転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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文章が伸びてしまったので、本格的な訓練は次回です。


合同訓練開始前

AM 7:30 機動六課隊舎付近の広場

 

「お、来たな。」

「八神部隊長? えっと、その方達は……?」

 

ティアナ、エリオ、キャロ、ヴィヴィオ達と朝食等を済ませ、いつも通りに午前中の訓練の為に広場に集まると、そこには昨日から訓練に参加しているはやてさんが大勢の銀髪オッドアイ達と話しているのが見えた。

遠目から見た彼女達の様子は、例えると古い友人と久々に再会したような和やかな雰囲気で、少なくとも敵ではない事が分かる。

 

その為、昨日までは居なかった面々がいる事に一瞬走った緊張は直ぐに解け、彼等についてティアナが尋ねると、はやてさんは「せやな、本題の前に軽く紹介するか」と言って彼等について話してくれた。

 

聞けば彼等はなのはさんやはやてさん達と同じく、この世界の地球出身の魔導士らしい。

まぁ、彼等の髪と眼の色から俺達と同じ転生者である事は容易に想像つくが、それでも地球出身の転生者と会うのは初めてだ。

『やっぱり居たんだな』と言う納得と『いや、多くね?』と言う疑問が半々ではあったが、はやてさんがあれ程気を許していた理由については納得できた。

 

はやてさんの説明後にそれぞれ自己紹介してくれたが正直数が多く、似た名前も多かった為覚えられる気はしなかった。……顔も似てるし。

 

そして彼等は本来地上本部に所属している部隊であり、俗にいう"ミッドチルダの銀盾"である事も説明してくれた。

……"ミッドチルダの銀盾"と言えば、地上では結構名の知れた部隊だ。

ミッドチルダの治安が今よりも悪かった時に活躍し、結果的に彼等のおかげで地上の治安は大分改善されたのだと訓練校時代にクラスメイトの話題に上がった事もある。

……まさかあの子の憧れが転生者の部隊だったとは当時は思わなかったけど。

 

「"ミッドチルダの銀盾"って、確かレジアス中将の"お気に入り"ですよね? そんな部隊がどうしてここに?」

「簡単に説明すると、今後の為の合同訓練やな。……いよいよもって、()()()()()()()()()()を果たす時が来たって事や。」

「「「「――っ!」」」」

 

やや声のトーンを落としたはやてさんの言葉を聞いて、ヴィヴィオを除く俺達フォワード陣の間に緊張が走る。

機動六課の本来の役割……以前一度だけなのはさんがティアナに話していた、"滅びの予言"の回避。

なのはさんが過度な訓練を身に課し、倒れる原因になった脅威……それがもうすぐ訪れると言うのだ、緊張しない訳がない。

 

だけど、緊張こそすれど怯みはしない。それは俺とティアナだけではなく、エリオとキャロも同様だ。

二人もいつかの模擬戦後にフェイトさんから機動六課の目的を伝えられた時は結構動揺していたが、それから日々の訓練で実力と共に自信も付けてきたのだ。この年齢で既に、どんな脅威とでも戦う覚悟は出来ている。

それが二人の表情から伝わってきた。

 

だが、どうやら()()の事情は少々違ったらしい。

 

「――機動六課の……」

「本来の役割……?」

「……それって、『ロストロギアが関わる事件に対応する部隊』以外の役割ってことだよな?」

「えぇ!? こっちに来るときに上から聞いとらんかったんか!? ……あ、いや……レジアス中将の部隊なら聞かされてなくてもおかしないんか……?」

 

どうやら銀盾のメンバーは役割どころか"予言"の内容も知らなかったらしく、はやてさんは頭を押さえて溜息を一つ吐くと、「仕方ない、ついでやし説明するわ」と前置きし、以前俺達がなのはさん達から教えて貰った内容を話し始めた。

 

 

 

