強引にこの回を終わらせたので、違和感強いかも……
ちょっぴり地下大聖堂のプロットは変わったけど、この後の展開には影響ないので大丈夫です。
――成程、これが今の彼女達の実力と言う訳か。
最初20人出した私の兵士は、ヴォルケンリッターの活躍により残すところ4人となっていた。
まぁ兵士とは言ったものの、今回私が表に出したリンカーコアは殆どが大した実力を持たない小物だ。
元々彼女達程度の実力で管理局を退けられる等とは思っていなかったし、期待もしていなかった。要するに今もこの場を俯瞰して見ている『奴』に対して、私の本当の目的を誤魔化せさえすればそれで良かったのだ。
……もっとも、思わぬ収穫もあった。
使い捨て同然で蘇らせた彼女達でさえ、私が魔力を供給してやるだけで管理局相手にあれほど粘れるとは予想外ではあったし、そのおかげで私はこうして彼女達の戦いをこの眼で見る事が出来た。
その結果分かった事は、やはり転生者が密集する場所での未来視は安定しないという事だ。
これまでもHE教会内で未来視を使う時には、予め教会内の銀髪オッドアイ達にジェイル・ギアを使用させている必要があった。彼等の意識が眠っている内は、比較的遠い未来までクリアに見る事が出来るからだ。
だが今のように八神はやてやヴォルケンリッター、フェイト・テスタロッサにアルフ等、多くの転生者が自分の意思で動いていると、彼女達の行動により絶えず未来が変わり続ける為どうしても未来視の光景とこの眼で見る未来には誤差が生じる。
……その証拠として、本来ならば今頃は既に達成されていた筈の私の目的が
「――ふぅ……これは、流石に困りましたね。」
「そう言う割に、随分と余裕あるみたいやないか。まだ諦めるつもりは無いんか?」
「ええ、ここで私が捕まる訳には行きませんから。」
そう、ここで負ける訳には行かない。今ここでしくじれば、次の機会は訪れない。
その為に準備してきたのだ。多くを騙し、多くの犠牲を生み、多くの信頼を裏切り今ここに居るのだ。
「……そうか、なら仕方ないな。
ちょっと強引やけど、身柄を拘束させて貰うで。」
「出来るのですか? 貴女に。」
「私やない、アンタを捕まえるんはあくまでも『時空管理局』や。」
そう言ってはやてが手を掲げると、私を包囲していた管理局員全員が杖を構える。
最初にしたように、拘束の術式を組み込んだ砲撃を放とうと言うつもりらしい。
「……それはもう見ました。私はそれが無駄な行いだと、こうして見せて差し上げた筈です。」
そう言い、私は白いオーロラを身に纏う。
これに触れた魔力はその構成をバラバラにされて霧散する……そう、最初に見せつけた。
ザフィーラが模倣していた以上、はやては彼から聞いている筈だ。
……この術式の
「今度も同じと思わんことや! ……撃てぇ!!」
号令と共に、腕を下ろすはやて。
それと同時に多数の砲撃がほぼ同時に放たれる……それを私は悠然と、余裕たっぷりに受けるつもりだ。
「――
振り返る事なく、そう尋ねる。
「こうするんだよ! "レイジングハート"、セットアップ!!」
≪Stand by Ready, Set UP!≫
『高町なのは』のセットアップと同時に莫大な魔力が溢れ出し、プロテクションを構成する。
「っ!!? この魔力は……ッ!?」
彼女のプロテクションに用いられた魔力は、私の瞬間魔力発揮値を大幅に超えていた。
その莫大な魔力をかき消す為に、オーロラのリソースは削られ、迫る砲撃群への防御が失われる。
……私の見た未来の通りに。
瞬間、私の正面へと割り込む影。
張り巡らされる無数の魔法陣。
――あぁ、ずっとこの時を待っていましたよ。
今、私の目の前には待ち焦がれた背中がある。
「なん、やと……?」
眼前の光景が信じられなかった。
今回呼んだ局員の中に、私の知り合いは居ない。今回限りのメンバーだ。
地球からついて来た転生者は居らず、銀髪オッドアイが混じっていない事も確認した。
変身魔法も使っていないし、妙な言動をする者もいなかった。だと言うのに何故……
――いや、考えるまでもない事やな……
今回呼んだ局員の中に、普通の見た目の転生者が混じっていたという事だ。
それも、よりにもよって常識人が。
「管理局員の皆様、申し訳ございません! 今回私共の"聖女"様が起こした騒動のお詫びは、後日こちらから聖王教会の方々へ直接させていただきます!
