転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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プロトの過去編に関してですが、本来はもうちょっと先の話で書く予定だった物をついでに書く事にしました。
度々過去編が挟まるよりもこの方が良いかなって……なので、もう少しだけ続きます。すみません。


老人との出会い

この世界でただ一人『父』と呼べる男を盗賊に殺され、その仇の一人の身体を奪ってから早数年――俺は盗賊を狩りながら、行く当てもなく彷徨う旅に出ていた。

 

「これで、5人目か……前の身体と比べて動きにくいが、魔力はまぁまぁあるし、とんとんってとこだな。」

 

奴等が(ねぐら)としていた洞窟から外に出て、森の中を歩きながら呟く。

身体が死ぬたびに乗り換えて5人目……旅の目的である『リンカーコアの蒐集』と『魔法の蒐集』は順調と言えた。

 

――本当はもっとリンカーコアを集めたいが、案外居ないもんだな。

 

数年間で5人と言う数字だけ見れば少なく見えるが、そもそもリンカーコアを持った盗賊と言う物自体がレアなのだ。

それと言うのも――

 

「! ……またか。最近多いな……」

 

耳に聞こえたのは爆発音。……戦争の音だ。

確か、以前見た地図だとこの近くには国の前線拠点である砦があった筈だ。大方音の発信源はそこだろう。

 

――最近は盗賊だろうと魔法が使える奴らは戦力として登用してるようだし、潮時かね……

 

そう考え、周囲の地図を思い浮かべる。当然、戦火を逃れ、別の国へと逃げる為だ。

俺の見た未来視ではこの国はもう一月も持たずに敗けるのだし、急ぐに越した事は無い。

 

……戦争に参加したりはしない。今いる国自体、父と暮らした国でもないし、そうだったとしても身を張ってまで守る義理も無い。知り合いもいないしな。

 

そう自分に言い聞かせて、俺は早速国境を越えるルートを割り出して動き出す。

途中で見つけた盗賊のアジトで食料を調達しながら。

 

 

 

……俺がこんな旅を続けている理由、それは俺の未来視が原因だ。

 

あの日、父を弔った後の事。

俺は自分の未来視の能力の限界を確かめようと考え、俺は自分の知っている光景……『リリカルなのは』開始時の地球を見てみようと思い立った。

とは言え予め神様に聞いていた事なので、本当にただの再確認。折角だからとスターライトブレイカーを一目確認して、確認終了……その筈だった。

 

……結論から言えば、それは出来なかった。

 

地球の光景は見えた。現代日本の街並みも見る事が出来た。

だが、それが出来たのは原作開始の数十年前までだ。

 

ある一定の時期から、俺の未来視の映像はノイズの海に飲み込まれるようにして見えなくなった。

未来視の『射程』かとも考えたが、直ぐにそうではないと結論付けた。何一つ情報が入って来ない状況ではあるが、不思議な事に『未来視は正確に発動している』と言う感覚があったからだ。

 

ならば原因がある筈だ、何か原因が分かる光景が映らないかと、そのまま『無印』『A's』『StS』と未来を見て行くが、目に映るのはノイズばかり。

……だが、やがてノイズは急激に減っていき、その光景が一瞬だけ目に飛び込んできた。

 

――場所はミッドチルダ。時期はStS。

 

だがその光景は到底俺の知る物ではなかった。

 

空は見開かれた目のように裂け、そこに浮かぶのは一人の少女と多数の銀髪オッドアイの集団。

その中心となっているであろう少女の顔はノイズに隠れて分からないが、その口は嗤い声が聞こえそうな程に大きく開かれていた。

彼女が見下ろす先には瓦礫の街並みが広がり、そこが元々クラナガンだったのだと示す様に途中でへし折れた時空管理局地上本部が虚しく佇んでいる。

そして周囲に散らばるのは多くの死体……一瞬だったが見えたその顔は、俺が『リリカルなのは』のアニメで見た彼女達と同じだった。

 

即ち、『フェイト・T・ハラオウン』『八神はやて』『リインフォースⅡ』『シグナム』『ヴィータ』『シャマル』『ザフィーラ』『スバル・ナカジマ』『ティアナ・ランスター』『エリオ・モンディアル』『キャロ・ル・ルシエ』『フリードリヒ』『ヴォルテール』『ギンガ・ナカジマ』……ノイズに隠されて見えない者も多いが、他にも多くの局員が倒れている。

