転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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2022/09/04 追記

話の並び順を変更しました。


休日の機動六課

『ようこそ"スバル"、ジェイル・ギアの世界へ。

 この世界は貴女を歓迎します。』

 

透き通った女性の声が発する機械的なアナウンスが響く真っ白な空間で、スバルは自らの好奇心のままに周囲を忙しなく見まわしていた。

 

「おおー……コレが、ジェイル・ギア……!

 ……何か、新鮮なような既視感があるような……?」

 

彼女がそう感じるのも無理はない。この何もない真っ白なだけの空間は、神によって転生する前に居た空間をイメージされて作られている。

ジェイル・スカリエッティの「新たな世界に降り立つ前に相応しい場所」と言う、こだわりの一つであった。

 

『先ず、この世界でのアナタのアバターを決めましょう。』

「え、アバター? ……もしかして結構時間かかっちゃったりするのかな……?」

 

"アバター"と言う言葉に身体を見下ろせば、そこにあったのは普段の自分の身体ではなく、白い全身タイツに身を包んだ辛うじて女性と分かる程度の起伏を感じられる身体だった。

 

――約束の時間に間に合うと良いけど……

 

実はスバルはこの後、他のフォワード陣と仮想空間内で合流する約束をしていた。

予め時刻を決めてはいたが、アバターの作成に手間取ってしまうとその時刻に間に合わないかもしれない……そんなちょっとした心配から漏れた独り言だったのだが……

 

『現実のアナタの姿をそのまま設定する事も出来ます。

 その場合、セットアップにそれほど時間はかかりません。』

「あ、そうなの? じゃあそれでお願い!」

 

スバルの声に答えるように出されたアナウンスの提案に二つ返事で乗ったスバル。この辺りは一般人が驚く最初のポイントであったりするのだが、彼女はデバイスに触れる事も多い魔導士だ。こう言ったやり取りは割と慣れっこだった。

 

それから暫くして、『こちらのアバターで問題ありませんか』と、スバルの正面に普段鏡で見慣れたスバル・ナカジマが表示された。

 

「お、おおぅ……コレは、何とも凄いね……」

 

それほど時間が経過したようには感じなかったのだが、そんな短時間に現実の姿を完全にスキャンしてしまったらしい。その技術に僅かばかりの空恐ろしさを感じつつも、普段客観的に見る事が出来ない今の自分自身をまじまじと眺めるスバル。

その様子を感知したのだろう、再びアナウンスが一つの提案を持ち掛けた。

 

『お望みであれば、アバターの微調整が可能です。また、イメージしていただければ、この状態でアバターを好きに動かして確認する事も出来ます。』

「え……」

 

その声に思わず声の主を探す様に空を見上げるスバル。

今しがたの提案を受けて、急に周囲の視線が気になり始めたらしい。

 

「……えっと、じゃあとりあえず。」

『私の名前はスバル! よろしくね!』

「お……おぉ、声もちゃんとあたしの声だ……」

 

試しにイメージしてみた動きとセリフを発したスバルのアバターを見て、スバルは直感した。

 

――これは、"沼"だと。

 

この機能は自分の身体をスキャンした時だけではなく、自らのイメージでアバターを作成した時でも実行できる機能だ。

もっとも自らの理想の姿を0から完璧に再現するには途轍もない苦労があるのだが、それでも『理想の誰か』を眼前に生み出し好きに動かせる機能があれば、それだけで一つのコンテンツとして成立する程の魅力がある。

 

実際、ジェイル・ギアに初めて触れた銀髪オッドアイ達の多くはこの機能を前に数日を潰す事も珍しくなかった。

 

『……』

「――なるほど、一部出来ないようにされてる動きとかセリフもあるんだ。」

 

一体彼女は自分に何をさせようとしたのか定かではないが、基本的にこう言った物は()()()()はさせられないようになっているものだ。

ここで落胆し、膝を付いた銀髪オッドアイ達のなんと多い事か。因みに膝を付くのは一般人も同じで、相手は違えど誰しも一度は考えてしまう事であった。

 

そしてその後、彼等の行動は大抵決まっていた。

 

『かめ○め破ァーーーーッ!!!』

 

――そう、大いに遊ぶのだ。

 

そんなこんなで約束の時間を1時間以上遅れて待ち合わせ場所に到着したスバルだったが……不思議な事もあったもので、彼女が待ち合わせ場所に最初に到着したフォワードだった。

 

 

 


 

 

 

――カツン、カツンと、落ち着いた足音が二人分、機動六課隊舎の廊下に響く。

 

