転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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フォワード達の集大成

ティアナの幻影魔法により生み出された霧の外。

最高評議会の三人は、戦場を俯瞰できる上空からその一部始終を見ていた。

 

「ふむ、魔法で霧を作ったようだな。」

「ティアナ・ランスター……地上本部に所属するティーダ・ランスターの妹か。」

「あの年でこれ程の規模を幻影で包むとは……機動六課は人材に恵まれたな。」

「最終目標を思えば、そうであってくれなければ困ると言う物だ。」

 

三人の眼にはなのはを中心として不自然に渦を巻く濃霧が広がっており、その内部の動きを見る事は叶わない。

しかし、霧の内側で膨れ上がった魔力がその時を知らせた。

 

「……動くか。」

 

赤髪の少女……リオンがそう呟くと同時、霧の一角がオレンジ色に輝いた。

 

 

 


 

 

 

――来た!

 

視界を塞がれた事で広げていた魔力感知の網に、複数の魔力反応が引っ掛かる。

この魔力の反応は……

 

――ティアナのクロスファイアーシュート!

 

弾の数は関知しただけでも20個……その分制御は放棄したのか、軌道は直線的で狙いも甘い。

ティアナもこの霧の影響を受けているのだろうか? だとすれば、作戦としてあまりにもお粗末と言わざるを得ないが……

 

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言う様に、偶にこちらに飛んでくる魔力弾を軽くいなしながら次の動きを待つ。

 

――魔力の無駄遣いになるような戦い方は教えていないんだけどな?

 

そう疑問に思ったところで、感知した魔力に変化が起こる。

私からやや離れた位置を通過する魔力弾から、突如として違う魔力が噴き出したのだ。

 

「――ッ!」

 

――成程、今のクロスファイアーシュートは囮……! 本命は……!

 

咄嗟に振り向き攻撃に備えるが、()()は私が反応してから1秒も経たずに懐に潜り込んでいた。

 

「"紫電――」

 

弓の弦のように引き絞られた彼女の拳に、虹色の輝きが灯る。

既に私は彼女の射程に入っており、私はプロテクションを使えない!

 

――だったら!

 

≪Flash――≫

 

余り使う事が無い為にアレからも改良はしていない魔法ではあるが、それでもデバイスを衝撃から守る程度の強化にはなる筈だ。

私はそのまま輝きを放つレイジングハートを振り抜き、ヴィヴィオの拳を迎え撃った。

 

「――一閃"!!」

≪――Impact.≫

 

二人分の魔力が暴れ狂い、暴風と衝撃となって私とヴィヴィオを苛むが……

 

「驚き、ました! ……近接っ、戦も! 熟せるんですね、なのはさん!」

「それは……私のセリフだよ! 余り、にも! 突然、成長しちゃったから……ねっ!」

 

その衝撃の中でも私とヴィヴィオは離れることなく打ち合っていた。

いや、正確に言えば私は距離を取りたいのだが、ヴィヴィオがそれを許さず詰めて来るのだ。

 

ヴィヴィオは私が近接戦も熟せると言ってくれたが、所詮は付け焼刃だ。

以前近接戦の運び方をシグナムとザフィーラの二人から教わったものの、結局彼女達程の技術を獲得するには至らなかった。

恐らくは適性が無かったのだろう、だからこそ私の近接戦は魔力による衝撃を起こし、相手から距離を取る……或いは、相手に距離を取らせる事を目的としたものになっている。

 

だと言うのに、ヴィヴィオは絶え間なく発生する衝撃にも爆風にも怯まない。

正直な所、かなり戦いにくい状況に持ち込まれている。それに加えて……

 

「くっ……!」

 

――ティアナのクロスファイアーシュート……! 囮だけでなく、援護射撃にも使う為だったのか!

 

さっき私の横を通り過ぎて行ったクロスファイアーシュートが軌道を変え、ヴィヴィオの攻撃で生まれる僅かな隙をカバーしている。

やはり自分の魔力で作った霧なだけあって、この中での動きは完全に把握されているらしい。

 

――相手の視界と魔力感知を封じながら、自分の魔力で戦場を把握する……かなり効率的な魔法だけど、その分魔力の消費も早い筈! 維持する為の集中力だって、そう長くは持たない……だったら!

 

どうせ衝撃でヴィヴィオを吹っ飛ばせないのなら、その分魔力を節約してクロスファイアーシュートの迎撃に使った方が良い。

 

「っ! させません!」

 

私が近接戦闘に当てた魔力を減らし、マルチタスクでディバインシューターを生成すると、こちらの狙いを看破したヴィヴィオの攻撃が一段と激しくなる。

クロスファイアーシュートの勢いも増し、更に苛烈な攻撃に晒される事になったが……

 

――攻撃が若干だけど単調になった! これなら攻撃を弾いて回り込める!

