はやて達がジェイル・コーポレーションに到着した丁度その頃、時空管理局地上本部ではレジアス・ゲイズが専用回線で最高評議会と連絡を取っていた。
「――つまり、あの子ど……失礼、あのお三方は……」
『然り、我等が直々に指名した代理人……そう捉えて構わん。』
それと言うのも、突如として地上本部へやってきた3人の少女が"最高評議会の使い"を名乗ったからである。
本来であれば子供の悪ふざけとして取り合わない所だが、彼女達が提示した"名札"が問題であった。
名札を所持していた時点で時空管理局としては無碍に出来ないが、時空管理局のシステムが個人を識別し、一部施設の使用を始めとした権限を付与する為の
本来記入されている筈の名前が書かれておらず、魔力を流せば浮かび上がるのは顔写真の代わりに時空管理局のエンブレム……それは時空管理局最高評議会や、それに近い権限を持つ事の証明だった。
それが本物であると確認した受付からオーリスへ連絡が行き、そこからレジアス・ゲイズへと話が伝わり、直に会って話をした後で少女たちは口々にこう言った。
『ええい、これ以上は時間の無駄だ! 我……私達には確かめねばならん事があるというのに!』
『……とは言え、我……私達が何を言っても説得力はない、か。……仕方ない、直接最高評議会へ連絡を取れ。そうすれば納得できるだろう?』
『已むを得まい。それまで、わ……たし達は少し仮眠する。……仮眠室は、こっちだったか。』
そう言って勝手に地上本部の仮眠室へ向かった彼女達の印象は最悪で、レジアス・ゲイズとしても強引に取り押さえたい気分だったが、提示された名札が本物であった以上は連絡を取らない訳にもいかない。
何らかの手違いで彼女達の下に名札が渡されてしまった可能性や、考えにくい事ではあるが紛失・盗難された物がプログラムを書き換えられて流通している可能性も無いとは言い切れない。
そしてレジアス・ゲイズは近くに居た局員に彼女達の監視と案内を任せた後、彼女達の言う様に最高評議会へとこのことを報告して今に至るのだ。
『――故に余計な詮索は無用だ。……あの、娘達の言葉は我等の言葉と受け止めよ。』
「は……しかし彼のお三方が閲覧を希望している資料は最新の物であり、まだ裏付けの取れていない情報も多く……無礼を覚悟で申しますが、情報の正誤の判断を委ねるにはあのお三方はまだ幼すぎるかと。」
『その程度の事、問題は無い。我等が、あの……娘達に判断を委ねているのだ。この意味が分からない訳ではあるまい。』
「! ……はっ! 差し出がましい口をききました事、ご容赦ください!」
『良い、貴様の不安も致し方ない事。だが、事は急を要するのだ。あの……娘達が仮眠から目覚め次第、資料の閲覧及び、例の"聖女"とやらとの面会をさせよ。』
最高評議会が『急を要する』とまで言う程の何かが、自分の知らぬところで起きている……彼等の言葉からそう感じ取ったレジアス・ゲイズは、彼等の指示で動いている少女達に大人気ない感情が湧き上がるのを感じつつも頭を下げ……ほんの些細な違和感に気付いた。
「はっ! ……? はて、あのお三方が仮眠中である事は……?」
確か告げていなかったはずだ。
自分の職場で誰とも知れぬ少女が仮眠している事をどう伝えた物かと悩んだ末、本当に使いであれば問題無し、最高評議会の使いを騙る無礼者であればそのまま捕縛なりなんなりすれば良いと結論付けていたのだから。
だが、そんなうっかり漏らした言葉に対する返答は、彼にとってこれまでで最も心を乱す物だった。
『ッ! ……知れた事、幾ら我等が信を置く相手だとしても、所詮は……幼子、よ。行動の把握と管理は怠っておらぬ。』
『……然り。仮眠にしても、我等が許可したが故の行動。そしてそれ故にこそ、あの……娘達は我等と同等の権限を振るえるのだからな。』
