何でこんな事になったのかはまだ後でですが。
‐1/9 0:20 追伸‐
自分でも何でやらかしたのか分からないミスがあったので修正しました。
…寝る前に気付けてホント良かった…(予期しないタイトル回収)
「…またね。」
こちらを振り向く事無く飛び去って行くフェイトの背中に、一言声をかける。
返事を期待した訳ではなく、呆けていた俺の口からただ出ただけの言葉だった。
…負けた。
勝負にすら、なって無かった。
悔しいという感情さえ湧かない程の圧倒的大敗。
違和感は感じていた。
俺の持っている原作知識の映像と実際に見たフェイトには、見比べれば一目瞭然と言うほどの差がある。それは速度に関しても勿論そうだが、何よりも眼が全くと言って良いほど違った。アニメのフェイトは感情の動きを表に出す描写が少なく、特に最初は機械のように無表情な印象だった。
対して今さっき戦ったフェイトの眼からは…特に最後の追撃時の叫びからは、強い執念の様な物を感じた。決意でも覚悟でも無い、混じりっ気の無い『絶対に勝つ』と言う執念。
きっと俺はまだ、心の何処かでこの世界を甘く見ていた。
俺はなのはの能力がある
でも違う、当たり前だ。
なのははいつだって全力全開で戦っていた。
自分の全部を出し切るような、後先を考えない正真正銘の全力で。
…俺はどうしても後先を考えてしまう。先を知っている分、それを無視できない。
もしかしたら俺は…なのはのように全力全開で戦えないんじゃないか?
不安が過ぎった。
「…はぁ、あれがフェイトの全力か。」
「!…神谷、くん。」
そう言えば神谷も居たんだった。かっこ悪いところを見せちゃったなぁ…
「ゴメンね、勝てなかった…」
「ん?…あぁ、ありゃしょうがねぇよ。明らかに俺達とは練度が違う。」
「…うん。」
あのフェイトは多分、俺と同じ転生者だ。ただし、俺と違ってしっかり鍛えられている。
シンプルな努力の差に俺は負けたんだろう。
「強くならないとね…」
「あぁ…そうd「おい、神谷ぁ…」!?」
何かと思って振り向くと、怒りの形相を浮かべた銀髪オッドアイ達に囲まれた
え、なに?
「お前…フェイトとなのはの戦いを一人だけ特等席で楽しむとは、良い度胸だなぁ…!」
あぁ、封時結界内に居ないと思ったら…
「ま、待て!俺は二人の邪魔をする奴が入らないようにだな…!」
「ほぉ…俺達がそんな無粋な事すると思ってんのかぁ…?」
「おち、落ち着けって!デバイスで映像は
「お前…オリンピックを生で見るのと中継映像で見るのと…どっちが好きだ!?あぁん!!?」
「ヒィッ!?」
「…とは言え、映像があるならまぁ見せてもらうぜ。結局生で見た後は録画も見るもんだしな。」
「アッハイ…」
何というか、カツアゲの様な光景だ…
…待て、今神谷は何て言った…?
…
「神谷くん!今の本当!?」
「エッ、ナニガ!?」
お前、声が…
「さっきの映像、全部撮ってたって!」
「ウン」
「…えっと、落ち着いて深呼吸して…?」
「スー…ハー…」
「落ち着いた?」
「あぁ…大丈夫…」
「…俺も悪かったよ。流石に怒鳴りすぎたかもしれねぇ…」
「いや、逆の立場なら俺も文句の一つも言ってただろうし…」
仲直りが出来たのは良かった!でもそうじゃない!
「まぁ…今度なんか奢るからよ、とりあえず映像を見せてくれ。」
そう、それ!
「神谷くん、私もお願い。」
「あぁ、それは勿論良いんだけど…まずは何処か落ち着けるとこ行こうぜ。流石にずっと飛んでるのもな…」
「…それもそうだな。」
さっきの戦闘…と言って良いのか分からないが、あの光景を第三者の視点から見れる!
正直俺の主観では前半何があったのか殆ど解って無かったからな…もしかしたら癖や弱点の一つくらい見えてくるかもしれない…!
