に見て、今、凄く恥ずかしい気持ちになったわ。

 それと同時に、自分自身に対して湧き上がる怒りも……多分、アンタと同じ。」

 

違う? と尋ねるように視線を向けると、スバルも視線で肯定を返し、続きを促す。

 

「あたしは『自分達が成長した』と思った。

 ……ううん、それは()()間違ってないと思う。トラウマを乗り越えた事じゃない。

 その後の模擬戦で、これまでの訓練がちゃんと力として身に付いている事を実感したからそう思った。

 だけど、それは『個人としての』成長でしかない。」

 

そうだ、俺が今こんなにも自分に怒りを抱いているのは結局そこなのだ。

スバルとのコンビネーションでプロテクションを破った事で『自分()が成長した』と勘違いした。

即ち、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あたし達は機動六課に『スターズ』として求められて入ったんだもの。

 訓練校レベルの連携で満足してちゃダメ……なのよね。」

 

俺達はそれぞれ確かに成長した。勿論、これからも成長していく事は変わらない……だけど、それよりも前に乗り越えなくてはならない大きな課題があったのだ。

それに気づかないままヘラヘラとにやけて訓練に出ていれば、お叱りを受けるのは当然だった。

 

「スバル、あんた『このままで良いと思う?』って言ったわよね。

 ――断じてNOよ! 今のままのあたし達じゃ、『滅び』に立ち向かえない。

 エリオ達の脚を引っ張る事が目に見えてるのに、『このままで良い』なんて思える訳がない!」

 

俺が自分の思いを吐き出すと、スバルは満足そうな笑みを口元に浮かべた。そして――

 

「――良かった、ティアもあたしと同じ気持ちで。

 だったら、きっと()()を知ってもあたしと同じ考えでいてくれるよね……」

 

何かを覚悟するように目を閉じ、息を整えてから再び開いた。

その様子から、俺もスバルが何を言おうとしてるのかを確信する。

 

だってこれまでずっとコンビを組んでいたのだから。()()()()()()()()()があっても、その時間に嘘は無かったから。

 

「――ねぇ、ティア。あたし、貴女に言いたい事がある。」

「――奇遇ねスバル。あたしもアンタに伝える事があるわ。」

 

それは誰もいないこの時間のこの場所だから、あの時自分の過去を曝け出せたこの場所だから、きっと言える事。

互いにそれを感じたのだろう。俺が笑みを浮かべるのと同時に、スバルも笑みを浮かべた。

 

まったく、姉妹でも何でもない俺達がここまで似るとは……どうやら余程相性がいいらしい。

こんな事だと分かっていたなら、もっと前に打ち明けておくべきだった。

 

 

 

……ふと、そこまで考えてちょっとした悪戯心が沸き上がって来た。きっと俺が転生者だと知っても拒絶されないと確信した安心感から来る物だろう、ある種の閃きが降りて来たのだ。

 

スバルは『自分が転生者だ』と打ち明けるつもりだろう。俺もそのつもりだった。

だが、ちょっと捻りを加えても良いのではないか? だって俺はスバルに対してもう一つ隠している事があるのだから。

 

……うん、良いかも知れない。そっちを打ち明ければ、必然的に自分が転生者だと打ち明けるような物だ。同じ告白ならちょっと驚かせても良いだろう。

 

そしてスバルと同時に口を開き、告白する。

 

「「あたし、スバル(ティア)が転生者だって、ずっと前から気付いてた……って、ぇえええッ!!!???」」

 

ナンデ!? これも被るの何で!? って言うか、えっ!? 気付いてたの!?

 

「「いつから!!? ……あぁっ、もう!!」」

 

ナニコレ鏡!? なんでここまで締まらないんだ!!

 

 

 


 

 

 

「あはは……なんかコント見てる気分。」

「二人共似てるって思ってたけど、ここまでとはね……」

 

スバルが深刻そうな表情でティアナを連れ出しているのを見かけたので、悪いと思いながらも後をつけてみたが……どうやら二人の仲が突然拗れたとかそう言う訳ではなかったみたいだ。

まぁ、聞き耳は立てていたので諸々の事情は聞こえてしまったんだけど……

 

「……二人が私達に気付く前に隊舎に戻ろうか、フェイトちゃん。」

「そうだね。……あの様子だと、特に心配もいらないと思うし。」

 

最後にもう一度だけ様子を見てみたが、相も変わらず二人はコントのようなやり取りを続けていた。若干語気が荒くなる事はあるものの表情には剣呑な気配はなく、寧ろどこか二人共安心しているような雰囲気だ。

きっと自分の正体(転生者)を受け入れて貰えた事が嬉しいんだろう、ユーノやフェイトに私が転生者だと伝えた時の緊張感と、受け入れて貰えた時の安心感を思い出しながら私達は隊舎のオフィスへと戻って行った。

 

「そう言えば、さっきスバルがなのはのプロテクションを割った事を『なのはさんが攻撃を受け止めるタイプの魔導士で、あたしの能力(IS)()()()に特化しているから出来たってだけ』って言ってたけど……実際の所どうだったの?

