なのはさん視点で開始です
「――って訳やから、今から私はあの3人を無力化してリンカーコアを摘出せなあかん。その間、なのはちゃんには無茶させてまうかもしれんけど、頼まれてくれるか?」
最高評議会から受けたと言う通信の内容を私に伝えたはやては、申し訳なさそうにそう聞いてきた。
彼女の話を纏めると、『リオン』『バルト』『クリーム』の3人の身体は特別性であるらしく、早々に取り返さないと教会を消し飛ばした魔法『アナイアレイター』を使用される危険性があるのだとか。
「……はやてちゃんは、それで大丈夫なの?」
だが、それを一人で無力化しようとすると言う事は、はやて自身がアナイアレイターの標的になる危険性を孕む事になる。
私としては、彼女をそんな危険にさらしたくない。
彼女一人でなく、誰かと組んだ二人以上で立ち向かえば連携の機会を与えずに分断して対処出来るはずなのだから。
しかし……
「私があの3人を無力化するのを、あの聖女が黙ってみている保証はないし……それに、フェイトちゃんも今は
そう言ってはやてが視線を向けた先には、既に敵の生死体の少女の一人と交戦中のフェイトの姿があった。
「あはは! やっぱり貴女、速いわね!
「くっ……しつこい!」
≪Jet Zamber!≫
「おっと、前回と同じようにはいかないわよ! あたしだって、アレからちゃんと鍛えたんだから!」
フェイトと戦っている……と言うより、フェイトを
シグナムが雲霞滅却を放った直後、発生した土埃を突き破って一直線にフェイトに向かって行った辺り、余程恨みを抱かれてしまったらしい。
フェイトは『自分一人でやれる』と言っていたが、その言葉に反して彼女の戦いは珍しく長引いていた。
その原因は少女が『聖女様の加護』と呼ぶ補助魔法が原因の一つだろう。
聖女が最高評議会達に攻撃を仕掛ける直前、周辺一帯に夥しい数の魔法陣が現れ、その直後に聖女の仲間達全員のあらゆる能力が引き上げられた。
魔法陣の術式は私も見た事が無いものであり、もしかするとあれが彼女が神様から与えられた能力の一つなのかもしれない。
その効果は凄まじく、少し見ただけで素人と分かるレベルだった少女達が一瞬にしてランクAA相当以上の魔導士へと変貌したと錯覚するほどだ。
流石に魔力量や出力、速度や防御力が上昇しただけで技術に関しては据え置きのようだが、フェイトが今相手している少女はその技術もそれなりの物だった。
……そして今、彼女はフェイトの動きから戦い方や技術を盗み取り、成長し続けている。
攻撃のバリエーションは増え、フェイトの攻撃に対応し始め、フェイトが少しずつ苦境へ立たされていくのが分かる。
――あの子をあのまま戦わせては拙い。
私は、これまで多くの生徒を教導してきた経験からそう判断した。
「……はやてちゃん、ごめん。私、あの子を止めないと……!」
「……やっぱり、なのはちゃんから見てもあの子の成長速度は異常か?」
「異常なんてものじゃないよ……もしもあの子がこのまま成長を続けたら、きっと大変な事になる……!」
もしも彼女を放置すれば、きっとあの子は短時間で化ける。
彼女はそう言うレアスキルでも持っているのかと考えてしまう程、恐ろしい才能を持っていた。
職業柄、そう言った才能が開花する機会を潰してしまうのは抵抗があるけど、彼女が敵である以上は仕方ない。
レイジングハートを構え、照準を付けようとしたその時だった。
≪だったらなのは、そいつの相手はあたし達が引き受ける!≫
≪――っ! ヴィータちゃん!?≫
私に念話でそう伝えるのとほぼ同時に、少女の元へ無数の鉄球を引き連れたヴィータが奇襲をかけた。
しかし、あの少女の速度はフェイトを追い回せる程度には速い。そのままでは躱されるばかりだろう。
「くらえっ!」
「そんなもの、今のあたしには当たらないよ!」
その予想の通り、ヴィータが先ず牽制にと放った鉄球群はその全てを躱され、いなされ、一部に関しては打ち返された。
