転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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ヤバい、ティアキンヤバい。何がヤバいって、マジヤバい。(語彙)
更新ペースを落とさないように頑張ります……


嵐の前の静けさ

――AM 5:00 ミッドチルダ北部

 

この日、市街地は早朝から物々しい雰囲気に包まれていた。

まだ夜明けと言うには暗い時間帯、とある一角に多数の車両が集まり、中からは時空管理局の魔導士達が次々と現れては整列していく。

彼等の纏う雰囲気はまさに、これから大きな戦いへと飛び込む戦士のそれだった。

 

 

 

「――総勢46名。全員揃いました、はやて。」

「ん……ありがとな、リイン。」

 

人数を数えていたリインフォースからの報告を受けたはやては彼女にそう礼を言うと、整列した魔導士……銀盾達の前に立ち、口を開く。

 

「皆、作戦は事前に告げた通りや。既に周辺の住民達には訳を説明して、遠くの街まで避難して貰っとる。私達がこれから行うのは、交渉でも決闘でもない……殲滅戦や。敵に何もさせず、なるべく短時間で一気に決着をつけるで。」

 

はやての言葉に、銀盾達は声を発さずに首肯でのみ答えた。全ては今、眼前のHE教会の地下に居るだろう聖女に、僅かにも気配を悟られない為に。

 

――フォワード達はもう十分に育ったし、私達隊長陣も以前より強くなった。レジアス中将からも部隊を借りられたし、最高評議会っちゅう予定外の協力も得られた……可能な限り、いや想定以上の準備を整えてきた。

 

居並ぶ面々を見回してこれまでの事を思い返すはやて。彼女が今回の作戦にこれ程の戦力を求めるのには、彼女しか知らない天使の力の存在が大きかった。

 

天使の存在と力をよく知っているはやてにとって、今の聖女は彼女が引き起こすであろう滅びよりもよっぽど測定不能で恐ろしい存在だ。

故に彼女は今回の作戦に、過剰な程の戦力を投入した上での電撃戦を選んだ。

彼女が手に入れた天使の力を振るわれる前に、万全の状態でない彼女を一方的に無力化する。

それは正々堂々と戦って勝ち目がない相手に取れる、最終手段でもあった。

 

しかし、それと同時にこの作戦の成功率は低いだろう事も分かっている。

原因は彼女が持つ未来視の能力だ。

 

彼女がどの程度先の未来を、どの程度正確に見る事が出来るのかは分からない。しかし、前回の戦闘で彼女が数秒先の未来を予知して行動しているのをはやても見ていた。

ならばこの電撃戦も、数秒前には予知される可能性は高い。だからこそ、彼等には告げていない()()()()()()()()を用意していた。

 

「――いざと言う時は頼むで、朱莉ちゃん。」

「う~ん……まぁ、昨日言ったように、私がどう動くかは状況をこの眼で見てから決めるよ。私にも色々都合があるからさ~。」

 

「ごめんね」と、最後にそうジェスチャーする朱莉だったが、その条件についても昨日の内に話はついていた。

天使が力を振るう際に色々と条件や制限がある事は、はやても闇の書事件で承知の上だ。その制約を破った天使がどうなるのかもその眼で見て知っている。

故にはやては朱莉に協力を強制してはいない。力を貸してくれる場合は天使として、そうでなければAランク魔導士のサポーターとして彼女は動いてくれる段取りになっていた。

 

「うん、それでええよ。ありがとうな。」

 

はやては朱莉にそう言って笑みを見せると、最後の確認として懐からジェイル・フォンを取り出すと、通話を開始する。

 

「さぁて、と……そっちの準備はええか? クロノ君。」

『ああ、何時でも大丈夫だ。』

 

通話の相手は今も市街地の遥か上空……宇宙空間に待機中の時空間航行艦船アースラの艦長、クロノ・ハラオウンだ。

はやては今回の作戦に際して、自らが信用できる仲間としてクロノの部隊にも協力を要請していた。それは彼の部隊の戦力だけでなく、戦艦アースラの機能や彼自身の持つ権限を求めての事でもあった。

 

「よし……始めるで!」

『多層式広域強壮結界、展開!』

 

クロノの号令によりアースラの機能の一つ、普通の魔導士では張る事が不可能な強力な結界が張られる。

そして――

 

『八神はやて、()()()()()()『4.5ランク』承認。リリースタイム、『300分』!』

 

