転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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書いている途中でちょっと良くない事に気付いてしまったけれど、私は元気です。


地下大聖堂での戦い・中

「刃以て、血に染めよ! 穿て、ブラッディダガー!」

≪Blutiger Dolch.≫

≪Blutiger Dolch.≫

 

術式の構築と同時にリーゼアリアの周囲を取り囲むように生じる無数の魔力の刃は、間髪を入れずにその輪を狭めてリーゼアリアへと殺到する。

二人のリインフォースと融合した今の私は処理速度の飛躍的な上昇に加え、一回分の構築で同じ術式を二つ同時に扱える。

リーゼアリアを包囲する二つの輪は縦横に張り巡らされており、この包囲を抜けるのはフェイトちゃんでも難しい筈だが……

 

「――!」

「くっ、やっぱかき消されてまうか……!」

 

いくら逃げ場のない包囲でも、あの白い光を一度受ければ忽ち空気に溶けて消えてしまう。

その上、あの光を放つ際にはリーゼアリアもリーゼロッテも一切の術式を用いていないように思える。こちらが僅かとは言え時間をかけて構築した術式をノータイムでかき消せる以上、どう足掻いてもその身に刃が届く事は無い。

その上相手の攻撃に対する障壁はこちらがいくら時間をかけても一瞬で溶かされ、まるで役に立たない。

 

――圧倒的なアドバンテージ……完全に戦闘の主導権を握られとる!

 

唯一同じ術式……と言うか、属性を扱えるザフィーラだけはリーゼロッテと一対一でやり合えているが、先程のように他の少女のサポートに移る時だけは後手に回ってしまう。

根本的な速度でリーゼロッテがザフィーラを僅かに上回ってしまっている為だ。

 

――このままではどのみちジリ貧か……だったら!

 

≪リインフォース、ツヴァイ、イチかバチかやるで!≫

≪はい。≫

≪はいです!≫

 

リインフォース達からの了承を得た私は行動に移す為、続けてヴォルケンリッター達へと思念通話を繋ぐ。

 

≪――っちゅう訳や、皆頼めるか?≫

≪はい。≫

≪任せろ!≫

≪解ったわ!≫

≪了解した!≫

≪合図は私が出す、そこからは臨機応変に個人の考えで動いてくれ。

 作戦は以上や。≫

 

これからの動きをヴォルケンリッター達に伝えた私は、僅かな隙を突いてリーゼアリアの砲撃を掻い潜り、地下大聖堂唯一の出入り口である木製の大扉へと一直線に駆けだす。

 

「リーゼロッテ、リーゼアリア『阻止しなさい』。」

「……」

「くっ、また……!」

 

未来を見て私の行動を読んだのだろう、聖女が二人に指示を飛ばすとリーゼ姉妹の動きはあからさまに変化する。

ヴォルケンリッター達と対峙する事を即座にやめ、私を追い始めた。……いや、正確には私と同じく『扉へと向かっている』と言うのが正しいだろうか。

 

――ここまでは狙い通りや。後はタイミング……!

 

扉までまだ距離はあるが、元々ゼロ距離にまで詰めるつもりは無い。

重要なのはリーゼ姉妹の動きが私一人を対処する為の動きへと変わる事、そして私よりも速い二人が私と扉の間に立ち塞がったこのタイミング!

聖女がいくら未来が読めたとしても、リーゼ姉妹があの光を使えるようにされていたとしても、これは対応しきれない筈だ!

 

≪やるで、リイン、ツヴァイ!≫

≪いつでも。≫

≪やってやるですよ!≫

()()!≫

 

そしてヴォルケンリッターへ合図を出すと同時に二人と息を合わせ、私達は一つの術式を構築する。

対象は、リーゼ姉妹と扉のその丁度中間の()()()()()()

 

「――遠き地にて、闇に沈め!」

≪≪≪Diabolic Emission.≫≫≫

 

たった一つ発動するだけでもかなりの威力を発揮する広域殲滅魔法。本来であれば数秒の構築時間を要するが、二人のリインフォースと融合した私の処理速度なら1秒とかからない。そして、私と二人のリインフォースの同時詠唱によりその魔法は()()()()()()()()()する!

元々空間そのものに作用する魔法が同時に発動した時の相乗効果は、射撃魔法や砲撃とは比べ物にならない!

 

「……ッ!?」

「は、はは……凄い、これなら……ッ!?」

 

リーゼ姉妹が唖然としながらも、二人の体は勝手に対処の為に動く。

即ちアリアは白い光を宿した砲撃術式の展開、ロッテは両手両足に白い光を宿してデアボリックエミッションへとその身を投じた。

 

最後にロッテが『これなら』と嬉しそうに言っていたが、このデアボリックエミッションは本命ではない。

確かにこの威力と範囲を持つ魔法には二人がかりでの対処は必要になるだろうが、術式そのものに特攻を持つあの光があれば数秒ほどでかき消されるだろう。

未だにかき消されていないのも、この魔法が空間そのものに作用する広域魔法だからと言うだけなのだ。

 

だがそれで十分だ。扉が破壊されないようにする為に、二人はその数秒間あそこから動けない。

私達の本命は、もう一つの戦場の均衡を崩す事!