 結局昼休憩の時はそこの話を聞きそびれてたし、聞かせて欲しいんだけど。」

「え? ……うーん、正直さっきのスバルの言葉はちょっと卑屈すぎるように思うな。

 確かに私は相手の攻撃を受け止める戦い方を良くするけど、それは私のプロテクションが壊れないって言う確信がある時だけだよ。

 実際、あの模擬戦の時は――」

 

 

 


 

 

 

ティアナの克服訓練のプロセスが完了したのは、私とヴィータが想定していたよりもずっと早かった。

もっとも『完了』とは言っても、全ての影響を払拭出来たかどうかはまだ分からない為、これからの経過観察は必要だが……なにはともあれ、ティアナがあの崖に過剰に怯える事は無くなった。

 

その為、私はスバルと約束した模擬戦を行っていたのだが……

 

「――はあぁぁッ!!」

《Revolver Cannon.》

 

一面に草原が広がる大地の上空……私を中心として縦横無尽に張り巡らされたウイングロードの一角から、マッハキャリバーにより加速したスバルが飛び出して来る。

 

「レイジングハート。」

《Protection.》

 

ナックルスピナーで生成された衝撃波を纏った拳をプロテクションで受け止める。

衝撃波とは言っても、嘗て私のプロテクションを割ったフェイトのものとは違い、魔力の補助を受けて作られた物だ。このくらいのものなら受けるのはたやすい。

 

「迂闊な接近は実戦だと命取りだよ。」

 

そして、カウンターとして簡易的な射撃魔法を構築したその瞬間。

 

「まだ、まだぁ!!」

《Revolver Shoot.》

「っ!」

 

プロテクションによって防がれたリボルバーキャノンの術式を即座に切り替え、スバルはリボルバーシュートとして纏わせていた衝撃波を射撃魔法のように放った。

 

プロテクション越しにも中々の衝撃が伝わるが、スバルの狙いは私を突き飛ばす事でも、動きを止める事でもなく――

 

「反動で即座に距離を……だけど、空中でこの魔法はどう対処する?」

 

スバルの動きの弱点を指摘しながら、今しがた構築した射撃魔法を放つ。

 

そう、距離を取った事で魔法に対処する時間は得られたが、スバルの空戦適性は高くない。ゼロではないが、それでも空中で射撃魔法を即座に回避できる程器用に動けるわけでもない。

そして、私の問いに対するアンサーとなる魔法が放たれた。

 

「ディバイン……バスター!!」

《Divine Buster.》

「――! なるほどね。」

 

先程リボルバーシュートを放った方とは逆……左腕のリボルバーナックルで撃ち抜かれたスフィアから、スバルの使う数少ない砲撃魔法が放たれた。

 

一度ゼロ距離まで詰めてからリボルバーシュートで動きを鈍らせ、同時に距離を取ってディバインバスターを放つ適性距離を確保する……なるほど、確かに悪くない動きだ。

この砲撃で仕留められれば良し、そうでなくともこの距離で放つディバインバスターなら動きの牽制、目晦ましの両方の役割を熟せている。

 

そして、砲撃が止む頃にはスバルはウイングロードで……

 

「――体勢を整え終えている……って所までは、読んでたんだけど……」

 

……正直これは予想外だ。

 

「一体どれが()()なのかなー……」

 

ティアナがオプティックハイドで姿を消している事は知っていたし、動きがあれば何時でも対処する用意もあった。

だけどこの光景を前にして、対処を間違えた事を悟る。

 

「「「「「「「「「「「「「「「ここからが本番ですよ、なのはさん!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

――前世で読んだ某忍者漫画(NARUT〇)で似たような場面があったなぁ……

 

ウイングロードを駆けまわる数十人のスバル……見たところ30人以上は居そうだ。ウイングロードの展開範囲がやけに広いと思ったら、この為だったのかと納得する。

 

そして、こういう場合は大抵術者が弱点……なんだけど……

 

「まさかこれだけの数のスバルが全員()()()してるなんてね……」

「「「「「「「「「「「「「「「だから、言い方!!」」」」」」」」」」」」」」

 

うん、ツッコミも30人分だ。上手い事本体を割り出せないかと思ったんだけど、ああ見えても冷静なようだ。

 

