転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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訓練、満了

仮想戦闘空間シミュレータを用いた訓練に入ってから、機動六課と銀盾の訓練は日に日にその密度を増して行った。

 

「エリオ、槍は状況に応じてリーチを変えられる武器だ! 常に間合いを意識し、コントロールしろ! 敵にペースを譲るな!」

「は、はい! ゼストさん!」

 

時には臨時により専門的な技術を持つ講師を招き、

 

「あ、あの……すみません。一度に多数の魔導士さんを強化する訓練がしたくて、その……つ、付き合って貰えませんか!?」

「……! ……へへ、俺で良いなら喜んで。」

「いや、告白されたみてぇに言ってんじゃねぇよ!?」

「言っとくけどキャロは俺ら全員に言ってるからな!?」

「だって人生で一度は言ってみたいじゃん……」

 

時には訓練を通して交友を深め、

 

「全力で行くよ、フェイトちゃん、アリシアちゃん!」

「うん、私達も手加減なんてしないから……!」

「二人共、私も居るって事忘れとらんか? 夜天の主の名は、伊達やないで?」

 

「なのはさん、あんな魔法も使えるんだ。あたしなら、どう対処するかな……」

「戦ってるの初めて見たけど、はやてさんって結構技巧派なのね……あの術式、あたしにも使えるかしら……?」

「フェイトさん程の速度だと、守りを気にするよりも一息に攻める方が効率がいいんだ……ストラーダの噴出機構を上手く制御できれば、僕も出来るかな?」

「私が補助をかけるなら……今、と……今……イメージは出来るけど、戦闘が速すぎて多分普通に詠唱してたら間に合わないから、ある程度戦闘の流れを予測しなきゃ……」

「「「「「「「「「「はぇ~……すっご……」」」」」」」」」」

 

時には隊長陣の訓練から学び、

 

「標的の狙いが地上本部に移った! 今よ、神谷さん!」

「よし! カートリッジロード、≪ストラグルバインド・パワード≫!」

『――ッ!?』

「動きが止まったわ! スバルは障壁を、皇さんは援護をお願い!」

「了解、ウイングロード!」

「分かった!」

「キャロは補助魔法の詠唱開始! 皆も配置について! スバルが標的を叩き落したら、一気にやるわよ!」

「はい!」

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

時には想定される脅威に共に立ち向かい、連携を磨いた。

 

そして、一週間後――

 

 

 

15時と言う、普段よりかなり早い時刻に、彼女達は仮想空間から帰って来た。

今日は連携強化訓練の最終日であり、その訓練が今しがた終わったのだ。

 

「お疲れ様、皆! これまでよく頑張ってくれたね。」

 

しかし仮想訓練所に並ぶフォワード陣と銀盾を見回して満足気な笑みを浮かべるなのはとは対照的に、フォワード陣はやや不安気な表情だった。

 

「あ……あの、なのはさん!」

「ん? どうしたの、スバル?」

 

そんな彼女達を代表するように、スバルがなのはに問いかける。

 

「あ、あたし達は一週間前と比べて、確かに強くなったと思います! で、でも……!」

「……実際に戦った時、勝てるか不安?」

「ッ! …………はい。だって、仮想訓練でも滅びを防げる確率は安定しませんでしたし……それに、実際の滅びがどんなものかだって……」

 

そんな彼女の不安は、この場に居る全員の代弁でもあった。

今の自分達が滅びなんていう脅威を防げるのか分からない、自分達の訓練が実戦で発揮できるのか分からない、そう言った"分からないと言う恐怖"が訓練課程の終了が近付くにつれて彼女達の中で大きくなって行ったのだ。

しかしそれは――

 

「わかるよ。私だって怖いもん……だよね、フェイトちゃん。はやてちゃん。」

「うん。多分、怖くない人なんていない。もしもそんな人がいるのだとすれば、それはきっと()()()()()()()()()()()()()()()()だよ。」

「せやな! 正直なところ、私も今からでも部隊長誰かに代わって欲しいくらいや!」

「はやて……?」

「じょ、冗談やってリイン! ちょっと場の空気和まそうとしただけやないか!」

 