クロノの権限の元、はやてのリンカーコアに掛けられていたリミッターが完全に解除された。

 

「ぐっ……!」

 

唐突に膨れ上がった魔力の感覚に、思わず呻き声を漏らすはやて。

しかし慌てることなく制御を迅速に行い、先程と同様のレベルまで魔力を抑えた。

 

――気付かれたか……? いや、事前に立てた予測では、聖女が今いるのはあの時戦った地下大聖堂だ。あの場所には部屋の内部と外部の魔力を完全に遮断する結界があった。こちらが今聖女の……天使の魔力を感知できていない以上、向こうも私達の魔力を感知できないはずだ。

 

はやてはその脳裏に一瞬浮かんだ焦燥を即座に否定し、なのは達へと向き直る。

そう、例え今のでバレていたとしても、やる事は変わらない。

 

「シグナム、()()()()()()『4.5ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「リミット、リリース!」

 

はやてが自らの権限でシグナムにかかっていたリミッターを解除すると、その身から一瞬炎が噴き出したかと錯覚するほどの魔力が放たれる。

 

「ヴィータ、()()()()()()『4ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「ザフィーラ、()()()()()()『4ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「「リミット、リリース!」」

 

続いてヴィータ、ザフィーラも同様にリミッターが外され、その本来の魔力が空気を揺らした。

しかし彼女達も歴戦の騎士だ。突如として溢れ出した魔力にも直ぐに対応し、いつもの様に洗練された魔力を身に纏い始める。

 

「ふ……久しぶりだな、全力で戦える機会は。」

「あぁ、やっぱリミッターが無いと清々しい感覚があるな。」

「油断するなよ、ヴィータ。相手はあの時の襲撃者なのだからな。」

「しねぇよ……出来る筈もねぇ。」

「ヴィータちゃん……」

 

ちなみにシャマルに関してだが、彼女には最初からリミッターがかけられていない。

それは彼女の魔力が他の騎士に比べて少ないと言う訳ではなく、彼女が『医務官』と言う立場にあるからだ。

もしもかけられたリミッターが原因で傷を癒せず、命が失われる事があれば……そう言った理由から、彼女は『戦力』としてカウントしないと言う特例処置がなされていた。

 

「プレシア・テスタロッサ、()()()()()()『10ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「リニス、()()()()()()『10ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「アルフ、()()()()()()『2.5ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「フェイト・テスタロッサ、()()()()()()『2.5ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「アリシア・テスタロッサ、()()()()()()『1.5ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「「「「「リミット、リリース!」」」」」

 

続いてはやてはテスタロッサ家に掛けられたリミッターを次々に解除していく。

電気の性質を持つ者が多いからだろうか、一瞬肌に触れた空気がピリつくような感覚を認識した頃には、既にその全員が魔力の制御を握っていた。

 

「流石ですね、プレシア。10ランクものリミッターを一度に解除されたのにも拘らず、魔力が一切揺らがないと言うのは。」

「これでも大魔導士と呼ばれたのだもの。この程度は出来ないとね。」

「ふぅ、何か全力ってのも久しぶりだねぇ……そっちの調子はどうだい、フェイト?」

「うん。問題無いよ、アルフ。これなら全力で戦える。」

『私も行けるよ! いつだって!』

「偉いわ、フェイト、アリシア!」

「「この親バカ……」」

 

それぞれの具合を確認しながら談笑するテスタロッサ一家。和やかな雰囲気を醸し出す一方で、その身に迸る魔力は既に戦闘態勢寸前にまで励起していた。

 

「天野朱莉、()()()()()()『4ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「リミット、リリ~ス!」

 

次にはやてが解除したのは、朱莉に掛けられていた……事になっているリミッターだ。

実際はリンカーコアさえも偽装された物でしかない彼女の魔力を縛る事は出来ず、術式の解除に何の意味も無いのだが、こうしておかなければ彼女は堂々とAランク相当の魔力を扱う事も出来ない……のだが……

 

「ぅわっとっと……! いやぁ~……皆凄いねぇ、こんな感覚に直ぐに慣れるなんて~」

 

と、一瞬魔力を制御できなかったかのような演技を態々している。

天使としての素性をばらさない事に関しては、彼女としても真剣にならざるを得ないのだ。

 

そして、最後に残された女性に向き直り、はやてが緊張を隠そうともせずに尋ねる。

 

「――さて……行くで、なのはちゃん……」

「うん。良いよ、はやてちゃん。」

 