……これだけの数のフェイクシルエット。処理を担当するティアナはいくらマルチタスクを鍛えていても碌に動けないのが普通だ。だけどその弱点をスバルが運ぶ事でカバーしている。……いや、或いはこれらすべてが陽動で、本体は今もオプティックハイドで隠れている可能性もあるのか。

 

「「「「「「「「「「「「「「「IS起動!!」」」」」」」」」」」」」」」

()()()()()()()()()()()()()S()h()o()o()t() ()B()a()r()r()e()t().()》》》》》》》》》》》》》

「ちょ……っと、これは拙いかも……?」

 

一瞬見えたスバルのIS状態を隠す程の光弾群……私に本体を見切られる前に決着を付ける気だ。

 

「シュートバレットの気配も全部同じ……シューティングシルエットの応用……?」

 

確かに魔力弾を遠隔発生させる技術は存在するし、私も可能だけど……この数を同時に、フェイクシルエットの処理と平行でやるとなると……

 

「まったく……実力、隠し過ぎじゃない……?」

 

それとも、トラウマの所為でこれだけのスペックを発揮する事が出来なかったとか……?

どっちにしても、簡単に勝ちを譲るつもりは無い。

 

「いいよ、ハンデで許されている中で全力全開で相手してあげる!」

 

周囲に展開するのは簡易式の射撃魔法……ただし、その数はティアナの光弾と同じ数だ。

 

そして……

 

「シュート!」

「「「「「「「「「「「「「「「シュート!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

大量の魔力弾群同士が相殺された事で発生した煙幕を突き破って現れたのは……

 

「「「「「「「「「「「「「「「オオォォォッ!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

同じく30人以上に増えたスバル達だった。

 

――ファンには堪らない光景……なのかなぁ……?

 

彼女達は皆一様に波形を伴った拳を振りかぶっており、その全員から高まった魔力波動を感じる。

 

「「「「「「「「「「「「「「「振動破砕・改!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

そして放たれた魔法殺しとも言えるISは私のプロテクションに突き刺さり、魔力との共振を起こす。

結果プロテクションは波紋のような、それでいて渦を巻くような形にうねうねと波打っている。今まで見た事ない現象だが、もう数秒と持たずに砕かれるだろう。

 

当然、周囲のスバル達は魔力で作られた幻影である為、それと同時に消滅……本体が露わになった。

 

「……まさか正面に居るのが本体だったなんてね。スバルらしいよ。」

「正面じゃないと、なのはさんの驚いた表情が見えませんから……ねッ!」

 

なるほど、確かに。きっと今の私の表情はスバルの期待に添えられるものだろう。

時間にして数分間ではあるが、この数分間で何度も二人の成長っぷりに驚かされたのだから。

 

――そして限界を迎えたプロテクションがけたたましい音を立てて砕け散る。

 

その瞬間、スバルは追撃の為に引き絞られていた左腕を振り抜き、背中のティアナがクロスファイアシュートを待機させる。

 

そう、プロテクションが破壊されても模擬戦は決着していない。

これはスバル達が魔力ダメージで立てなくなるか、私に攻撃をクリーンヒットさせるかの勝負なのだ。

 

「だけど……」

「はあぁッ!」

《Knuckle Duster.》

「これで……!」

《Cross Fire Shoot.》

「――私も負けてあげられないんだ。」

 

これでも滅びの予言に名指しで色々背負わさせられた時空管理局のエース。

そして、今は二人の教導官……まだ、背中を見せていなければならないのだ。

 

 

 


 

 

 

「――で、二人の攻撃をギリギリで躱してカウンターの魔力ダメージで勝ったんだ。」

 

オフィスで端末を操作しながらフェイトに模擬戦の顛末を伝え、そう締めくくる。

 

「へぇ、二人共そんなに強かったんだ。」

「うん。

 あの二人だったら……ううん、フェイトちゃん達の模擬戦を見た感じだとエリオとキャロもかな。

 ()()()()に行けると思う。」

 

私が操作していた端末には、次の訓練のメニューが載っていた。

 

……フォワード達の個人の実力を伸ばすのはこれまでで一区切り。

いよいよ彼女達は『スターズ』として、そして『ライトニング』としての訓練に入るのだ。

 

「――とは言っても、またデバイスの調整が入るから休日を挟もうか。」

「……私、機動六課に戻って来たばかりなんだけど……」

「あはは……フェイトちゃんの場合は仕方ないよ。執務官の仕事だったんだもん。」

 

シュンとしてしまったフェイトを宥めつつ、未来に思いを馳せる。

 

フォワード達が生徒から戦士へと育っていく未来、予言に記された滅びの未来……そして、私達が勝ち取らなければならないその先の未来へと。




次回から数話は休日の間の出来事を書く予定です。
今の内に書いておかないといけない内容が結構溜まっているので、この機会に書かないと……
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