そう言って冗談を言うはやてだったが、一転して真面目な表情で向き直ると静かに口を開いた。

 

「まぁ、誰かに代わって欲しい言うんは冗談やけど……それでも怖いのはホンマや。けど、さっきフェイトちゃんが言ったみたいに、こんな状況で恐怖を感じん奴ほど信用出来ん奴も居らん。だから、今そう感じている皆を私は心から信頼できる。ここにいる皆となら、どんな滅びだって打ち倒せる筈やと信じられる。」

 

そう告げるはやての眼には、言わずとも伝わる信頼の光が見えた。

その眼を見た者達の表情から、少しだけ恐怖が薄れたと感じたはやては「でも」と口を開いた。

 

「恐怖が重すぎてもいざと言う時に足を引っ張りかねんからな、ここで皆にちょっとした『自信』のプレゼントや。」

 

そう言って部屋の一角へ視線を向けるはやて。

その場に居た全員が彼女の視線を追うと、そこに居たのは――

 

「どうも! 皆、久しぶり!」

 

なにやら大きな箱を抱えた白衣の女性……木之元(きのもと) 菜都美(なつみ)だった。

 

「お前……木之元か!? 機動六課に居たのかよ!?」

「マジか! 久しぶりだなぁ!」

「どうりで最近地上本部で見ない訳だ。」

「え、まさか斉藤も機動六課に居たりしないよな……?」

「あー……まぁ積もる話もあるかも知れんけど、先に用件済まそか。」

 

彼女の姿を見た銀盾達が途端に騒がしくなるが、はやてがそう注意すると途端に落ち着いた。

 

「うわぁ! 急に落ち着くな!? ……って、そんな場合じゃないよね、分かってるよ。……えっと、この辺で良いかな? よいしょ……っと。」

 

そう言って木之元が近くにあった台に持っていた箱を置くと、結構な重量を感じさせる鈍い音が響く。

 

「この中には以前、皆から預かったデバイスちゃん達が入ってます! 勿論私とシャーリーちゃんでしっかり強化&カスタマイズ済みだよ!」

 

そう言って自信満々と言った様子で木之元が箱を開くと、中には無数のデバイス達が待機状態で収まっていた。

それを見た銀盾達から「おお!」と歓声が沸くのを聞いた木之元は、その中から代表的な一つ……レイジングハートを取り出すと、説明を開始する。

 

「今回のカスタマイズで調整したのは2つ。先ず、基本的な処理速度の強化……まぁこれは言わなくても大体わかるよね? それでもう一つは、『融合騎とのユニゾン防止機能』だよ。」

「ユニゾン防止機能……あぁ、成程な。」

 

木之元が告げたその機能を聞いて、その場に居た全員がその理由に納得の表情を見せる。

 

「はやてちゃんから今度の敵がユニゾンデバイスって聞いてね、直接この機能を付けて欲しいって頼まれたんだ。効果に関しては、はやてちゃんがセットアップ中にユニゾン出来なくなる事を確認してるから保証するよ!」

 

はやては訓練の終了後、度々木之元のもとを訪れ、ユニゾン防止機能のテストをしていたのだと言う事が木之元の口から語られると、銀盾達ははやてを心配そうに見る。

 

「はやて、まさか今もユニゾン出来ないとか無いよな……?」

「安心せぇ、使ったんは試験用のデバイスや。リイン達にはそんな機能つけてへんから、普通にユニゾンできるで。」

 

そう言ってはやてが目の前でリインフォースとユニゾンして見せると、銀盾達は安心したのか溜息を吐いた。

 

「……ま、これで大体説明は終わりや。それぞれ自分のデバイスを返してもらったら、一旦広場に出るで。新しいデバイスの処理速度に慣れて貰わなあかんからな。先に行って待ってるな~」

 

はやてがそう言って部屋を後にすると、その後の室内には俄かに活気が戻るのだった。

 

 

 

そして、数時間後――

 

封時結界が張られた機動六課隊舎付近の広場では、慣らし運転を兼ねた模擬戦を終えた皆が神宮寺の生み出した揺らぎに対して魔法を放っていた。

 

