では何故標準語で書かれているかと言うと、私には正しい関西弁で長文を書けるほどの関西力は無いからです……
2022/09/04 追記
話の並び順を変更しました。
「──そうでしたか、やっぱり口止めを……」
「はい、『守護者』が何を示すのかも不明瞭だったので、機動六課を立ち上げるはやてやレジアス中将と言った候補者達の耳に入る事が無いようにと。」
聖王教会の一室、久しぶりに顔を合わせる事が出来た私の友人『カリム・グラシア』は、私の問いに対してそう答えた。
数週間前に最高評議会から聞き出した予言の一節は、当然のことながら予言を書き出したカリムなら知っていた筈……それを私に伝えなかった理由を聞いてみれば案の定、こちらもまた最高評議会が関わっていたようだ。
「彼女の言葉に一つ付け加えるとすれば……」
そのカリムの言葉を、この場に居るもう一人の友人であるクロノ君が補足する。
「──特にゲイズ中将は予言を……と言うより、そもそもレアスキルと言う物全般を信用しておられない。僕も後から聞いた話だが、『滅びの予言』が出た当初も『くだらない』と言って特別な対処はなさらなかったそうだ。」
「そうでしたか……」
今のクロノ君の話を聞いただけでその光景が目に浮かぶ。
レジアス・ゲイズのレアスキル嫌いは相当な物で、カリムの予言もその例外ではない。彼に予言の内容が伝わろうものなら、下手すれば「ならば確かめてみるか」と言わんばかりの行動に出る可能性もある。
……いや流石にそう軽率な行動は取らないと信じたいが、そう言った印象を抱くような発言を隠そうともしないのがレジアス中将と言う男なのだ。
「予言を信用しろと言ったところで聞く耳を持たないだろうし、本局からの『干渉』と受け取られれば海と陸の関係は悪化しかねない……実力は確かなのだが、困った方だ。」
「その為の機動六課でもある……そうやろ?」
「ああ。僕達も滅びの回避の為、援助を惜しまないつもりだ。」
「……」
私の問いかけに真っ直ぐ答えるクロノ君と、
元々それを確かめる為に要請した会合でもあったし、クロノ君の反応がそちら側であった事は個人的には喜ばしく思う。
……そろそろ、私も本題を切り出そう。
「──なぁカリム、予言の内容は今私が知っている部分だけで全部か?」
「……その問いに答える事は出来ません。」
「騎士カリム……?」
私の問いかけの内容、そしてそれに対する反応を見たクロノ君が訝し気にカリムを見る。
「カリム……私達機動六課は予言の滅びを回避する為に設立された部隊や。
勿論予言の日のタイミングを隠す事で予言の正確性を高めるのも重要やけど、それと同じくらい滅びに対する準備をちゃんとさせる事は重要な筈や。
そしてそれはタイミングを知らな出来ん事……違うか?」
「確かにはやての言う事は尤もです。その二つの重要性はほぼ等価と言えます。
……しかし、それでも私は予言の全文を伝えるリスクを無視できません。貴女の知らない最後の一節には、そう言った類の内容が記されているのです。」
その言葉と目から感じたのは確固たる意志。……恐らくカリムはこの内容について、自分の意思で隠している。最高評議会からの口止めはあるだろうが、それでも自分で考えた末に納得して話さない事を選んだという事が伝わって来た。
「……しゃあない、分かった。カリムがそうなったら頑なって言う事は私も知っとるからな。
時間も無限やないし、もうこの話は置いといて実のある話をしよか。」
「すみません、はやて。誰よりも最前線で滅びに立ち向かうのは貴女達だと言うのに、私は……」
「ああ、ええよええよ。カリムの事は信頼してるし、そんなカリムが私に話せへんって言うなら何か事情があるんも分かる。
私の方こそ無理に聞こうとしてゴメンな。堪忍や。」
「貴女が謝るような事はありません、部隊員の命を預かる身として当然の行動です。
……予言の明かせない部分は、解釈が進み『安全』と分かれば、きっと最高評議会から明かされるでしょう。」
私としてはカリムがただ最高評議会からの圧力で話せないだけではないと分かり、一安心と言ったところだ。
彼女が話せないと判断した理由も、最後の一言でさり気なく教えてくれた。
「ん、
時間とってまってゴメンな、クロノ君!」
「……いや、僕も君と同じ立場ならきっと彼女に詰め寄っていただろう。
