転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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聖女=襲撃者=???視点

ちょっと長めです。次も多分長くなります……


始まりの一人

目の前が真っ暗だ……

俺は何を……あぁ、そうか。確か神様のうっかりで地球が滅んで、転生する事になったんだっけ。

一面が白い世界じゃないって事は、もうここはリリカルなのはの世界なんだろうか。

 

「――ああ、眼が覚めたか。」

「? アンタは……それにここは……?」

 

目を覚ました時、俺は人間大のカプセルの中に居て、薄緑色のガラス越しに研究者らしき男を眺めていた。

自らの言葉が愛らしい少女の声で発せられた事に一瞬驚いたが、ふと転生の際の願いを思い出した。

 

『――次元世界で最初に生み出される"ユニゾンデバイス"として生を受けたい』

 

……あぁ、確かに願いの内の一つはそう願ったな。

容姿に関しては折角だから転生者らしく『銀髪オッドアイで』なんて答えたが、そう言えば性別については指定してなかった。

だが、もし自分の中の"ユニゾンデバイス"のイメージが反映されたと仮定すると……今の俺はリインフォースⅡに近い容姿か特徴を持っていたりするのだろうか。まぁ、折角の第二の人生、別の性別で生きるのも悪くないだろう。

 

「俺は見ての通り研究者だ。番号は24478番。

 ここは俺の国が所有する秘匿された研究所の一つだな。

 ……と言っても、もう国はなくなってしまったが。」

 

俺が現状を整理している間に男、研究者の……えっと、二万……何とか番? はそんな自己紹介を済ませた後に端末を操作し、カプセルを開けてくれた。

 

「あー……っと、とりあえずアンタのその番号は?」

「24478番。管理する国が無い今となっては意味の無い番号だがな。」

 

まだ違和感の残る声で尋ねると、研究者の男は淡々と色々な事を教えてくれた。

 

表情の変化が乏しい研究者の説明によれば、彼のいた国では研究者が()()()()という事は特に珍しい事ではなく、彼もまたそうして造られた一人という事だった。

国がなくなったのも戦争が原因らしく、この時代ではそれなりにある事なのだとか。

そんな彼の説明をひとしきり聞いた後、俺は彼に尋ねた。

 

「ふーん……って事は、俺を造ったのもお前か?」

「最終的にはそうだ。元は国のプロジェクトだったんだが、研究が完成する前に敵国の侵入を許して国はなくなった。

 俺は騒動の中お前の素体をこっそりと持ち出し、ここに逃げ延びて研究を続けていたんだ。」

 

成程な、と事の顛末を聞き納得する。

次元世界で初のユニゾンデバイスである俺を生み出したにしてはやけに研究員が少ない……と言うか、コイツ以外見かけないなとは感じていたんだが、そう言う理由だったのか。

 

「じゃあアンタには感謝しないとな、恩人だ。」

「別にいい、俺の役目がお前の研究を完成させる事だっただけだ。俺は俺の役目に従っただけに過ぎん。」

 

研究員が造られる……か。雰囲気から察するに、その時にはもうその生涯の役目が決まっており、それが当たり前なのだろう。淡々と語る男は何をするでもなく、椅子に腰かけてこちらを見ていた。

 

「……何してるんだ? ずっとこっちを見て。」

「特に何も。俺は役目を終えたからな。」

「役目を終えたって……じゃあもう何もしないのか?」

「そうだな。」

 

あくまでも淡々と語る男に、俺は見た目は人間そのものだけど違うんだなと感じた。

哀れに思わないでもなかったが、価値観と言う物は人それぞれだ。『役目』と言う奴が『生きる目的』や『希望』としてこの男の中にあるのであれば、無理に生かすのも幸せにはつながるまい。

 

……だが、だからと言ってこのまま何もしないってのは俺としても寝ざめが悪い。

 

「したい事は無いのか?」

「そう言う事を考えるようには造られてないからな。」

「じゃあ朽ちるのを待つだけなのか?」

「そうなるな。」

「役目を持ちたいとは思わないのか?」

「役目を与える国がもう無いからな。」

 

幾つか問答を繰り返す内、こいつの淡々とした様子に少しずつムカついて来るのを感じる。

俺達は突然地球の滅びと言うミスで死んだ。転生の際には喜ぶ気持ちが無い訳でもなかったが、あっちの世界でしか出来なかった事ややりたかった事も確かにあったのだ。

それをコイツは()()()()()()()()()()()()()で朽ちるのを待つと抜かしよる。これに物言わずして何とする者ぞ!

