……私も苦手なのになに書いてんだろうねっていう。
と言う訳で『残酷な描写』『←の念の為』タグを付ける主な原因となった回です。
後もう一つ先に書かせていただきますが、私はギル・グレアムさんが嫌いな訳ではありません。リーゼ姉妹も同様です。
2022/09/04 追記
話の並び順を変更しました。
「いやぁ……休暇って良いよなぁ。」
「ああ、こうしてのんびり街を歩いても上司に文句言われねぇし、高い給料の使い道を考えるだけでも楽しいもんだ。」
そう話しながら昼食のホットドッグ(のような食べ物)を片手に、クラナガンの商業区をのんびりと歩く銀髪オッドアイの二人。
彼等は長期任務を終えたばかりであり、久々の休日を謳歌しているところだった。
周囲を見渡せば、彼等と同じく休暇をこの辺りで過ごすのだろう人達でごった返している。
そんな光景を職業柄ついつい不審な奴が居ないかと目を光らせていた
「ッ!? おい神無月、アレ見ろ!!」
「何だよ皇……って、アレは……マジかよ……!」
皇の並々ならぬ様子に『休暇中に面倒毎に巻き込まれたら嫌だな』と思いつつも、それでも管理局員としての最低限の矜持を持ち合わせていた神無月は、渋々と言った様子で相方の示す先に目線をやり……その先のモニターに表示されている映像に驚愕した。
『ベルカの伝説 鉄槌の章&烈火の章 好評発売中!!』
そこに映されていたのは、彼等も好んでプレイしているジェイル・ギアのVRゲームの新作が発売されている事を示す広告だった。
「発売日は……今日!?」
「おいおいマジかよ……運命だわこりゃ。」
「言ってる場合かよ! これ、体感時間『5倍』って書いてあんぞ!」
「マジかよ……! 確かこの付近でVRゲー取り扱ってる店は……!」
二人は慌てた様子で広告へと駆け寄り、その内容を改める。
VRゲームの中での時間はモノによって差はあるものの、基本的に現実世界の数倍に引き延ばされる。
それはすなわち、のんびりしていたらその『数倍』体感プレイ時間が減るという事でもあった。
もはや彼等の頭に『のんびり』等と言う思考は無い。今は一刻も早くソフトを手に入れ、仮想空間にダイブする事が最優先だった。
「あっちだ! 確か試験受ける前にギリギリまで試遊して、店員に叱られた店があった筈だ!」
「懐かしいなオイ……アレからすっかり行き難くなったけど、久しぶりに行くか!」
そう決めた二人は人混みに気を付けながら、駆け出した。
全てはこの休日をさらに充実させるために……そんな中、ふと人混みの向こうに何かを見つけた皇の脚が止まった。
「――あれ、あの二人って……?」
「何やってんだ皇! 置いて行くぞ!」
「え? あ、あぁ……ちょっと待ってろ!」
急かす神無月の声に適当に返答した彼は、再び先程見かけた
「……居ない。気のせいだったか……?」
――当たり前か。あの二人が今も生きている筈がない……
そう自分を納得させた皇は、神無月を追って駆け出した。
一瞬人混みの奥に見えた気がした
――時は数ヶ月前に遡る
第97管理外世界『地球』 イギリス 某所
美しい景色が評判のとある別荘地にて、一人の老人がベッドに寝そべっていた。
彼の名はギル・グレアム。かつては優秀な魔導士であり、時空管理局の提督にまで上り詰めた程の人物だ。
だがそんな彼も皆に平等に訪れる老いには勝てない。管理局を辞した事を切っ掛けに体は日に日に衰えていき、今となってはこうしてベッドに寝そべる時間が殆どだった。
そしてそんな彼の傍らには、昔と変わらぬ美貌のまま彼の使い魔を続けている女性の姿があった。
「父さま、体調はいかがですか?」
「アリアか……悪くないが、やはり歳には勝てんようだ。
私ももう永くはないだろう……」
「そんな事は……」
「いや、自分の体の事だからね……分かるんだ。
アリアにも伝わっているのではないかね?」
「……」
もう直ぐ寿命を迎えるだろうと言う彼の言葉を、リーゼアリアは否定できない。
