転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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模擬戦を終えて

――直撃! これなら流石のなのはさんでも……!

 

自らの立てた作戦の通りに動いた状況とその結果に、少なくない満足感を得ながらもティアナは冷静にクロスミラージュを構え、魔力爆発の影響でもうもうと煙が立ち込める着弾点を見据える。

 

そんな時、隣にやってきたスバルが小さく呟いた。

 

「……これ、やったんじゃ……?」

「バッ……! スバル!!」

「え、あっ……! ゴメン、つい……」

 

俗にいう"フラグ"発言に、思わずスバルの方を見るティアナ。

勿論そんな言葉が戦況を左右する訳ではないのだが、もしやと再び空へと目をやったティアナは「やっぱり……」と呟かざるを得なかった。

 

「皆、凄い連携だったよ! 最後は私もちょっと焦っちゃった!」

 

そこには、バリアジャケットをボロボロにしつつも笑顔を浮かべる高町なのはの姿があった。

 

「もう、あんな事言うから……後で反省会ね。」

「ええ!? あたしの所為かなぁ!?」

 

スバルの反応を内心楽しみつつ「冗談よ」と返すティアナは、目の前の質の悪い冗談ではないかという状況をどうにかするべく頭を捻る。

 

――見たところ、流石のなのはさんも少なくない魔力ダメージは受けている。直ぐに反撃してこないのは、それだけ余裕がないから? それとも、俺の"次"を待っている……?

 

もしもそうだとするならば、更にもう一撃加えたい。なのはを超える事が出来ないとしても、自分達の成長を示す事で彼女の期待に応えたい。

しかしそんな彼女の思いと現実には、非情なまでの開きがあった。

 

――ダメだな。俺は今の霧の幻影の維持とクロスファイアーシュートに魔力を使い過ぎた。もう大規模な幻影は使えない。それに……

 

隣を見れば、構えを取るスバルの右腕が上がっていない事が更に厳しい状況を伝えて来る。

 

――スバルの振動破砕・改のリスクはこの仮想空間にも反映されている。流石に壊れたりはしないが、休憩が入るまでは右腕は使えない。

 

現実世界で振動破砕・改を安易に使う癖を付けない為に、スバルの振動破砕・改の反動は仮想空間でも再現されていた。

もっとも仮にそれが反映されていなかったとしても、スバルは自発的に右腕の使用を封じただろう。現実で出来ない動きをして勝てたとしても、その喜びは虚構に過ぎないからだ。

 

――エリオは槍を手放している。ヴィヴィオが投げ返せば回収は可能だろうが、なのはさんはそれを許さないだろう。キャロも短い間にあれだけ強化魔法をかけた上に、咆哮召喚も2回使っている。そして俺にかけられた強化魔法がさっき解除された以上、皆の強化魔法ももう直解けるだろう。ヴィヴィオに関してはもうとっくに解除されている筈だ。

 

そして強化魔法を再びかけるのを、なのはが待ってくれる保証はない。

唯一戦える可能性があるのはヴィヴィオだが、1対1の結果は既に見た通り。

 

――もう策を立てられる程の切り札は残ってない……か。

 

周囲の様子を見回して、ティアナはそう結論付けた。

そんな彼女の内心を見透かしたように、なのはが問う。

 

「流石にもう魔力切れかな?」

「……ええ、アレで決めるつもりでした。」

 

ティアナの言葉に「そっか」と一言呟き、なのはは更に問いかける。

 

「……じゃあここで休憩を挟む?」

 

一見、頃合いを見て提示されたただの提案に思えるなのはの問いに、しかしティアナは一瞬たりと迷わずに首を振り、力強く答えた。

 

「いえ、最後まで出しきらせてもらいます! 貴女の言葉の通り、全力全開を尽くして!」

 

――意地悪な問いかけだな。『模擬戦は常に実戦のつもりで臨め』と日頃言っているくせに……実戦で()が休憩を提案する訳が無いじゃないか。

 

ティアナがなのはの提案に乗っていたら、きっと彼女は言葉の通り休憩を挟んでくれただろう。

しかしその一方で、彼女は内心ティアナの評価を下げただろうと言う事はティアナ自身も分かっていた。

 

――さっきの一連の動きで、今の全力は見せた。だったらここから見せるのは、限界まで追い込まれた時にも折れない根性だ!