 

そうして放たれたヴィヴィオの拳を弾き、そのままそこを軸にするように回転。隙だらけの所を攻撃しようとしたところで……その声は聞こえた。

 

「――今よッ!」

「!?」

 

――ティアナの声! 合図……誰に!?

 

突然の声とその意図に、一瞬身体が硬直する。

そして同時に感知したのは……新たな魔力の反応。

 

「ハアァッ!!」

 

――エリオ……!

 

恐らくはスピーアアングリフによる特攻だろう。

キャロの補助魔法も受けているらしく、とんでもない速度で真っ直ぐに向かって来る! まるで私の位置をエリオも把握している様な……いや、まさか!

 

――()()()()()……? ヴィヴィオはわざと攻撃を単調にして、私を回り込ませた……!

 

フォワード達の連携の練度が私の想像を遙かに超えてくれた歓喜に、背筋がゾクゾクと震える……こう言う喜びがあるから教導官はやめられない! だけど……!

 

「まだだよ!」

 

あと僅かに私の感知範囲が狭ければ受けるしかなかっただろう突進を、ギリギリで回避する。

 

「おかえし!」

「――させないッ!」

 

そのまま通り過ぎようとするエリオに対して追撃を放とうとするが、それは割り込んできたヴィヴィオに弾かれてしまった。

 

「良いよ、仲間の隙をしっかりカバー出来てる!」

「その様子からして、まだまだ余裕があるようですね。ですが……感心するのはまだ早いと思いますよ?」

 

ヴィヴィオがそう言うと同時、私の背後から高速で飛来するストラーダ。

穂先には先程同様に電気を帯びている為、当たれば感電してしまうだろう。そうなってしまえば均衡は忽ち崩れ、私はガードもままならなくなる。だけど!

 

「当然、感知してたよ! ……って、えっ!?」

「でしょうね。流石……ティアナです。」

 

背後から迫る槍を振り返る事無く回避すると、ヴィヴィオは自らに飛んできたストラーダの柄を掴み、そのまま霧の向こうへと消えて行った。

 

――今のもティアナの読み通り!? だとすると今度は一体……?

 

ここから追撃しようにも、エリオはストラーダを投げた直後だ。デバイス無しでもある程度の魔法は使えるだろうが、決定打にはならない。

ヴィヴィオは近接攻撃が得意な為、距離を置くメリットはない。それに今のは距離を置いたと言うよりも……避難?

 

……待てよ?

 

――さっき通り過ぎたエリオの方角と、今のストラーダの軌道から推測される射出地点が()()()()()……!

 

空中で起動を変えたにしては、二つの間隔が短すぎる。ストラーダの噴出機構を用いた空中機動はそこまで器用ではない筈だ。

 

その違和感に気づいたと同時、魔力感知に再び何者かの接近が引っ掛かる。

そして今しがた抱いた疑問の答えは直ぐに解消された。

 

「なのはさん、御覚悟をッ!」

「成程……貴女がエリオを受け止めたんだね、スバル。」

 

恐らくはこの霧の向こうにウイングロードが伸びているのだろう、彼女が突っ込んできた方角は先程のストラーダ射出地点と合致していた。

そして彼女が近付いて来ると同時に、ブルブルとした空気の()()が伝わって来る。

 

――振動破砕……!?

 

流石にアレを直接受ければひとたまりもない。

スバルの突進は一直線な為、落ち着いて距離を取るが……スバルはまだ私と距離がある状況でその拳を振りかぶった。

 

「!? 何を……」

「――振動破砕・改!」

 

そしてその拳が振るわれると同時に、彼女の拳の振動は……周囲の空間全てを歪ませた。

 

「ッッ……! ぁ、ぐっ!!?」

「ぐ……ッ! 流石にこれは、きついですね……」

 

捻じれる空間と轟音に、全身の感覚が麻痺する。

それと同時にスバルが何をしたのか、歪む視界の中で理解した。

 

――霧が、消えて……そうか、振動破砕で狙ったのは、私じゃなくて……()()()()()……

 

彼女の振動破砕・改は魔力に対して共振を起こすものだ。

そしてさっきまで私が居たのは、霧の……いや、ティアナの魔力の中心部……! だからスバルの振動破砕・改を使えば、周囲の空間全てを振動させる事になる……!