使い魔のパスから伝わる主の魔力が、彼女にとっても『その時』が近付いている事を如実に語っていた。
リーゼアリアの表情が曇る。それはもう直自らにも訪れる終わりの時を嘆いてのものではなく、もしもあの時主である彼に逆らってでも計画を止めていれば……管理局員としての生活が続いていれば、彼はもっと充実した日々を送れたのではないかと言う後悔からだった。
そんな彼女の思いが伝わったのだろう、ギル・グレアムは項垂れるリーゼアリアの頭を優しく撫でるとほほ笑んだ。
「そんな顔をしないでくれ、私は自分の人生に満足している。
確かに復讐心から愚かな行動に走った事は、我が生涯最後の汚点ではあるが……
それも頼もしい後輩達に止めて貰う事が出来た。
クロノと彼女達が居れば、管理局は大丈夫だろう……」
「はい。……それに、クライド君も無事でしたからね。」
「はは……ああ、そうだ。彼が生きて帰って来た時は、それはもう驚いたものだ。」
管理局員としての最後に、思わぬサプライズがあったものだと二人で笑い合う。
やがてそれは思い出話へと変わって行き、あっと言う間に時は過ぎて行った。
「……どうやら、思ったよりも早く迎えが来るようだ。
ロッテを呼んでくれるか?」
「その必要はないでしょう、私にもその時が近付いている事は分かりますから。
彼女もきっと……」
「――来たよ、父さま。」
アリアがそう言いかけたところで部屋の扉が静かに開き、穏やかな表情のリーゼロッテが入って来た。
彼女の表情にはただただ最後の時を共にしたいと言う願いだけがあり、そんな表情を見たギル・グレアムは悲し気に目を伏せた。
「……使い魔と言うのは難儀な物だな。私の寿命に、君達を道連れにしてしまう。」
「何言っているのさ、父さま。父さまの使い魔じゃなかったらあたし達、とっくに猫の寿命で死んでたって。」
「ロッテの言う通りです、ですから気負いする事なく私達をお連れ下さい。
最期まで貴方と共に……それが貴方の使い魔である、私達の望みです。」
「ロッテ、アリア……ありがとう。」
使い魔である彼女達がそう言ってくれるなら、最期は皆一緒に逝こう。
そう考え、寄り添う彼女達に腕を回しそっと抱き寄せる。最近は筋力もすっかり衰え、腕を上げる事も億劫だったがこの時ばかりは不思議と力が湧いて来た。
このまま最期の時を過ごそう。今までずっと戦って来てくれたかけがえない家族と共に……
そんなささやかな願いと、穏やかな時間は……
「――失礼します。空気を読まなくてすみませんが、勝手にお邪魔させていただきました。」
突然の闖入者により、無遠慮に踏みにじられた。
「なっ!!? き、君は……まさか……!!」
ギル・グレアムの眼が驚愕に見開かれる。当然だろう、最期の最期にあって『最も会いたくない人物』が目の前に現れたのだから。
「お久しぶりです。信じていただきたいのですが、このような『ハッピーエンド』を邪魔するのは、私も不本意ではあるんです。
なにしろ"教義に反しますから"ね、なるべく避けたいんですけどそうも言ってられなくて……」
窓から差し込む夕日を受けて真っ赤に染まった銀髪、怪しく輝く異色の双眸……本来ここに居る筈もない、現れる筈もない少女の姿がそこにあった。
弾かれたように二人の使い魔がギル・グレアムの前に躍り出る。
「ここに何の用だ!!? 私達の最期を邪魔するな!!」
「父さま、彼女は一体……?」
彼女達は目の前の少女の事をギル・グレアムから聞かされては居なかった。
それは彼女達が知る必要が無いからと言う事情もあったが、それよりも『彼女とはどんな形であれ関わって欲しくない』と言う願いもあったからだった。
しかし、こうして二人は"彼女"に出会ってしまった。それも最悪の形で。
「アリア、ロッテ……下がっていなさい。
下手に刺激すればどうなるか分からない相手だ。」
穏やかな声に有無を言わせぬ力強さを込めて告げる。
"彼女"の目的は自分だ……そんな嫌な確信が、今の彼にはあった。
「あら酷い、私の事を何だと思っているんですか?