「まぁ、ごく普通の家だけど上がってくれ。」
「お邪魔しまーす」
「へぇ…」
「ここが」
「神谷の家か」
「なんて言うか…な?」
「へへっ、あぁ…な?」
「な、なんだよ…」
「「「「「「「「「「「「「「「「「いや、普通だなって」」」」」」」」」」」」」」」」」
「…お前ら今から帰るか?」
相変わらず神谷を弄る時の連携凄いな…
「そう言えば神谷んとこって…『居ないタイプ』?」
「あぁ…自分で選んだ事とは言え、時々『居るタイプ』が羨ましく感じる時があるよ。」
「そうか…まぁ、なら見られる心配もないか。」
「まぁ、今となっては数少ないメリットなのかもな。」
居る居ないと言うのは神谷の親の話だ。
「さて、上映会と行こうぜ!」
カーテンを閉め切り、薄暗くなった神谷の部屋。
神谷のデバイスが映写機のように先ほどの光景を映し出して行く…
ついさっきの光景だ。鮮明に覚えている。
絶え間無く響くスパーク音と、プロテクションが攻撃を弾く音。
その映像の中で高町なのはは実に
「こ…これが…」
「どうだ?思っていた程、良い光景じゃないだろ?」
「…そうだな。見ていて気分が高揚するような光景では無いな…」
映像が進む度に口数は減って行き、最後の瞬間がやってきた。
『≪Defenser≫』
『≪Round Shield≫』
『≪Blitz Action≫』
次の瞬間…
一瞬遅れて響く轟音。
落雷の様な、爆発の様なその音は攻撃の威力を物語るには十分だった。
「…やべぇな。」
「あぁ…あの様子から見て流石にノーリスクと言う訳じゃない様だが…」
本当にヤバいな…まさか、俯瞰で見ても攻撃の瞬間が見えないとは思わなかった。
あのフェイトに勝たなきゃいけないのか?俺が?本当に?どうやって?意味の無い自問ばかりが頭に巡るが、答えが出る気がしなかった。
「どうしたら勝てるんだろう…」
思わず口から弱音を溢してしまい、部屋は再び静まり返る。
「…勝てるかどうかは分からないが…」
静寂を破ったのは、最もフェイトを追い詰めたであろう神宮寺だった。
「それでも対策として一つ…いや、二つだけ案がある。」
皆の視線が集まる。その誰もが目に諦念と希望を宿していた。
「一つ…と言っても、これは前提条件だが…フェイトにブリッツアクションを使わせない事だ。」
当たり前のことを言い出す神宮寺。その為にどうすれば良いのかを考えているのだ。俺の中の諦念が強まるのを感じる。
「これは多分、皆が想像している事よりも単純だ。」
単純?
「フェイトはブリッツアクションを使う前に、ディフェンサーとラウンドシールドの二重の防御を必ず行う。そうしなければ自滅してしまう事を知っているんだろう…おそらく実体験を以て。」
確かに解りやすい前兆だ。こちらが仕掛ける時間もあるだろう。だが、その間フェイトは守りを固めている。明確な隙は無く、防御を打ち抜く強力な砲撃を放つ程の時間も無い。
そんな考えが表情に出ていたのか、神宮寺が真っ直ぐ俺を見て言った。
「使うのは砲撃じゃない。バインドだ。」
あぁ、確かにバインドならフェイトも躱さざるを得ない…!捕まえる事さえ出来れば攻撃は防げるし、強力な砲撃だって…
「神宮寺忘れたのか?俺達がフェイトと戦った時、フェイトはバインドの前兆を見抜いて躱してたんだぞ。下手にこちらが守りを崩せばその隙を突かれる。」
フェイトそんな事も出来たのか…これじゃあ負ける理由が変わるだけ…
「それで良いんだ。要はフェイトが簡単にブリッツアクションを使えないと考えてくれればそれで良い。」
話が見えてこない。フェイトは通常時の速度だって恐ろしく速い…だが守りを固めればブリッツアクションが来る…神宮寺の言う対策は既に破られているんじゃないのか?
