転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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休日パートの第一話めです。


それぞれの準備

スターズとライトニングそれぞれの模擬戦があった翌日、訓練終了時になのはさんが俺達に向けてこう告げた。

 

「今日の訓練はここまで。

 この後はいつも通り、現実世界に戻って解散……なんだけど、今日はその前に大事なお知らせがあります。」

 

突然の事ではあったが大事なお知らせと言う話なので、未だに疲労感の残る体を無理やりに立たせてなのはさんに向き直る。

 

「今までの訓練はフォワードの皆の個々の実力を引き上げる事を特に重視して来たんだけど、それは今日で終了。

 次からは『スターズ』『ライトニング』としてのチームワークや、連携を重視した訓練に切り替えます。」

 

後で聞いた話だが、今までの訓練では個々の実力の把握と向上をメインにした物であり、フォワード達が『今の自分の実力』『パートナーの実力』『相手に合わせる為に自分がどう動くか』を把握する為の物だったらしい。

勿論俺達も知っているように連携に関する訓練も行ってはいたのだが、あくまで最低限に済ませていたらしい……これまでは。

 

正直この話を聞いた時、連携の訓練が遅れているのは自分の所為なのではと思っていた俺は安心したものだ。

連携がエリオ達に抜かれている現状、ここから本格的に鍛えていきたいと思っていた俺達にとって渡りに船でもある。

 

そして次回以降はこれまでとは逆。連携を中心に鍛え、個々のスキルアップはそれぞれの判断に任せると言う事になるそうだ。

その為に隊長陣の協力が必要であれば、申告すれば訓練を見てくれたり模擬戦の相手をしてくれるらしい。

勿論スケジュールが合わない事もあるが、そう言う時の為に『仮想戦闘空間シミュレータ』には隊長陣達の戦闘データが入っており、本人達よりも一段劣るAI戦と言う形にはなるが自由に模擬戦出来るとの事だ。

 

それは個々の実力ではまだエリオ達よりも上と言う自覚がある俺とスバルも、うかうかしていられないと言う事を指す。

キャロの隠し玉の話は聞いているし、エリオに至っては戦いの中でどんどん経験値を積むタイプだ。隊長陣との模擬戦を自由に行えるようになったこれからは、アイツの成長速度は今までの比ではないだろう。……これまでも恐ろしい速度で成長していたと言うのにな。

 

そして、最後に俺達にとって一番大事な連絡がされた。

 

「――そんな事情もあって、皆のデバイスをまたグレードアップする為に預かる事になるの。

 だから、明日の訓練はお休み。皆自由に羽を伸ばしてね!」

 

 

 


 

 

 

「――そう言う事だから、またデバイス達のグレードアップお願いね。」

「はい、確かにお預かりしました。

 ……それにしても、もうこの段階なんですね。想定よりも大分早いような?」

「うん、色々と嬉しい想定外があってね。予定よりも早く目標のラインは超えられそうなんだ。」

「確かに、このペースを維持すれば最終段階も直ぐに完了できてしまいそうですね。

 ……その分、今回の休日はタイミング的に難しい所ですが。」

 

そう言って苦笑するシャーリー。実際、今の勢いそのままに訓練を続ければ、モチベーションの高まりもあって成長も著しい物になるかもしれない。

私も勿論その可能性は考えたが、敢えてこのタイミングで休暇を挟んだのだ。

 

「だけど、必要な事だからね。デバイス達があの子達の成長に置いて行かれちゃったら元も子もないし……それに、休憩は適度に取らないとね。」

「なのはさんが言うと説得力が凄いですよね、その言葉。」

「あはは……」

 

この先に行うのはコンビネーションを鍛える訓練。デバイスがグレードアップし、戦略の幅が広がっても、それを活かす訓練を積んでいなければ宝の持ち腐れだ。

最新のデバイスの性能を活かした最新のコンビネーション……その訓練こそが実戦では最も活きる。

私の失敗を繰り返させないと言うのは、あくまでその副次的な効果に過ぎないのだ。

 

「休暇ですか……またまた凄い歓声でしたね、なのはさん。」

「あはは……また聞こえちゃった?」

「それはもう、『やったー!』って声がしっかりと。

 やっぱり休暇は皆欲しいものなんですねー……」

「うーん……その事なんだけど、今回はちょっと事情が違ったんだよね……」

「あれ、そうなんですか?」

 

この部屋にまで届く程の歓声は、実は休暇を貰えたことが原因ではない。寧ろ、『休日になる』と告げた時のフォワード達の反応は真逆と言っても良かった。

 