個別能力訓練が一段落し、フォワード達の訓練が休みとなったこの日。

しかし『機動六課』そのものが休日となった訳ではなく、特に訓練内容が大きく切り替わる事で『仮想戦闘空間シミュレータ』のメンテナンススタッフは現在大忙しである。

 

そんな中、彼等とは正反対に全くの仕事が無くなり、暇を持て余してしまった者もいた。

 

――困ったな、何か私に手伝える事があればと思ったんだけど……

 

その人物、フェイト・テスタロッサは長い間執務官の仕事に追われていた反動か、『仕事が無い』と言う事態に酷く狼狽えながらも隊舎の廊下を目的もなく歩いていた。

 

「……落ち着かない。」

『もうフェイトってば、せっかくの休みなんだから思い切って羽を伸ばせば良いじゃん。』

 

誰に対してでもなく口をついて出たフェイトの独り言に答えたのは、彼女の隣に浮遊するバルディッシュのような端末から上半身だけ投影されたアリシアだった。

 

「姉さんはそう言うけど……でも、みんな忙しそうだし……」

「いや、フェイトは今までほぼ休み無しでずっと働いてたんだから、寧ろ休まないとだめだって。

 なのはとはやてもそう言ってたじゃないか?」

「アルフ……それは、そうなんだけどね……」

 

二人目の足音の主であるアルフの言う通り、なのはもはやても今までずっと忙しく働いていたフェイトに休むように言っていた。

現在予言の対策の為に聖王教会に行っているはやてはその護衛にフェイトを付けなかったし、『仮想戦闘空間シミュレータ』の調整に付き合っているなのはもフェイトに「付き合って」と頼まなかった。

 

しかし同僚達の忙しそうな様子が目に入る度、フェイトは本当に休んでも良いのかと考えてしまうのだ。

そんな心境を表す様に周囲に目を遣るフェイトに、アリシアは手をパンパンと叩き制止する。

 

『ほらほら、今は周りに気を遣う時じゃないよ!

 なのはちゃんやはやてちゃんを誘えないのは残念だけど、休日は休日と割り切って楽しまなくちゃ!』

「姉さん……そうだね、二人の気遣いを無駄にしちゃうのも悪いし……」

 

とは言っても、いざ遊ぼうとしたところで良いアイデアが出て来ないのも事実。

ここ最近は仕事に掛かりっきりだったせいで、最近の流行りにやや疎くなってしまったのだ。

それでも街に繰り出せば何かしら興味を引くものも見つかるだろうと考え、隊舎のエントランスに向かう途中でふとフェイトが脚を止めた。

 

『フェイト?』

「……あ、ごめん。気のせいかな? 今、母さんの声が聞こえた気がして……」

『ママの?』

 

アリシアの問いかけにそう答えたフェイトは、ある部屋の扉に目を向ける。

 

『――ここって……』

「確か、デバイスとかのメンテナンスルームだねぇ……」

 

そこは木之元やシャーリーが主に使用するメンテナンスルームだった。先日なのはがフォワード陣のデバイスを預けたのもここであり、本来ならば今もその整備を続けていると考えるのが普通だ。

 

「……勘違いかも知れないし、入るのはやめておこう。

 きっと忙しいと思うし……」

 

と、フェイトが小声で二人に伝えたその時、扉の奥からその声が聞こえた。

 

『やっぱり、フェイトの声よ!』

『えぇ……私には何も……』

「――フェイト!!」

 

その瞬間、扉を開けて飛び出して来る大魔導士プレシア・テスタロッサ……その表情はもはや愛娘に会いたくて仕方がない親バカそのものだった。

 

 

 

「――なるほどねぇ、技術者として機動六課に。」

「ええ、詳しい事情は分からないけど……この部隊、普通の目的で作られた訳じゃないわよね?

 そんなところに娘が居るのだもの、放ってはおけないわ。」

 

事情を聴いたアルフの言葉にそう答えるプレシア。その間もフェイトを抱きしめ、頭を撫で回す手は止まっていない。

 

「因みに本音は?」

「釈放されたのに愛娘に会えなくてもう限界だったわ。」

「だろうねぇ……」

 

『ねぇー、フェイトー。そろそろ代わってー。』

「うん……えへへー、ありがとフェイト!」

「あぁ、アリシアに代わったのね! 偉いわ、フェイト!