「っちぃ!」
打ち返された鉄球をギリギリで躱し、それでもヴィータは特攻をやめない。
――おかしい、ヴィータはあんな風に無策に突っ込むタイプじゃない。
私がそんな違和感を抱いた瞬間……少女の背後に
「――ハアァッ!!」
「なッ……!?」
そして雄叫びと共にそこから放たれたのは、
鉄球の対処の直後であった事に加え、接近するヴィータとフェイトの観察に集中していた少女は、その不意打ちに対応できずに飲み込まれ……
「あ……加護が……!」
「『ラケーテン・ハンマー』!」
呆然としているところに放たれたヴィータの一撃を、脇腹の辺りにもろに食らった。
「ガ、アアアァッ!!」
脇腹にアイゼンをめり込ませたヴィータはそのまま一回転、方向を調整して地面へと少女を叩き落した。
「ヴィータ……! ありがとう、助かったよ。」
私があの少女を遠ざけてくれたヴィータに礼を言うと、ヴィータは今しがたの手ごたえを確かめるようにアイゼンを一振りした後にこう尋ねた。
「……らしくねぇな、フェイト。何があった? あんな奴に梃子摺るたまじゃねぇだろ?」
「うん、実は……」
ヴィータからの問いかけに、私は事情を説明する。
前回の地下大聖堂で戦った相手だった事、その時に見た学習力と応用力の高さを警戒していた事。
そして、私達の戦い方は彼女にとって絶好の"餌"になり得る事を。
「――なるほどな。2つの魔力を使う戦い方を学ばれねぇように、か……確かにフェイトにとっちゃ、やり辛ぇ相手だな。」
「うん……だから一つだけ、お願いなんだけど……」
「ああ、皆まで言わなくても大丈夫だ。アイツはこのままあたしが無力化してやるよ。まぁ、非殺傷設定とは言え今のをもろに食らった以上、もう動けねぇかもしれねぇが……って、流石にそこまで簡単にはいかねぇか……」
そう言ってヴィータが一方へと視線を向けると、そこには先程の少女が既に飛翔していた。
「……」
先程までの様子から一変、一言も発さず俯いた顔は垂れた前髪が覆い隠しており、その表情はうかがえない。
だが、そのただ事ならぬ気配に妙な緊張を感じ、思わず身構えると少女が小さく呟いた声が聞こえた。
「………………さない……!」
「あぁ? なんだって?」
少女の呟きにヴィータがそう聞き返すと、少女はその気配と魔力を爆発的に増大させて叫んだ。
「許さない! 赦さないッ! ユルさないッッ!! 折角聖女様があたしに授けて下さった加護をよくも……よくもォッッ!!」
憤怒の形相を張り付けた顔をこちらに向け、血の涙を流しながら怨嗟をぶつける少女。
その魔力の性質さえ禍々しく歪みそうな鋭い殺気に空気が震え、ゾクゾクとした感覚が脳天まで一気に駆け上がる。
かつてこれ程の殺意を向けられた事があっただろうか……いや、これほどの感情を一人の人間が発せるものなのだろうか……?
だがそんな威圧に一切怯まず、ヴィータは私に告げた。
「行け、フェイト。ここからはアイツがこれまで通り非殺傷設定を守ってくれるかも怪しい……あたしの出番だ。」
「! でも、ヴィータ達だって……!」
彼女達が不死不滅だったのは過去の話だ。
10年ほど前、守護騎士システムが夜天の魔導書と共に消滅したとき、彼女達ヴォルケンリッターの絶対的な不死性は失われている。
相手が非殺傷設定を守らない事に対する危険性は、私もヴィータもそう変わらないはずなのだ。
そういう意味を込めた私の言葉に、ヴィータはこちらを向く事なく答えた。
「そういう意味じゃねぇ、お前には"殺し合い"は似合わねぇって言ってんだ。」
「……! ヴィータ……」
「だからさっさと行け。こっちの事はまかせろ、殺そうとしてくる相手を殺さずに無力化するってのは、もう慣れてるからよ。」
めちゃめちゃ書き直したので文章の繋がりがおかしかったりするかもしれません……指摘していただければ修正します
時間的にはこれまた前回と同様にあまり進んでいませんが、もうちょっとすれば進む筈……多分。