転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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今回は戦闘無し。
時系列はアニメで言う所の4話です。


環境の変化

フェイトとの初戦闘を終えて数日が経過し、俺達の生活は激変した。

分かりやすく表現すれば、第一次修行ブームと言った所だろうか。

 

理由は2つ。自分の実力不足を痛感した事と、()()の結果神宮寺が明かした情報だ。

フェイトが伝言にと残した『考えておく』と言うメッセージを伝えた途端、神宮寺は無言で拳を突き上げたのだ。当然周りの銀髪オッドアイから事情を事細かに問い質され、それは判明した。

 

果たして「フェイトの速度に対応すれば親しくなれる(かもしれない)」と言う情報は、ある種の起爆剤として十分すぎる成果を上げたのだった。

 

そして今も転生者の皆は神谷の持っている映像や、神宮寺の実体験を基に訓練を行っているのだが…

 

「なのはちゃん?どうしたの?」

「ううん、ちょっと考え事。」

 

今俺は皆と離れて月村邸にてお茶会の最中だ。

俺自身先の戦いで力不足を痛感したし、訓練に専念したい気持ちもあるにはあるが優先順位と言う奴だ。月村邸にジュエルシードが無い事は以前確認したのだが、見落とした可能性はどうしても0にはならない。念の為と言う事もあるし、警戒は怠っていない。

…それに友達からのお誘いだ。訓練も大事だが、この二人との関係もそれ以上に大事にしていきたい。

 

ただ一つ、問題があるとすれば…

 

「あー、もしかして()()()()()()()()?」

 

そう、魔法がバレたのだ。…しかもかなり広い範囲で。

 

原因は少し前に封印された大木のジュエルシードだ。

ただでさえ目立つ大木の出現に、30人近い人数の魔導士が空を飛んでいるところまで見つかった。しかも大量の銀髪オッドアイは元々ちょっとした都市伝説扱いだったのに、更にそれが空を飛んだのだ。

 

俺達が気付いていない内に写真が撮られ、遠くからではあるがTVカメラにも撮られ、週刊誌や朝のニュースで忽ちにして全国拡散。隠す隠さないの事態ではなくなってしまった。

前世のようにSNSが普及している訳でもないのに恐ろしい情報伝達速度だ、管理局が来たら驚くだろう。ごめんなさい。

 

「えっと…あはは…」

「いや、学校でも話してくれたじゃない。…もう隠す必要も無いでしょ?話してみなさいよ。」

「う、うん…」

 

朝のテレビで俺が木の根に対してディバインバスターを撃っている光景は、翌日朝のニュースで流された。もちろんプライバシー保護の為映像が加工されているが、俺の『制服ほぼそのまんまなバリアジャケット』と『モザイクを貫通する銀髪オッドアイ』のせいで近所の皆には即バレた。

結果的に学校の先輩や後輩に質問攻めだ。クラスメイト?みんな転生者だったからむしろ反省会ムードだ。…一部の人は寧ろ現状を楽しんでいるようだったが。

俺も丁度良い機会だったし、アリサとすずかに色々話していた。

 

「…金髪の強い魔導士かぁ。」

「皆それで修行中なんだ…もしかして、今日のお茶会迷惑だったかな…?」

「そんな事無いよ!私の場合、魔力量を増やすよりも戦い方を工夫した方が良いみたいで…」

 

これはユーノと二人で修行している時に発覚したのだが、俺の持つ魔力が異常に多いのだ。AAAクラス魔導士に匹敵すると言う転生者よりも遥かに多いらしい。神谷が持っている映像を見たユーノが言うには、あの時フェイトにプロテクションが破られなかった理由は単純に出力が桁違いだったからだとか。

…丁度周りに転生者が居ない時で良かった。居たら速攻で転生者である事がバレていただろう。

そんな事もあって魔力を増やす修行も行うが、それ以上に戦い方を工夫すると言う方針になったのだ。

 

「それにしても、クラスメイト皆魔法使いだったって言う方が驚きよね?」

「私達みたいな普通の人の方が浮いちゃってるよね。」

「えっと、ゴメンね…?」

「いや謝る事じゃないし、謝られても困るんだけど。」

「でも私達教室で普通に作戦会議しちゃってるし。」

「あー、あはは。確かに会話には入り難いかも…」

 

魔法の存在がバレてしまった以上隠す必要も無いと言う事で、授業中以外の教室は俺達にとっての会議室になった。広さ、手軽さ、椅子の数…全てにおいて理想的だった。結果として最近この二人と話す機会も減ってしまったのだ。

 

「…うん、でもなんか安心した。」

「え?」

「そうだね。なのはちゃんずっと一人で抱え込むタイプだって思ってたから。」

「…なによ、その表情。気づいてないと思ってた?あんたって結構顔に出るタイプなんだから、直ぐに解るわよ。」

「えっと、その…ご心配おかけしました…?」

「かーたーい!」

「あはは、ゴメンね。」

 

魔法の存在は世間にバレてしまったが、それがどんな方向へ向かって行くのかは分からない。

原作より良い方向へ向かうのか、どこかで帳尻が合わさって然程変化を与えないまま終わるのか。…あるいは、何かしらの事件を生んでしまうのか。

でも、少なくとも俺は少し気が楽になった。少なくともこの二人に隠さなきゃいけない事は一つ減ったのだから。

…だから、この変化が何か悪いモノを生み出すのならそれと戦おう。せめて、このささやかな安息を守るために…

 

 

 


 

何処かのマンション。

そこの住人達は食卓を囲みながらテレビを見ていた。

 

 

 