 

「……成程、読み違えましたか。」

「そう言う事や! 『奇跡』の()()をそう簡単に見せるもんやないで?」

 

既にヴォルケンリッターは動き出している。

もう未来を見るまでもないだろう、この光景が私の作戦の成功をそのまま表しているのだから。

 

「あ、あぐぅ……? い、意識が……」

「これは……! そうか! そう言えばヴォルケンリッターは、闇の書の……!」

 

少女の胸を貫いて現れた『腕』……その先にはリンカーコアが握られている。彼女達を動かす『奇跡のタネ』が。

 

「リンカーコアを取り出す技術は、ヴォルケンリッターも持っとる。

 ……まぁ、本人達にはあまり良い思い出がない能力とは思うけど、この際四の五の言ってられん。」

「いえ、素晴らしい判断と称賛しましょう。確かに貴女達に見せるべきではなかった。

 この貴重な失敗は次に活かさせてもらいます。ただし……」

 

そう言って聖女が手の平を翳すと、シャマルの腕に握られていたリンカーコアがその手に転送されてくる。

 

「私の兵士は返してもらいます。身体さえ残っていれば、再起は可能ですから。」

「死後の魂さえ使い潰すか……ホンマええ趣味しとるなぁ。絶対アンタの下では働きたくないわ。」

「数百年後の未来を生きる事が出来ると考えれば、そう悪い事ばかりでもないと思いますよ? なにしろ私の職場はホワイトですから。」

 

……白いのは外見だけやろ。

まぁ、そんなツッコミを入れるまでもなく、この場の流れは大きく変わった。

リンカーコアを取り出す技術は何もシャマルのみが持つものではない。ヴィータやシグナムも同様の事が出来るのだ。

 

リーゼ姉妹がデアボリックエミッションをかき消した時には既に、聖女の下に12個ほどのリンカーコアが還った後だった。

 

「……随分、やられてしまいましたね。その分、実力の高い者は選別されましたが。」

 

残った8人の少女はいずれも一定以上の実力を持っているのか、ヴォルケンリッター達との戦いでリンカーコアの摘出だけは回避した者ばかりだった。

中にはシグナムに自ら勝負を申し込むような武人気質の少女もおり、彼女は今もシグナムの攻撃を辛うじてと言った様子ではあるが捌き切っている。

 

「は、ははっ! すげぇぜアンタ! こんな使い手には会った事がねぇ!

 これだけでも使われた甲斐があったってもんだ!」

「そうか、私は残念だ。お前程の戦士が、あの様な者に使われていると言う事がな。」

 

……シグナム、ちょっと楽しんでないか? いや、強い相手を一人で引き受けてると考えればまぁ……うん。

 

「まぁ、何はともあれこれで形勢逆転や。

 結局未来を見れる言うてもこんなもんや、大人しく拘束される気は無いか?」

「……」

 

 

 


 

 

 

<凄いね、はやて。一気に逆転だよ!>

<うん。それにしても蒐集か……完全に盲点だったよ。>

 

正確にはリンカーコアを摘出しただけだけど、それだけで少女達は意識を失うらしい。その辺りがなのはの時と違うのは、元々の身体ではないからだろうか。

 

「あ……ッ! うぅ……」

 

今もまた一人、リンカーコアを摘出されて少女が倒れた。……位置関係からして、今なら頼めるかもしれない。

 

≪ヴィータ、こっちの子も頼める?≫

≪ん? あぁ、良いぞ。あたしがそっちに行くか?≫

≪大丈夫、こっちで墜とすよ。≫

≪あいよ。≫

 

念話でそう伝えた後、私は少女へと向き直る。

2つの魔力を使い分ける事を覚え始めた少女は戦いながらも周囲の観察を続け、今や独自の戦闘スタイルを確立しつつあった。これ以上時間をかけると厄介な事になるかもしれない。

 

<だから姉さん、一気に決めよう。>

<……オッケー! ヒントを掴むよりも速く、だね?>

 

流石は姉さんだ、私のやり方を良く分かっている。

 

「ん? 今度はどうするつもり? 貴女と戦ってると不思議と魔法のアイデアが湧いて来るから、結構楽しみね!」

「そう……でもそれももう終わり。この一撃で決めるから。」

「……へぇー、じゃあ私はその一撃を何としても防いで見せるわ。」

 

そう言って障壁を2重に張る少女。別々の魔力と術式で構成された2層の障壁は、昔戦ったデレックの物と似た構造をしている。即ち『耐魔法・耐物理』の複層結界だ。

そして少女の眼は私の一挙手一動足を見逃すまいとしている。

 

……だけど、そのどれもが無意味だ。

 

次の瞬間、私は少女の背後に回り込み、既にバルディッシュを振り抜いた後だった。

 

「えっ……? あ、がッ!!?」

 

そして一瞬遅れて落雷の様な音と共に、少女の身体が感電。そのまま少女はヴィータの待つ地上へと落ちて行った。




ホントはもうちょっと書き進めていたのですが、前書きの良くない事の関係で書き直す必要が出た為大幅カットです! すみません!
あと今回のは結構ヤバめなので、次回はちょっとご都合的な展開になってしまうかもです。(最終手段)
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