 

正に管理局の総力戦の果て……そしてその中でただ一人立っていた女性――『高町なのは』が力尽きて倒れた瞬間、未来視の光景は再びノイズの海に呑まれ……二度と映像は見えなくなった。

 

その時に俺の目的は決まった。

『あの未来を覆す』、その為に『力を付ける』。そして、『ミッドチルダへ向かう』……あと、可能であれば『未来視のノイズの原因を探す』。

シンプルな目的だが、あの光景を見てそれ以外の行動指針は浮かばなかった。

 

まぁ、ミッドチルダに関しては今は出来る事が無い。

どこにあるのかも分からないし、そもそも今その名で存在しているかも分からない。未来視の映像の対象は『イメージした時間と場所』を見るものであって、それが正確に何処かを把握出来たりはしないのだ。

まぁ、これは時空管理局が誕生すれば『質量兵器撤廃』に関する何らかの影響があるだろうし、それを確認してから目指しても遅くない。

 

『ノイズの原因』にしてもそうだ。

あの後数十年ほど先の未来も見る事が出来る事は確認済みだが、ノイズは出なかった。原因を探るにしても、ノイズを確認したのがあの一件だけでは情報が足りない。

旅の中で未来視を頻繁に使い、同じようなノイズを確認できる時間と場所を地道に探すしかないだろう。

 

そこで今は『リンカーコアと魔法の蒐集』の為に旅の途中で盗賊を狩り、あの光景の時代まで死なない為に戦争などのリスクを回避する事に専念している訳だ。

とは言え、いつかはそう言うリスクのある戦いに介入する事も考えてはいる。まともな戦いを経験していない盗賊のリンカーコアでは、正直いくら蒐集したところで強くなった実感が湧かないからだ。

 

実際5つのリンカーコアがあったとしても、記憶の中にある高町なのはの『ディバインバスター』さえ超えられる自信が無い。

いつか危険を冒してでも『戦い慣れた強者のリンカーコア』を手に入れる必要があるのだ。

 

 

 

「……まぁ、今はまだその時じゃない。しばらくは今の方針を貫いて……ん?」

 

数週間かけて移動し続け、国境となっている山を下っている時……俺は妙な爺さんと出会った。

 

「ん? ……なんだ野盗か、悪い事は言わん。今直ぐ立ち去るのであれば見逃してやろう。」

 

座禅を組み、精神統一をしていたのだろう。その爺さんはこちらを一瞥してそう言うと、再び瞑想の続きを始めた。

 

――すげぇ、こんなに無防備に見えるのに……今の俺の身体より体も細くて頼りないのに……

 

『勝てない』……そう確信した。

 

 

 

「……で、いつになったら立ち去るんだ、お前は?」

「まぁまぁ、固い事言うなよ。ちょっと聞きたい事があってさ……」

「道を知りたいと言うのなら出来ん相談だぞ? 俺も帰り道なんか覚えてねぇからな。」

 

そう言って「はっはっは!」と笑う老人に、俺は早速本題を突きつける。

 

「やっぱり、修行する内に死ぬ気だったからか?」

「……ふん、まぁ隠すような事でもねぇか。

 弟子も十分に育ったし、俺の武術の継承はアイツ等に任せて、俺は()()が来るまで悠々自適に修行の日々よ。

 生きている内に武を磨き、極致へ近付かん……ってな。

 とは言っても、その時はもう近いようだがな。」

「あぁ、後8日だ。8日後の丁度今頃、爺さんは寿命で死ぬ。」

「ほぉ……? 根拠はあるのか?」

「俺は未来が見えるんだ、それで爺さんの未来を見た。」

 

俺が爺さんの問いに答えた直後、爺さんの口が開いた瞬間に俺も言葉を重ねる。

 

「「はっはっは! 金も持ってない老人を詐欺にかけようなど」……む?」

 

キョトンとする爺さんに、信じたか? と目で尋ねると、何かしら考え込んで目を開く……瞬間、俺はその場を飛びのいた。

 

「ほぉ……あながち全てが嘘と言う訳じゃねぇって事か?」

「まぁな、話を聞いてくれる気になったようで嬉しいぜ。」

 

そう言って爺さんは先程まで俺の座っていた石に突き刺さった拳を引き抜くと、先程までいた場所に戻り、再び座るように促す。

……念の為に未来視でこの後の事を確かめ、俺も亀裂の入った石に座り直した。

 