彼女を最後に残したのは、何も『主役は最後にしよう』と言った理由などではない。

 

……一番リスクが大きいからだ。

 

「高町なのは、()()()()()()『4.5ランク』承認。リリースタイム、『300分』!」

「リミット、リリース!」

 

瞬間、溢れ出した魔力によって暴風が吹き荒れた。

彼女が封じていたランクははやてと同じ4.5ランク……だが、封じていた総量ははやての比ではない。

いや、そればかりかプレシアやリニスが封じていた10ランク分の魔力よりも圧倒的に多いのだ。

 

それはランクが上がるにつれてランク間の魔力量差が次第に大きくなる事が理由であり、SSS+ランクとされている彼女本来の魔力はただ漏れ出しただけで台風のような暴風を発生させる程の密度となっていた。

 

「ふぅ……ちょっと漏れちゃったね。ゴメン、はやてちゃん。」

「ちょっと……ちょっとかぁ……」

「ふふっ、でもこの通り調子は絶好調! いつでも行けるよ!」

 

間近で彼女の魔力に触れたからだろうか、軽く冷や汗を垂らすはやてに対し、実に機嫌良さそうにガッツポーズをして見せるなのは。

これ程の魔力を封じていた彼女が知らずの内にため込んでいたフラストレーションを思うと、この後の戦いがまた違った恐ろしさを孕んでいるように思えて仕方がないはやてであった。




Q.この災厄の化身は誰ですか?
A.ヒロインです。

以下、各ランクの変動表です。もしランクの数え方間違ってたら教えてください。

・はやて:A→SS+(+4.5ランク)
 なのはの訓練に付き合わされた事で、原作に比べて魔力量がやや上昇している。

・なのは:AA→SSS+(+4.5ランク)
 数値で見ればリミッター数ははやてと同じだが、実質的に封じている魔力量ははやてよりも多い。

・フェイト:AA→S+(+2.5ランク)
 原作のフェイトよりも魔力量は多いものの、ランク変動が起こるほどではない。

・アリシア:AA→AAA+(+1.5ランク)
 二重人格である上に使用するリンカーコアが別に存在する事が確認された為、
 別途リミッターが課せられている。(人格交代しても規定量を守らせる為)
 ※捕捉『フェイト/アリシアの実質的な魔導士ランク』
  フェイトとアリシアは互いにリミッターがかけられているが、
  戦闘能力としてはそれほどの影響は受けていない。
  と言うのも、彼女達の戦い方は二人の魔力を共鳴させると言う特殊なスタイルが根底にある為。
  また、フェイトの特典が魔力量や出力を増やすのではなくリミッターの影響を受けない『適性の引き上げ』である為、速度も多少落ちるものの、亜音速は普通に出る。
  その為、個々で戦えばAAランクだが、実質的な戦闘能力はSSランクの水準にある。

・アルフ:AA→S+(+2.5ランク)
 原作とは違い、今でも前線に立ち続けられている。
 鍛錬を続けていたのもあるが、フェイトに加えてアリシアからも魔力供給されているのも理由の一つ。

・プレシア:B→SS(+10ランク)
 設定上、原作では「条件付きSSランク」だが、この小説では取りあえずSSランクと言う事に。まぁ、健康になった事でちょっと強くなったと言う事で一つ……

・リニス:B→SS(+10ランク)
 強くなった原因は100%セバスチャンの魔力供給のせい。
 寧ろ元々強い使い魔だったとは言え、魔力供給されただけでSSランクにまで出来るセバスチャンがヤバいと言う実例。
 (他の使い魔はここまで強くはない。大体A~AAランク。)

・シグナム:A→SS+(+4.5ランク)
 襲撃者対策に鍛え続けていた為、魔力量が原作よりも多くなっている。

・ヴィータ:A→SS(+4ランク)
 襲撃者対策に鍛え続けていた為、魔力量が原作よりも多くなっている。

・シャマル:S+→S+(リミッター無し)
 医務官である彼女の場合、万全のコンディションでいるべきとの判断から免除された。
 このため、彼女の分のランクは特例として規定の外にある。

・ザフィーラ:A→SS(+4ランク)
 襲撃者対策に鍛え続けていた為、魔力量が原作よりも多くなっている。

・朱莉:C?→A?(+4ランク?)
 実際にはリミッターは機能しておらず、セルフで出力を落としていた。
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