転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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すみません、過去編また伸びます……
大事な部分を書いてなかった事を思い出したので……


見つけた糸口

――あれから百と数十年。俺は"ベルカ"の大地を踏みしめていた。

 

今から数年前、俺のいた次元世界はベルカからの侵略を受け、次元世界間の戦争状態になった。

 

その戦争でベルカの騎士の一人とユニゾンし、その記憶から次元世界間を越えられる射程の転送魔法とベルカの座標を読み取った俺は、こっそりベルカへと渡航したのだ。

今はベルカの諸国同士の戦火を避けながらの旅の途中の最中だ。

 

古い記憶なので朧気だが、確か古代ベルカにはベルカ内で戦争しながら周辺の次元世界を侵略すると言う、とんでもなくはた迷惑な大戦国時代があった筈だ。

そして今俺が居る時代がそうなのだとすると、いずれこの次元世界は何らかの理由で色々ヤバくなる可能性が高い。

 

……いや、もうホント記憶が曖昧で厳密にどうなるかは覚えていないのだが、確かそんな感じでベルカが消えたみたいな話があった気がする。と言うか、そもそも詳しい情報って出てたっけ……?

 

まぁ良いや、これに関しては未来視でいずれ確認するとしよう。

とにかく、そんな危険がある次元世界を、それでも旅するのには当然理由があるのだ。

 

まず、この世界は優秀なリンカーコアを持つ者が多い。

俺が今までいた次元世界では中々見かけないレベルの魔導士……いや、騎士がこの世界では全く珍しくないのだ。寧ろ、あの世界の盗賊レベルなんて逆の意味で珍しいと言って良い。

 

次に、個人的な都合ではあるのだが……この時代には見ておきたい場面が多いのだ。

元々俺が無限の寿命を得て古代に転生するように仕向けた理由の一つは、古代ベルカで活躍した"王"達の戦い等をこの眼で見る事だった。

特にオリヴィエとかイングヴァルトとか……まぁ、時系列的にはもっと後の話になるだろうし、今は置いておこう。

 

そして最後に、今の俺にとって最も重要な目的がある。

このベルカに入った後、そう時間も経たない内に俺は未来視を使った。

世界の消滅に巻き込まれない為に、これまで以上に未来視が欠かせない旅になりそうだと考えたからだ。

そこで俺は、ついに()()を見つけたのだ。

 

以前の世界ではついに確認できなかったその現象は今から一年後、俺が今立っている平原で起こる。

 

「……やっと、この現象の原因に近付ける訳だ。」

 

貴重な機会である為、改めて未来視を使い一年後のこの場所を見ようとすると、そこに映るのはやはりノイズの塊だった。

ここから少し離れた場所からこの場所を見ると、この周辺を覆う様にしてノイズが霧のように立ち込める事から、一年後のノイズの原因はこの場所に現れると考えて良いだろう。

 

――40個近いリンカーコア、培った戦闘の経験、数多の魔法、そして未来視……

 

俺が"あの光景"を覆す為に使える力……この時点で対策としては十分な気もするが、たった一つだけ()()()()()()()()()()がある。

 

それが遥か未来を見るたびに視界を埋め尽くす『ノイズ』だ。

特定の時代を見る事が出来ない原因は未だに分からない。もしもこのノイズが発生している時代に突入したとして、その時俺の未来視がどのように働くのか……それが分からない以上、未来視をあの光景への対策として組み込む事は出来ないのだ。

 

だから一年後、この場所でそれを確かめる。幸い近くの川沿いには小さいながらも町があるようだし、そこでしばらく過ごすとしよう。

 

ここに何が来るのか、その時ノイズの中で未来視はどうなるのか、ノイズを予め消す事が出来ないか……必ず突き止めなければならない。

未来視は非常に強力な能力であり、これを使えるかどうかで俺の戦闘能力は大きく変動する以上、何としても使えるようにしておきたいと言うのが実情なのだ。

 

 

 

――そして一年後、俺は宿の二階に取った部屋から町を見下ろしていた。

 

「……すっかり様変わりしちまったなぁ、この町も。」

 