 

「だったら俺が役目を与えてやろう! お前はこれから――」

「要らん。口で言って与えられるものではない。」

 

――こいつ……ッ!

 

「……お前、本当に死ぬ気か。」

「役目が無いからな。」

「与えてやると言ってるんだぞ?」

「口で言って与えられるものではない。」

 

……あーーーっ! もう良いっ、もう知らん!

 

「分かったよ! 勝手に途中でほっぽり出しやがって! 無責任な奴め!!」

 

俺は吐き捨てるようにそう言うと、たった一つだけある扉へと近づき――

 

「待て。」

「ああん!?」

 

背後から呼び止められた。

 

「途中とはなんだ? 無責任だと? 俺がか?」

「ああ、そうだよ! もう国も研究機関も無いんだろ!?

 お前以外の誰が俺のメンテナンスをするんだよ!」

 

……

 

…………あれ? 勢いのままに言ってて気づいたが、これ割とマジに死活問題じゃないか?

これじゃあ永遠の命って言う目的も未達成に終わるのでは……!? 何で転生の時にそこまで気が回らなかったんだ、バカじゃねぇの俺!?

 

「あ、あわわ……そうだよ! お前以外に俺のメンテナンスできないじゃないか!」

「何だそんな事か。」

「『そんな事か』じゃねぇだろ!? 俺このままじゃきっと割とすぐ死ぬぞ!?」

「そうかもな。」

 

そうだコイツはこう言う奴だ!

どうにかしてコイツに面倒見て貰わねば……! そうだ!

 

「な、なぁお前! さっきお前の役目は『俺の研究を完成させること』って言ったよな!?」

「ああ、もうお前が完成した今となってはその目的も……」

「まぁ待てよ。研究って言っても()()()()()()()()()()()()?」

「……ふむ……」

 

良し、注意を引けた!

 

「今の俺の性能は確かめたか? 稼働時間は? そう言った情報を纏めて、調べ尽くして、漸く研究は終わりなんじゃないのか!?」

「……」

 

俺の言葉を聞いて、奴は顎の下に手を当ててしばらく考え込んだ。

……どうだ!? ぶっちゃけ研究とか門外漢だが、それっぽい事は言えたんじゃないか!?

後は専門家であるお前が勝手に解釈して勝手に深読みして何とかしてくれ! 俺は出来る事はもうやった! ……多分!

 

「…………お前の言う事、一理ある。報告する国はもう無いが、それでも性能の把握や向上は研究の課題……つまり、俺の役割だった。」

「~~ッ!! ヨッシャアアァァァ!!

 言ったよな!? 今役割って言ったよな!? 聞いたからな!? これからヨロシク!!」

「あ、ああ……よろしく?」

 

俺のテンションに驚いたのか、身を引いた男の手を強引に取り握手する。この手を放すもんか! 俺の生きる術!!

 

 

 

――そんな出会いから数年が経った。

 

 

 

「――驚いたな、数値がまた上昇している。」

 

研究員の男は計器に表示された数値を手元の紙に書き記しながら、小さく呟く。

 

「うん? それって珍しいのか?」

「普通は考えられない。こう言った物は本来、完成した時の数値で固定される物だからな。

 『成長』なんて言葉は存在しない世界の筈なんだが。」

「ふーん……?」

 

転生者の感覚で言えば、スマホのスペックとか容量とかが勝手に増えてるような感じか? ……想像するとちょっと怖いな。いつの間にか勝手に変なアプリとか入ってそうだ。

 

……俺の中に変なプログラムとか入ってないよな? ファイアウォール的な物はちゃんと入ってるのか?