「うん。皆自分の成長を自覚したからか、『これからって時なのに!?』って言われちゃったんだ。

 だけど今シャーリーにも言ったようにデバイスが置いて行かれるのも問題だから、何とか説得したんだよ。」

「へー……あれ、じゃああの『やったー!』って、結局何だったんです?」

「あぁ、あれは説得用にみんなに配った物が原因だね。」

 

そう、私としても彼女達の反応は予想の範疇だった。

だから、とあるプレゼントで彼女達の機嫌を取ると同時に、不満点の解消も行った。

 

「これまでの頑張りを労う意味も込めたプレゼントって訳ですか。あの喜びようからすると結構良いものを?」

「うん……

 『ジェイル・ギア』と『リントレ(リンカーコアを鍛える魔導士のトレーニング)』。」

 

ジェイル・ギアは言わずもがな、VRゲームハードだ。そしてもう一つのプレゼントであるリントレは、そのVR空間内で基礎的な訓練メニューから他の魔導士との模擬戦までを幅広くサポートするゲーム……と言うか、ツールに近いだろうか。

この二つをプレゼントする事で、彼女達が望めば休暇中も自主的なトレーニングが行える。……勿論、機動六課の保有する仮想戦闘空間シミュレータに比べるとグレードは落ちるが。

 

「え、ジェイルギアって結構お値段しますよね? 経費で落ちるんです?」

「ううん、自腹だよ。

 休暇中の自主訓練にはなるけど、扱いはやっぱりゲームハードだから。

 それに確かに値は張ったけど、管理局って給料は良いからね。」

 

私がそう答えると、シャーリーは「なるほどー」と言って納得の表情を見せる。

実際、管理局は給料()良いのだ。使う機会があまり無いだけで。

 

「そう言えば、なのはさんは普段何をプレイされているんですか? こんな話あまりなのはさんとした事が無いので、少し気になって……」

「私? 多分皆と同じじゃないかな。『ベル伝』とか『ロスト†ロギア』とか。」

「アクション系ばっかりですね……なのはさんクラスだと、仮想空間内で身体の動きが重く感じたりとかってないんです?」

「んー……まぁ、『現実だったら苦も無く倒せるのに!』って状況もあるけど、そう言う状況ってゲームみたいな非現実じゃないと体験できないし、そこを楽しんでるのかも?」

「うわぁ……」

 

いや、『うわぁ……』って、そっちから聞いて来たくせに。まぁ、気持ちは分かるけど。

私自身、前世と違う楽しみ方してるなって自覚はある。だけど『苦戦する』という経験は即ち、『瞬時に打開策を考える』という経験だ。その点で言えばVRゲームは、いつまでも格上と戦える理想的な環境と言えるのだ。

 

「そう言うシャーリーは普段何をやってるの?」

「私はどちらかと言うと『アトリエール』シリーズみたいなクラフト系が多いですね。元々自分の考えたものが形になるのが好きなので。

 あ、でもプレイ中にインスピレーションを得る事も多いので、なのはさんみたいなアクション系も遊んだりしますけど。」

 

まるで普通のゲーマー(?)のような会話をしているが、意外と管理局員の中にジェイル・ギアユーザーは多い。

元々休暇が少ない管理局という仕事柄、体感時間を引き延ばす事も出来る仮想空間内の娯楽を求める者は多いのだ。最も、ゲーム次第では体感時間を最大5倍に引き延ばせると聞けば無理もないだろう。体も休まるし。

 

「ん? なになに、ゲームの話? 珍しいねー」

「あ、木之元さん。出かけてたの?」

「ちょっとテストをね。ほら、コレ。」

 

そう言って彼女が指で示して見せたのは、空中に浮遊する金色の三角形の端末だった。

 

「……バルディッシュ?」

「違う違う。勿論デザインはかなり寄せたんだけど、これはフェイトちゃんとアリシアちゃんのドローンだよ。

 一応これが完成形で、最後のテストが今終わったところ。」

「そうなんだ、これが……あれ、モニターは?」

「アレは試作機の予算を軽くするための機構。本来は……こう!」

 

そう言って木之元さんがドヤ顔で指パッチンを失敗すると、『シュッ……』と言う指が擦れる音が響くと同時に、端末の中央から木之元さんの胸像のようなホログラムが浮き上がった。

 

「わ、凄い! この端末のサイズで……」

「『なのはちゃんちょっと待って、リテイクさせて!?』」

 

『普段はちゃんと鳴るんだよ!』と二重の音声で言い訳する木之元さんだったが、ふとシャーリーが机の上に置いたデバイス達を見つけると途端に表情が切り替わる。

 

「……もう? 早くない?」

「あはは、シャーリーにも聞かれたよ。でも、嬉しい誤算でしょ?」

「まぁ、そうなんだけどね。私としてはもっとじっくりデータを取りたかったんだけど……」

 