数ヶ月前まで川へ釣りに出かける子供達が駆け回っていた通りには、代わりに全身を騎士甲冑で固めた騎士達が犇めいている。

明るい喧噪が心地良かった町には、代わりに騎士達の上官であろう者が放つ指示が飛び交い、部外者である俺にとっては何とも居心地の悪いBGMとなっていた。

 

――まさかこの町が戦争に巻き込まれるとはねぇ……

 

周辺の地理……と言うか、国境の位置だけでもちゃんと確認するべきだったか。

飛び交う指示の内容を盗み聞きして分かった事だが、どうやら少し前に国境が突破されてこの町に敵の軍が迫っているらしい。

そしてその方角には、丁度"あの平原"がある。

 

「あのノイズの原因はこれから始まる戦争……って事か? いや、でも戦争なんて何度も経験してきたけど、未来視は正確に機能してたよな……?」

 

戦争と言う状況は、優秀なリンカーコアを集めるのにうってつけだ。だから時々流れの傭兵として参加させてもらい、リンカーコアと身体を新調したりしていたのだ。

……まぁ、今はそれは良いか。

 

とにかく、戦争が起こるからノイズが生まれると言う訳ではないのは確実だ。

だったらその戦争には、これまで経験したものとは違う()()があるという事になる。

元々そのつもりではあったが、やはり戦場をこの眼で見なければなるまい。

 

「そうと決まれば、いつも通り傭兵として自分を売り込みに……いや、今回はやめておくか?

 未来視が機能するか怪しい以上、もうちょっと様子を見たいしな。

 ……そうだ、"アレ"があったな。」

 

これからの方針を決めた俺は、外をうろつく騎士達に気付かれないようにある魔法を使用した。

 

 

 

 

 

 

――さて、これで戦場の光景は手に取るようにわかるな。

 

眼前の"窓"越しに広がる平原は、一見して平和そのものに見える。

だが遠くの空を見れば、"それ"は嫌でも目に入った。

 

「パッと見た感じじゃ黒い雲にも見えるな……アレが全員騎士か。」

 

まだ距離は遠いが、確認できる戦力差は圧倒的だ。

町一杯に溢れる騎士が全員出張っても、その総数は敵軍の10分の1にも満たないだろう。

だが、それを見越して彼等は準備をしてきたのだ。

 

『――転送装置、起動! ()()に通達!』

『はっ!』

 

魔法のある世界では、戦いが始まるまで戦力差は分からない。

国境を越えて転送の術式を飛ばそうとしても阻害される為、侵略される側は相手の戦力を凡そ把握できるが、自国内では転送術式は使い放題だ。

攻めるに難しく、守るに易いこの戦争の在り方がベルカの長い戦争時代を作ったと言っても良いのかも知れない。

 

「未来視は……今のところ正常だな。」

 

そろそろ時間の筈だが、俺の未来視に映る光景に異常は見られない。あの時ノイズに包まれていた空も、その雲の動きまで正確に予知出来ていた。

 

――ノイズの時間に入っても、全く使えないと言う訳ではないのか……? しばらくは様子を見るか。

 

そうこうしている内に布陣を整えた騎士達は、侵攻してくる敵国軍に向けて何やら言葉を発している。

大方『名乗り』を上げているのだろう。

この世界では戦争の前に互いの将が名乗りを上げるのが通例だ。騎士道精神と言うやつなのだろうか、如何なる時も正々堂々。時には最初から一騎打ちする事もあるらしい。

まぁ、その場合一騎打ちに敗れた側が自らの将を助けようと攻め込むから、結局全軍衝突する訳なんだが。

 

そして騎士達の将が名乗りを終えれば、次は相手だ。

空を埋め尽くさんばかりの騎士達が一斉に動くと、黒い雲は二つに割れてその中から相手の将が姿を現す。

いやぁ、何とも壮観な光景だな……って、アイツは!?

 

その敵軍の将の顔を見た瞬間、俺は未来視を塗りつぶすノイズの原因を何となく理解した。

 

『――我が名は"シグナム"! "ヴォルケンリッター"が一人、"烈火の将"、シグナムだ!