 アリシアも元気だった? やっぱり姉妹ね、撫で心地も髪質もソックリ……!」

「いや、身体は同じだからね……って、聞いて無いねぇこれは……」

 

ツッコミをスルーされたアルフは、「しかし……」と思案に耽る。

聞けばプレシアは地上の治安や上層部の動きからこの機動六課が何かしら危険な仕事に関わる特別な部隊である事を見抜いたらしく、半ば横槍的に入れられた仕事を急ピッチで終えてまで駆けつけたとの事。

 

聞き出した本音の件もあり後付けの動機である可能性はあるが、それでも少ない情報からそこまで行きつく辺り、彼女の頭脳は今も全く曇っていないという事なのだろう。

それに加えて……

 

「――で、そんなプレシアについて来る形でリニスも機動六課に……と。」

「はい、私は主に厨房などのバックヤードを担当する事になりました。

 プレシアと違い自前の魔力でしか戦えない私は、この重いリミッターの中では戦闘どころか模擬戦もままなりませんから。」

「なるほどねぇ……まぁ、10ランクも下げられれば当然だろうね。」

 

リニスまで機動六課に来る事になったと言うのは非常に心強い。

もっともリニスとプレシアは既に『能力限定』で総魔力ランクがギリギリに調整された機動六課に新しく入ると言う都合上、ランク調整の為のリミッターをかなり厳しくする必要があった。

その為プレシアもリニスもSSランクからBランクと言う、実に『10ランク分』と言う重いリミッターをかけてこの場に居るのだ。

これほどの重さのリミッターを掛けられれば、流石に動きづらさや感覚のズレが模擬戦にも影響する為、彼女達はそれぞれ研究者、バックヤードと言う裏方に充てられる事となった。

……もっとも、ロストロギアの一つでもあればこのリミッターの中でもSSSランク相当の戦闘力を発揮できるプレシアに関しては、その影響も無いに等しいのだが。

 

「まぁ、とりあえず家族が全員揃うってのは良いもんだ。これからはこっちでもよろしく頼むよ、リニス。」

「ええ、施設の案内に関しては貴女を頼る事になるかもしれませんね、アルフ。」

「あっはっは、アタシがリニスに頼られるなんて、なんかこそばゆいね。まぁ、教えられる事は教えるよ。」

「はい。……あ、そう言えば……」

「うん?」

 

楽しげな様子で話していたリニスの表情が若干曇り、彼女にしては珍しく何やら言いにくい事を告げるようにもごもごと話し出す。

 

「プレシアが完全に自由の身となったので、これからは同じ家に住む事になります。

 その際にですね……えっと……」

「なんだい、随分と歯切れが悪いじゃないか。別に狭い家でもないし、そんなに良くないニュースでもないだろうに。」

 

アルフは何だそんな事かと言った様子で答える。実際、今フェイト(アリシア)、リニス、アルフ達が住んでいる家は一般的に見ても大きいと表現される家であり、何なら使用頻度の少ない部屋を丸ごとプレシアの部屋としても問題無い程だ。

その為、リニスの言葉を軽く考えていたアルフだったが……

 

「そうですか、なら良いのですが……実はアルフがフェイトと同じ寝室で寝ている事がプレシアにバレまして、今日から寝室が別になります。」

「良くなぁい!!!」

 

唐突に齎された残酷な裁定に、アルフの嘆きが響き渡った。




10年以上経っても許されない目をしていた過去のアルフェ……

ジェイル・ギアの基礎機能については、好きなキャラ(人物)を好きなように動かせるシミュレーターがあったら皆何時間もやると思う。
因みに有名人や、スバルのようにスキャンされた姿に酷似した容姿のアバターは、大人数が共用で試用するコンテンツには使用できないように制限されている。
また、既に存在するアバターに酷似した人物が自身の姿をスキャンした場合、既に使用されているアバターの容姿に調整が入る。(そちらもスキャンした姿だった場合は調整が入らない)

その為、なのは達のアバターを持っている銀髪オッドアイは多いが、実際に使用できる者はいない。後何故かシュテル達のアバターも使えない。何故か。


以下アバター作成時に銀髪オッドアイ達がやった事TOP10

10位:「かめは○波ァーーーッ!!!」(人物問わず、本人の場合もあり)
9位:アリシア「○○、遊ぼー!!」(幼少期、事案)
8位:はやて「○○、ご飯できたで!」(エプロン姿)
7位:フェイト「背中は任せたよ、○○。」(バリアジャケット)
6位:シュテル「○○と一緒に居ると、安心します。」(私服)
5位:レヴィ「アーーーッ!」(アーーーッ!)
4位:ディアーチェ「い、良いから我について来い。貴様が必要なのだ……!」(テレ顔)


3位:なのは「私の仲間になるのなら、次元世界の半分をくれてやろう。」(邪悪な笑み)


2位:なのは「咎人達に滅びの光を……星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ。貫け、閃光! スターライトブレイカー!!」(完全詠唱SLB)


1位:なのは「この星諸共貴様等を消し炭にしてやる!!」(邪悪な笑み)

TOP3を独占するなのはさんの主人公力……!(なお内容)
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