ですからどうか、今回はお引き取りいただけないでしょうか!?」
局員の砲撃が防がれた事で起こった爆発の煙が消えると、そこに立っていたのは『HE教団』のシスターだった。その正体はシスターに扮した天使なのだが、それが分かる者は私とヴォルケンリッター、そして"聖女"くらいの物だ。
「な、何者だ!? 何故邪魔を……いや、そもそもどこから入った!?」
「えっと、普通にドアから入りましたが……」
「嘘を言うな! 扉は結界の術式で……!?」
振り返れば大扉はいつの間にやら開いており、それを守っていた筈のリーゼ姉妹は意識を失って倒れていた。
見たところ魔力ダメージによる気絶だ。いつの間に術式を使ったのか気配も感じられなかったが、美香さんが言うには神様への申請が通れば時間も止められるらしいし、私も体験した事がある。天使であれば可能だろう。
「なっ……!? あの二人がああも容易く……!!
て、手を挙げろ!! その場に伏せて――」
「ちょい、落ち着きぃ、私が話をするわ。」
「は、はやてさん……解りました。」
だが彼の様なこの世界の住人からすれば、彼女は新たに表れた脅威でしかない。
下手な行動を起こされる前に、私が何とか話を纏めなければ……
「……あー、シスターさんって呼んで構わへんやろか?」
「あっ、はい! 貴女は八神はやてさんですね。ご活躍はかねがね。」
そう言って頭を下げる
……"聖女"の目的が何であれ、こうして彼女が介入してしまった以上、『管理局が悪い』と言う状況に持ち込まれるのは拙い気がする。
美香さんから聞いた限りだと、天使は自らの意思で世界の流れに介入する事を禁じられている為、大事には至らないとは思うが"聖女"の狙いが分からない以上、念の為と言うのは必要だ。
「さっきの口ぶりからして、シスターさんも聖王教会の騒動は知っとるんやな? それが法律に触れる事も。」
「はい、存じております。」
「私達はその聖王教会の要請で動いとる。聖女の独断による行動であったなら確保せぇ、ってな。
このまま"聖女"を見逃して退き下がる言うんは、流石に無理や。」
「勿論、承知しております。」
……何か話してみた感じ、なんか美香さんとちょっと雰囲気が似た感じの人やな。素直と言うかなんと言うか……
そんな印象を抱かせる彼女は、私の言葉への返答に続けて柔らかな笑みを浮かべてこう切り出した。
「――ですから、この後"聖女"の方から時空管理局へと『出頭』させます。」
「……は?」
「ちょぉっ!??」
私の間の抜けた声に続き、"聖女"の焦ったような声が聞こえる。どうやらこの流れは想定外という事なのだろうか……
「えっと……今回の騒動の非は100%こちらにありますので、このくらいの対応は当然かと思ったのですが……?」
「ま……まあ、そうなんやけど、ええんか? 一応"聖女"やで?」
「聖女だからこそ、罪は正しく償わなければなりません!」
……うん、正論だ。
「ちょ、ちょっと待ってくれない!? 私にも色々事情が……」
「問答無用です! 法を守れない人が、信者に何を説く事が出来ましょうか!?」
「うぐぅ……」
……これは、もう彼女に任せておけばいいのでは……?
≪……シグナム、どう思う?≫
≪信頼してもよろしいかと。少なくとも私の知る天使様の中に、約束を反故にする方は居りませんでした。≫
≪まぁ、そうやろなぁ……≫
朱莉ちゃんも文句言いながらバレンタインの日には美香さんと文通させてくれたし、シスターの彼女も例え口約束だとしてもしっかり守るだろう。
「……解った、一旦撤収や。」
「!? はやてさん!? 撤収とはまさか……」
局員の一人が信じられない物を見るような眼でこちらを窺う。
まぁ、彼からすれば当然だ。突然現れた、それも明らかに向こうの勢力に属する者の言葉を鵜呑みにしようと言うのだから。
「まぁ、待ちぃや。何もただ帰ろうとは言ってへん。
当然見張りは置いておくし、それでしばらく待っても動きが無ければ今度は問答無用。
時空管理局だけやなく、聖王教会の教会騎士団も動くやろ。」
「し、しかし……」
勿論この説得で納得する者はそういないだろう。だが、そうするしかないのだ。
「それに、さっきの障壁はここに居る者だけで突破するのはどのみち不可能やろ?