 

そんな事を今更になって気にする俺を尻目に、男は記入を終えたペンで頭を掻きながら困ったように話す。

 

「数値が確定するまでは研究が終わらん。これでは役目を終えるのは何時になるか……」

「お前! まだそんな事言ってんのか!?」

 

いや、確かにコイツにとってはそれが生きる意味である以上仕方ないのかも知れないが、お前ももうちょっと俺にこう……愛着とか抱いても良いじゃねぇのか!?

 

「ふっ……冗談だ。」

「む……ったく、趣味の悪い冗談を……って、今お前笑ったか?」

「気のせいじゃないか? それより、そろそろ飯の時間だ。」

「ん? あぁ、もう昼か。今日は何食べたい?」

 

壁に掛けられた時計を見れば、確かにそんな時間だ。

今保存されてる食料何があったかな等と考えながら、男に尋ねる。

 

「栄養価の偏りを考えれば――」

「何食うべきかじゃなくて、何食いたいかって聞いてんだよ俺は。」

「……カラアゲ、と言うやつが良い。」

「あいよ、待っとけ。」

 

……あれから、なんやかんやで俺達は一緒に暮らす事になった。

俺はこいつの整備が必要で、こいつは俺の研究が役目とやらだからな。そうなるのも自然な流れだった。

ユニゾンデバイスが知られていないこの時代と場所では俺の容姿はとても目立つと言う事もあって、町から少し離れた森の側にあった家を買って生活する事になった。

 

買い出しはコイツ。料理は俺。洗濯は何か機械があったからボタン一つ、風呂も同様。

 

最近は食う物を『自分の意思で選ばせる』と言う作戦も功を奏したのか、こいつもたまに冗談なんかも言うようになった。気のせいか表情も出てきたかも知れない。

最初は一緒にやって行けるか不安もあったが、割と何とかなりそうだ。

 

 

 

――それからさらに数年が経ち……

 

 

 

「……く! 起き……れ! はや………ない…死…ぞ!」

 

声が聞こえる……聞きなれた男の声だ。

その声には焦燥がふんだんに含まれており、余程切羽詰まった状態なのだろうと思わせる。

 

――眠い。

 

声が「起きてくれ」って言ってた気がするし、俺は寝てるのか?

 

それに、何か『死ぬ』とかって……ッ!?

 

ボンヤリとした意識の中、うっすらと聞こえた物騒な言葉を認識した途端、まるで冷水をかけられたような感覚に目を覚ます。

また質の悪い冗談であればよかったのだが、そうではないのだという事を嫌でも認識させられた。

 

「――おい……なんだよ、それ……」

 

俺の目の前には、俺を庇う様に立ちはだかる白衣の大きな背中。

その体はボロボロで、いたるところから血が滲んでいる。幸か不幸か、致命傷になるところには傷は負っていないようだが……

 

俺が目を覚ました事に気付いていないようなので声をかけると、数年連れ添った相棒が振り返る。

 

「っ! 起きたのか! なら早速ユニ……ッ!」

「!」

 

銃の発砲音に似た破裂音と共に、俺に向けられた声が途切れる。

白衣にまた一つ、大きな赤い模様が増えた。

 

場所は――心臓だ。

 

俺の目覚めが遅かったのか、対応が拙かったのか……どうやら彼は今しがた致命傷を負ってしまったのだと、理解するしかなかった。

 

「がふ……ッ!」

 

ドシャリと男が倒れ、彼を撃った奴の姿が見えた。

銃火器で武装した男の集団だ。

服装に統一感は無いが皆一様に汚れており、下卑た表情からまともな部類ではないだろう事は分かった。

 

「へ……へへっ……!