「なんか、変な感じね……あの中に入った途端、魔力弾の制御が全く効かなくなるって感覚は……」

「あー、確かに……昔は制御とか考えずに使ってたから気付かなかったな。」

「まぁこの揺らぎの中は時間が止まってるからな、その関係じゃないか?」

「ふぅん……?」

 

「ねぇねぇ、これってさ、ウイングロードも入るのかな?」

「……どうなんだろうな? 俺らは使えないからなぁ……試してみるか?」

「案外強かったりするかもな!」

 

「すみません、僕の場合殆ど近接用の魔法なので……」

「大丈夫大丈夫、普通の魔力刃突っ込んでた時でもコイツかなり使いこなしてたからさ。何でも入れてみるもんさ。」

「そう言いつつ、お前は今何入れようとしてんだ神場?」

「え、コレ……? ……何なんだろうな、俺にも良く分かんね。」

「またそんな訳分かんねぇもんを……! あっ、コラ! 入れんな!!」

 

「キャロ、アレって今使えないのか?」

「ギオ・エルガですか? ……えっと、ヴォルテールが協力してくれないとダメなんです。」

「って事は、今は拒否られてんのか……?」

「ほら、あれじゃね? 『我が力を貸すのはキャロだけだ』……みたいな?」

「あ、はい。そんな感じです。」

「成程~」

 

「ヴィヴィオって聖王の記憶持ってんだよな? 今の俺らって、当時の魔導士達と比べてどんなくらいだ?」

「そうですね……国の騎士にはそれなりに居たくらいの実力ですね。」

「はぁ……やっぱ昔の魔導士は強いって事なのかね……」

「? 十分自信を持って良いと思いますよ? 流石に騎士団長クラスとは言えませんが。」

「そっか……因みになのははどんなくらい?」

「"(兵器)"クラスですね。完全に。」

「だよなぁ~」

 

すっかり打ち解けた雰囲気のフォワード陣と銀盾達を見つつ、なのは達は今後の予定を話していた。

 

「やっぱり一日休日を挟むべきじゃない?」

「確かに疲労が溜まってるかもって言う、なのはちゃんの懸念は分かるけどな……私はこの数日間、向こうが全く動きを見せてないんが気になるんや。なんや、裏で厄介な準備進めてる気がしてならんねん。」

「私もはやてに同意かな……()()()()()も聞いたし。」

「気になる話?」

「……前にジェイル・スカリエッティを尋問した事があったでしょ?」

「あぁ、フェイトちゃんだけ残ってたアレやな?」

「うん……あの時にね、スカリエッティが聖女から受けた依頼について聞いたんだけど、聖女はこう言ってたんだって。『私の()()()()器になる身体を作って欲しい』って。一時的って事はつまり……」

「最終的な目標とする身体がある……そして、それが……」

「うん。多分、ここまでは聖女が思い描いた通りに事が進んでる……偽物と一緒に捕まったリーゼロッテ達も、なんか様子がおかしいって話だったし。」

「リーゼロッテさん……」

 

そう呟いたなのはが思い浮かべるのは、10年以上前に一度敵対し、力も合わせた2人の女性だ。

彼女は前回の出撃の際、罠である事を懸念して現場に赴かなかった。その為、話に出たリーゼ姉妹の今の状況を伝聞でしか知らない。

 

――二人の事が心配だな。一度は敵対してしまったけど、最後は分かり合えた相手だから……

 

「ねぇ、私、今の二人の様子を確認に――」

「――会話を遮って悪いが、それは不可能だ。」

「! 最高評議会の……」

 

なのはの言葉を遮って現れたのは、最高評議会の三人だった。

彼女達は神宮寺の王の財宝に魔法を入れている光景を訝しげに見ながら近づいてくると、なのは達の前でその脚を止めた。

 

「不可能って、どういうことですか? まさか……」

「ああ、先程知らせが入った。……()()だ。リーゼロッテ、リーゼアリア……そして聖女。3名ともな。」

「そんな……! どうして……」

「監視カメラに映像が残っていたが、突然奴らの足元に転送の術式が現れ、それっきりだ……奴等を脱獄させたのは本物の聖女で間違いないだろう。」

 