さて、では本題を。
数日前、本局の動きで分かったのだが、実は例の教会に……」
クロノ君からの情報を聞きながら、マルチタスクでさっき得た情報を整理する。
『解釈が進み『安全』と分かれば』……つまり、
それがどんな危険だろうと、少なくともカリムは『危険そのもの』よりも『私がそれを知る事』を避けた。
ここからは完全に私の想像になるが、きっとカリムは『その危険』を『危険と思っていない』のだろう。
だけど解釈次第で捉え方が変わる内容だから、その可能性を『私が考える事』を避けたのだ。……私はそう信じる事にした。
──はやて達の会合が始まってそろそろ二時間か。
はやて達が予言に関する会議を開いている一室とドア一枚を隔てた廊下にて、シグナムは退屈を紛らわせるように壁に掛けられた時計に視線を向けた。
今回の会議は元々長引く可能性を考慮しており、シグナムとリインフォースはシスターシャッハと共に警護に当たる事となったのだが、その際色々と事情を知るシスターシャッハが室内に、ヴォルケンリッターの二人は室外に割り振られていた。
「今のところ、問題は無さそうだな。リインフォース、そちらはどうだ?」
「私の方もコレと言った事は無いな。もっとも、元々警備が厳重な聖王教会だ。
何かあればもっと騒がしくなっているとは思うがな。」
「それもそうだな。」
二人の言うように、今彼女達が居る聖王教会は次元世界全体で見てもトップクラスの宗教『聖王教』の総本山と言う事もあり、警備はかなり厳重となっている。
人の出入りが監視されるなんて言うのは序の口で、至る所に仕掛けられたセンサーがあらゆる魔法の発動を感知する為、転移しようものなら即座に下手人は包囲される事だろう。
だからと言って警備の手を抜く訳ではないが、シグナムはこの警護の意味に疑問を持ち始めていた。
だからだろうか、シグナムの視線はふと窓の外に吸い寄せられた。
特に異常を感じた訳ではなく、何と無しに視線を遣ってある事に気付いた。
──そうか、そう言えばここからはあのヘリポートが見えるのか。
だからなんだと言うような小さな気付きだったが、そうなると一つの好奇心が湧き上がる。
──ヴァイスはヘリの整備をすると言っていたが、今も居るのだろうか。
あれから一時間、流石に整備を終えて教会内で寛いでいるだろうと思いながらヘリを見ると……
──驚いたな、まだ整備を続けているのか?
そこには変わらぬ様子でヘリの整備を続けるヴァイスの姿があった。
経過した時間を考えれば必要な整備などとっくに終えているだろうに、ストームレイダーの表示するモニターを楽しそうに眺めている。
そして何かしらの操作をすると、続いて彼はヘリの中から汚れの付いた布切れを持って来てその機体を拭き始める。
──ヴァイスはヘリの整備は趣味の内と言っていたが、本当のようだな。
その様子にシグナムは何の違和感も抱く事は無く、そのまま窓から目線を戻そうとして……
「ヴァイスは本当にヘリが好きらしいな。
何度も同じように機体を拭いているのに、それを延々と続けられるのは偏にヘリに対する愛情だろう。
私も眠っている間、はやてが剣十字を何度も丁寧に拭ってくれたのを思い出すよ。」
そうしみじみと語るリインフォースの言葉を聞き、弾かれたようにヴァイスに目を向けた。
「リインフォース、今ヴァイスはもう何度も機体を拭いていたと言ったが……お前はそれを見たんだな?」
「ん? ……ああ、済まない。確かに今は警護の途中で、他事に意識を割くのは好ましくないな。
だが私もちゃんとマルチタスクで魔力感知は──」
「そうではない! 私が確認したいのは、ヴァイスは確かに
リインフォースと話している間、シグナムの眼はその一点に向けられていた。
視覚を魔力で強化し、まるで望遠鏡のようにしてまで彼女はその光景を注視する。
「? ……ああ、確かにあの箇所も拭いていた。その後は確か、ヘリの下に潜りこんで……ああ、やっぱり。全く同じ……作業を……!?」
そこでリインフォースも違和感に気付く。
いつの頃からか、ヴァイスは全く同じ行動を繰り返していたと言う事に。
そしてシグナムはもう一つ、あり得ない事に気付いていた。
ヴァイスが何度も拭ったというヘリの機体を拭いた時、微かにではあるが布切れが汚れた事に。
──偽装結界!