「――と言う訳で、機動六課は本来この予言の滅びを阻止する為に結成された部隊って訳や。」

「滅ぶって……ミッドチルダがって事か?」

「明言されてない以上、最悪の場合は周辺の次元世界も……」

「そんな話全然聞いてねぇぞ……?」

 

はやてさんの口から告げられた滅びの予言の内容に、銀髪オッドアイ達の間に動揺が走る。

 

実際、最初に聞いた時は俺も動揺したっけ。

場所とかタイミングとか一切分からないのに、放置すれば『滅ぶ』とだけ言われたのだ。それも"どのくらいの規模"が"何によって"、"どうして滅ぶのか"も全く分からない。

これで予言の回避を頑張れと言われても、どう頑張れと言うのかと言う話だ。

 

今、彼等の脳裏にもそう言った混乱が広がっているのだろう。

その時、はやてさんが手を"パン!"と叩いて彼等のざわめきを沈める。

 

「動揺するんも分かるけど、話を戻させて貰うで? 私達は滅びの回避を行う為に……まぁ、色々と裏技っぽい事もして戦力を集め、優れた素質を持った魔導士達をフォワードとしてスカウトし、鍛え上げた。そうして出来上がったんが今の機動六課や。実際、その甲斐あって、今の機動六課の保有する戦力は管理局全体で見てもトップクラスになったと信じとる。」

 

今回の合同訓練の目的を説明するはやてさんの言葉を、銀盾のメンバー達は真剣そうな表情で聞いている。

途中で出てきた"裏技"に関する説明は直接されなかったものの、そこは彼等も転生者だ。リミッター等についての事だと言うのは理解しているのだろう。

 

「せやけど、予言の内容が内容や。用心に用心を重ねるに越した事は無い。今回銀盾との合同訓練を行うのも、滅びを回避する為の戦いで上手く連携できるようにするんが狙いや。……何か質問はあるか?」

 

説明の最後にはやてさんがそう尋ねると、銀盾の一人が手を挙げた。

 

「敵の正体とか見当はついてるのか?」

「滅びの原因とされる凶星の正体は、HE教団の聖女で間違いない。でも、今の聖女の能力は未知数や。」

「あれ、HE教団の聖女って捕縛されたよな? それもはやて達の手で。」

 

聖女の捕縛劇に関する一連の騒動は、HE教会周辺ではちょっとした有名人だった事もあってニュースにもなっていた。

そんな事情もあって件の聖女が既に捕縛済みである事は、事件に直接関わっていない俺達にも周知の事実として認識されている。

なので彼の疑問は尤もな事であり、もしも彼が疑問を口にしなければ俺が代わりに尋ねていただろう。

 

そしてそれに対する返答としてはやてさんから告げられた内容は、俺達を再び混乱させるのには十分すぎる内容だった。

 

「――HE教団の聖女の正体は()()()()()()()()や。それも、融合事故を利用して宿主の身体を完全に奪うタイプのな。」

 

はやてさんの返答を受けて、銀盾のメンバー達がざわつき始める。

彼女の言う事が正しいのであれば、今回の相手は次元犯罪者を相手にするのとは全く勝手が変わって来るからだ。

 

「……あの時捕縛したんは聖女の"抜け殻"の様なものやった。……取り逃したんは、私の失態や。相手の正体を完全に理解していないにもかかわらず、最後の最後で油断した。」

 

そう言って悔し気に拳を握ったはやてさんの言う"失態"も、そう言う()()()()()から来る物だろうと言う事は想像に難くない。

そう、今回の相手は簡単に捕まえられる相手ではない。そればかりか、最悪の場合――

 

「それって、下手したら俺らの身体も乗っ取られる可能性があるって事か……?」

「だとしたらそんな相手、捕まえようが無いんじゃないのか?」

「いや、俺達ならまだ全然マシだろ。それよりもヤバいのは……」

 