「……で? 後8日で死ぬ俺に聞きたい事ってぇのはなんだ?」

「単刀直入に言うぞ。アンタのリンカーコア、俺にくれないか?」

「くれと言われてやれるもんでもねぇだろうが……まぁ、手段はあるんだろうな。そう持ち掛けるという事は。」

 

俺の目的はそれだ。これほどまでに鍛え上げられた魔力、そして武術……それを詰め込んだリンカーコアを手に入れられれば、俺の目的は一気に近くなる。

 

「だが、俺にとっても残された8日は貴重な時間よ。その8日で或いは武の極致へ至れるかも知れねぇ。お前はその『8日』に、何を対価に交渉する?」

 

既に未来視で見た問いだ。当然答えも決めてある。

 

「『未来』……の、可能性だ。」

「あん? 未来の可能性だぁ?」

「あぁ、俺は訳あって寿命が無い。だから爺さんのリンカーコアを生きたまま未来へ連れて行ける。

 そして、未来にはリンカーコアがあれば再び生き返る事を可能にする『可能性を持つ男』がいる。

 そいつと交渉して、未来にアンタを蘇らせる……ってのが、俺の出せる対価だ。

 絶対に出来るとは保証できないし、出来たとしても何時になるかは分からんが、また武の極致って奴を『若い体で』目指せるかもしれないぜ?」

「ふぅん……?」

 

そして、再び考えこもうとする爺さん。まぁ、突然こんな話を聞かされて『成程ぉ!』と納得する方がおかしい。

そこで、俺はダメ押しにもう一つ条件を補足する。

 

「因みに、リンカーコアは爺さんが寿命を迎えるその瞬間に貰う事になるが……」

「なんだよ、それを早く言えってぇの。悩む時間の方が勿体無ぇじゃねぇか。」

 

即決だ。未来視で分かってはいたが……

 

「じゃあ、8日後の朝にまたここに来るぜ。」

「おう、まぁ期待せずに待っててやるよ。」

 

 

 

そして8日後、俺は再び爺さんの前に現れた。ただし、今度は――

 

「よぉ、約束の日だな、爺さん。」

「……ほぉ、コイツは何とも……寿命が無ぇってのも嘘ではなさそうだな……」

「ははっ、まだ信じてなかったのかよ。知ってたけど。」

 

今、俺は本体であるユニゾンデバイスの状態でここに来ていた。

既に昨日までの身体にしていた盗賊の命は断ち、リンカーコアも回収済みだ。

……自刃と言うのはもう幾度となく繰り返しているが、何度やっても慣れねぇもんだな。あれは。

 

まぁ、それはともかく……

 

「それにしても、既に見ていたとは言え随分と老いたな……」

「ああ、3日程前から体力の衰えが著しくなってな。魔力で騙し騙しやってたのも限界という事だ……」

 

成程な、魔力と言うのは極めればそう言う事も出来るのか。

 

「じゃあ、取りあえず準備を始めるぞ?」

「ああ、俺はどうすれば良い?」

「爺さんは何もしなくていい。俺が爺さんの中に入るだけだ。

 その後はいつも通り修行していてくれれば良い。」

「ほう……?」

 

そう説明しつつ未だ半信半疑と言った様子の爺さんの胸に手を添えると、俺は仕上げのコマンドワードを呟いた。

 

「ユニゾン・イン」

「むっ!?」

 

俺と爺さんの身体を光の繭が包み込み、一瞬の後に光の糸が解かれる。

そこには先程までよりも覇気に満ちた爺さんが立っていた。

 

「ほおぉ……! これは、力が湧き上がってくる! 枯れ木に新芽が出たような、奇妙な感覚だ!」

≪自分で自分の事を枯れ木って言うのか……≫

「ん? お前何処に……いや、俺の中にいるんだったか?」

≪あぁ、このまま修行に打ち込んでくれ。寿命が来たら、勝手に回収するよ。≫

「有り難ぇ、もしかしたらこの最期の修行で本当に武の極致へ至れるかもな!」

 

その後、爺さんは俺が不安になるくらい過酷な修行を始めた。最期の追い込みだからだろう、俺の見ていた頃よりも遥かに激しいその動きは、消える直前に一際眩く輝く蠟燭の火を思わせた。

 

 

 

そして――

 

 

 