二人は同じ答えに至る。即ち、既に
「──はぁ、はぁ……!」
「無駄ですよ。貴方の弾丸が私に届く事は無い。」
偽装された結界の中、ヴァイスは"彼女"に対して何度もストームレイダーの銃撃を放っていた。
本来であれば聖王教会内での無許可の発砲など、早々まかり通るような行いではないが今は明らかな緊急事態だ。
それは既に、
──これだけ銃声を響かせたってのに、誰も異常事態に駆けつけて来る気配は無い。やっぱり、この周囲の光景は偽装……! 当然、周囲からは俺達の姿もまともには見えていないんだろうな。
そう気づいたからこそヴァイスは遠慮なく攻撃が出来ていた。
これまでの銃撃も"彼女"を狙うばかりではなく、異常事態を伝える為に結界を突き破り教会の壁面を穿つべく、態と外すような軌道で撃ったりと様々な手を講じて来た。
だが、そのどれもがあの"カーテン"に阻まれた。
"彼女"が何らかの魔法で生み出したのだろう"白いオーロラ"。
向こう側が透けて見える程に薄く、風にさえ散らされそうな程儚く揺らめくそれはしかしヴァイスの銃弾を通す事は無く、その
ヴァイスが今無事なのも"彼女"が一切攻撃をしてこないからでしかなく、それがなおの事ヴァイスを苛立たせる。
「おい、てめぇ! 人を挑発するような真似しておいて、結界にまで閉じ込めて、一体何のつもりだ!!」
「そうですね……本音を言えば、もう貴方に用はありません。
貴方が予言について知っていれば、私は今も"恩人"のままで貴方に接したでしょうし、情報を聞き出した後は別のアプローチを取ったでしょう。」
「く……っ!」
『恩人』……"彼女"の口から出たその言葉に、ヴァイスは更に顔を顰める。
許せなかった。
目の前のこの女は俺の妹の命がかかった事件を利用し、その上、それを平然とした口調でなんて事ないように打ち明けた。
「ですが、貴方は知らなかった。だから私は予定を繰り上げる事にしたんです。」
本当に許せなかった。
俺はそんな胸糞悪い奴の事を"恩人"と呼び、今の今まで感謝の念しか抱いていなかった自分の馬鹿さ加減にほとほと嫌気がさした。
「確実に知っているだろう人達を引き摺り出す……その目的の為に必要な物は見つかってませんが、それを見つける方法は既に知っていますから。」
許す訳には行かないと思った。
コイツの行動は結果的には善行なのかもしれないが、そこに善意は無い。
結果がいくら良い物になっても、やっている事は他者の人生を弄び利用する……悪魔の所業だ。
「その為にはもう、私は隠れている訳には行かない。
『敵かも知れないグレー』でいる訳には行かなくなった。
何せ、時間も足りないので。」
だと言うのに……こいつがいなければ失われていたかも知れない『妹の笑顔』が脳裏を過る度に、こいつを疑いたくないと言う思いが湧き上がってしまう。
信じたいと……せめて、あの時の行動だけでも純粋な善意だったと言って欲しいと思ってしまう。
「詳しい事は話せませんが、今の貴方はとても私の目的に貢献してくれているんですよ。
ご協力に感謝します。」
「……くっ……!!」
そんな希望は既に、"彼女"自身の言葉で否定された後だと言うのに。
「俺は……俺はてめぇに利用される為に、機動六課に入った訳じゃねぇ!」
苦し紛れの発砲は、当然のように白いオーロラにかき消され、彼女に届かない。
貫通性能をどれほど高めても、装甲を纏わせても、速度を突き詰めても、たった一瞬で弾丸が空気に溶けてしまう。
あらゆる魔法を溶かす絶対的な防御……それを突破する方法が何かないか、ヴァイスが思考を巡らせていたその時──
「ああ、
そう彼女が呟き……突如、空間に巨大な亀裂が走ったかと思うと、けたたましい音と共に結界が砕け散った。
「ヴァイス!! 無事か!!」
「シグナム姐さん!?」
解除された結界の外は既に多くの教会騎士団に包囲されており、その中にはシグナムや、既にリインフォースとユニゾンした八神はやての姿もあった。
そんな絶対的な強者達からのプレッシャーを背に感じている筈の"彼女"の表情には動揺はまるで無く、ヴァイスに対して最初に向けていた"聖女"の仮面をかぶり直していた。
「──お待ちしておりました。聖王教会の皆様、そして……
どうやら、この状況は"彼女"が望んでいた事だったらしいとヴァイスは悟る。
ヴァイスをこの結界に閉じ込めていたのも、この状況を作る為だったのだと。
──しかし次の瞬間、彼女はその余裕の表情を始めて崩す事となった。
「聖王教会の敷地内に無断で侵入……その上、うちの仲間に手出しするとは……
覚悟した上での行動と受け取ってええんやな?」
「──っ!」
"彼女"が背後からのはやての声を聞いた瞬間、ヴァイスだけはその表情の変化を見る事が出来た。
それは"動揺"……そして、"歓喜"だった。
「あぁ、これははやてさん。この出会いに心から感謝します!
この場に来てくれた事、それを
「な……なんや、自分。この状況でおかしなったんか?」
彼女は溢れんばかりの歓喜の笑顔と共にはやてへと向き直り、何かを確かめるように視線を巡らせると、やがて満足したようにその視線をシグナムに向けた。
「シグナム、貴女に会うのはもっと後の予定でした。
もっと準備を整え、もっと然るべき舞台で……その時まで、貴女の前に姿を晒す事は避けたかった。
ヴォルケンリッターに見つかる事を避ける為、今の今まで教会の中で生きてきました。」
「何……?」
シグナムを含み、この場に居る誰もが"彼女"の言葉の意味を理解できなかった。
しかし、次の瞬間この場に居るたった二人だけが彼女の言葉の意味……その一端を理解した。
「では皆様、次は私の教会でお会いしましょう。」
「……なっ!!?」
その言葉と共に溢れ出す"彼女"の魔力は、あまりにも異端だった。
魔力光は虹のように多くの色を内包しており、しかしそれがグラデーションのようにならずマーブル状になっている。
それと同様に魔力波動もバラバラで、まるでそこに何人もの魔導士がいるのではないかと錯覚させた。
次の瞬間、"彼女"は転移の術式により姿を消したが、残された面々……特に、シグナムはあまりにも突然の事態に呆然と立ち尽くしていた。
「……何故、"奴"が
シグナムの言う"奴"は、多分覚えてる人は覚えてます。