 そいつが、お前が飼ってるって言う『妖精』かァ!?」

「まさかホントにいるとは思わなかったぜ、なァ! おい!」

「そう言う趣味の奴や見世物小屋に売り飛ばせば一生遊んで暮らせそうじゃねぇか! ヒヒヒ!」

 

予想通りの……いや、予想以上に下衆な言葉の羅列に体が竦む。

俺の今の容姿やこいつらの表情と言葉から考えて、この場を切り抜けられなければ死ぬよりも嫌な目に会う事は明白だった。

 

「……ッハァッ、ハァッ! ゴホッ! お、俺と……」

 

足元から聞こえた声に、今しがた倒れた相棒を見下ろす。

床に広がった血の量から考えて、もうきっとコイツの命も長くない。

胸の奥から奇妙な感情が湧き上がり、視界が滲む。

 

こんな時はいつか来ると思っていたが、それはもっと後だと思っていたのに……もっと後になる筈だったのに……!!

 

「おいおい、ちゃんと狙って撃てよ! コイツまだ息があるじゃねーか!」

「別に構う必要はねぇだろ、もう何も出来ねーよ!」

 

下衆共の耳障りな声を無視し、何かを伝えようと口を開く相棒の声に耳を傾ける。

最期の力を振り絞ったのだろう。相棒が叫んだ。

 

「俺とっ……融合(ユニゾン)しろ……ッオォォ!!」

 

その叫び声で、未だボンヤリとしていた頭が冴え渡る。

そして自分が何を願ってここに居るのかを……自分が()()()()()を思い出した。

 

「“ユニゾン・イン”!」

 

台の上に造られた()()()()()()から飛び降り、相棒に手を伸ばして叫ぶ。

途端、俺の体が輝きだし、相棒に吸い込まれると、光の糸が彼と俺を包みこんでいく。

 

「な、なんだ!?」

「おい、さっさと撃て! 奴に止めを刺せ!!」

「わ、分かってらぁ!」

 

動揺する声が聞こえるなか、光の繭は完成し、俺と相棒はいつの間にか向かい合っていた。

 

 

 

「――目を覚ましたばかりだって言うのに、ゴメンな。」

 

相棒は心底申し訳無さそうな声と表情で俺に言った。

 

「どうやらいつの間にかお前の姿を盗賊連中に見られてたみたいだ……」

 

もう傷も痛まないのか、ここが一種の精神世界だからか、彼は妙に落ち着いた様子で俺に状況を教えてくれた。

 

「間一髪融合は成功したようだけど……まぁ、多分俺は助からないだろう。

 俺の体と魔法を使って、お前だけでも逃げ延びてくれ。

 ……本当にゴメンな。こんな事になって……」

 

そんな自分を責めるような相棒の言葉に、どうしようもない感情が湧き上がって来て、気付けば俺は涙を流していた。

 

「そんな……ッ! お前は悪くないだろ!

 悪いのは人を平気で殺すアイツ等の方だし……大体、あの時俺が直ぐに状況を把握してユニゾンしていれば……!」

 

ヒントはいくらでもあったんだ。血塗れの白衣、俺を庇う様に立っていた事……!

それに俺の特典(能力)……そうだ、アレさえ使っていれば間違えなかったのに! ()()()()()()()()()だったのに!

 

――俺は、穏やかな日々の中で()()を使う事を忘れてしまっていた……

 

そんな俺の後悔を無視して相棒は再び言葉を発した。

 

「過ぎた事だ、もう変えられない。

 それに俺は元々ずっと前に死ぬはずだった。それをお前の言葉で助けられて、それからの日々は……――っ!

 ……あぁ、全く俺って奴はどうしてこう……今更になってこんな事……!

 もう研究が終わらなくても良いと……! ずっと続けば良いとさえ、思っていたのに……!」

「――っ!! おい、お前を助ける方法は無いのか!?

 何でもする! 回復魔法が使えればお前の体だって……!」

「無理だ……っ!

 お前は確かに魔法の術式や性質を記憶する事は出来るが、それにはその術式を使える者と融合する必要がある!