そう言って銀盾が見つめるのは、今もこの話を傍で聞いていたなのはさんだ。

もしもなのはさんの身体が奪われるような事があれば、その時点で俺達の勝率はがくんと落ちる事になる。

 

「なるほど、"滅び"か……」

「ちょっと!? 聞こえてるからね!?」

 

銀盾の誰かがボソッと零した声に、なのはさんがツッコミを入れる。

だが彼女の力が悪意を以って振るわれる事があれば、時空管理局は容易に落ちるだろう……そんな印象を受けるのも確かだ。

先程はやてさんが言ったように、機動六課は時空管理局全体で見てもトップクラスの戦力。しかし、だからこそこの事件は別の部隊に任せるべきなのではないか……そんな俺の心の声が聞こえたかのように、はやてさんは口を開いた。

 

「皆の心配してる事は分かる……でも、"それ"に関しては心配せんでええ。対策の為に、木之元さんにも動いて貰っとる。今肝心なのは、聖女を確実に倒し、絶対に逃がさない為の実力と連携を手に入れる事なんや。」

 

はやてさんはそう告げると、「……話がそれたな。他に質問あるか?」と再び銀盾を見回す。

するとやや間があって、一人の銀髪オッドアイが手を挙げた。

 

「……タイミングはいつ頃を想定してるんだ? 連携を万全にするにしても、前日に訓練し過ぎて当日動けませんじゃ話にならない。大体の予定は決まってるんだよな?」

「一応、およそ一週間を想定しとる。滅びの訪れる時期にはある程度当たりは付いとるんやけど、それによればもう暫く余裕がある。一週間で納得いかんかったら、もうちょっとだけ伸びるって事もあり得るな。」

 

質問の返答として挙げられた期間は一週間。

……多少の余裕を持たせていると言っていたが、それでも2週間や3週間と言う訳ではないだろう。

つまり、俺達は今まで一度だって話した事も無い部隊と、たった一週間で実戦レベルの連携を組めるようにならなくてはならない。

 

「一週間か、あまり長いとは言えないが……」

 

銀盾の誰かが言ったように、目標の高さに対して一週間と言う期間は決して長くない。

しかし、そんな事ははやてさんも分かっている筈だ。

この一週間と言う期間には何かしらの理由……或いは、可能と思わせるだけの根拠があるはず……そう考えた時、俺はこれまで何故疑問に思わなかったのか分からないような、当然の違和感に気付く。

 

――あれ? そう言えば、()()って"あの機能"が付いてなきゃおかしいよね? なんで今まで……?

 

俺達が普段考えもしなかったその機能に関しては、寧ろ彼等にとっては当たり前の物だったのだろう。

だからこそ、彼等は当然のように答えに行き着いた。

 

「いや、待てよ? 確か、機動六課なら()()があるよな?」

「……! 仮想戦闘空間シミュレータか! ジェイル・ギアと同様の技術が組み込まれているのなら、当然"あの機能"も……!」

 

彼等の言葉を肯定するように、はやてさんがうっすらと笑みを浮かべて頷いた。

 

「そう言う事や。今までフォワード陣は肉体の鍛錬と並行していた関係で、仮想空間内との肉体の成長の誤差を気にして使えんかったけど、もう皆その段階は突破したからな。これであの機能も使えるっちゅう訳や。」

 

それはジェイル・ギアが人気を誇った理由の一つ。

小さな子供から仕事が忙しい社会人まで、平等にコンテンツを楽しめるようにと実装されていた機能。

 

()()()()()()、フルに活用して一気に仕上げるで!」

 

一週間と言う短い期間を強引に引き延ばす事が出来る、唯一の方法だった。




ちなみに神宮寺は銀盾メンバーの中にしれっと紛れ込んでいます。(銀盾に入った訳ではない)

ちなみに補足として、はやてが銀盾メンバーを連携相手に選んだ理由には、『内通者がいないと信じられるメンバー』以外にも、実は『銀"盾"=予言に記された守護者候補?』と言うのもあります。
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