彼女達を捉えていた監獄には転送魔法は勿論、飛翔魔法や身体強化を始めとしたありとあらゆる魔法に対する妨害術式が常に起動している。

そんな監房に遠隔で術式を飛ばし、警報も発令されぬままに脱獄させる等、人知を超えた離れ業だ。

 

そう説明する三人の言葉を聞いて、はやては自身の決意をより強くする。

 

「やはり、明日直ぐにでも動くべきや。今まで何の動きも見せんかった奴が3人を回収した……こんなあからさまに動くって事は、もう時間が無いって事やと思う。」

「だね。今日はもう皆も休めさせて、明日の出撃に備えよう。」

「……うん、そうだね。確かに、もう時間はないみたい。」

 

二人の言葉に、なのはも決意する。

もう一刻も猶予はない。本来なら今すぐにでも動きたいところだが……流石に模擬戦を終えて直ぐでは体力が戻っていない。

もどかしいが、万全を期すならば動くのは明日だ……そう言う事で、3人の意見は一致した。

 

「ふむ……そう言う事であれば、明日は我等も同行しよう。」

 

するとなのは達の話を聞いていた最高評議会の一人、リオンがそんな提案を持ち掛けてきた。

 

「お三方が……でも、大丈夫なんですか? 今回の相手は……」

「ユニゾンデバイスなのであろう? だがそれこそ好都合と言う物だ。この身体はあくまで作り物、奴がこの身体に入ろうものなら身体ごと破壊すればいい。我等の本体は傷一つ付かぬ。」

「それとも、我等の実力を侮っているのか?」

 

そうまで言われては、流石にはやても彼女達の厚意を無碍には出来ない。

実際、戦力は多ければ多い方が良い現状、彼女達の協力は魅力的でもあった。

 

「いえ、そんな事は……分かりました、明日はよろしくお願いします。」

「うむ、それで良い。こういう時に戦う為の身体なのだからな。」

「ただし、作戦中はお三方と言えど私の指示に従って貰います。こちらも、今回の為に立てていたプランがありますので。」

「ふむ……了承した。確かに予言の一件に関して、その全権を握るのは貴様であるからな。我等も従おう。」

「ご理解いただき、ありがとうございます。」

 

最高評議会の協力に感謝し、頭を下げるはやて。

 

「うむ、では明日……」

 

そんな彼女の対応に満足気にこの場を去ろうとする三人であったが、頭を上げたはやての言葉にその脚が止まる。

 

「つきましては、今日はこの隊舎に泊まっていただきます。」

「へ?」

 

はやてからの思わぬ指示に、思わずクリームの口から間の抜けた声が飛び出す。

 

「先程は明日出撃と言いましたが、状況は今夜にでも動くともしれません。そう言った事態に対応する為に、機動六課でも深夜スタッフが状況に目を光らせております。隊舎に居れば合流も直ぐに出来ますが、離れられては私達の動きに支障が出ます。」

「む……むぅ、成程な……仕方あるまい。」

 

彼女達としては身体の秘密を知る者が少ない方が良いため、可能であれば機密区画に戻りたいのだが、はやての言葉にも頷ける点は多い。

協力を申し出た手前、自分達が足を引っ張るような事態は彼女達としても避けたい所なのだ。

 

「また、明日に備えて今日の食事はこの後直ぐを予定しております、風呂は18:00までに済ませて下さい。消灯時間は19:00――」

「む、むむむぅ……」

 

最高評議会の三人はしばらくぶりのスケジュールを頭に叩き込むのだった。

 

 

 


 

 

 

「なのは、今ちょっと良いか?」

 

模擬戦を終えた後の広場にて、封時結界を解除しようとしていたなのはのもとに神宮寺が訪れた。

既になのはと神宮寺以外は結界の外に出ており、この場に残っているのは2人だけと言う状況だった。

 

「神宮寺君? うん、大丈夫だよ。今結界を解除するから――」

「あぁ、いや、結界の解除は待ってくれ。」

「え?」

「実は頼みがあるんだ……」

 

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