『…このように、多数の少年少女が空を飛び…光線を放つ姿が映像に残っておりますが…』

『子供が個人の力で空を飛ぶ…まるで映画やアニメの世界ですな。』

『同人製作のCGでは無いですかね?流石に魔法などと言う非科学的な物よりも信憑性があるかと思われますが…』

『単純なCG合成とするには、準備にかかる時間が足りないかと…CGとしても、今の技術でここまでリアリティを出せるものかどうか…』

『少なくともこの大木が突然現れた事は間違いないでしょう。現地のアスファルトや建造物の受けた被害が、あの大木の存在を証明しております。』

『あなたはいつもそうやって科学を否定し、オカルトに持ち込む…!』

『科学を否定しているのではなく、真実を肯定しているのです!』

『えー、議論が白熱しておりますが、ここで一度CMを跨ぎたいと思います…』

 

 

 

「あっちゃぁ…完全にバレちゃったねぇ…」

 

食卓を囲む内の一人、アルフが頭に手をやり椅子の背もたれに仰け反る。

 

「まぁ、仕方ないでしょう。結界を張れる魔導士がフェイトと交戦中だったと言う話でしたし…ね?」

「…これに関して、私は悪くない。結界を張ったのは向こう側。」

 

リニスが真意を窺うようにフェイトを見遣るが、フェイトは拗ねたような表情と声色で我関せずを貫いている。怒られたことが多少堪えているようだ。

 

「まぁ、そう言う事にしてあげましょう。しかし、あちらも人数の割には不用心ですね?結界魔法を使える人材が一人だけとは思えないのですが…」

「…あ゛っ!?」

「…アルフ、今度はあなたですか?」

「いや、あたしは強制転移を受けただけだよ!?ただ、相手の魔導士…って言うかフェレットみたいな奴なんだけど…あいつ結界張ってたなぁって…」

「揃いも揃ってあなた達は…私が動けないのが実にもどかしいですよ。」

 

よりにもよって信じて送り出した二人がそれぞれ結界魔導士を足止めしていた事実にリニスは頭を抱えた。

しかし、テレビを見ていたフェイトは「そんな事よりも…」と切り出した。

 

「…もしかしたら、急ぐ必要があるかもしれない。」

「フェイト?どういうことだい?」

 

フェイトが箸でテレビ画面を指し、行儀が悪いとリニスに叱られる。反省し、箸を置くフェイト。

…と同時にテレビから響き渡る落雷の様な音。

 

「…ジュエルシードの封印が撮られた。」

「…なるほど、確かに不味い事になるかもしれませんね。」

 

映像では青い宝石の様な物であると辛うじて判別できる程度だが、魔法を扱う者たちがそれを求めている事だけは曖昧な映像からでも伝わってくる。

 

「…ジュエルシードが何か解らなくても、探そうとする奴は出てくるかもしれないねぇ…」

 

ジュエルシードを探す勢力に、魔法も知らない一般人が加わればどうなるか…思い浮かぶ最悪の結末はなのは達のみならず、フェイト達の頭も悩ませる新たな問題だった。




平 和 な お 茶 会

実は猫のジュエルシードは既にフェイトさんの手元にあります。
正確にはフェイトさんに貢いだ銀髪オッドアイの一人が封印してました。

ある意味一番場所が分かりやすいジュエルシードなので、降ってくるのをスタンバってました。リスキルされた14番さんかわいそう。

訓練と言うよりは修行パートですが、バッサリカットします。
修行パートは絵になるユニークな修行以外はカットした方が良いって銀魂でも言ってた。

以下興味がある人用にざっくり説明

なのはさん
魔力は既に規格外なのでディバインシューターの操作や、フェイト対策としてバインドの訓練に時間を充てる。
成果は出ている…と言いたいが、その実伸び方としては微妙。
と言うよりも、元々全て高水準で自然に出来た。今までは戦闘の経験が無く、自覚が無かっただけらしい。
なお、本人は心当たりがあったようだ。

ユーノ
なのはさんの訓練の為に結界を張っている。たまに銀髪オッドアイ達もやってくる。
魔力も十分に回復した為、慣らし運転中。

神宮寺
ネックである基礎魔力量の向上の為、訓練中。
訓練中に使用した魔法は全て王の財宝の中へ入れる為一石二鳥。
王の財宝から射出した魔法を回収できないかと考えた結果、使えない魔法を一つ開発した。
他の銀髪オッドアイの魔法もいろいろ入ってる。

神谷
魔力量は問題無い為、シンプルに戦闘訓練として組み手を中心に行っている。
バインドや魔力刃の追尾性を向上させるコンセプト。
目標は戦闘が出来るユーノ。

神場
色々魔法を作っているが『敵を完全に追尾する魔力弾』を組み手で使用した結果、バトル物の少年漫画のお約束である『自分の魔法で倒される』を経験し、作る魔法を厳選するようになった。
最初は対フェイト用の魔法で勝てば良いと考えていたが、いざ使用するとなると魔力量が不安になった為訓練を始めた。

斎藤&木之元
『やれやれ系』を気取っていた斎藤だったが、実際は滅茶苦茶関わりたかった事が判明。
ちょっとした事情もあり、強くなりたいと訓練に参加。
木之元は主に付き添いだが、時々組手に参加している。
木之元は普通に強い為、組手相手として割と頼られている。
斎藤は…強いと言えば強いが、相性次第では酷い。

その他の転生者達
それぞれ自分の長所を伸ばす訓練や、特典を活かすための訓練を行っている。
銀髪オッドアイ達だけでなく、大木のジュエルシードで知り合った転生者も一部参加している。

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