転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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模擬戦と今後

銀髪オッドアイ達はそれぞれの訓練を一旦取り止め、久しぶりに再会した神宮寺のもとに集まった。

 

「久しぶりじゃねぇか、神宮寺!」

「だな、もう大体10年ぶりくらいか? ……って言うか、やっぱ変わんねぇなお前ら。」

「いやぁ……一度髪染めた奴もいたんだけど、逆に誰か分かんなくなってな……」

「連携にまで支障きたしたから、結局元通りよ……」

「えぇ……」

 

知らない間に生まれていた新たな悲劇に、思わず引いてしまう神宮寺。

少しばかり暗くなってしまった雰囲気を元に戻すためか、話を変えるべく神原が明るい口調で話し始める。

 

「それはそうと、こっちに来るなら言えよな! 別に出迎えとかはしねぇけど!」

「しないなら良いだろ別に……まぁ、こっちからしても突然の事だったからな。連絡する暇もなかった。」

「突然って言うと……もしかして、俺らと同じ感じか?」

「……まさか、お前らも機動六課に?」

「おうよ! 今度は抜け駆けさせねぇぜ!?」

「いや、いつまで引き摺ってんだよ。」

 

勿論その口調は冗談めかした物であり、本心から引き摺っている訳ではないのが傍目にも解る。

神宮寺がそれを承知で軽くツッコミを入れると、彼もまた「へへ」と笑顔を返すのだった。

 

 

 

「――そんな訳で、いても立っても居られずに訓練してたって訳だ。」

「遠足前の小学生かお前ら。」

 

その後もなんて事の無い会話から近況報告へ、やがて話題は訓練場に集まっていた理由にシフトし、ある意味彼等らしい経緯が明かされたところで神宮寺が再びツッコミを入れた。

 

「なんだよ、お前も同じような感じでこっちに来たんじゃねぇのか?」

「いや、さっき偶々会ったオーリスさんにお前らが集まってるって聞いてな。折角だし顔見せておこうと思ったんだよ。訓練場だったのは意外だったけどな。」

 

もしも銀髪オッドアイ達が集まっていたのが、銀盾の隊舎だったならばそっちに顔を出しただろう。

言外にそう告げる神宮寺の言葉に今いる場所を思い出したのか、銀髪オッドアイの一人が提案を持ち掛けた。

 

「ふーん……まぁ、折角来たんだ。久しぶりに模擬戦でもやろうぜ!」

「おお、良いなそれ! 昔は毎日のようにやってたもんなぁ……」

「うむ。今こそお主の修行の成果、見せて貰おう……!」

 

当然周囲の銀髪オッドアイ達もその提案に同調する。

元々やろうと思っていた事でもあるし、そこに久しぶりに会う友人との過去を懐かしむ意味も加われば当然と言えるのかもしれない。

 

「何のキャラだよ……まぁ、ちょっとくらいなら良いか。後で残弾補充頼むぞ?」

「……ああ、そう言えばそんな能力だったなお前。」

 

そんな彼等の様子に、神宮寺も感化されたのだろう。その提案を快く引き受け、広い訓練場全体を使った模擬戦が開始された。

 

 

 

――数分後。

 

最初は全員が敵同士という状況で始まった模擬戦は、当初の想定とは大きく違った様相を呈していた。

 

「――いや、神宮寺強くね?」

「だよなぁ……俺らの連携にここまで対応できるのって、そうそういないぞ?」

「いや! 流石に! 1vs全員は! きついんだが!?」

 

神宮寺の言葉からも分かるように、今の状況は神宮寺vs他の銀髪オッドアイ全員と言う構図だ。

今の神宮寺は周囲から浴びせられる大量の魔力弾や砲撃を、全方位に展開した『王の財宝』から放つ数多の魔法で相殺しつつ、自身は自らのデバイスから光の刃を生み出す魔法"フォトンブレード"を用い、似たような魔法を使う(すめらぎ)と切り結んでいた。

 

当然最初からそう言う打ち合わせがあった訳でも、悪意があっての物でもない。それはある意味、純粋な好奇心が生み出した結果とも言えた。

 

「だって対応力の高さ見せつけられてるうちに……なぁ?」

「ああ、何処まで対応できるのか気になって来てさ。」

「くっそ! お前ら! ぜってぇ後で補充しろよ!!?」

 