 ……そして俺は基本的な射撃魔法しか使えない。あの男達も、望み薄だろう……」

「ち、近くに! ここの近くに街とか魔導士の集まる場所があれば……!」

「それも無理だ。近くの街まで俺の身体は持たない……

 最初から二人で街に住んでいれば、変わったのかもな……」

 

諦めたような相棒の表情が、いつかの椅子に座り込んだコイツの表情と重なる。

 

「ま、まだあるだろ! 他に何か方法が……」

 

あの時と同じように、もう一度何か閃かないかと思考を巡らせるが……

 

「……無い。今度こそ本当にな。だからお前はもう自分が生き残る事だけ考えて動け。

 お前は俺の娘……いや、口調からして息子だったのか? まぁ、どっちでも良いか。

 俺の子供みたいなもんだ。生きてくれればそれでいい……っと、これで良いか。」

「な、なにを……?」

「『自己調整プログラム』を今、お前に組み込んだ。

 これでお前自身が自分のメンテナンスを出来るはずだ。

 ……本当は明日、サプライズでプレゼントする予定だったんだけどな。」

「明日……俺の、製造日……」

「"誕生日"だ。最近街できいた話だと、子供が生まれた日に親はそれを祝してプレゼントするんだと。」

 

コイツがそんな事を考えてくれていたなんて、俺の誕生日を覚えてくれていたなんて……考えた事もなかった。

身体の内側に感じる、今までになかった機能の感覚に胸が熱くなる。

 

「……精神世界って奴はずいぶん時間がゆっくり流れるんだな。初めて知ったよ。

 おかげでお前と結構長く話せたが、そろそろ体の方が限界らしい。

 お前も俺の事は諦めて……いや、待てよ?」

「! なんだ!? 助かる方法があるのか!?」

「いや、今更だが父親が子供の事を『お前』としか呼んでないってのもアレだなって思ってな……

 どんな名前が良い?」

「はぁ!? 今そんな場合か!?

 ……それに、そう言うのは親が決めるもんだろ。なんか意味とか願いを込めてさ……」

「……それもそうか。

 だが困ったな……こう言う機会が無かったから、中々思いつかん。

 ……流石に名前が管理番号って言うのは嫌だろう?」

「お、お前……」

「……そうだな、『プロト』ってのはどうだ? 一応番号じゃないちゃんとした名前っぽいだろ?

 女の子っぽいか男の子っぽいかは分からないが……」

 

それはきっと俺の存在……『プロトタイプ(試作機)』からとった名前。

おおよそ『名前』と言う物に関わる事の無かった、俺の()が初めて考えてくれた『名前』。

 

「……分かった。俺の名前は『プロト』だ。

 プレゼント、ありがとな……()()()。」

 

俺がそう言うと、この世界の俺の父は驚いたように目を見開いて……少しだけ笑ったように見えた。

……直ぐに消えちまって分からなくなっちまったけど、多分笑ってくれたんだと思う。

 

 

 

――繭が解かれる。

 

光の糸の残滓が舞うその隙間から下衆共の姿が見えた瞬間、俺は感情のままに魔法を放っていた。

 

「穿て、“マジックアロー”。」

「が……っ、ぁ?」

 

放たれた光が、銃を持った男の胸に突き刺さり……鮮血が舞う。

非殺傷設定なんて付ける気にはならなかった。

 

「お、親分!?」

「こ……こいつ、髪の色が……!?」

「そんな事はどうでも良い! 殺せ!! コイツを殺せェッ!!」

 

こいつらにしてみれば、今の状況は……殺したはずの男が起き上がったかと思えば自分達のボスがそいつに殺された……って所か。

動揺しつつも重火器をこちらに向け、まさに今にも一斉に撃とうと言うその瞬間……俺は先程使いそびれた能力を使った。

 

「ば……バカな! おい、ちゃんと狙え!!」

「俺は狙ってる!! お前がミスってんじゃねぇのか!!?」

 

奴等の撃った弾は俺に当たる事は無い。

未来視の能力は一瞬で発動し、数秒先の結末まで完全に映し出している。

何処を通るか予め知っていれば、人一人分の隙間を縫って近づくのは難しい事じゃなかった……もっとも、神様に言わせれば欠陥のある能力らしいが、こいつ等に対しては正しくその能力を発揮できたらしい。良かった。

 