≪よぉ、そろそろだぜ、爺さん。≫

「はぁ……ふぅ……そう、か……」

≪武の極致って奴には至れたか?≫

「さぁ、な……結局……至れたのか、満たぬのかも分からず仕舞いよ……」

≪心残りは無いか?≫

「……そうだなぁ……良き好敵手との出会いが無かった事、くらいか……

 もし……本当に、再び生き返る事があれば……今度、こそ……出会いたい……ものよ……

 ふ、ふふ……ふ…………」

 

 

 

爺さんの寿命が尽きた事でリンカーコアが俺の内側に回収された事を確認し、ユニゾンを解除すると、老人の身体はその場に倒れこむ。

柔らかい土に受け止められたその表情は、目標を達成できたのか分からないにもかかわらず、どこか満足そうに見えた。

 

「……いつの日かその機会は巡って来るさ。俺も約束はちゃんと果たすつもりだからな。」

 

ユニゾンを解除してもなお、力に満ち溢れた身体を確かめつつ、未来へ思いを馳せる。

 

――俺の目標は、『達成出来るか分からない』では済まされない。チャンスは一度、その二度と来ない瞬間までに、何としても万全の状態を整えなくては……!

 

ともあれ、この老人のおかげで俺はようやく前進できたと言える。それも俺の目標へ向けて、飛躍的なショートカットが出来た。

 

これならばこれから回収するリンカーコアの厳選も出来る。今までとは違い、弱いリンカーコアはもう要らない。

なるべく高い魔力を、多くの魔法を、深い知識を持った者からリンカーコアを集めよう。

 

「この老人のように、寿命が近い者に交渉するのも悪くないな。それだけ多くの経験をしてきた証だし、実力も期待できる。

 それに何より、罪悪感が無い。」

 

元々盗賊を殺す事に関する罪悪感なんて、最初のあの時に既に捨てたつもりだったのだが、それでも今の俺の気持ちはこれまでよりも幾分か清々しい。

もしかしたら実感していなかっただけで、知らず知らずの間に心の内には少しずつ溜まっていたのかも知れないな。なけなしの罪悪感って奴が。

 

「……まぁそんな事はどうでも良いか。

 とにかくもう盗賊を狙う価値がない以上、当てもなく彷徨うのも終わりだ。」

 

寿命が近い者、才能を持つ者……本来俺が求める人材は、こんな山奥には居ない。あの老人は数少ない例外と言う奴だ。

 

「目指すは『街』……それも、力のある国の『都』が良い。

 魔力に長けた者も、知恵に長けた者も、そう言った国でこそ頭角を現すものだからな。」

 

そして、俺が今いる森もそんな『力のある国』の領土の一部だ。

既に国境は越え、目指す王都もまた近い。

 

「……先当たっては、身体が必要だな。ユニゾンデバイスの状態では悪目立ちする事間違いなしだ。」

 

老人の身体も死んでしまった以上、そう長くは使えない。強引に入っても、持って数分って所だ。

となると……

 

「――狩るか、盗賊。」

 

まぁ、色々便利である事は変わりないな。死んでも悔やまれない人間の存在は。




盗賊狩りだけはやめられないプロト。

●ユニゾンデバイス『プロト』の設定

戦争に敗けた国の技術で作られた、次元世界最初のユニゾンデバイス。
その目的は敵のリンカーコアを奪い、兵として使役する為の物。
ただしあくまで『試作機』であり、その機能もまた試作段階。

・機能
 『強制ユニゾン機能』
 ユニゾン対象の許可を必要としない融合機能。
 後の時代で生み出されるユニゾンデバイスは事故を防ぐ為に双方合意の下で融合するが、試作機である『プロト』にはその制限がない。

 『リンカーコア蒐集機能』
 融合した対象のリンカーコアを自らの内に取り込み、回収する機能。
 試作段階である為に対象との融合が必要であるが、最終的には『夜天の魔導書』のように外部から直接蒐集可能とする予定だった。
 また、蒐集機能に欠陥があり、融合中に対象が死亡しなければ回収が出来ない。

 『リンカーコア解放・付与』
 リンカーコア蒐集の副産物的な機能。
 蒐集したリンカーコアを解放したり、パスを繋ぐ事でより深い支配を可能とする。

リンカーコア関係の能力は"プロト"の開発時に組み込まれた能力であり、神様は関知していない部分。
"プロト"はその名の通り『試作機』だったが、本来搭載する筈だった機能である『リンカーコア蒐集』の機能も一部実装されていた。
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