 

長いようで短い戦闘を覆い隠していた霧が晴れ、力尽きるように落ちていくスバルがフリードに回収されたのを視界の端で捉える。

 

「――こ…で……とど…です!」

 

そしてフリードが私の方に向き直ると、その背に乗ったキャロの正面に()()()()()が構築され……

 

「来…、天地貫…業火の咆哮! 竜咆召喚! ≪ギオ・エルガ≫!!」

 

そこから放たれた眩い輝きが私の全身を飲み込んだ。

 

 

 


 

 

 

「な……なんと……」

「縛りがある状態とは言え、あの高町なのは教導官を打ち倒すとは……!」

 

フォワード陣の連携を末に放たれた咆哮召喚が大地を震わせる中、その様子を見ていた最高評議会の三人も驚愕に身を震わせていた。

 

「新たな時代の芽は既にここまで……! いや、だが……」

 

それと同時に彼等を包むのは言い知れぬ不安だ。

彼等はこれまで、高町なのはこそ予言に記された"光"であると言う確信を持っていた。

例えそれが滅びの元凶たる可能性を秘めていようと、その絶対的な力が滅びの抑止となる可能性に希望を見出していなかったと言えば嘘になる。

 

だが、彼女は決して無敵ではない事が証明された。

 

当然と言えば当然だ。いくら圧倒的な魔力を持っているとはいえ、高町なのはは人間なのだ。

生物としての枠を超えられない以上、そこにはどうしても弱点が生まれる。

 

嘗て疲労により倒れたなのはがその時に自覚したそれを、ここに来てようやく最高評議会の三人は実感した。

 

「……予言の解釈について、改めるべきか?」

「しかし既に彼女を中心とした対策は動き出している。今から方針を変えるのには限界が……」

「……或いは、既に滅びは回避されたのではないか? 先日、HE教団の聖女が拘束された事で。」

「むぅ……どちらにせよ、確かめねばなるまい。聖女は今、どこに?」

「地上本部にて拘留中だ。尋問の受け答えに整合性がつかぬらしい。」

「いかにする。」

「……行くしかあるまい。だが、レジアス・ゲイズに我等の境遇を話すべきか……」

 

動揺しつつも次の対策について思考を巡らせる三人だったが……眼下へと再び目をやったところで、更なる驚愕に……否、畏怖に身を震わせた。

 

そこにいたのはバリアジャケットがボロボロになりつつも、ギオ・エルガの煙の中から自らの魔法で空を飛び現れた高町なのはの姿だった。




なのは「素晴らしい一撃であった」
キャロ「ギオ・エルガでさえも……………」

最高評議会「やっぱり大丈夫かもわからんね」

耐えた方法など詳しい描写は次回で書きますが、流石のなのはさんも結構へとへとです。
模擬戦自体が早く終わった理由は、ティアナが「なのはに勝つには電撃戦しかない」と判断したからです。

気になった人の為に以下ティアナの作戦の流れ(なのは視点では霧の関係で描写できなかった部分)
1.ティアナが霧の幻影魔法で戦場を覆い、魔力でなのはの感知を視覚魔力共に鈍らせる。
同時にスバルのウイングロードを展開。全体は包囲せず、最小限のルートを確保する。
更に同時にキャロが補助魔法をエリオにかける。かけるのは速度強化・防御強化・攻撃強化。
2.ティアナが放ったクロスファイアーシュート(20発)に紛れるようにして幻影魔法で魔力波動を誤魔化したヴィヴィオがなのはに接近。ティアナの射撃による援護を受けながら、近接戦を仕掛ける。
3.霧の魔力が自分の物である為、なのは達の状況を正確に把握できるティアナがタイミングを計り、ティアナの合図でエリオがなのはに向けて特攻をかける。
槍と共に一直線に翔ける軌道で、なのはを挟んだ先にはスバルの待機するウイングロードがある。
4.当たれば電気の属性で感電する為、即座にヴィヴィオの一撃→キャロの咆哮召喚に繋げるが、回避された場合はウイングロードでスバルに受け止められた後、穂先に電気を纏った槍をなのはの背後から槍投げの要領でヴィヴィオにパスする。
5.当たれば感電する為、即座にヴィヴィオの一撃→キャロの咆哮召喚に繋げるが、躱された場合は次の行動の為に、槍を掴んだヴィヴィオが槍の推進力で戦闘空域を離脱。エリオもキャロからの魔法で強化された機動力を活かし、ウイングロードを伝って距離を取る。
6.速度+防御の補助を受けたスバルがウイングロードから飛び出し、なのはに接近。中距離砲撃の射程に入ったところで振動破砕・改をティアナの霧に対して使用。プロテクションを張れない縛りの都合でなのはには回避不可能。ティアナの霧の魔力は薄く広がっている為、共振で捻じれ、破壊されてもなのはに直接的なダメージはあまり出ないが、光・爆音・空間全体の振動を伴い、スタングレネードの様な役割を果たす。(スバルは元々頑丈+キャロの補助魔法+自前の障壁で耐える)
7.動きが鈍ったなのはに、フリードに乗って接近したキャロが至近距離から咆哮召喚。
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