 

ティアナ本人も気付かぬうちに浮かべたその笑みに触発されたように、成り行きを見守っていたスバルもエリオもキャロも、そしてヴィヴィオも口元に笑みを浮かべた。

そんな彼女達の様子を見て、なのはは確信を得た。

 

――まだまだ伸びしろはあるけれど……これだったら大丈夫かな。

 

「そう来なくちゃ! 最後まで見せてよ、貴女達の成長を!」

 

――"スターズ"と"ライトニング"……そしてヴィヴィオ。フォワード陣は……機動六課は、十分に戦えるようになったみたいだ。

 

 

 


 

 

 

「――え? この後地上本部に、ですか?」

 

模擬戦を終えたフォワード陣の5人が地に突っ伏したように休憩を取っている間に、最高評議会のリーダー的存在でもあるリオンが話の中でそう切り出した。

 

「うむ、例の聖女や予言に関わる事で少し確認をする為にな。」

「必要と判断できる情報があれば追って伝えよう。ジェイル・スカリエッティの件に関しては任せるぞ。」

「八神はやて部隊長が話していたロストロギアに関しては、翌日こちらから使いを出す。先程も言った通り、17時ごろには着くだろう。」

 

最高評議会の三人は口々にそう告げると、私からの返答を待たずに現実世界へと帰還していった。

 

――聖女や予言に関する事か……

 

予言の解釈に関しては時々いくつかの憶測がはやてを通じて伝えられてきたが、その中の一つに『"滅び"は"凶星"が原因で起こるものではないのではないか』と言う物があった。

曰く『凶星の背後に滅びは潜み、凶星のみが姿を知る』と言う一文に於ける"背後"という文言は、解釈次第で『計画』にも『動機』にも捉えられるという話だった。

そう言う意味でも凶星の筆頭候補たる聖女が捕まった後も油断出来ない状況は依然として続いており、彼女から齎される情報にはそれだけ重要視されるだけの価値があるのだろう。

 

「――あ、フェイトちゃん。あの3人はもう行っちゃった?」

 

そんな事を考えていると、最高評議会の三人と入れ替わるようにフェイトが仮想空間にやってきた。

 

「うん、地上本部に用事が出来たんだって。見送りははやてがしてくれるみたいだから、私も訓練を見る為にこっちに来たんだ。」

「そっか。……それで、どう思った? ヴィヴィオの事。」

 

ヴィヴィオの模擬戦を最高評議会の三人に直接見せる提案をしたのは、他ならぬフェイトだった。

そんな彼女に今回の模擬戦を見た感想を聞くと、彼女は僅かに考えるそぶりを見せた後にこう答えた。

 

「……多分、敵では無いんだと思う。少なくとも時空管理局や、私達機動六課に害意を持っているようには見えなかった。……なのはは?」

「うん、私も同じかな。少なくとも今のヴィヴィオからは他のフォワード達に向けていた遠慮もなくなってる気がするし、あの子の事は信じても大丈夫だと思う。」

 

そう言って見つめた先には、休憩中に楽しそうに笑顔で話し合うフォワード達の姿があった。

 

「なのはも気づいてたんだね。だけど……」

「分かってるよ、フェイトちゃん。ジェイル・スカリエッティ博士についてはまだ分からない……でしょ?」

「……うん。だから明日はいつも以上に油断なく行こう。ジェイル・コーポレーションは、彼の味方しかいない場所だと思うから。」

「そうだね……もしかしたら、まだ私達が会っていないだけで"あの子達"も生み出されているのかも知れないし。」

 

もしかしたら明日は決戦の日になるかもしれない。

そんな可能性を再認識し、同時に今日このタイミングでフォワード陣の成長を確認できたのは僥倖だったのだと改めて思った。

 

と、その時、フェイトがふと思い出したように尋ねてきた。

 

「……そう言えばなのは、最後のあれってどうやって防いだの? 障壁の類は禁止だったのに。」

 

フェイトの言う『あれ』と言うのは言わずもがな、キャロの咆哮召喚の事だろう。

あの時は平衡感覚が狂わされていたから回避は出来なかったし、砲撃を放つだけの時間もなかったから流石に焦ったなぁ……

 