フォワード達のデバイスをグレードアップする際、彼女は少しずつフォワード達の戦い方に馴染むようにデバイスの魔力伝導率や演算速度に調整を入れている。

その為の資料として訓練中や模擬戦の映像資料等も送っているのだが、今回のように急速に成長されてしまうとそう言ったデータが不足してしまうのが悩みでもあった。

 

だが、今回に限っては問題無いだろう。何故なら模擬戦があったのは昨日で、今日の訓練も殆ど最終確認の為の模擬戦だった。つまり……

 

「その点に関しては大丈夫だと思うよ。

 昨日と今日の模擬戦のデータログがデバイスに残ってる筈だから。」

 

詳細なログを保存する都合上、古いデータは流石に自動で消去されてしまうが、今回のように2日分のデータであれば問題は無い。

その為に休暇を早めたという事情もあるのだ……そう木之元さんに伝えると、彼女の表情はパッと明るくなる。

 

「本当に!? ありがと! やっぱ私達的には言葉で聞いたり映像を見たりするよりも、ログを解析した方が分かりやすいからさぁ!」

「そういうものかな?」

「ま、『見る人が知っている事』が違えば『見える物』も違うって奴だね。読み方を知らない人からするとチンプンカンプンな文章でも、私達には映像よりも確実な情報なのさ。」

「『チンプンカンプンな文章』かぁ……」

 

そう言われて思い出すのは『滅びの予言』の文章だ。

聞いた話によれば私が小学生の頃から進められていた解析は今もなお続いており、一部を確定の情報とした以外は未だに多くの解釈に分かれているらしい。

 

……もしもその中にあの予言を正しく読み解ける人がいるとすれば、その人は何を知っていて、どんな読み方をしているのだろう。少し、気になった。

 

 

 


 

 

 

「――これで、63体目。」

 

とある建物の地下深く……地上に見える白を基調とした()()が与えるイメージとは正反対の、薄暗い空間にて少女は一人呟いた。

目の前には薬品の中に浮かぶ少女が納まるカプセル……それが64基、縦横に整列されて並んでいる。

その中でただ一つ誰も入っていないカプセルに歩み寄ると、少女はその表面を撫でながら言葉を零す。

 

「あと、1体……いえ、もう1体余分に欲しいわ。欲を言えば、何体あっても足りないのだけど……」

 

そう言ったのを最後に彼女が指を鳴らすと、64基のカプセルは地面に潜るように格納されて行き、やがてその存在は完全に隠蔽された。

そして部屋の天井が発光し、優しい光に部屋が照らされるとそこにあるのは荘厳な地下聖堂だった。

 

――直後、部屋の扉が開き、部屋の持ち主である少女と同じ銀髪オッドアイを持つ青年が一人入って来る。

 

「なぁなぁ、聖女ちゃん! あれ、届いたか!?」

「ええ、今届いたところよ。

 ……じゃーーん! 『ロストロギア ソリッド2』!」

「うおおぉぉ!! 聖女ちゃんサイコー!!」

 

先程までとはすっかり雰囲気を変えた少女……聖女と呼ばれた彼女が取り出したのは、とあるゲームのパッケージだ。

JCから発売されるゲームの一つで、その発売日は今から3日()……その現物を見た銀髪オッドアイのテンションは最高潮に達した。

 

「スカさんの知り合いって本当だったんだな! ちょっと見せてくれよ!」

「勿論良いわよ。……でも、いくら楽しみだったとしても、あまり突然来られるとビックリしちゃうじゃない。」

「何言ってんだよ、()()()()()()くせにさ!」

 

「そうだけど……」と言って不満気な表情の彼女に無遠慮に近付き、引っ手繰るようにパッケージを手に取った彼は地下聖堂に並んだベンチの一つに腰掛けてまじまじとパッケージを眺め始める。

 

そのベンチのまさに真下に『生きた死体』があるとも知らずに……




『聖女』=HE教団トップです。
最後に出て来た銀髪オッドアイは、局員ではありません。

ベンチとかカプセルの描写については省きましたが、カプセルが収納されるとその上部がそのまま床になり、ベンチもそこに固定されております。

より分かりやすく言うと、カプセルの上からベンチが生えてます。
だからシリアスっぽくする為に部屋を暗くする必要があったんですね!


・ロストロギア ソリッド2
 巨大な組織による危険なロストロギア犯罪を防ぐべく、敵拠点に潜入する主人公の活躍を体験できるVRゲームの人気シリーズ。
 要するにメタルギアシリーズをVR版に作り変えた物。
 いざとなれば当然のように武力鎮圧が出来る。潜入任務とは……?
 様々な要素を原作準拠に造られているが、エ□本の中身だけはモザイク加工されている。
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