転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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未来を巡る戦い③

最高評議会の魔法によって教会が消し飛び、単騎突入したシグナムが雲霞滅却で敵を散らしたのを確認した俺は、真っ先に目的の相手の元へ飛翔する。

程無くして向こうも俺の接近を感知したのだろう、臨戦態勢を取って俺の方に振り向いた。

 

「アンタは……! はは、コレも因果って奴かもね。あたし達の相手をするのが、夜天の騎士ってのは。」

「確か、ザフィーラって言ったっけ。気を付けて、今のあたし達は身体も魔力ももう自分の意志では動かせない……手加減は出来ないよ。」

 

自分の意志とは関係無しに戦わされるリーゼロッテとリーゼアリアの二人を哀れに思いつつも、自らの役割を果たす為に俺は構えを取った。

 

「承知の上だ、お前達が妙な魔法で強化されている事も含めてな。……だからこそ、俺がお前達の相手なのだ。」

 

今回の作戦、俺に与えられた役割はリーゼロッテ及びリーゼアリアの無力化だった。

地下大聖堂での戦いで聖女とリーゼ姉妹が使った白い魔力に対抗する為には、同じ白い魔力による相殺か、瞬間最大魔力発揮値を上回る圧倒的な魔力量が必要だ。

同じ白い魔力を扱える俺に白羽の矢が立ったのは当然とも言えた。

 

……もう一つの『白い魔力で掻き消しきれない程の魔法を放つ』と言う方法は、言葉で説明するよりも遥かにハードルが高い。

例え完全に消されなかったとしても、術式に使用された魔力に干渉されているのは確かなのだ。当然、魔法の出力は落ちる。

そして、その上で敵にダメージを与えられるだけの威力を維持しなければならない……それ程の魔力を常に放出する戦い方が可能なのは、それこそはやてかなのはくらいのものだ。

 

相談の結果、純粋な魔力量で対応できる可能性があるなのはとはやて、そして速度で白い魔力を躱せるフェイトを加えた3人は聖女の相手をする事になり、同じ白い魔力で対抗できる俺はリーゼ姉妹を食い止める役割が回ってきたという訳だ。

 

地下大聖堂で対峙した際の二人の実力であれば、リミッターを全て外した俺であれば十分対応が可能であると考え、この役割を迷わず引き受けたが……聖女の使用した強化魔法と言うのが、こちらの想定をはるかに超えて厄介な代物だった。

 

「後ろだ、ザフィーラ!」

「くっ……! ォオオッ!!」

 

リーゼロッテの声と狼の嗅覚をフルに活用し、背後から迫る拳を回避する。そして同時にカウンターとして拳に集めた白い魔力を放とうとするが……

 

「躱せ!」

「!」

 

リーゼロッテの攻撃後の僅かな隙をカバーするように放たれたリーゼアリアからの射撃魔法は、驚異的なスピードと精密な魔力コントロールにより俺の拳に命中。

放とうとした白い魔力のリソースが消費させられ、更にその衝撃で拳が弾かれた隙に体勢を立て直したリーゼロッテが先日の交戦時とは比べ物にならない速度で空を跳ね回る。

 

「くっ……またも逃したか……!」

 

――この二人の連携……ただ操られているだけではないな。

 

ただ操られているだけにしては的確な判断と、対応力の高さに説明がつかない。

二人の連携にしても、互いの長所と短所を理解していなければ成立しない完成度を感じられる。

 

……想像だが、恐らくは使い魔の契約を介した命令により、常に自身が最適と判断する行動を強制的に取らされているのだろう。

その為に彼女達の意志を封じなかったのだ……常に最適な行動を、()()()()()()()()()()()()()

 

――何処までも悪辣な……!

 

彼女達の境遇は俺にとって……いや、俺達ヴォルケンリッターにとって決して他人事とは思えなかった。

本来仕えるべき主との契約を横から掠め取られ、良いように使われた経験は俺達にもある。

俺達が操られている間の意識は眠らされていたが、それでも今彼女達の胸中に渦巻く屈辱は手に取るように分かるのだ。

 

何とかしなければ……そう考えつつ、二人の猛攻を躱していると、唐突にヴィータからの思念通話が届いた。

 

≪ザフィーラ、これからシャマルが旅の鏡を開くから、あたしの合図でそこに白い魔力の砲撃を撃ち込んでくれ!≫

≪……唐突だな。だが、了承した。≫

≪頼んだ!≫

 

そう言って思念通話が途切れ、数秒後。

リーゼアリアの射撃魔法を回避したタイミングで、眼前に旅の鏡が開いた。

 

≪今だ!≫

「ハアァッ!!」

 

ヴィータの合図で砲撃を撃ち込んだ直後、声が響く。

 

「右だ、ザフィーラ!」

「っ!」

 

俺が砲撃を放った隙を好機と判断したのだろう。リーゼロッテの合図で構えて右側に向き直れば、そこには先程同様に拳を振りかぶった彼女の姿。

 

回避してからのカウンターでは先程のように防がれる……瞬時にそう判断し、拳に白い魔力を纏わせる。

狙いはクロスカウンターだ。リーゼロッテの攻撃と同時に放たれる拳ならば、リーゼアリアの妨害も間に合わないだろう。

 

こちらに迫るリーゼロッテの攻撃に合わせるべく構え……同時に、俺の背後でリーゼアリアの魔力が膨れ上がったのを感じ取った。

 

――砲撃……挟み撃ちか!