――あの一瞬で防ぎ方を閃いたのも、私が原作知識でアレを思い出さなきゃ無理だったし。

 

等とあの一瞬の事を思い返しながら、私は彼女の問いに答えた。

 

「あれは体の内側の魔力を只管高めたんだ。後は気合と根性かな?」

「……え? あっ、え? …………えぇ……」

 

あれ、おかしいな? アニメでリインフォースがエクセリオンバスターを無傷で受けた事からの発想だったんだけど、何故ドン引きされなければならないのだろう。

 

 

 


 

 

 

同刻、ジェイル・コーポレーションの一室にて――

 

「――という訳だ……頼まれてはくれないかい?」

『責任重大ですね。しかと、拝命いたしました。』

「ああ、ありがとう。……しかし、その固い口調はどうにかならないかね? なんだか娘から距離を取られているように感じて中々に寂しいのだが。」

『そう言われましても……どこに()があるか分かりませんので。』

「だが別に管理局も家族と連絡を取る事を禁じてはいないだろう? 家を離れて親の声が恋しいと言う者が居ない訳でもあるまい?」

『いえ、私がそう捉えられたくないので……』

「やめてくれたまえ。シンプルに切ない。」

『ふふ……――では、明日。お互い無事で会えるよう、最善を尽くしますね……父さん。』

「……ああ、困った事があれば遠慮なく頼ってくれたまえ。ドゥーエ。」

 

そう最後に告げてジェイル・スカリエッティが通信を切ると、傍にいた女性が我慢できなくなったように詰め寄る。

 

「お父様、何故ドゥーエ姉様を今回の使者に選んだのですか!?」

「君が怒るのは分かるよ、クアットロ。だが今回は私達にとっても、会社にとっても特に重要な任務だ。彼女以外に適任が居ない以上、任せるしかないんだよ。」

「いいえ、ドゥーエ姉様以外にも出来る筈です! 私にだって……!」

「いや、現在時空管理局の地上本部にいる彼女にしか不可能だ。明日は恐らく、私達の出入りが厳しく監視されるだろうからね。」

「そ、それは……ですが!」

「それに君には君の任務がある。そして、その任務こそ君の能力でなければ実行不可能なものだ。分かるね?」

「……はい。」

 

自らに与えられた役目を思い出したクアットロが落ち着くのを見て、スカリエッティはドゥーエに与えた任務を思い返す。

 

――使者と言えば聞こえはいいが、その実態は案内役兼()()だ。クアットロが不安になるのも当然だな……

 

スカリエッティ個人としては安全であると確信はあるが、彼女達にそれを言っても理解は出来ないだろう。

寧ろ『前世の記憶で安全と知ってるから』等と言う荒唐無稽な根拠を話せば、却って心配させる可能性さえあるのだ。話す訳には行かない。

 

――お詫びと言っては何だが、この一件が終わったら久しぶりに家族サービスでもしようか。思えば仕事が軌道に乗って以来、旅行も行っていないからな。

 

等と、ややフラグ染みた未来計画を思い浮かべながらも、スカリエッティはクアットロに彼女自身の任務の詳細を伝えて行く。

 

「……以上が君の任務で守る範囲だ。今言った箇所だけは何としても隠し通してくれ。」

「分かりましたわ。」

「当然、君自身もだ。例えどんな光景を見る事になろうと、決して出て来てはいけないよ。」

「……貴方の采配を信じますわ。お父様。」

「ああ、信じてくれたまえ。」




ナンバーズの内2人の初登場回です。もう終盤ですが。
他の子は仕事してたり(ウーノ)、別の任務の為に動いてたり(セイン)、色々です。
多分活躍らしい活躍するのは極一部です。少なくとも原作にいない13以降はちょい役止まりですね。

若干(?)性格が違うのは生活や生まれた目的の違い、素体の違い、もともと存在していたランダム性の影響等です。あまり原作のイメージは崩さない程度にですが。
ただ一部色々とうろ覚えな子もいるので、明らかに違い過ぎたらご指摘ください。

ISに関しては原作と同じとしています。ランダム性とか考えると原作と違うのが当たり前なのですが(特にセイン)、そこはご都合主義でお願いします。(新しく12人分ISっぽい能力考えるのは無理……)
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