「な、なんと言う……! ……承知、致しました。直ぐ、オーリスを向かわせます。」
『む……? まぁ、良い。どちらであろうと、目的を果たせるのであれば問題はあるまい。』
「――中将、最高評議会の方々は……中将? いかがいたしましたか?」
レジアス・ゲイズが最高評議会とのやり取りを終えた事を確認したオーリスが声をかけるが、その問いかけは彼の顔色を見た瞬間に別の問いへと切り替わった。
「……オーリスよ、"正義"とは、時に"悪"よりも残酷な判断を下す……恐ろしいものだな。」
「は……?」
だが彼の返答には曖昧な部分が多く、彼は自身の葛藤を話すかどうか……それにさえ葛藤しているように見えた。
「いや、お前が知るべき話ではないな。……あの娘達の案内は、お前に任せる。彼女達の言葉は、最高評議会の言葉として扱う様にとの事だ。」
「……? 了解いたしました。」
オーリスが仮眠室へ向かうべく部屋を出て行った後、残されたレジアス・ゲイズは先程会って話した少女達の事を思い返していた。
――最初は何処か高慢な物言いばかりが目立った小娘達であったが、それも望まぬ権力と不自由からの反発……か。上からの許可が無ければ仮眠すら出来ぬとは……その苦しみは、最早誰にも理解は出来まい。
「――ッくしィ!!」
「――ッチュン!!」
「――っくしゅん!!」
「だ、大丈夫ですか? ……空調効きすぎですかね?」
仮眠室のベッドで三人の少女達がくしゃみと同時に目を覚ますと、彼女達の監視を任された局員が心配して声をかけた。
「……大丈夫だ、気にするな。」
「は、はぁ……」
≪目覚めた瞬間に3人揃ってくしゃみとはな……まさか風邪でもひいたか?≫
≪それほどこの身体が生身に近いと言う事か、それともどこかしらに不具合でも出たか。≫
≪異常が無いのであれば構わんが、折を見てジェイル・スカリエッティに検査させるべきかもしれんな。≫
空調の温度上げるか……? 等と考える局員を尻目に、念話でそんなやり取りを交わしていると仮眠室のドアがコンコンとノックされ、一人の女性が入って来る。
「失礼します。ご気分はいかがでしょうか。」
「オーリスか……」
リオンが入室してきたオーリスを確認し、3人の代表として声をかけた。
「私達の言葉の裏付けは取れたのだろう。急ぎ、例の資料を確認したい。」
「押収された生死体の検分もしておきたい、証拠保管庫へ案内せよ。」
「その後は"聖女"とやらとの面会だ。手続きを済ませておけ。」
リオンに続き、バルト、クリームと次々に要望を訴えるが、オーリスは慌てることなく手元の端末を操作しながら一つ一つ答えていく。
「承知致しました。……では先ず、証拠保管庫へ案内いたします。資料についてはこの端末に。面会の手続きに関しましては既に申請済みです。約1時間後に面会室へご案内いたします。」
「ほう、気が利くむ……ものだな。どれ、移動のついでに目を通すとしよう。」
『気が利く
……その直後、手渡された資料の内、取り調べの供述調書の部分を読んだリオンが胡乱な目でオーリスに問いかけた。
「……おい、オーリスよ。この調書、内容は確かなのだろうな……?」
「はい。取り調べの様子は私も映像で確認しましたが、そこに記載されている通りでした。」
「……そうか。まだ奴が何か隠していると見るか、或いは……」
――本当に話せることが無いのか。いずれにせよ、証拠保管庫であの情報が手に入ればハッキリする事だろう。
向かう先は証拠保管庫……先日のHE教会地下から押収された、20体の生死体が眠る場所だ。
最高評議会の三人「何か今まで色々言って来たし、今の体がコレって言いにくいなぁ……せや!」
↓結果
最高評議会の三人→あの体は自分達の物なので全て管理しているのは当然
レジアス・ゲイズ→年端も行かぬ少女を道具のように……正義とは……