 貴殿等が今の内に投降すれば、民達に一切の危害を加えないと約束しよう!』

 

ヴォルケンリッター、烈火の将、シグナム……懐かしい響きだ。

騎士甲冑は記憶の物と随分違うが、彼女の声と口上に古い記憶が刺激され、遠い思い出が蘇る。

それと同時に、俺は確信する。

 

証拠は無いし、原理も分からないが……

 

――少なくとも今回のノイズの原因は、彼女達(ヴォルケンリッター)だ。

 

 

 

戦いは、両軍の規模とは裏腹に短時間で決着がついた。

 

騎士達の将がシグナムの要求を突っぱねた後、敵軍の中から残りのヴォルケンリッター達と彼女達の主らしき人物が姿を見せたのだ。

 

そして彼女達ヴォルケンリッターは、自分達以外の騎士を下がらせると4人のみで騎士達を蹂躙した。

戦いは一方的と言って差し支えない有様で、転送魔法によって次々現れる騎士達を一人残らず切り伏せてしまった。

 

『――これで終わりか。』

『な、なんて事だ……我が国の騎士団が、たった4人を相手に壊滅されるなんて……!』

 

よく観察してみると、ヴォルケンリッター達が切り伏せた騎士達にはまだ息があった。この時代にしては珍しく……と言うか初めて見たが、彼女達は非殺傷設定を適用した状態で戦っていたらしい。

 

俺には、それは彼女達が殺しを嫌ったが為の行動に見えた。

 

「――さて、と……」

 

見ておきたいところは見た為、ヴォルケンリッター達に察知される前に"窓"を消して考える。

 

今回のノイズの原因が彼女達だろう事は分かった。

どうしてかは分からないが、他に今までの戦争と違う点が見つからなかったのでそう考えるしかない。

 

使われた魔力量が桁違いだったから、遠い未来に影響する人物だから、シンプルに強いから……確証が得られない現時点ではどうとでもこじつけられる。

だからこれから考える事は、シンプルに『この後どうするか?』と言う一点に尽きる。

 

彼女達に直接アプローチして話を聞くか? ……却下だ。未来視を持たない彼女達が、未来視の異常の原因に心当たりがあるようには思えない。

 

ではこのまま彼女達をやり過ごすか? それも却下だ。彼女達から得られる情報があれで全てとは言い切れない。

何より、やっと掴んだ糸口だ。そう簡単に手放したくはない。

 

彼女達を泳がせて、その行動を監視する……リスクはあるが、これが最善だろう。

未来視で確認したが、この一帯の未来視を進めて行くと今から数秒後には再びノイズが視界を埋め尽くしている。

そしてそれは現実時間が何秒経過しようと一向に変わらない。……つまり、彼女達の近くでは、俺の未来視は()()()()()()()()()()()と言う事だ。

 

リスクはあるが、まだまだ情報を得られる可能性が高い。

ならばここで観察を辞める訳には行かないな。もう暫くは……? なんだ? やけに騒々しいな……

 

「町の騎士が騒いでいる……?」

 

宿の窓から外を見れば、騎士達が慌てて武装し町から飛び立っていくところだった。

しかも秘密兵器だった質量兵器迄持ち出して……

 

「一体何が……――まさか!?」

 

慌てて再び"窓"を開く。見るべき場所は先程の平原だ。もしも俺の"最悪の予想"が的中していたのなら……ッ!!

 

「最悪だ……」

 

そこに映ったのは、主もヴォルケンリッター達をも取り込み暴走する"ナハトヴァール"の姿だった。

 




次回『vsナハトヴァール たった一人の最終決戦~オラがやらなきゃ誰がやる~』ダイジェストでお送りします。

予定では後2話くらいで過去編は終わります。(ナハトヴァールは1話も使わない予定です)

因みにですが、この時のヴォルケンリッターは記憶を完全に失っている状態です。

時系列的には↓こんな感じです。(矢印の数は適当)
転生→初代主死去→→→闇の書に改竄→→『今ここ』→→美香(天使)により記憶を取り戻す→→→→→→→→→→→クライドが無人世界に転送される→→現代のはやての元へ

この時のヴォルケンリッターの考えはこの小説の62話『ヴォルケンリッター』の冒頭と同じ感じです。
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