 

即座に術式を切り替え、こちらも白い魔力による砲撃をリーゼアリアに対して放つ。

そしてリーゼロッテの右の拳を腕でいなし、こちらの顎を狙って放たれた右脚による蹴り上げを僅かにのけ反る事で回避すると、彼女はそのまま踵落としで追撃を仕掛けてきた。

 

――今だ!

 

リーゼロッテの身体は追撃の為にこちらに向かっており、リーゼアリアは砲撃を白い魔力で掻き消されている状況で援護が出来ない。

二人同時に訪れた、この僅かな隙に好機を見出した俺は全身から白い魔力を放出する。

 

「! 流石……っ!」

 

その光を浴びたリーゼロッテがそのまま放った踵落としを防ぐと、今までの物と比較して威力が大幅に減少しているのが分かる。

どうやら目論見通り、聖女の強化魔法を無効化……或いは効力の減少に成功したようだ。

 

作戦の成功に手ごたえを感じると同時に、違和感を覚えた。

 

「今の攻撃……踵落としに白い魔力を纏わせれば、俺の白い魔力を相殺できたはずだ。何故しなかった……?」

「……」

 

最善の判断を取らされているのならば、そうしたはずだ。

俺の問いかけにリーゼロッテは口をパクパクと動かし……やがて諦めたように話し出した。

 

「……駄目だ、話せない。情報を渡さないように、あいつに命令されたからだ……」

「……そうか、それで十分だ。」

 

恐らくだが、今の彼女達にはあの魔力を使えない……そう言う事なのだろう。

だが、それだけでは情報を止められる理由としては弱い気がするのも確かだ。

その辺りの事情がどうにも気になるが、今はとにかく二人の無力化が先決……情報を共有する事だけに留め、自身の役割を果たそう。

 

≪はやて、今しがた確認した情報なのだが――≫

 

 

 


 

 

 

暗いオフィスの窓から飛び立ち、直ぐに聖女ちゃんの前に姿を見せる。

ぐいぐい行くのは私のキャラじゃないけど、こうでもしないとこの子、直ぐになのはちゃん達を倒そうと動くだろうからね。

 

「いやぁ~……思ったよりやるねぇ、聖女ちゃん。今のは流石の私もちょっと驚いちゃったよ。」

「先程の魔法とこの頑丈さ……成程、貴女も天使でしたか。」

「おっと! そう言う直接的な表現はなるべく控えて欲しいな~……ホラ、私達って隠れてないといけないから。」

 

こちらを探るような眼と言葉……なんとも挑戦的と言うか、何と言うか……もしかして天使に恨みでもあるのかな?

そんな私の考えと裏腹に、聖女ちゃんは突然こう切り出してきた。

 

「頼んで聞いて貰えるとは思っていませんが……この世界の為に、貴女方の力を私に貸していただけませんか?」

「わお、突然だねぇ。……ん~、悪いけどそれは私達の管轄外かなぁ。この世界の未来は、この世界に住む君達が拓くべきものだ。このスタンスを変える気は無いよ。」

 

聖女ちゃんが言っているのは、私が以前はやてちゃんから相談を受けた"予言"の一件の事だろう。

なのはちゃんが入院した事を知った後、はやてちゃんはこっそりと私に相談してきた。

 

『朱莉さんなら、滅びの予言を覆す事も出来るんやないか?』

 

天使の領分について美香(みー)ちゃんから聞いていたはやてちゃんらしくもない頼みだったが、きっと色々な事があって彼女も冷静ではなかったのだろう。

……まぁ、流石にその滅びが他の転生者による物だったら動くかもしれないけど、基本的には不干渉なのが天使の在り方。みーちゃんのような行動の方がイレギュラーなのだ。

そう改めて事情を説明すると、彼女は直ぐに納得してくれたものだ。

 

目の前の聖女ちゃんもその程度の事情は知っていたのか、落胆した表情を浮かべつつもこう返した。

 

「そうですか……では、この戦いについてもこのまま傍観していてください。これはもはや互いに覚悟の上で起きた戦闘……それこそ、貴女達の管轄外でしょう?」

 

そう言って私を睨む聖女ちゃん。

 

――こりゃぁ敵意剥き出しって感じだねぇ……私何かしたかな?

 

逆恨みとかは勘弁してほしいなぁ、面倒だし。

説明して納得してくれれば良いんだけど……そんな期待の元、私は口を開く。

 

「聖女ちゃんの言う通り、確かにこの戦い自体は管轄外なんだけどさ……アンタがあたしの管轄になっちゃったんだよ、『()使()()()()』。」

 

天使は不介入が原則。

それは何も天使の意思だけに留まる制約じゃない。

天使の力が彼等の人生に大きく関わる事自体、禁忌なのだ。それこそ、こちらの不手際でもない限りね。

 

「成程、この身体自体が……ではやはり、私も力尽くで押し通すしかないようですね。」

「そう言う事だね。あたしも本来こう言うキャラじゃないんだけどさ~――」

 

やれやれと我ながらわざとらしくかぶりを振り、ちょっとだけ真面目なトーンで続ける。

 

「……それでも一応天使だからね、流石に今回ばかりはサボる気にはなれないよ。」

 

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