「そこで二つ目の案だ。俺もさっきまで気づかなかったよ…なのはと神谷のおかげだな。」
「…私と神谷くんの?」
「あぁ、俺達はスピードにばかり目が行って失念してたんだよ。通常時のフェイトはただデバイスで切りかかっているだけ…単発の威力は決して強くはない。ただ、凄まじい手数を持っているだけだったんだ。」
そう勿体付けて神宮寺は神谷に映像をもう一度再生するように言う。
「肝心なのはだ、通常時のフェイトの攻撃に
「癖…!?」
「パターンと言い換えても良い。そう言って良いほどに明確な法則がある…と、ここからだな。」
神宮寺の言葉を聞きながら映像に目を向ける。
「先ず最初。フェイトの驚異的な点は初撃の速度だ。静止した状態からトップスピードになるまではほんの一瞬。だから攻撃を見破れないと思い込んで防御してしまう。」
確かにあの速度を見破れないなら防御するしかない…でも法則があるのなら…!
「一時停止できるか?…良し止まったな。雷が軌跡を描いているから分かりやすくて良いな。」
映像はフェイトが
「この軌道を見て分かったんだ。フェイトは攻撃時、敵の左側を最初に狙って攻撃する癖がある。」
「いや見た感じじゃほぼ背中だけど…?」
「ああ、原因はなのはの砲撃だ。」
「ディバインバスター?」
「フェイトだって
あんな物って…
しかし2回…俺の分も含めて3回か。信憑性としては何とも微妙な…
「全部フェイトから見たら敵の右上から強襲する構図になる。」
「そう言われれば…俺の時も最初は左から衝撃が…」
「あぁ、それでその次に攻撃されたのは…」
「真後ろ…だったな。」
「そうだろ?フェイトはこの方向から突撃し、相手を中心に反時計回りで周回しながら連撃を叩きこんでいる。…映像を再生してくれ。」
言われてみれば確かにフェイトの動きは反時計回りだ…それにこの動きは…
「…そうか。攻撃する個所を限定して、プロテクションにかかる負荷を偏らせていたのか…」
「解りやすく言えば一点突破の集中攻撃だ。鎌と言う形状も利用してるな。先端の一点が同じ場所に正確に叩きつけられている…」
「この動き、随分練習したんだろうな…癖になっちまうくらい…」
何がそこまでさせたのか…こうして暴かれたフェイトの戦い方は、魔導士と呼ぶにはどこか歪な物だった。
だが、癖があるのならば神宮寺の案もそれを利用した攻撃のはず。
そう思って振り向いた神宮寺の顔は…何かとんでもない間違いに気付いたような…信じられない現実に直面したような…唖然とした表情だった。
俺の予想は当たっているはずだ。フェイトとなのはの戦いの映像を眺めながら、改めて思う。
俺が見つけたフェイトの癖をなのはに伝えたのは、なのはにここで折れて欲しくなかった事ともう一つ。
なのはにフェイトの協力者になって欲しかったからだ。
今のフェイトは、何故か分からないが暴走している。何かを自分だけで背負っている。
誰にも言えない悩みと焦燥を、俺はあの戦いの中で感じた。
映像で見るフェイトからもそれを感じる。…いや、俺と戦っている時よりももっと強い焦燥がある。
なのはのプロテクションが固いからか…?それには俺も驚いたが…どこかそれとも違う気がする…
…ふと、映像のフェイトに違和感を感じた。
酷く曖昧で、でも絶対に有り得ない…そんな強烈な違和感。
それは、フェイトがバルディッシュを振り上げるたびに強くなって…
やがて今まで感じた事も無いような衝撃を伴い、俺の中で繋がった。
俺が違和感を感じた正体は、フェイトがバルディッシュを握るその手だった。
だが、今目の前の映像の中に居るフェイトは…さっきまでなのはと戦っていたフェイトは…
…
多分、ほとんどの人がフェイトさんの秘密について分かったと思います。
こうなった原因に関しては一応いくつか描写済みです。
もしくは描写してない事がヒントだったり…?
因みに、
この時点で神宮寺はフェイトからの伝言をまだ受け取っていません。(かわいそう)