そう、彼等はこの状況で拮抗させられる神宮寺の限界に興味を持ってしまったのだ。

そんな言葉を耳に捉えた神宮寺は、それでも残弾の温存を優先し、最低限の拮抗状態を維持し続ける。

そんな様子を間近で見て、好奇心をそそられた者がもう一人いた。

 

「すまん、神宮寺。ちょっと俺も本気出して良いか?」

「ちょっと待て、皇! お前の本気って確か……!」

 

それは現在神宮寺と近接戦を繰り広げている皇だ。

彼の扱う『魔法剣』は神宮寺の使っている魔法"フォトンブレード"と外見上は似通っているが、その本質は大きく異なる。

彼のそれは魔法ではなく転生特典……この世界で言うレアスキルに該当しており、その能力は"自身の使う魔法を剣の形に凝縮して扱える"と言う物だ。

 

言葉で聞いただけでは光剣を生成するフォトンブレードとの違いは分からないが、実際に相手にするとその応用の幅広さは一目瞭然。

 

「『魔法剣』:砲撃型、『属性指定』:電気……!」

「バッカ野郎!!?」

 

砲撃魔法を凝縮した『魔法剣』は輝きを増し、彼のもう一つの特典『全属性変換資質』により電気を帯び始めた。

その厄介さを知っている神宮寺は思わず叫び、感電を嫌って王の財宝から砲撃を放つ。

 

距離を取る為に放たれたその砲撃は、しかし魔法剣に切り裂かれ、目論見は外された。

 

「ちぃっ!」

 

仕方なくフォトンブレードでの近接戦を継続する神宮寺。

いくら電気の性質を帯びていると言え、魔力で作られた刃を電気が伝って来る事は無い。魔力自体はどちらかと言えば絶縁体なのだ。

ただ、斬撃を一太刀受けただけで敗北が決定する状況になっただけで……

 

「鬼かお前!」

「いや、『魔法剣』に"バインド"使ってない時点でまだマシだと思うし……お前もまだ本気出してないだろ?」

「模擬戦で使えるか! こちとら残弾管理もしてんだぞ!?」

「そこはホラ、後でちゃんと補充するからさ。それに……俺なら王の財宝に――――も入れてやれるぞ?」

「……! っち、分かったよ!」

 

鍔迫り合いの最中に行われたその取引を聞き取れた者は他には居なかった。

だが、その成果は突然にして周囲の銀髪オッドアイ達に振るわれた。

 

「……ん? うおおっ!!?」

「ちょ、神宮寺がキレた!?」

「キレてねぇわ! キレてねぇが……気が変わった! 少しの間、全力見せてやる!」

 

その光景を例えるのに、最も相応しい表現が一つだけある。

あるゲームジャンルに詳しい者ならきっと思い浮かぶだろうその言葉は――

 

「リアル火蜂じゃん……!」

 

回避させる気のない弾幕STGが始まった。

 

 

 

――さらに数分後。

 

訓練場には疲労で床に突っ伏す銀髪オッドアイ達の姿だけがあった。

 

「はぁ……はぁ……やり過ぎだろ、お前ら……!」

「お前が……はぁ……それ言うか? 神宮寺……」

「アレは無理だって……避ける隙間用意してくれてねーもん……」

「実戦でそんな隙間わざわざ用意する奴いねーだろ……約束通り、補充しろよお前ら……! アレで残弾結構使ったからな……!」

「分かってるって……ただ、もうちょい休ませて……!」

「お前もだぞ、皇……! 約束守れよな……!?」

「おう……っつーか、やっぱ強ぇーわお前。……かなり遅くなったが、執務官試験合格おめでとな、神宮寺。」

「そうだった、おめでとう! 後で連絡先教えろよ! ずっと言えなかったんだからな!」

「ああ……後でな。……ありがとよ、お前ら!」

 

 

 

その後、休憩を挟み復活した彼等が王の財宝になけなしの魔力を使い魔法を補充している時、ふとその内の一人が疑問を漏らした。

 

「――そう言えば、どうして急に俺らが機動六課に合流する事になったんだろうな?」

「……確かに。ただの合同訓練とかなら神宮寺までわざわざ呼ばないよな?」

「それで言えば、機動六課の設立理由も気にならね? ……今更だけど。」

「あー……スカさんがあんな感じだもんな。確かに、何で作られたんだ? 機動六課。」

「……あれ、なんか急に怖くなってきたな。」

 

機動六課が何と戦っているのか……その正体が彼等に告げられるのは、もう少し後の話だ。

 