それだけの力があってなお私達を攻撃してこん相手の言葉や、一考の価値があると思った。それだけや。」
「う、うむぅ……」
「まぁ、無理に納得せんでもええ。ただ、下手に刺激して本当にあのシスターと敵対した時のリスクの方が高い事は理解できるやろ?」
「……はい。」
――ゴメンな、天使さん。アンタはきっとそんな事する人やないとは思うけど、これも説得の為や。
そして、私達は一先ず地下大聖堂を出る事になった。
あれだけの戦いの後の決着としては誰もが納得できない形ではあったが、私を含めた十名程の見張りを残してそれぞれの部隊へと彼等は帰って行った。
地上フロアに戻ってみれば、時間はいつの間にやら立っておりそろそろ夕日が沈もうと言う頃。
なのはちゃんも心配している事だろうし、顛末の報告も含めて念話でも入れるとしよう。
「――まったく、貴女は聖女と言う身でありながら……」
くどくどと説教を続ける天使の言葉を聞き流しつつ、私は教団の名簿をペラペラと捲り、目的の人物の名前を探していた。
あの後、天使の交わした約束を守るに際し、"聖女"の引継ぎが必要という事で時間を貰ったのだ。
今私が探しているのも、私を継ぐ者の名前だった。
――あった。
目的の名前を見つけ、天使へと振り返る。
「ねぇ、これが貴女の名前?」
「その身にあった……えっ? ……はい、私の名前ですね。それがどうか致しましたか?」
「"アルマ"……良い名前ね、悪くないわ。」
聖女アルマか。語呂も悪くないし、きっと直ぐに馴染むだろう。
「じゃあ、引継ぎするわよ。」
「……えっ、もしかして私がですか!?」
「ええ、実力も性格も申し分ないでしょ?」
「いやいや、私よりも適した人が居ますって! きっと!」
「もう決めたのよ。」
私の言葉に「そんなー……」と項垂れる天使の側を通り過ぎ、棚からとあるものを取り出す。
「……えっ、なんですそれ?」
「何……って、カラコンと銀色の染髪料よ? 聖女はやっぱり銀髪オッドアイでないと。」
「ぇえっ!!? 私がですか!? そんな目立つ色なんて……!?」
「まぁ、貴女みたいに金髪碧眼ってのも悪くないんだけどねー……ただ、この教団の前身となった教団からの習わしだから。
『遥か昔、弱き者、病める者の支えとなった妖精の姿を真似る』……まぁ、ちょっとした儀式よ。ホラ、後ろ向いて。」
そう言って染髪料を見せると、天使は渋々と言った様子でこちらに背を向ける。
「大丈夫、直ぐに済むわ。」
「うぅ……本当ですか……?」
「ええ、任せて頂戴。」
そう言って彼女の背中に体を押し当てると、安心させる様に自然な動作で抱きしめる。所謂あすなろ抱きと言う体勢だ。
そして、一言呟いた。
「――
「えっ……」
教会の一室が光に包まれる。
私の計画通りに、私の見た未来の通りに。
私は、私の計画に必要なピースを手に入れた。
――光が消えると、ゴトリと言う音と共に"聖女"が倒れる。いや、"元・聖女"の身体が、だ。
もう彼女は聖女ではない。銀髪でも、オッドアイでもない。それは『私』の髪と眼の色だからだ。
そして、その色は、"聖女"は、意思は確かに継がれた。"聖女"から"私"へと。
「ふ、ふふふ……あぁ、最ッ高……!!」
シスターだった彼女はもういない。天使だった彼女はもういない。
ここに居るのはただ一人……
「これが、天使の身体……♪」
天使が必要なメタ的な理由→ラスボスだから。
-2022/10/24 追記-
聖女がそれまで使用していた体は、兵士と同じように『生きた死体』の少女です。
次回聖女の過去編です。大体動機とか色々書きます。
多分1話か2話で纏められると良いなぁって……
以下、多分思うであろう疑問の答え。(本編中に書けなかった)
Q.朱莉がなのはやヴィヴィオの心を読んでたけど、アルマは"聖女"の心を読めなかったの?
A.読めません。"聖女"の心の中は大量(64個)のリンカーコア≒魂の声で溢れている為、聞き取る事が出来ないのです。
Q.天使は自力で身体を取り返せないの?
A.能力的には可能ですが、制約的に不可能です。(転生者の自由を妨げてはならない。)
この制約を知っているからこそ"聖女"はそれを悪用したと言う訳です。