これでも"聖女"なんですよ?」
「それは失礼……ところで、私に何か用でしょうか。
御覧の通り、私はもう永くない。せめて最期を安らかな物にさせていただければ、幸いなのですが……」
おどけたようにそう告げる少女に、ギル・グレアムは決して気を許さない。
嘗てとは違い口調こそ穏やかではあるが、そこに込められている意思は固かった。
「……そうですね、確かに貴方はもう永くない。
今から5分32秒後に息を引き取るでしょう。ですから今……寿命が尽きかけている貴方に会いに来たのです。」
「なに……?」
そう前置きしてから"彼女"は取引を持ち掛けた。
「貴方がこれから死にゆくのは天に定められた刻限によるものです、どんな名医にも避ける事は出来ません。
しかし、
「な……ッ!?」
あまりに荒唐無稽な話だ。寿命で死ぬ者をさらに50年……それも若々しく生かす等、そんな都合の良い話を信じる者はそういないだろう。
「ですから、私に協力していただけませんか?
私の目的の為……より良い未来の為に、貴方の力が必要なのです。
残された3分以内に、どうか貴方の回答を聞かせてください。」
そんな彼の態度を気にした様子も無く、彼女は言葉を続ける……否、気にした様子が無いのではなく、文字通り気にする時間が無いのだろう。
彼女の言う通り、ギル・グレアムに残された時間はそれほど少なかった。
「父さま、こいつヤバいよ! あたしには詳しい事情は分かんないけど、こいつの言う事を聞くのだけは拙いって分かる!」
「同感です、私達は彼女に縋ってまで生きたいとは思えません。どうか、正しいご判断を。」
「私が聞いているのは貴女達の『父さま』の答えなのですが……どうやら、元々貴方も同じ意見だったようですね。」
"彼女"の発する言葉からか、それとも微かに感じる魔力の残滓からか……その危うさに気付いたリーゼ姉妹がギル・グレアムに忠言を投げかける。
しかし、ギル・グレアムは元々"彼女"の取引に応じるつもりは無かった。それよりも遥かに大切な二人の願いを知っているから……それが今の自分の望みでもあったから。
「ああ、私は貴女に協力する事は無い。どうか、お引き取りを。」
毅然とした態度でギル・グレアムは"彼女"の取引を突っぱねる。
そんな返答を最初から分かっていたように、"彼女"は残念そうに項垂れた。
「……残り1分。随分早く振られてしまいましたね……
私の提案に魅力が無かったのでしょうか? 残念です……」
「――貴方の意思で協力していただければ、より良かったのですが。」
「うっ!?」
その場の誰一人として、一瞬たりとも気を抜いていなかった。
"彼女"が格上である事以上に、何をするか分からない危うさを感じ、その指先の動きにさえ気を張っていた。
……それでも、その一瞬で気付けば"彼女"はギル・グレアムの傍に立っており、その手はギル・グレアムの胸元……心臓の位置に添えられていた。
「なっ! いつの間に……!」
「やめろォォォオオオオッッ!!!」
制止する双子の声が部屋に響く。
それと同時に二人は"彼女"に飛び掛かるが……
「――――――」
「なっ……!」
「貴女、まさか……!!」
"彼女"が何かを口にすると、忽ちその体から光が溢れ――
「
「……そんな……こんな事が……」
「父さま……? 目を開けてよ……
その場に残されたのは息を引き取ったギル・グレアムの遺体と、呆然としたリーゼアリア……そして、ギル・グレアムの遺体に縋りつき涙を流すリーゼロッテとそれを見つめる"彼女"の姿だった。
「ご安心を、ギル・グレアムさんは今も私の中で生きています。
さぁ、行きましょう。ロッテ、アリア……今の貴女達は
その瞬間、幾重にも連なる魔法陣がリーゼアリアの周囲に展開され、リーゼロッテの強烈な襲撃が放たれるが……
「き、貴様……!」
「体が動かない……そんな……」
リーゼアリアの術式はその意に反して起動せず、リーゼロッテの蹴りは"彼女"との間に数cmの隙間を空けたところで静止していた。
「使い魔は基本的に主に危害を加えられません。これで分かったでしょう?