「――死ね。」

「ヒ……ィッ!?」

 

俺は弾を打ち尽くした銃の引き金を、未だに引き続ける諦めの悪い盗賊の頭を掴むと……マジックアローの術式を発動する。

 

「ァ……!」

 

盗賊はただそれだけで物言わぬ肉塊に変わった。

心の中には『父の受けた苦痛をこいつ等にも味わわせてやりたい』と言う思いもあったが、この場にはまだ逃がしちゃいけない奴らが多すぎる。

直ぐに俺は次の標的を目に留めると駆け出した。

 

もう奴らの銃に弾は残っていない。未来視でもそれは見通している……! もう奴らに抵抗の手段はない! 何も無いッ!!

 

その時の俺は『復讐は何も生まない』なんて綺麗事も、『自分の手を汚したくない』なんて日和見な考えも全部頭の中から吹っ飛んでいて……

 

――これが復讐する人間の気持ちなんだって気付いたのは、逃げる盗賊の背にマジックアローを突き立てて命を奪ったその時だった。

 

「あ、あぁ……ば、化け物!! 何で死んだ奴が襲って来るんだよ!!?」

「……まだ、生き残りが居たのか。」

 

冷静になった頭で考える。

この生き残りをそのままにするべきか――否だ。

では憲兵にでも突き出して罪を償わせるか――否だ。

 

冷静になってももう俺が考えられるのは、復讐しか無……!?

 

「――ゴホッ!? これ、は……」

「! ……ひ……ヒヒッ! そうだ、そうだよなぁ! 心臓が割れてんだ! 普通死んでるよなァ!?」

 

咳と共に手に広がる血。

ユニゾンした事で強引に動かしていた体も、どうやらもう限界らしい。

 

――だったら、仕方ない……な。

 

もう魔法も撃てない。だが、誰一人逃がす気は無い。逃がせない。

力の入らなくなった脚を強引に動かし、『ズリッ……』と一歩、踏み出す。

 

「な、なんだよ……寄るな! さっさと……! さっさと死ね!! 死ねよ!!」

 

男は壁を背にナイフを構えながら、足をガクガクと震わせて喚く。

 

――虫唾が走るほど嫌だけど、吐きたくなるほど嫌だけど。

 

『――自分が生き残る事だけ考えて動け』

 

そう言われたんだ。最期に。この世界でたった一人の"家族"に……!

 

「く、くそ……! だったらもう一発……!」

 

震えながらナイフを構える男の、恐怖に引き攣った顔が見える。

恐らくこいつはもう一生分の恐怖を味わったのだろう。

そして、こいつはこれから()()()()()()()()だろう。

 

その間どんな状態かは分からないし、その後どうするかも決まっていないが……

 

「――()()()()()()()()()……!」

「ヒィ……ッ!?」

 

しばらくはお前の身体で我慢してやる。

 

「ユニゾン・イン」

 




昔はごく普通の銀髪オッドアイ

以下本文中で詳しく書くのが難しそうだったプロトの能力です。

●"聖女"="襲撃者"="プロト"の願い(あるいは転生時に付与された能力)
『次元世界初のユニゾンデバイスとして生を受ける』
『転生者以外を相手にした場合のユニゾンの決定権、ユニゾン後の身体の主導権を自らの意思で選択出来る』
『未来視の能力』

1つ目の願いは『古代から現代までの"リリカルなのは"の世界を体験し尽くす為』、その為に必要な『永遠の命』を同時に満たす為の願い。
2つ目の能力は"ユニゾンデバイス"として生まれる関係で勝手について来たもの。転生者が自分の意思で生きられるようにと、デフォルトで付いてた機能。『転生者以外を』と言った条件は、当然他の転生者の行動を縛らせないためのもの。付与される前に直接伝えてある為、プロトも把握済み。
相手が転生者の場合は、通常のユニゾンデバイスのように双方の合意が必要。
3つ目の能力である『未来視』は願いで使ったリソースの余りで何か能力を貰えないかと相談した結果、提示された選択肢の中から護身用に使えそうなものを選んだ結果。
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