 

 


 

 

 

――同時刻、HE教会地下大聖堂にて40名弱の少女達が魔法戦を繰り広げていた。

 

「でりゃァッ!」

「ぐっ……! この野郎!」

 

魔法戦と言っても訓練の為の模擬戦であり、更に言えばその半分程はまともな戦闘とは言えないようなお粗末な物。

間合いの取り方も立ち回りも、扱う魔法の構成さえ拙い児戯にも等しい光景だった。

そして、そんなじゃれ合いを呆れたように眺める者が4人、主祭壇と呼ばれる机に腰かけていた。

 

「はぁ~……なんか、こうも拙いと訓練つける気にもならないよね。聖女様は本当にアレを兵士として扱うつもりなのかなぁ……どう思う?」

「聖女様がそう仰るのであれば、それに従うよ。俺達が"将"に選ばれた以上、その役目は果たすさ。……ま、俺も"将"って言える程魔法に精通してる訳でもないんだがな。」

「はは、お前さんの場合は魔力のごり押しだけで結構なもんだったからな。それに今は俺が稽古つけてやってんだ、十分"将"を名乗れるだけの力はついてるぜ……なぁ?」

「興味ないわ。――全く、起こされたから期待してみれば……一体何しようとしてるのかしらね、あの子は。」

 

彼女達は聖女が持っていたリンカーコアの中で、一際強いと判断された4人だ。それぞれが10人程の兵士の指揮権を与えられており、便宜上"将"と呼ばれていた。

その最後の将が漏らした"あの子"と言う言葉に3人目の将が忠告を入れる。

 

「あの子ってのは、聖女の事か? ……あんまり機嫌を損ねるような事は言わねぇ方がいいぜ? アイツみたいにされるぞ?」

「え? あたし? 大丈夫だって、ちょっと考え方とか()()して貰っただけだしさ! 寧ろ悩みとかもなくなって色々楽だよ?」

「悩む事も大事な自分の一部って事よ……まぁ、もうお前さんには届かんだろうけどな。」

「うっわ、なに? その言い方。やるって言うなら相手になるけど?」

「落ち着けよ、聖女が言ってたろ? 『私闘は厳禁』ってな。」

「ん、わかった。聖女様の言葉だもんね、守らなきゃ。」

「……コレだもんなぁ。くわばらくわばら……」

 

先程まで喧嘩腰だったのにも拘らず、聖女の言葉一つで素直に座り直す少女の姿に、両手を合わせて何やら唱える少女。

その双方を一瞥しつつも、最後の将はやはり興味を持てない様で、視線を正面の訓練に向け直すと溜息を吐く。

 

――私の知ってるあの子は、こんな事するようには思えなかったんだけどな。

 

思い返すのは共に研究に費やした日々。

様々な発見や失敗に一喜一憂する"妖精"の姿。

そのどれもが今の聖女の行動に結びつかない。『どうしてこうなったのか』と何度考えたか知れない。

 

だが、聖女に直接聞く事も出来ない。

聖女は『今の身体の力を掌握する為』とだけ告げると、自らの部屋に閉じこもってしまったからだ。

そして聖女の今の身体は食事の必要もないのか、それからは本当に一瞬たりとも外に出た姿を見ていない。

 

――早く出て来なさいよ。私は貴女のお話を聞く為に起きてきたんだから。

 

そう彼女が思考した正にその時、聖女の部屋の方角から異様な力を感じた。

思わずと言った様子で彼女が主祭壇から降りると、他の"将"も同様に警戒していた。……いや、1名は目を輝かせて今か今かと待っている様子だったが。

 

やがて、足音と共にその気配が近付き、姿を見せた。

 

「――お待たせしましたね、私の将達よ。」

「聖女様!」

 

彼女が身に纏う気配を間近で感じ取り、喜びの声を上げた少女以外の3人に戦慄が走る。

3人にはもはや、目の前の女性が人間には見えなかった。

 

――この気配……何と神々しい!

――おいおい、冗談じゃねぇぞ……こりゃあ魔力って呼んで良いのか?

――まるで私の理論に喧嘩を売るような力ね……出鱈目も良い所よ。

 

「漸く力の制御が出来てきました。……しかし、まだ不完全です。完璧に掌握する為に、貴女達の力を貸してくれませんか?」

 

そう言って聖女が浮かべた笑みに逆らえる者は、この場に居なかった。

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