……今は私が貴女達の主です。」
「誰が認めるかッ! そんな事!!」
"彼女"の言葉に激昂したリーゼロッテが、今度は襲撃の代わりにと両手の拳による連撃を見舞うが、そのどれもが"彼女"に数cmだけ届かない。
それでも強引に拳を届かせようとしたせいだろうか、リーゼロッテの腕が一部裂け、血が噴き出す。
その様子を見た"彼女"はリーゼロッテの拳の一つを片手で難なく受け止め、もう片方の手を血が噴き出す腕にそっと添え、その傷を癒した。
「ッ! 貴様……ッ!!」
当然そんな事をされても感謝の念など湧き上がる筈もなく、更なる挑発と受け取ったリーゼロッテは捕まれていない方の拳を振るうが、それも易々と受け止められる。
そして両手でロッテの両拳を掴んだその姿勢のまま、"彼女"はリーゼロッテに語り掛けた。
「やはり私が主ではお気に召しませんか? でしたら……そうですね。
先程の約束……まぁ、ご自分の意思ではありませんが協力していただける以上、私も守らせていただくつもりです。
全てが終わった後、貴女達は間違いなく本来の『父さま』と共に生きて行けますよ。」
「そう言う問題じゃ……ないんだよ!!」
「……仕方ありませんね、あまりこう言うのは好きではないのですが。
『リーゼロッテ、リーゼアリアに命じます。おとなしくしなさい』。」
「な……」
「……本当に、アンタが主になっちまったって事かい……」
"彼女"が命じた途端、勝手に大人しくなる自らの身体に、諦めたようにリーゼアリアが呟く。
「お分かりいただけて何よりです。」
「嫌でも分かっちまったからね……私達が契約で縛られてるって事が。」
「……それでも、あたしは認めない。契約で縛られても、例え術式がパスを繋いでようと、あたしはアンタを認めない!!」
命令により大人しくさせられた身体の分まで、"彼女"を睨みつけながらリーゼロッテが叫ぶ。
敵意と殺意の入り混じった形相を前に、それでも"彼女"はなんて事ないとでも言うように淡々と告げる。
「それで結構です。その意思まで奪うような事はしません。
ですが、貴女達と言う人材を腐らせるつもりもない。必要な時は命令してでも協力させますのでそのつもりで。」
「はっ……いいさ、精々いい気になって使ってな。
だけど少しでも隙を見せてみな、どんな手を使ってもその喉笛食いちぎってやるよ……!」
――そのやり取りを最後に、彼女達はしばらく住処とした家から姿を消した。
その後匿名で管理局に勤める彼の知人の下に届いた通報によりギル・グレアムの遺体は発見され、彼の故郷であるイギリスで葬儀が行われた。
参列者の中には彼の弟子でもあったクロノや八神はやてを始めとした彼の知り合いの局員がその名を連ねていたが、姿を偽った二人の使い魔の存在に気付けるものは居なかった。
管理局に報告を入れたのは変身魔法で声を変えたリーゼアリアです。
葬儀を行ったのは管理局ではなく、知らせを聞いた彼の古い知人です。そこからはやてさんにも連絡が行き、参列と言う流れになります。
直接的に関わりが深い訳ではないなのはさんとフェイトさんは参列してません。(フェイトさんに至っては仕事に追われてますし)
ギル・グレアムさんの寿命に関してですが、原作のStSの段階で死亡しているかは定かではないので完全に捏造です。
ただA'sの11年前の時点で既にかなりの高齢のようなので、そこから20年以上と考えると可能性は高いかなと。
(今にして思えば過去話ではやてさんが葬儀に出ていた事に触れる描写があった方がよかったなと反省)